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事例01 株式会社リンガーハット

事例 01

株式会社リンガーハット
エリア社員への正社員転換や新雇用区分「パート店長」制度の導入により、地域情報に長けた即戦力を確保、労働者はモチベーションが向上。

業種 宿泊業、飲食サービス業
本社所在地 東京都
正社員数
(2015年2月28日現在)
ナショナル社員:432名(男性405名、女性27名)
エリア社員:63名(男性20名、女性43名)
非正規雇用労働者数
(2015年2月28日現在)
パート・アルバイト:約9,000名(男性約3,000名、女性約6,000名)
非正規雇用労働者の主な仕事内容 店舗での調理・盛付・接客業務
取組のポイント ■ エリア社員(勤務地限定)とナショナル社員(全国異動あり)への2つの正社員転換ルートを用意
■ 新雇用区分「パート店長」制度の導入により働き方の選択肢を多様化
⇒地域情報に長けた即戦力を確保でき、多様な人材を活用できるように
■ 資格ランク制度と計画的な教育訓練を実施
⇒パート・アルバイトの戦力化とモチベーション向上を実現

PDFデータ

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同社は、麺事業を中心に直営店舗を500店舗弱、フランチャイズ店舗を200店舗弱展開する飲食チェーン企業である。
九州が創業の地であり、その後、関東に進出しながら事業拡大を続け、人材確保に向けてパート・アルバイトを含む雇用管理の仕組みを構築してきた。
現在は、次の50年に向かう成長戦略として、「グローバル企業への飛躍」を掲げ、国内だけでなく海外、特に成長著しいアジアの新興国への出店を積極的に推し進めている。

1.取組の内容

◆エリア社員(勤務地限定)とナショナル社員(全国異動あり)への2つの正社員転換ルートを用意

【地域に密着した店舗づくりのため積極的にエリア社員への転換を推進】

かつて1980年代に同社が九州から関東に進出した時期、関東では全く認知度がなく、新卒の正社員採用に苦労したことがあった。そのため、パート・アルバイトから正社員に転換することで、正社員不足を補うことにした。パート・アルバイトから正社員への転換ルートとして、自宅から1時間程度の勤務地限定の「エリア社員」と全国異動ありの「ナショナル社員」の2種類の正社員への転換ルートを用意している。
エリア社員への転換は、2005年頃、経営陣が店舗を回り、店舗での勤続年数が5~10年のパート・アルバイトの優秀な仕事ぶりを見て、正社員への転換を考えたことをきっかけに積極的に進められるようになった。現場での経験や地域の情報に長けたベテランのパート・アルバイトを転勤のないエリア社員とし、その者に店を任せることで、より地域に密着した店舗づくりができると期待した。

【エリア社員への転換はAMランク(店長代理レベル)以上が対象。ナショナル社員への転換の応募資格には制限なし】

エリア社員への転換は、店長の職務を担えることを前提とし、5~10年店舗で勤務し、後述する同社の資格ランク制度でAMランク(店長代理レベル)以上まで成長したパート・アルバイトを対象としている。エリア社員としての転換の可否は、本人の希望エリア内に複数店舗が存在し、既存社員との兼ね合いを踏まえて受入れが可能であることが前提となる。昇進上限は店長職・係長職であり、賞与、退職金、役職手当が付く。なお、昇給はナショナル社員に対して一律半分の水準と規定し、賞与はナショナル社員の5割が基本であるが、評価結果によって7割又は9割の水準が支給される。
ナショナル社員への転換については、応募資格に制限はない。ナショナル社員は全国転勤ができ、昇進上限はなく、複数店舗の統括職や本部管理職に昇進する可能性もある。

【本人申請と面接選考により転換可否を判断。エリア社員とナショナル社員は相互転換も可能】

エリア社員・ナショナル社員への転換は、いずれも本人が申請し、店長、ブロックリーダー、チームリーダーによる面接選考を行い、店長昇進課題まで修了していると店長として正社員に転換する。ナショナル社員については、上位職への昇進可能性があるため、それまでの勤続期間における評価結果をより重視して転換可否の判断を行っている。
エリア社員からナショナル社員に転換することも可能であり、本人が申請を行い、面接に合格することが必要となっている。また、家庭の都合等でナショナル社員からエリア社員に転換することも可能であり、仕事と介護の両立が必要な社員等が利用している。

