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事例06 エフコープ生活協同組合

事例 06

エフコープ生活協同組合
正社員と非正社員の雇用区分を統合し、全従業員を無期契約に移行。
働き方の選択肢を増やし離職率5%以下を実現。

業種 卸売業、小売業
本社所在地 福岡県
正社員数
(2015年6月1日現在)
フルタイムスタッフ(※1) :約1,030名(男性約880名、女性約150名)うち、勤務地限定型:約310名
定時スタッフ(※2) :約870名(男性約40名、女性約830名)
福祉事業専門スタッフ:約60名(男性約10名、女性約50名)
非正規雇用労働者数
(2015年6月1日現在)
アルバイター:約680名(男性約280名、女性約400名)
登録型スタッフ:約160名(女性約160名)
その他(シニアスタッフ、嘱託職員):約60名(男性約10名、女性約50名)
非正規雇用労働者の主な仕事内容 配達業務・レジ・品出し・事務作業
取組のポイント ■ 正社員とフルタイムの非正社員の雇用区分を統合、かつフルタイム・パートタイム問わず全非正社員を無期契約へと移行
⇒雇用形態に対する不安や不平等感を一掃し離職を防止
■ 正社員と給与体系を一本化、同じランクの時間当たり賃金はほぼ同一に
⇒勤務地や時間による選択肢を増やし行き来が可能に

(※1)主として配達業務を担当。フルタイム勤務。自宅から15㎞以内の範囲で異動あり。無期契約、月給制。賞与・退職金あり。
(※2) レジや品出し、事務作業等に職務を限定して担当。パートタイム勤務(週15時間以上35時間未満)。原則として転勤を伴う異動はない。無期契約、時給制。年度末賞与あり。退職金なし(退職慰労金制度あり)。

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同社は、1983年4月に福岡県内の5つの地域生協が合同して誕生した生活協同組合であり、福岡県内で約46万名の組合員が加入する。店舗及び支所は32か所、福祉事務所は21か所あり、安全で安心な食品、衣料や雑貨等の日用品、共済や保険、介護サービスや子育て支援等、様々な商品やサービスを提供している。

1.取組の内容

◆高い離職率等の課題解決のため、正社員とフルタイム非正社員の雇用区分を統合し、処遇改善を実現

【同一業務なのに待遇に違い、十分でない教育により顧客クレーム増加】

同社は2002年までは正社員のみを活用していたが、2003年以降は業績悪化により早期退職を募り、減少分を直接雇用の非正社員「専門スタッフ」で補充した。専門スタッフは配達を主に担当していたが、正社員「経営スタッフ」にも配達を担当する者がおり、職務は重なっていた。(※3)
2005年当時、専門スタッフの離職率は4割を超えており、①採用・教育コストがかさむ、②常時欠員状態で正社員の休みがとれない、③採用基準が下がり、また、常に入れ替わりの状態で言葉遣いや身だしなみ等のクレームが増加、④正社員と同じ作業を行うにも関わらず給与差が大きく、仕事に対する意欲が低下、⑤正社員である経営スタッフの採用を行っておらず全従業員の年齢構成がいびつになる、といった問題が発生したため、抜本的な対処が必要となった。

(※3)2003~2007年の間、有期雇用で配達を主として職務限定、勤務地限定で従事する非正社員を「専門スタッフ」と呼び、それに対して無期雇用で職務・勤務地ともに限定しない正社員を「経営スタッフ」と呼んでいた。

【正社員とフルタイム非正社員の雇用区分を統合】

同社の人事制度の改革は段階的に行われた。まず2008年に、全く別の職能ランク制度・給与制度であった「経営スタッフ(正社員)」と「専門スタッフ(非正社員)」を、「フルタイムスタッフ」という呼称の1つの区分に統合した。フルタイムスタッフには1~8の職能ランクを設け、1~2ランクを旧・専門スタッフ、3ランク以上を旧・経営スタッフとし、1~2ランクとして採用された者でも3ランク以上に昇格できる仕組みとなった。当時、300名ほどの専門スタッフが1~2ランクのフルタイムスタッフに移行したが、その後、2015年6月までに3ランク以上に昇格した者は74名ほどである。
2008年の区分統合の時点では、無期契約は3ランク以上のスタッフが対象であり、1~2ランクは依然として1年更新の有期契約であったが、大きな問題がない限り契約は自動更新していた。
同時に旧・経営スタッフの年齢給を廃止し、職責給と職能給を中心とした給与体系を全員に適用した。

