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事例08 社会福祉法人春陽福祉協会

事例 08

社会福祉法人春陽福祉協会
非正社員から実務経験を積ませて、正社員転換を図る。
有期実習型訓練を活用した教育で、優秀な人材確保を実現。

業種 医療・福祉
本社所在地 新潟県
正社員数
(平成27年6月1日現在)
正職員:62名(男性15名、女性47名)
非正規雇用労働者数
(平成27年6月1日現在)
臨時職員(※1) :25名(男性8名、女性17名)
パート(※2) :7名(男性1名、女性6名)
非正規雇用労働者の主な仕事内容 特別養護老人ホーム・デイサービス・ショートステイにおける施設介護・通所介護・居宅介護支援
取組のポイント ■ 正職員転換を制度化し、資格取得者について「正職員カリキュラム」で育成の上で正職員に転換
⇒正職員への登用に係る不公平感が解消され、公平なキャリアアップ機会を実現
⇒優秀な人材の確保と利用者の満足度アップが実現
■ 研修の実施と資格取得の受験料を負担
⇒職員のキャリアアップへの意欲向上と能力向上に寄与

(※1) 1年更新の有期雇用。夜勤を含むフルタイム勤務。給与は月給制で、賞与や退職金も支払われる。賞与については、正職員と同じ支給率である。職務内容は正職員とほぼ同じく介護業務であるが、資格の有無により担当範囲が異なる。
(※2) 1年更新の有期雇用。臨時職員よりも短時間・短日数勤務の雇用形態。賞与(1か月分相当)も支払われる。退職金はなし。

PDFデータ

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同会は、平成5年に介護老人福祉施設「まつはま園」を開園。特別養護老人ホーム、ショートステイ、デイサービスセンター、居宅介護支援事業所を運営している。平成21年からは、新たにサテライト型地域密着型介護老人福祉施設(※3) 「新屋敷まつはま園」を開設。平成27年6月現在、「まつはま園」は80床、「新屋敷まつはま園」は40床の規模で運営している。
特別養護老人ホームやショートステイの稼働率も高く、利用者の満足度も高い。地域密着型介護老人福祉施設(※4) (ユニット型個室)を取り入れ、個々の状態に応じた生活支援を行っている。ユニット型個室にすることで、入所者の傍らに寄り添う時間が増え、要介護5の方に変化がみられたり、笑顔が増えたりすることで職員のやりがいにもつながっている。

(※3) 同一法人により設置され当該施設に対する支援機能を有する特別養護老人ホームと密接な連携を確保しつつ、その施設とは別の場所で運営される地域密着型特別養護老人ホームのこと。
(※4) 利用者が可能な限り自立した日常生活を送ることができるよう、入所定員30名未満の介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)が、常に介護が必要な方の入所を受け入れ、入浴や食事等の日常生活上の支援や、機能訓練、療養上の世話等を提供する施設のこと。

1.取組の内容

◆非正規職員の資格取得者を育成し、正職員に転換させることで優秀な人材確保を実現

【介護福祉士資格保有等の要件を満たす者が「正職員カリキュラム」を受講の上、上司の評価の下で正職員に転換】

平成5年4月の開園当初は、100床に対して正職員40名の少人数体制で運営していた。その後、介護保険制度がスタートして措置から契約となり、サービス業としての自覚が生まれたこと、また少人数ケアにより入所者の表情に変化がみられるようになったことから、平成18年に、今までの集団ケアから個別ケア(ユニットケア)に転換した。それに伴い、職員を増員する必要が生じ、非正規職員の採用をはじめた。非正規職員採用を開始した当初は、正職員への転換が制度化されておらず、正職員の退職者が出た場合のみ、人事考課制度で評価された非正規職員を正職員へ転換させていた。
非正規職員の人事考課は正職員同様に行っており、全体的な勤務態度のほか、情意考課、能力考課、成績考課を直属の係長と施設長とで行い、その結果は毎年1月に行われる昇給の際に考慮されていた。
平成25年度にキャリアアップ助成金を活用して、正職員転換を制度化した。
正職員転換の要件は、①介護福祉士の資格を取得していること、②人事考課による評価が優れていること、③217時間の「正職員カリキュラム」を受講したこと、となっている。「正職員カリキュラム」は、キャリアアップ助成金の有期実習型訓練を実施するに当たって新たに作成したものであり、190時間の実習(OJT)と27時間の座学(Off-JT)から構成されている。

