ホーム 事例紹介 事例03 株式会社やまぐち食品

  • 製造業
  • ~99人
  • 人材育成
  • 処遇の改善
  • 正社員への転換 ~正社員へ~

事例03 株式会社やまぐち食品

事例 03

株式会社やまぐち食品
評価制度及び正社員転換制度の実践と、ワーク・ライフ・バランス確保の企業姿勢により、優秀な非正社員の定着と戦力化を実現。

業種 製造業
本社所在地 北海道
正社員数
(2015年5月30日現在)
正社員:23名(男性19名、女性4名)、
ほか役員5名
非正規雇用労働者数
(2015年5月30日現在)
パートタイマー:49名(男性1名、女性48名) 
非正規雇用労働者の主な仕事内容 製造業務、直売店での販売業務
取組のポイント ■ 客観的で明確なパートタイマー評価制度
⇒昇給に直結し仕事への意欲向上に寄与
■ 従業員の可能性を引き出す正社員転換制度
⇒将来の希望が見えるキャリア設計が可能に
■ 不平不満を減少させる処遇改善
⇒密なコミュニケーションにより意見を引き出す

PDFデータ

Get ADOBE READER

PDFファイルを見るためには、Adobe Readerというソフトが必要です。
Adobe Readerは無料で配布されていますので、左記のアイコンをクリックしてダウンロードしてください。

同社は、1951年に創業。豆腐やこんにゃく、納豆等30~40品目ほどの食品を製造・販売しており、年商は約5億円である。1990年、恵庭市の工業団地である恵庭テクノパーク内に新工場を建設。2003年からは直売店「豆てっぽう」を大型スーパーマーケット内に出店し、現在は工場2か所、直売所4か所を展開する。
従業員の7割以上がパートタイマーであり、パートタイマーを会社にとって重要な経営資源として位置付けている。

1.取組の内容

◆明確な基準に基づく評価と、評価結果に連動した透明性の高い賃金設定

【熟練度に応じ、職務等級と要件を規定】

同社は、創業当初から豆腐関連食品の製造を行っていたが、近年価格競争が激化し、一層の生産効率化が必要になった。また、同社の工場は同業他社の工場が多く立地する工業団地内にあり、優秀なパートタイマーの新規採用と流出防止が喫緊の課題となっていた。
このような背景の下、同社の重要な経営資源であるパートタイマーの仕事に対する意欲及び資質・技術の向上を図るためには、明確な人事考課に基づく評価の実施が不可欠であると考え、2006年にパートタイマーに対する職務等級規定を導入した。パートタイマー職務等級規定では、職務等級を1等級(補助業務)から4等級(高度熟練判断業務)までの4区分に、また各等級を1~5号俸(1等級のみ1~2号俸)に分類し、賃金規定では各等級の各号俸によって時給額を設定している。

職務等級表

職務等級 職務要件
4等級 高度熟練判断業務 1.担当業務全般の立案・推進ができる
2.作業リーダーとして、業務の監督指導ができる
3.業務に必要な実務的・専門的知識・技能を用いて下位者を指導できる
4.品質について専門的知識を有している
3等級 定型(熟練)業務 1.担当業務全般の流れについて把握している
2.上位者がいなくても自己判断で業務処理ができる
3.業務に必要な実務的・専門的知識・技能を用いて下位者を援助できる
4.品質についてある程度の知識を有している
2等級 定型(半熟練)業務 1.定型業務に従事し、一定の基準に従って業務を処理できる
2.品質について初歩的な知識を有している
1等級 補助(未熟練)業務 1.上司の直接的監督の下、指示を受けて業務処理ができる
2.上級者の補助者として、定型的・簡素な業務処理を行うことができる

【明確な基準による人事考課に基づき、昇格・昇給を決定】

職務等級は、評価表(評価・等級自己査定シート)に基づく人事考課によって決定される。評価表では、知識やスキル、仕事に対する姿勢等が細かい評価項目に分けられ、その項目ごとに自己評価及び上長による評価を行うよう定められている。上長は各項目の評価に加え、総合評価(S~Dの5段階評価)も行う。
総合評価でS又はAと判断された者は昇格する。全ての評価は、直属の上司のみではなく常務もチェックし、評価者によって評価結果にばらつきがないよう注意している。評価項目が公開され、また結果もフィードバックされることから、昇格するためにはどのようなスキルを身につければ良いかが分かりやすく、透明性の高い制度となっている。