◆新雇用区分「パート店長」制度の導入により働き方の選択肢を多様化

【エリア社員への転換を希望しないパート・アルバイトの受け皿として導入】

2014年12月から、女性活躍推進の一環として働き方の選択肢を増やすべく、新しい雇用区分として「パート店長」制度を導入した。AMランク(店長代理レベル)まで成長したパート・アルバイトについてはエリア社員への転換を推奨してきたが、本人が「店舗の異動をしたくない。今勤務している店で引き続き働きたい。」と転換を希望しないことがあり、そのようなパート・アルバイトでも店長職で活躍できる受け皿として新たな雇用区分を導入した。
パート店長は、店舗異動はなく、エリア社員の役職手当相当分を時給に上乗せして支払い、一時金(5~8万円)が支給される。退職金は支給されない。

【店舗閉鎖時の対応について覚書を締結】

パート店長は店舗限定であるため、パート店長として任命する際に、フランチャイズへの移行等によって店舗がなくなった場合の対応について覚書を交わす。覚書では、店舗がなくなった場合は、エリア社員かナショナル社員への転換、他店舗での勤務、退職のいずれかの選択肢となることが定められている。

◆資格ランク制度でパート・アルバイトの戦力化とモチベーション向上を図る

【評価に基づき昇格・昇給する資格ランク制度を導入】

パート・アルバイトの戦力化とモチベーションの向上を狙い、専用の職能資格制度(資格ランク制度)と、それに基づく評価を実施している。
入社時は全員がTランクに位置し、評価によってAMランク(店長代理レベル)まで昇格し(ただし、AMランクはフルタイム勤務が可能な者のみ)、更に会社の意向と本人の希望が合致する場合にはパート店長に昇格することができる。ランクが上がると時給も上がる。また、一つのランクの中でも数段階の時給設定があり、パート・アルバイトに配布される手引や規定で明示されている。
評価は半年に一度、契約更新のタイミングに合わせて実施する。自己評価の後、店長等の上長による評価がなされる。評価の結果により、ランクの上下や時給のアップが決定される。評価結果は上長が本人にフィードバックし、その後の能力開発に生かしている。

資格ランク制度

資格 レベル
パート店長 店長レベル
AM 店長代理レベル
S 店舗管理能力を持つレベルだが短時間勤務
A 他のパート・アルバイトを指導できるレベル
B 作業全般が一通りできる一人前レベル
T 見習いレベル

【入社時には計画的なOJTを実施】

入社時教育を店舗ごとの計画的OJTとして実施している。OJTの指導役は、新人と同じ時間帯に勤務するAランク以上のパート・アルバイトである。それらのAランク以上の者は時間帯の責任者としてバッジを付け、他のパート・アルバイトの指導に当たる。
調理とサービスのスキルレベルを認定するチェックシートを用意しており、OJTではチェックシートが求める項目をこなせるように教育していく。

【AMランク(店長代理レベル)昇格の際には集中トレーニングコースを受講】

AMランク(店長代理レベル)になるためにはAOC(アドバンスオペレーションコース)というトレーニングクラスを受講する。AOCは店長になるための管理職研修で、店舗の維持、メンテナンス、実技の講習等がある。リーダーシップやコミュニケーションの実技研修、座学の講座もある。新卒で採用された正社員と、パート・アルバイトの経験を持ちAMランクに昇格する(あるいは正社員転換候補となる)者が同じコースを受講する。ただし、後者は実務経験があるため、店舗運営に関するカリキュラムは一部免除し、決算書の見方、原材料費の問題把握といった数値関係を集中的に学ぶ。
AOCは東京の研修所で3泊4日の日程で実施される。遠方の店舗に勤務するパート・アルバイトでも、AMランクへの昇格を希望する場合は東京に宿泊して受講する(旅費・宿泊費は会社負担)。

2.効果と課題、今後の運用方針

◆地域情報に長けた即戦力を確保でき、労働者はモチベーションが向上

パート・アルバイトからエリア社員やパート店長等に積極的に転換することにより、地域情報に長けた即戦力を確保できている。長期間現場で働いてきた経験から地域のイベントや情報を熟知しており、それらを生かした店舗づくりは売上にも直結している。また、女性社員が増えることにより、男性色の強い企業から脱却し、多様な人材を活用することができるようになった。
職能資格及びそれと連動する賃金制度が明確であることがパート・アルバイトにも周知されているため、上位ランクを目指すことがパート・アルバイトのモチベーションとなり、処遇の透明性・納得性向上にも寄与している。また、正社員転換の道を整備することで、仕事にやりがいを感じて自身のキャリアアップを考えるパート・アルバイトが増加した。