正職員カリキュラムの内容

教科名 時間
実習(OJT) 安全衛生 2
社会福祉における顧客満足度の捉え方 34
介護における顧客満足度の捉え方 128
医学と医療の基礎 4
リハビリテーション 2
介護実習(直接的援助の実習) 20
OJT小計 190
座学等(Off-JT) 学科 社会福祉概論 2
介護概論 2
医学と医療の基礎 2
老人福祉論 2
リハビリテーション 2
社会福祉援助、生活援助 2
職業能力評価 4
実技 接客接遇 2
書類作成と情報活用 2
社会福祉援助技術 2
生活援助技術 1
介護実技(所内実習) 4
Off-JT小計 27
合計 217

これらの要件を満たした者に対して、ユニットリーダーの評価と全フロアの課長・部長の評価が加えられ、施設長が正職員転換についての最終決定を下す。最終決定で不合格になった場合、施設長が面接し、足りない部分を伝えている。
なお、介護福祉士の資格取得には、最低3年の実務経験が必要となる。そのため無資格者の場合は、同会で3年間勤務しつつ介護福祉士資格を取得し、その後「正職員カリキュラム」を受講することとしている。
資格保有者は、非正規職員として3か月間勤務したのちに「正職員カリキュラム」を受講し、転換する。
正職員転換制度を整備していることについては、採用面接の際にも伝えているが、毎年4月第1金曜日に行われる全職員研修で説明し、周知を図っている。また、正職員転換制度を盛り込んだ就業規則は、誰でも見られるように各部署でファイルに保管している。
キャリアアップ助成金を活用してからの臨時職員から正職員への転換実績は、平成25年度は3名(全員女性で20代が2名、30代が1名)、平成26年度が4名(30代男性が2名、40代が男女それぞれ1名で計2名)となっている。パートも正職員転換が可能であるが、希望者がいないため、これまで転換の実績はない。

【正職員になると、無期雇用となり、各種手当を支給】

正職員転換後は、国家公務員の給与規定に沿った給与体系とし、月給に学歴と職歴経験による加算をしている。年収は、学歴や前職(同職種か他職種かにより加算割合が異なる)の経験年数により計算し18~54万円上昇する(月額では1~3万円の上昇)。また各種手当(扶養手当、役職手当等)も支給され、慶弔休暇も取得できるようになる。職務としては、通常の介護業務のほか、後輩の指導、臨時職員やパートへの業務振り分け等も任されることになる。

各雇用区分と正職員転換の関係

◆職員の資格取得費用を負担し、月1回の研修を実施

前述のとおり、正職員転換の要件となる「正職員カリキュラム」は、キャリアアップ助成金の有期実習型訓練に則って作成したものである。臨時職員は、このカリキュラムを通じてOJTとOff-JTで正職員に必要な知識と技術を身につける。
また、毎月1回、全職員を対象とした研修を行っている。外部講師を呼ぶ場合もあれば、正職員が講師をする場合もある。内容は、理学療法士による訓練指導や歯科衛生士による指導、薬剤師による薬の研修や、看取り、感染症予防等、職員の能力を向上させるものとなっている。平成27年度より、研修を臨時職員やパートを含む全職員に義務付け、勤務等で欠席した場合は後日レジュメを読んで感想文を書かせることとした。
ほかにも全職員に対して、各種資格取得のための受験費用を負担している。介護福祉士の受験費用は、一次試験は職員が自費で支払うが、二次試験は出張扱いとし、交通費と前泊が必要な場合の宿泊費を負担している。ケアマネジャー等、更新が必要となる資格についても、研修の受講料を負担している。
また、新潟県社会福祉協議会主催の研修(経験年数別の研修や、認知症ケア・対応研修やターミナルケア研修等のテーマ別研修)は全職員について出張扱いとして、受講費及び交通費を負担し、人材育成に力を注いでいる。