評価・等級自己査定シート

スキル評価 現在の工程全般を把握している D C B A S
上司の指導がなくても作業できる D C B A S
品質について数値を把握している D C B A S
~ 以下 略 ~ D C B A S
責任感及び管理能力 遅刻・早退及び欠勤などが少ない D C B A S
服装・勤務態度が良い D C B A S
勤務時間中「私語」が無い D C B A S
~ 以下 略 ~ D C B A S
スキル総合評価
S 優れている A やや優れている B 普通 C やや劣る D 劣る

【高い等級のパートタイマーをリーダー職に登用】

2013年、パートリーダーという呼称のリーダー制度を新たに創設し、全社で現在3名ほどのパートリーダーが活躍している。パートリーダーに登用されるのは3~4等級のパートタイマーであり、他のパートタイマーへの連絡事項伝達や、正社員の少ない現場においては生産計画の作成等、責任のある仕事を任されている。また、パートリーダーには「リーダー手当」という名前の手当が月額3,000~5,000円程度支給されている。

◆職務等級と連動した透明性の高い正社員転換制度を整備

同社には、前述の職務等級制度と連動した正社員転換制度があり、パートタイマーから正社員への転換を積極的に推進している。正社員転換の候補者となる条件は、①職務等級が4等級(最高ランク)であること、②本人の希望があること、③上長の推薦があること、の3点である。形式的な転換試験はなく、上記の条件を満たしたパートタイマーについては、最終的に役員の決裁で正社員転換が決定する。
この正社員転換制度についてはパートタイマーの就業規則に明示しており、毎年1~2名程度が正社員に転換している。正社員転換制度導入に際しては、社員会代表とパートタイマー代表に説明した上で意見書を求め、また社内報「やまちゃん通信」で全員に周知した。更にパートタイマーとの懇談会や面接の機会を通じて制度の周知を促しており、透明性の高い制度として全ての従業員に認知されている。
正社員転換した者は、パートタイマーとして働いていた頃の経験を生かして質の高い現場マネジメントを行っている。現在、パートタイマー出身者の中からチームリーダーが3名誕生しており、将来的にはマネージャー (※1) への昇格も検討中である。

(※1) なお、同社には「揚げ課」、「豆腐課」といった「課」が扱う品目ごとに設置されており、課の下に更に細かい製造ラインに応じて「チーム」がある。チームリーダーは、そのチームを統率する役職であり、マネージャーは「課」を統率する役職である。

◆品質を確保するための教育研修と計画的ジョブローテーション

食品製造業のため、正社員・パートタイマーといった雇用形態に関わらず、品質・衛生・安全についての教育訓練が不可欠である。同社では月1回、外部講師を招聘して「衛生研修」を行っており、衛生に関する知識の習得や意識啓発に努めている。この研修には、パートタイマーであっても正社員と同様に参加することができ、原則としてパートリーダー以上は全員参加するよう定めている。衛生研修は業務後に行うが、その時間は勤務時間として時給の支払い対象となっている。
また、クレームがあった際には、クレームを受けた製品に関係するチーム全員が集まり、正社員とパートタイマーが一緒に原因や対策を話し合うこととしている。対策等をまとめるレポートも正社員と同様に課している。こういった事案にパートタイマーと正社員が一緒に取り組むことによって再発防止効果が高くなるほか、従業員同士のコミュニケーションも活性化すると考えている。
更に、需要の季節変動に対応するため、パートタイマーにも計画的に複数の製造ラインを経験させている。これにより技能の幅を広げ、誰もがどの部署の仕事にも対応できる体制を整えている。

