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事例06 エフコープ生活協同組合

事例 06

エフコープ生活協同組合
70歳までの定年延長、短時間勤務者の無期雇用、同一労働同一賃金、働き方の柔軟性の拡充、実力主義による公平な処遇を実践


業種 卸売業、小売業
本社所在地 福岡県
正社員数
(2016年10月1日現在)
フルタイムスタッフ(※1) :1,086名(男性922名、女性164名)
福祉事業専門スタッフ:61名(男性12名、女性49名)
非正規雇用労働者数
(2016年10月1日現在)
定時スタッフ(※2) :884名(男性41名、女性843名)
アルバイター(※3) :623名(男性270名、女性353名)
登録型スタッフ:143名(男性0名、女性143名)
非正規雇用労働者の主な仕事内容 店舗事業のレジ・品出し、宅配事業の商品の積み込み等
介護サービス事業におけるホームヘルパー
取組のポイント ■ 70歳まで働き続けられ、雇い続けられる制度
■ 同一労働同一賃金
■ 時間外労働の削減・年次有給休暇の取得率向上
■ 働き方の柔軟性の拡充
■ 実力主義での公平な運用
■ 生産性の向上

(※1)主として配達業務を担当。フルタイム勤務(年間所定労働時間:7時間45分×254日)。無期契約、 月給制。賞与・退職金あり。
(※2)レジや品出し、事務作業等に職務を限定して担当。パートタイム勤務(週15時間以上35時間未満)。原則として転勤を伴う異動はない。無期契約、時給制。年度末賞与あり。退職金なし(退職慰労金制度あり)。
(※3)学生、3ヵ月以内、週15時間未満の契約勤務。

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 同生協は、1983年4月に福岡県内の5つの地域生協が合同して誕生した生活協同組合であり、福岡県内で約48万名の組合員が加入する。店舗及び支所は32か所、介護事業サービス事業所は9か所あり、安全で安心な食品、衣料や雑貨等の日用品、共済や保険、介護サービスや子育て支援等、様々な商品やサービスを提供している。
 人事労務政策や人事諸制度については、近江商人の「売り手よし、買い手よし、世間よし」の「三方よし」の考え方に習い、「職員、経営、社会」のそれぞれが「元気になる」ことを重視し、新しく創るという発想で取り組んでいる。

1.取組の内容

◆「日本の雇用モデル」を提案し、それを実践

 同生協は、これからの「日本の雇用モデル」を以下の内容で提案し、それを実践している。

1.70歳まで働き続けられ、雇い続けられる雇用システム
高年齢者の心身の健康状況、労働不足の状況、年金財政の状況等を踏まえ、希望する者が70歳くらいまでは、働き続けられ、かつ、雇い続けられる雇用システムを整えていく。
2.雇用形態に関わらず、同一の評価基準
同一労働同一賃金の実現は、同一労働であるか否かを測るところから始まる。したがって、「労働」を評価する基準については、雇用形態の違いに関わらず、統一しておく必要がある。
3.59歳までの賃金は、職務給と職能給で構成
同一労働同一賃金は、一般的には職務給で実現するものだが、日本では、欧米諸国のような生涯複数転職がまだ主流にはなっておらず、労働組合も産業別に組織されていないため、59歳までは職能給との組み合わせが望ましいと考える。
4.60歳以降の賃金は、職務給のみで構成
60歳以降は、労働者にとっては、短時間勤務など柔軟な働き方の必要性が増すが、使用者にとっては、コストとのバランスが重要性を増す。この両者を実現するためにも、職務給のみで構成することが望ましいと考える。
5.時間外労働を削減し、年次有給休暇の取得率を向上
いのちや健康を守り、健全な成長を保障するためにも、国内の産業を健全に発展させるためにも、日本における長時間労働の実態の是正は、急務であり、年次有給休暇の取得率の改善とあわせて、取り組みを進めていく必要がある。
6.働き方の柔軟性を拡充
育児や介護をしながらでも働き続けられる環境整備は、少子・高齢社会の進行を考えると、急務の課題である。長時間労働の是正と合わせ、フレックスタイム制や短時間勤務制度など、事業にあった内容で、環境を整えていく必要がある。
7.昇進・昇格・昇給については、制度、運用ともに、実力主義で公平
昇進・昇格・昇給については、他社からの転職者が不利にならない、実力主義による公平な制度・運用を行うことが重要です。日本における「労働者の自由度」や「雇用の流動性」を高めていくうえで、今後はさらに重要性が増すと考える。
8.能力開発・スキルアップを支援
日本では、正社員の非正規化が進んでいく過程において、非正社員の人材育成が遅れ、本人にとっても社会全体にとっても大きな損失となっている。格差の拡大、低所得者の拡大・継承を断ち切るための、大局的な視点での支援が必要である。
9.福利厚生を含め、同一処遇とし、違いを設ける場合は、その理由の明確化
福利厚生制度についても、雇用形態の違いで、処遇に差を設けることは適切ではない。差を設ける場合は、少なくともその理由を明確にしておくことが必要である。
10.同一労働同一賃金の実施と合わせ、生産性を上げ、処遇の向上を追及
同一労働同一賃金は、公平性を担保するにすぎないため、その実現に向けては、生産性を上げ、処遇の向上を追求することを労使共通の目標として、取り組む必要がある。