2.効果と課題、今後の運用方針

◆非正規職員の能力向上を図り、優秀な人材を確保することで、利用者の満足度向上を実現

【正職員転換制度を整備したことで、公平なキャリアアップ機会を実現】

キャリアアップ助成金を活用する前の正職員転換については、内規に明記していたものの、明確な転換基準はなかった。そのため職員から「なぜあの人が正職員に転換したのか理解できない」といった不満の声が上がっていた。
職員の不公平感を解消するべく転換基準を検討していたところ、ジョブ・カードセンターの担当者の紹介を受け、キャリアアップ助成金を知った。担当者からはこのほか、ジョブ・カード作成のキャリアコンサルティングや訓練カリキュラム作成についての助言を得た。
平成25年に正職員転換制度を整備し、同時に同助成金を申請した。これにより、正職員に登用する場合の明確な基準や正職員へのキャリアパスを示すことができ、職員の不公平感が解消され、公平なキャリアアップの機会を実現することができた。

【利用者からの高評価を実現】

介護業界は新卒の人材確保が難しく、慢性的な人材不足という課題を抱えている。他施設では、当座の人材確保のために未経験・無資格者であっても正職員として採用することが多い。
しかし同会は、未経験・未資格者であっても臨時職員として人材を採用し、介護福祉士の資格を取得したのちに正職員へ転換させるという体制をとっている。同会の正職員全員が有資格者であることは、利用者や利用者家族の安心感につながっており、同会の施設稼働率は非常に高い(ほぼ100%)。退職する職員がそれほど多くないので、良い人材、ベテランの職員で入所者に対応することができ、利用者の満足度も高く、職員も高い評価を得ている。このことは、職員の自信や仕事に対する意欲向上につながっている。

◆OJTや研修を通じて人材育成し、積極的な正職員転換を推進

今後もOJTや研修を通じて人材育成を行い、優秀な人材を確保し、定着させるような体制づくりを推進したいと考えている。
パートについても、正職員への転換を望む職員はこれまではいなかったものの、今後は転換意向があれば積極的に対応する予定である。
若年層の人材獲得が困難であるが、利用者から感謝される、やりがいのある職業であるということをアピールして人材確保に努めていきたい。例えば、小学生・中学生等がボランティアや職業体験等で訪問した時に入所者から「ありがとう」と感謝されるなど、そのことが心に残って将来この職業に就きたいと思ってもらえるような職場・職業をアピールしていきたい。

3.活躍する従業員の声

まつはま園
特養 介護職員 藤本寛氏

年代 30代 性別 男性
勤続年数 5年
キャリアアップの過程 平成22年に臨時職員として入職。他業界からの転職。勤続4年を経て介護福祉士の資格を取得し、正職員カリキュラムを受講、正職員に転換。

◆臨時職員として採用されても正職員になれることを信じて入職

平成22年3月、求職時にハローワークでヘルパー研修を勧められたことを一つのきっかけに、他業界から転職した。採用当初は臨時職員としての採用であったが、採用面接時に、無資格であっても3年以上の勤務経験を積み、資格を取得すれば正職員への道があると知り、同会で働くことを決めた。
事前にホームヘルパー2級の資格を取り、実習を経験していたものの、実際に勤務すると利用者とのコミュニケーション等に戸惑いを覚えた。ただ、慣れてくると、マスコミ等で言われているほどつらくなく、入職して約3年を経たころ、ようやく一通りの業務がこなせるようになった。それでも、入所者の体調不良時の対応については苦労した。
約1年間、過去問等を勉強して介護福祉士の試験に合格した。資格取得後に、同会から「正職員カリキュラムを受講しないか」と声をかけられ、カリキュラム受講後、正職員に転換した。

◆リーダー的仕事も増え、キャリアアップへ意欲

正職員転換後は、施設で行われる花見やぶどう狩り、敬老会等のイベントでリーダーを任されるようになった。また処遇面では、給与が上がり、生活も安定し、安心して働くことができるようになった。今後は、パートや臨時職員に指導する機会が増えていくと思われる。先輩職員を見習いつつ、ケアマネジャーの資格取得等にも積極的にチャレンジして、ユニットリーダーを目指して頑張っていきたい。