◆正社員転換の候補者確保等が課題

新規出店のペースが加速すると、店長又は店長代理レベルのランクの人数を増やす必要があるが、現在は頭打ちとなっている。店舗で長く働いていても、その全員が正社員を希望するわけではない。エリア社員に転換して店長となってもよい経験・能力を有する人材でも、本人が希望しないために転換しない者もいる。背景には「これ以上責任を負いたくない」という思いもよく聞く。
他方、地域によってはエリア社員が多く、新規に受け入れられない状況になっている。そのため、エリアによっては正社員転換の条件に適う者でも転換できない場合があることが課題である。

◆女性社員の増加、パート・アルバイトのエリア社員転換等を引き続き推進

エリア社員への転換の推進により女性社員が増加したが、今後も更に増やしていきたいと考えている。
また、10年以上働いているパート・アルバイトは地域や店舗のことを熟知している。今後も引き続き正社員転換制度を推進し、このようなベテランのパート・アルバイトに対してはエリア社員への転換を勧めたい。フードコート内の店舗等については、比較的営業時間が短い中で時間制約のある主婦層等が職歴2~3年でもパート店長として活躍していくことが可能であるため、有望なパート・アルバイトのパート店長等への転換を積極的に推進したい。

3.活躍する従業員の声

RH商品開発チーム
係長 宮内伸吾氏

年代 30代 性別 男性
勤続年数 17年
キャリアアップの過程 10年間のアルバイトの後、エリア社員、その後ナショナル社員に転換。アルバイト経験を生かした従業員目線でのコミュニケーションを大切にし、高い成果を実現。

◆アルバイト歴10年目にエリア社員に転換

高校2年生から九州でアルバイトをはじめ、6年目にはAMランク(店長代理レベル)まで昇格していた。店舗運営の現場の核として活躍し、AMランク昇格後3年間くらい正社員にならないかと会社から誘いを受けていたが、正社員になることの不安や家業との兼ね合い等で躊躇。しかし、勤続10年目にエリア社員に転換した。この際には、転勤がないこと、自宅から通える範囲での勤務であることが判断の決め手の一つとなった。

◆アルバイト経験を生かして従業員目線でのコミュニケーションを大切に、高い成果を実現

エリア社員転換後はすぐに店長に任命され、店長会議への参加、売上・従業員の管理の責任等、負担やプレッシャーは増えたものの、やりがいのある充実した日々を送った。1年後には3店舗の店長を兼任し、自分より年上の正社員の部下を持つことになり、「人を育てる」ことへの意識も芽生えた。
店舗運営においては部下の正社員やパート・アルバイトとのコミュニケーションをとても大切にしている。相手を立てること、上からではなく下から一緒の目線で見ることを意識しており、自分自身がアルバイトとして長く働いた経験があったので悩み等も分かってあげられるという。
その後も、難しい店舗や新店の店長を経験するなど、それまで経験してこなかった機会を与えられるたびに自身のマネジメントスタイルを生かして取り組み、九州で一番の店舗売上を達成するなど確実に成果を上げてきた。

◆執行役員からの声かかりでナショナル社員に転換し、新たな領域にチャレンジ

エリア社員に転換してから6年目、33歳の時に、かつての上司であった現執行役員からの声かかりでナショナル社員に転換した。ナショナル社員への転換は、東京への異動を伴うものであり勇気が要ったが、声をかけてくれた執行役員への信頼や、自分自身が更に成長したいという思いもあり決断した。
ナショナル社員に転換した後は、マーケティング・商品開発という新しい領域で仕事に取り組んでいる。料理や食材のこと等学ばなければならないことばかりでプレッシャーは大きいが、自分達が開発した商品が店舗で展開されることはとてもやりがいがあることであり、毎日が充実している。
今後は、自分を呼んでくれた上司のためにも引き続きマーケティング・商品開発を担当し、成果を出していきたいと思っている。また、ナショナル社員に転換したことから、いずれは海外勤務も求められれば積極的に応じるつもりである。

◆正社員転換の機会を啓発、勧奨していくことを期待

パート・アルバイトの中には正社員になれるだけの能力や意識を持った人材も多くいるため、そのような人材が正社員になっていけるように、正社員転換の機会についての啓発活動をしっかり行い、候補者を発掘し、転換を勧奨していくことを期待したい。