◆就業規則、福利厚生等パートタイマーの貢献に報いる制度

【パートタイマーの就業規則を整備し、正社員と同等の福利厚生を規定】

同社では、「仕事内容以外は正社員もパートタイマーも同じ」と考えており、産前産後休暇、育児休業、介護休業等を就業規則に明示するとともに、パートタイマーでも正社員と同じ要件で取得できるよう定めている。なお、健康診断は法定の要件を満たさないパートタイマーを含む全員に対して実施し、費用は全額会社が負担している。制服の貸与基準、懇親会等についてもパートタイマーと社員は同等に扱っている。
また、正社員と同じくパートタイマーも希望者70歳定年制を採っており、希望があれば70歳を超えても働くことができる。現在最高齢のパートタイマーは73歳であり、高齢者を含む従業員が安全に通勤できるよう、車による送迎も行っている。
更に、同社は知的障害者を2名雇用している。2名は他のパートタイマーと同じく製造ラインに入り、比較的軽度な仕事を担当しているが、すでに10年以上の経験があり、今では担当業務を独力で完遂することができるようになった。また同社では、毎年特別支援学校(高等部)からのインターンシップを受け入れている。2015年度は8月に10日間程度、障害を持つ4名の生徒を工場内に受け入れて就業体験を行うことを予定している。

【パートタイマーの意見を汲み上げるシステムの整備】

シフト制のため全員の勤務時間が一律ではなく、従業員同士のコミュニケーション、特にパートタイマーの意見や不平・不満を十分に上司が聞き取る機会が不足しているという認識から、パートタイマーの意見を汲み上げる様々な取組を行うようになった。
その一つが、昼食休憩の時間の一部を利用して不定期に開催している「昼休み懇談会」である。職場グループ単位や、常務の声かけによってパートタイマーを集め、昼食をとりながら現場管理者、総務管理者、役員と意見交換を行う機会を設けている。また、アンケートやチームリーダー・常務による面談を行って、仕事上の問題や労働環境の改善に関する意見を直接パートタイマーから拾い上げ、可能な限り迅速に対応している。
その他、「ありがとうカード」という従業員同士が感謝の気持ちを伝え合うカードを作ったり、アンケートの自由記述を上長及び社長が一枚ずつチェックして本人にフィードバックしたりするなどの取組を行い、パートタイマーが気持ち良く働ける環境づくりに努めている。

2.効果と課題、今後の運用方針

◆透明性の高い評価・昇給制度が、意欲向上と効果的な人材育成に寄与

パートタイマーに職務等級を整備し、評価及び昇給に連動させることで、「頑張ればその分時給が上がる」という認識が浸透し、パートタイマーの仕事への意欲が向上した。また、明確な評価制度により、昇給のためにどのようなスキルを身につける必要があるかが分かりやすくなったため、効果的な人材育成にもつながっている。

◆正社員転換制度により優秀な人材確保・定着に成功

同社の近隣には大手食品製造業の工場が多く立地しており、優秀なパートタイマーの定着(流出防止)が重要な課題である。正社員転換制度の整備により、希望すれば正社員への道が開かれているという認識がパートタイマー全体に広がったため、パートタイマーの仕事への意欲が向上し、優秀な人材の流出を防ぐことができている。また、募集の際に正社員転換制度があることを明示していることもあり、「いずれは正社員になりたいから」と他社からパートタイマーが移ってくるケースもあった。評価制度や福利厚生も含め、より働きがいのある会社として、他社との差別化が図られている。
更に当制度の導入により、パートタイマーの中に良い意味での競争意識が芽生え、パートタイマー全体の資質や技能が向上した。これにより、パートタイマーの中に核となる人材が育ち、彼らがキーマンとなることで全体の生産力が安定してきている。

◆働く側のニーズに配慮しつつ、更なる戦力化を目指す

同社では、今後もパートタイマーに活躍してもらうための施策を続けていきたいと考えている。同社には正社員に転換を希望するパートタイマーもいる一方で、配偶者の扶養内での勤務を希望するパートタイマーや、子育てのため働く時間に制約のあるパートタイマーも多い。
働く側の多様なニーズに配慮しつつ、更に同社の戦力として活躍してもらうためにはどのような施策が必要か、今後の検討課題とする。

3.活躍する従業員の声

揚げ課 チームリーダー
千葉三恵氏

年代 50代 性別 女性
勤続年数 18年
キャリアアップの過程 1997年に入社。17年間のパートタイマーとしての勤務を経て、2014年5月に正社員転換。現在は揚げ課のチームリーダーとして他のパートタイマーをまとめている。