◆フルタイムスタッフ・定時スタッフ全てを無期契約に移行し、処遇を改善

旧・経営スタッフと旧・専門スタッフとの均衡待遇を目指す流れの中で、2012年3月、有期契約であった1~2ランクのフルタイムスタッフを全員無期契約に転換した。1~2ランクと3ランク以上の者が同じ仕事をする中、前者だけが毎年契約を更新しなければならないことに対する、不満の声が従業員から上がっていた。労働組合からも、1~2ランクの従業員の無期契約化を求める要望が毎年出されており、それに応える形で無期契約への転換が実施された。
また、職務・勤務地・勤務時間のいずれも限定した働き方である定時スタッフについても、均衡待遇を実現すべく、2009年よりフルタイムスタッフと給与体系を一本化し、同じ職能ランクであれば、フルタイムスタッフでも定時スタッフでも時間当たり賃金はほぼ同額とした。
また、2013年8月、有期契約であった定時スタッフを全て無期契約に切り替えた。同時に、定時スタッフ及びシニアスタッフの賞与規定を新設し、業績を反映して年度末賞与として支給するようにした。

◆1年をかけて全事業所に人事制度の改定についての説明を実施

従来、年功昇給のあった3ランク以上の従業員のおよそ半数が、人事制度改革によって年齢給の廃止により勤続年数では昇給しない状態となった。そこで制度変更の必要性について従業員の理解を得るため、およそ1年をかけて全事業所で説明会を実施した。定時スタッフも無期契約となったことで「同じ職場で働く仲間」との意識が強まり、また、フルタイムスタッフの給与が上がりにくくなったことに対しても理解を得ることができた。

◆透明性の高い職能ランクと柔軟に多様な働き方を選択できる仕組み

【職能ランクの昇格要件】

職能ランクの昇格要件は明確に定められており、最短滞留年数、業績・態度考課、通信教育の受講、資格取得、小論文、筆記試験、面接等から成る。
昇格は頻繁ではなく、数年ごとに1ランク昇格するペースが平均的である。考課については主任やリーダー等直属の上司による1次考課と、支所長や店長等所属長による2次考課がある。

【1~2ランクのフルタイムスタッフは職務・勤務地限定の正社員】

フルタイムスタッフのうち、1~2ランクは主に配達を担当しており、契約上も職務を限定しているが、業務上の必要がある場合は、本人の同意を前提に店舗や本部等一定期間職務内容を変更することができる。担当地区は1~2年ごとに異動があるが、自宅から15km以内の範囲に限定し転居の必要はない。

【3ランク以上のフルタイムスタッフは勤務地限定・非限定を選択可能】

3ランク以上になると職務限定は解除され、どのような仕事に従事するかは人事権の裁量の範囲となる。また、3ランク以上は15km以内の範囲の異動に限られる「勤務地限定型」若しくは転居を伴う異動がある「県内異動型」の2種類から選択することができ、後者には月に3万円の「県内異動給」が手当として支給される。

【定時スタッフは事業所限定、フルタイムスタッフにも移行可能】

定時スタッフは、自宅から近い事業所限定の勤務となり、勤務事業所が閉鎖になった時には近隣事業所や本部への異動をあっせんしている。しかしスタッフ本人の諸事情により異動が難しい場合には、事業所都合で契約を終了するという形をとっている。
また、定時スタッフの職能ランクはフルタイムスタッフのものと同一であり、3ランク以上の者はフルタイムスタッフへの移行が可能である。過去5年間に2名が定時スタッフからフルタイムスタッフに移行している。

【フルタイムスタッフから定時スタッフへの移行も可能】

フルタイムスタッフについては、「チャイルドケア」という通常勤務時間の7時間45分から、6時間又は7時間に短縮して勤務できる制度を有し、子どもが小学校1年生の9月末まで利用が可能である。また、介護を事由とする場合も、「チャイルドケア」と同様の時間数で勤務時間を短縮できる制度がある。しかし、それ以外の条件・期間においても短時間の勤務を希望する場合には、期間を定めて定時スタッフに移行し、再びフルタイムスタッフに戻ることもできる。

2.効果と課題、今後の運用方針

◆人材の定着により、事故やクレームが大きく減少

制度導入の目的どおり、2005年時点で4割を超えていた退職率は1割未満まで低下し、ここ5年は5%ほどで推移している。この数字は卸売業・小売業の平均の離職率(雇用動向調査)である15%と比較しても低い水準である。全職種が無期雇用のため、各スタッフ募集時の応募も増加し、採用力という観点からも効果がみられる。
また、人材が定着する中で半年目研修や1年目研修等の研修やOJTを計画的に行うことができることから教育訓練の効果も現れ、労働災害、配達事業の事故・違反、利用者からのクレームの件数も大きく減少したことにより、安定した事業運営が可能となった。