◆70歳までの定年延長・選択定年制度

 2017年4月より、約2,000人の職員(フルタイムスタッフ、福祉事業専門スタッフ、定時スタッフ)を対象に、定年を65歳から70歳に延長した。
 職員の健康状態や生活状況の多様化に対応できるよう、短時間勤務への移行制度を整備している。また、60歳以降の賃金制度は、職務給のみで構成し、仕事とコストの均衡を保てるようにしている。
 50歳以降70歳までの期間、年間で指定する日をもって退職する場合は、定年退職として取り扱う選択定年制度が整備されている。

◆同一労働同一賃金

 フルタイムスタッフ、福祉事業専門スタッフ、定時スタッフについては、同一評価制度・同一賃金制度で運用している。アルバイターは、個別契約となるため、その範囲を「学生」「3ヵ月以内の短期契約者」「週15時間未満の短時間契約者」に絞り込んでいる。


同一賃金の考え方


 59歳までの賃金は、担当する「職務の大きさ」に応じた職務評価により決定する職務給と、「スタッフの能力の高さ」に応じた人事評価により決定する職能給で構成し、60歳以上は、職務給のみで構成している。
 フルタイムスタッフ、福祉事業専門スタッフ、定時スタッフの評価制度は、雇用形態の違いに関わらず、同じ評価基準で運用している。評価の対象は、「仕事の大きさ」と「スタッフの能力の高さ」で行い、この二つを共通の評価基準で測定し、それを共通の賃金制度に反映させるようにしている。


給与の考え方


◆同一福利厚生制度

 フルタイムスタッフ、福祉事業専門スタッフ、定時スタッフの福利厚生諸制度については、基本的には、同じ内容を適用している。
 配偶者出産休暇や子育て支援手当(日生協健康保険組合に加入するスタッフを対象に1子につき5,000円)についても、雇用形態で差をつけることに納得性がないため、同じ内容で適用している。
 差を設けることに納得性があるもののみ、差を設けている。例えば、永年勤続表彰制度では、勤続年数に応じて、連続休暇と表彰金を付与している。休暇の付与日数は、雇用形態にかかわらず同じだが、表彰金の額については、永年勤続表彰の趣旨を踏まえ、フルタイム勤務と定時勤務で2:1の差を設けている。


福利厚生一覧


◆労働時間・休日・休暇

(1)フレックスタイム制度

 宅配業務など勤務時間に制約のあるスタッフを除き、フレックスタイム制度を導入・適用している。

(2)チャイルドケアタイム制度

 子どもが小学1年生の9月まで、所定労働時間(1日7時間45分)を6時間または7時間に短縮することができる。

(3)雇用形態間の移行制度

 職能等級3ランク以上または60歳以上の「フルタイムスタッフと福祉事業専門スタッフ」は、育児や介護等の理由により、定時スタッフに移行し、またいつでも戻ることができる。評価制度、賃金制度、福利厚生制度が統一されているため、移行を円滑に行うことができる。

(4)年次有給休暇の計画的付与

 2015年度より、スタッフ全員が期首に5日の年次有給休暇の取得計画を立て、取得することにより、取得率の底上げをはかるようにした。2020年度までにすべてのスタッフが70%以上取得している状況をめざしている。


労働時間・休暇に関する実績


◆昇進・昇格・昇給

 実力主義による公平な昇進・昇格・昇給を行っている。
 たとえば、新卒採用と中途採用では、下表のとおり、採用時の職能給の格付けに1ランクの差を設けているが、採用後、2ランク、3ランクには、最短1年で昇格できるようになっている。


採用時の等級位置づけ



 また、採用後の人事異動についても、新卒採用者と中途採用者で違いを設けておらず、職務内容は、職務給に連動しているため、中途採用者にとって、不利にならない公平な処遇となっている。
 宅配事業を中心に成長してきたため、フルタイムスタッフについては、男性の割合が多くなっている。しかしながら、近年は、技術革新による労働負荷の軽減や業種の拡大もあいまって、新卒採用については、ほぼ男女同数での採用を行うことができている。
 また、実力主義による人事配置により、女性の幹部登用も進み始めている。