◆パート歴17年目に正社員に転換

パートタイマーとして17年間勤務し、パートリーダーとして活躍していた時、会社から正社員にならないかと打診を受けた。正社員になると他のパートタイマーに指示を出す立場になり、責任も増えるため多少躊躇したが、転換を決意。これまでは正社員に遠慮することもあったが、現在は自由に仕事を組み立てられるようになり、やりがいを感じながら業務に当たっている。

◆責任増大、だが一人で背負わずバランスを

正社員になり、収入が上がった。パートタイマーとして働いていた時と同じく、揚げ課のラインで油揚げやフライ等の製造業務に当たるが、以前のように一つの仕事に入りきりにならず、全体を見渡してパートタイマーに指示を送ることができるよう、気をつけている。
任される仕事の責任は重くなったが、一人だけで背負わぬよう、困った時は上司にフォローを依頼したり、部下に助けてもらったり、バランスをとることを心がけている。また、部下を統括する立場のため、無責任な言動や指示をしないよう気をつけている。

◆パートタイマーとしての経験を生かし、より働きやすいように業務を改善

揚げ課の現場では、フライヤーのライン業務は非常に暑く負担が大きいため、定期的な交替が必要となる。従来は口頭にて交替指示を出していたが、それをシフト組みし、誰でも見ることのできるボードに整理して記入することで、次に誰がどこに入れば良いか一目で分かるように改善をした。また、暑さが厳しい業務は交替までの時間を短く調整した。長年パートタイマーとして働いてきた経験を生かして、少しでもパートタイマーの負担を軽減し、かつ効率的な現場運営ができるよう工夫している。

◆若い世代のパートタイマーの育成が課題

子育て世代の若いパートタイマーは14時までの勤務が多いため、必然的に午後から夕方のシフトは年配者ばかりになる。長期的には、若いパートタイマーにも様々な技術を身につけてもらい、先輩のノウハウを引き継いでほしいと考えているが、勤務時間の制約があるため育成の難しさを感じている。
しかし、自身も子育て中は、子どもの急病により休まなければならなくなるなど様々な制約の中で働いてきた経験があり、子育て世代の事情は良く理解できる。時間の制約がある中で、若い世代に技術を引き継いでいく方策を模索中である。

揚げ課
江良秀昭氏

年代 50代 性別 男性
勤続年数 2年
キャリアアップの過程 別の食品製造会社で正社員として25年勤務していたが、体調不良により早期退職。その後パートタイマーとして同社に入社。衛生関連の知識を買われ、勤続1年半にて正社員に転換した。

◆体調不良により前職を早期退職後、同社にて再起

以前は同じく食品製造の会社にて25年間、仕込みや生産管理を担当していたが、頸椎ヘルニアの後遺症で勤務を続けることが困難になり、早期退職した。療養し多少改善したところで同社にパートタイマーとして採用され揚げ課に配属、約1年半後に会社から正社員転換の打診があった。最初に転換の打診を受けた時は年齢のこともあり多少の不安があったが、お世話になっている以上は会社に貢献しようと転換を決意した。
結果的には正社員になったことで家族を安心させることができ、正解であったと思う。正社員に転換してみて、同社がとても良い職場であることを再認識した。従業員同士のコミュニケーションが良くとれており、毎日良い雰囲気の中で働くことができている。

◆職場の衛生管理、作業の手順を改善し、更に働きやすい職場に

同業他社における勤務経験がある自分のやるべきことは、これから更に働きやすい職場をつくっていくことだと考えている。例えばフライヤー作業の時に、立ち位置や姿勢を改善することで暑さを軽減することができる。このような新しい作業手順・方法を検討し、上司に相談をしながら導入を進めている。

◆作業手順書等の整備が課題

パートタイマーの更なるスキルアップ・キャリアアップのために、会社としては分かりやすい作業手順書を整備していく必要があると考えている。
近年はパートタイマーの年齢層が広がっている。年配の方は機転を利かせ良く働いてくれて非常に勉強になるし、若い方も若い方なりの目線から改善点を提案してくれるのはとても良いことである。今後は各年齢層に応じた分かりやすい教え方で指導し、各自の力を最大限発揮してもらうことが重要であると思う。
現時点では作業手順書がなく、背中を見て覚えることが多いが、各パートタイマーのスキルアップのために作業手順書を整備すべきであると考えている。このような手順書の整備や、職場環境の改善等、様々な角度からパートタイマーが働きやすい会社づくりに貢献していきたい。