◆勤務地限定による賃金格差やフルタイム転換の少なさに課題も

一方、残された課題としては、3ランク以上で県内異動可の社員とそれ以外に目立った賃金の違いが発生していることである。同社は現在、異動可・不可の線引きとなっている3ランク以上・15kmに限定せず、全てのランクのスタッフに対し、本人同意の下で、自宅から直線15kmを超えても異動を希望する事業所・職務への異動を命じた場合、1万円の異動給を2015年10月より支給することとしている。従来、1~2ランクのスタッフは職務も場所も限定されていたが、スタッフそれぞれの意向により選択肢を選べることから、仕事に対する意欲の向上につながるよう配慮した結果である。
また、定時スタッフからフルタイムスタッフへの移行が可能であるにも関わらず、移行者が5年間に2名と少ない。これには勤務地・勤務時間のみならず職務が非限定になることへの不安があるのではないかと考えている。優秀なスタッフにはその能力を生かして働いてほしいため、今後は当制度の利用を促進していきたいと思っている。

3.活躍する従業員の声

経理部 資金課課長
A氏

年代 40代 性別 男性
勤続年数 12年
キャリアアップの過程 2003年、配送担当の「専門スタッフ(非正社員)」として入社。2005年上司の声かけにより正社員(当時の「経営スタッフ」)に転換。2008年より営業部門に異動、同年末には経理部門に異動。2013年より課長に。

◆いつ辞めようかと仲間と話していた専門スタッフ時代から正社員へ

32歳の時に配送部門の専門スタッフとして入社し、配達がメインの仕事を担当していた。正社員と同じような仕事をしているのに手取りの給与は半分くらいで、まともに生活のできる金額ではなかったため、仲間と常に「いつ辞めようか」という話をしていた。正社員への転換制度があることは知っており、誰もが正社員になりたがっていたが、当時年間2名程度の転換という狭き門だったため、有能な仲間も諦め、実際に辞めていく者も多かった。
そのような時、2005年に上司から正社員転換の試験を受けてみないかという打診があり、自分と仲間2名の計3名が受かり、正社員(当時の「経営スタッフ」)になることができた。自分に打診があったのは、評価・業績の点数を満たしていたからということである。それまで定職に就いていなかった自分を評価し、持ち上げてくれたことに感謝し、腹を括ってここで頑張ろうという気持ちになれた。

◆2008年の大きな人事制度改革で社内の空気が変わる

その後2005年から2007年までは、同じように配達業務に従事していた。2008年に「専門スタッフ」と「経営スタッフ」が統合されて全員が「フルタイムスタッフ」となり、多くの仲間の待遇が改善されたため、皆が同じように「ここで頑張ろう」と思えたのではないかと思う。「専門スタッフ」でいる間は、ランクアップ幅が限られていたが、「フルタイムスタッフ」になれば頑張り次第でどんどん上にいけると言われ、やる気が強くなった。
また、生活が安定することで気持ちに余裕が生まれ、顧客に対する対応も変わったので、顧客満足度も高くなったのではないかと思う。 仕事内容については、転換当初は大きく変わったことは特になかった。

◆営業から未経験の経理へ

2008年は新規顧客の勧誘等、営業スタッフとしての仕事に従事した。また2008年末からは経理部門に異動。2013年からは課長に就いている。現在は経理部資金課というところにおり、各店舗の現金と預金の推移の管理をし、部下を3名持っている。
現在は立場上、自分が動くより、人に指示して動いてもらうことが多い。これによって、もどかしい思いをすることもあるのだが、言葉の使い方等勉強になることも非常に多い。

◆10年で待遇も大幅に上昇

2015年現在の給与水準を2005年に正社員に転換した時と比べると、職能ランクが年々上がり、職能給のみで額面で7万円くらいの昇給幅である。また職責等級も昇格し、額面で4万6千円くらいの昇給があった。

◆組織への貢献が組合員への貢献へつながる

今後について、自分のキャリアアップというよりも、組織に貢献したいという強い思いがある。自分の仕事が事業の後方支援となり、組合員の役に立つと同時に、事業所の皆のスキルアップにつながれば良い。
自分をここまで引っ張り上げてもらい、充実した暮らしができるようになったのは会社のおかげであり、今後とも貢献していきたいと思っている。