女性の管理職・役職者


2.効果と課題、今後の計画

◆人材の定着による職場運営の安定化

 制度改定の目的どおり、2006年時点で、15%を超えていた退職率は5~6%まで低下して推移している。この数字は卸売業・小売業の平均の 離職率(雇用動向調査)である15%と比較しても低い水準である。全職種が無期雇用のため、各スタッフ募集時の応募も増加し、採用力という観点からも効果がみられる。
 人事諸制度の改定を進めることにより、中途採用者の採用力や定着率が向上し、年齢構成を改善させることができた。
 2007年時点では、それまでの10数年間、新卒者の採用を抑えていたこともあり、35歳以下のスタッフが極めて少ないいびつな年齢構成となっていた。その後、8年経過した2015年には、40歳前後に若干の少なさはあるものの、どの年齢においてもほぼ20~30名のスタッフを確保した構成にすることができた。
 これは、スタッフの定着率の改善と採用力の向上により、新卒採用と中途採用の人数を計画的に増やすことができたためで、これにより、計画的な役職の世代間継承・ジョブローテーションを進めることが可能となった。
 また、人材が定着する中で6ヵ月目研修や1年目研修等のフォローアップ研修やOJTを計画的に行うことができることから教育訓練の効果も現れ、労働災害、配達事業の事故・違反の件数が大きく減少するなど職場運営が安定し、商品利用者の満足度も高まっている。

(1)職場運営

(2)宅配利用者の満足度(利用者への満足度調査より)



◆経常剰余金の向上とフルタイムスタッフの年収の向上

 「経常剰余金」については、2014年度以降、改善傾向にある。また、それに伴って、「フルタイムスタッフの年収(ベースアップと賞与の上昇分)」も上昇させることが可能となっている。


経営状況の推移



◆70歳までの定年延長に伴うさらなる環境整備と意識改革

 70歳までの定年延長については、スタッフの健康状態や生活の状況の変化を踏まえた対応が必要である。使用者側は、働き方の柔軟性への対応のほか、健康増進の取り組みやリスク軽減などの施策についても整備していく必要がある。また、スタッフにおいても、70歳雇用を前提に、仕事への向き合い方や立ち振る舞い方などを含めて、意識改革が必要である。

◆雇用問題においても社会規範づくりの一翼を担う

 この間、生協は、食品添加物など、様々な食品の安全性に関する規範づくりに貢献してきたが、今後は、「雇用の問題」についても、社会規範づくりの一翼を担えるように努力していくことを方針化している。
 現在は、子会社を7社保有しているが、その人事諸制度についても可能な範囲で統一していく方向で論議を進めている。
 また、コープ九州事業連合(九州・沖縄の8会員生協で構成)に参加し、事業を行っているが、そのコープ九州事業連合の内局においても、可能な範囲で統一していく方向で論議を進めている。

3.活躍する従業員の声

生活協同組合連合会
コープ九州事業連合(出向)
渡邊 尚美氏

年代 50代 性別 女性
勤続年数 15年
キャリアアップの過程 2002年 アルバイターとして入協
2007年 定時スタッフ
2011年 フルタイムスタッフ
当初は共同購入の班を利用する子育て中の組合員であった。組合員活動での広報のお手伝いをきっかけにアルバイターとなり、その後、より就労時間の長い定時スタッフに移行した。
上司の勧めもあり、正規職員であるフルタイムスタッフへ雇用形態を移行するための試験を受け、2011年にフルタイムスタッフとなった。現在は、生活協同組合連合会コープ九州事業連合会に出向し、月刊誌「クリム」の制作業務を担っている。

◆入協のきっかけ

 結婚前は広告関係の仕事をしていたが、結婚を機に仕事と家庭の両立が難しいと感じ仕事を辞めた。出産、育児で買い物に行くことも少なくなり、生協を利用しようと思い、近所の方に誘われてエフコープに加入し組合員となった。
 組合員になった頃、共同購入の班(グループ)で、グループの班長、また、地区エリア委員長になり、エリアの組合員のために組合員活動の一環として、ニュース広報誌を作成していた。支所長から、支所のためにニュースを書いてくれないかと誘いがあり、1週間に4時間のアルバイターとして入協し、カタログの商品を案内する広報誌を作成していた。

◆アルバイターから定時スタッフへ

 支所長から定時スタッフへ移行の話があり、その後約4年間、定時スタッフとして働いていた。支所ニュースの発行と組合員活動担当として組合員をサポートしながら地域と生協をつなぐ仕事をしていた。仕事量が増えるに伴い勤務時間が7時間になった。定時スタッフになり、仕事の幅も広がり、一時金ももらえるようになった。

◆定時スタッフからフルタイムスタッフへ

 上司の勧めにより、フルタイムスタッフへの試験を受けた。一般常識問題と小論文、面接を通過し、合格。フルタイムスタッフへ移行してから、別の支所に異動になると同時に、職種も変わり、推進担当として組合員の加入や共済の案内等を約2年間担当した。そして現在、生活協同組合連合会コープ九州事業連合へ出向、5年目を迎えた。
 生協のカタログを制作する部署で月刊誌の発行に携わり、結婚前の仕事と同じようなことをしながら勉強させてもらえる環境があり、良かったと思っている。
 また、仕事をすることによって、社会との関わりが持て、たくさんの仲間ができ、多くを学ぶことができているので感謝している。

◆評価制度について

 人事面接は、年に2回行われている。評価結果に対して上司からフィードバックがあり、評価は公正に行われていると感じている。また、上司と一緒に目標を立て、目標達成に向かって業務を行うことが、非常にモチベーション向上に繋がっている。

◆70歳までの定年延長について

 定年延長については、大歓迎である。心身ともに健康なときはやはり仕事をしていたい。