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事例13 株式会社亀屋万年堂グループ

事例 13

株式会社亀屋万年堂グループ
正社員への積極的転換で、優秀な人材が定着。風通しの良い社風に加え、全従業員対象のコミュニケーションを促す仕組みづくりにより従業員満足度も向上。

業種 製造業
本社所在地 東京都
正社員数
(平成27年12月31日現在)
正社員:約160名(男性約59名、女性約101名)
非正規雇用労働者数
(平成27年12月31日現在)
契約社員(※1) :65名(男性8名、女性57名)
嘱託社員・パート(※2) :18名(男性7名、女性11名)
アルバイト(※3) :233名(男性17名、女性216名)
非正規雇用労働者の主な仕事内容 店舗での販売、製造、事務
取組のポイント ■ 正社員登用制度を規定化し、社内LANで周知
⇒優秀な従業員の確保と契約社員の意欲向上へ
■ 全従業員対象の従業員満足度調査を実施
⇒全従業員が満足する会社となるための指針に活用

(※1) 契約期間は原則1年間。6~8時間勤務(社会保険加入対象)、奨励金あり、退職金なし。
(※2) 定年後の再雇用。嘱託社員は賞与なし、退職金なし。パートは社会保険の加入対象にはならない。
(※3) アルバイトは短時間勤務、原則社会保険なし。

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同社は創業77年を迎える和菓子店の老舗である。4つのグループ会社を保有し、東京・神奈川を中心に60店舗、大手スーパーにも商品を提供している。主力商品のナボナは、元巨人軍王選手のコマーシャルの効果もあり、放送当時絶大な人気を博し、今もなお、和洋折衷の代表商品として愛され続けている。従業員の約6割が非正社員であり、非正社員の9割以上を女性が占めている。主な仕事内容は、店舗での販売(営業部門)と横浜事業所での和菓子の製造に関連する業務(製造部門)である。

1.取組の内容

◆アルバイトから契約社員へ、契約社員から正社員へと積極的に転換を推進

【意欲と実力があるアルバイトを契約社員へ転換】

同社では、従業員の約6割が非正社員であり、仕事内容は営業部門と製造部門に分かれている。アルバイトからの契約社員への転換は、特に規定はなく、上司からの推薦や本人の立候補により面接を経てなされている。契約社員になると、意欲と実力があれば積極的に店長へ登用しており、契約社員65名のうち、現在16名が店長を任されている。

【正社員登用制度を導入し、社内LANと口頭で周知】

2013年9月に契約社員から正社員への登用制度を導入した。毎年2月に募集し、4月16日より運用している。正社員転換の条件は、①勤続5年以上の契約社員、②上長の推薦等で役員・管理部門による面接にて最終決定する。面接では、将来は管理職やリーダーとして期待できる人物であるかということを重視している。意欲と実力を兼ねた契約社員を正社員に転換することで、より責任のある仕事に従事してもらい、将来は管理職やリーダーとして活躍し、利益貢献できる人材になってほしいと会社側も期待している。
正社員登用制度については、就業規則に明示し、社内LANで全従業員がいつでも見ることができるほか、応募時期については期限があるため、見逃さないように上長が口頭で周知している。

【正社員転換後は、指導的役割を担うことを期待】

正社員転換後は正社員の等級制度が適用されるが、一律に格付けするのではなく、個人の能力や経験に応じて、これまでの評価を基に等級に当てはめ、格付けをしている。正社員になると、責任の範囲や仕事の幅が広がり、人材を教育していく立場になることがこれまで以上に求められるようになる。

◆職務内容に応じた処遇を実現

【契約社員には奨励金を支給】

契約社員でも店長・リーダーになると、店長・リーダー手当が支給される。正社員と同様に、年に2回目標を設定し、その査定が奨励金に反映される。達成度、能力、勤務態度、意欲や姿勢、実績等を勘案して支給額が決定する。支給基準も正社員に導入している職能等級制度に準じて評価される。評価等級は一律ではなく、個々人の年齢や仕事の幅により考慮されている。
店長・リーダー以外の契約社員へは、勤務時間に応じて奨励金が年2回支給される。

【アルバイトの職務等級制度を秋から導入】

同社には永年勤続(勤続10年、25年)で表彰されるような優秀な契約社員・アルバイトが多くいる。しかし、家庭との両立等の理由で勤務時間が限られ、契約社員への転換が難しいアルバイトも多い。そういった実力のあるアルバイトの意欲や能力を適切に評価するためにアルバイトを対象とした職務等級制度を2015年秋からまずは営業部門に導入した。
現在、アルバイトの時給単価は、店舗や場所によって違うが、部門ごとの裁量に任されている部分を、明確な評価制度を導入することにより、透明性を高め、従業員の満足度につなげることで、一層の意欲向上を期待している。

◆風通しの良い社風を支えるコミュニケーションを促す仕組みづくり

【CIA提案制度】

同社独自の取組に、CIA提案制度(Challenge Innovation Action提案制度)がある。全従業員対象の会社への提案制度で、従業員の「ふとした思いつき」を業務に活かしていこうというもので、担当の枠を越えた発想を期待して導入している。
それぞれの提案内容に関連する部署の部長が内容を確認後、社長の元に届き、実現するための課題や質問等の具体的な返答がなされて、提案者に戻される。提案内容の実現度により全ての提案に対して報奨金の付与がなされ、関連部署の会議で検討事項として紹介されることもある。前述の正社員転換制度も、CIA提案制度を利用して契約社員から声が上がったものが、提案から1年後に制度として実現したものであった。
このほかにも、育児や家族の転勤等によって1度は退職した従業員がまた同社で働くことを支援する「ウェルカムバック制度」(2013年10月からスタート)等、従業員の提案から実現したものはいくつかあり、同社の風通しの良い社風を支えている制度の一つと言える。

【様々なプロジェクトチームの発足】

前述のCIA提案制度で提案されたものが、社内プロジェクトとして立ち上がることもある。プロジェクトは雇用形態にかかわらず全従業員が対象で、適任と思われる従業員に声がかかる。2015年4月に日本初の生ブッセ専門店として、表参道にオープンした店舗も、若手社員の小さな提案からプロジェクトチームへと発展し、実現したものである。担当部門や雇用形態の垣根を越えた全社的なチーム構成により、社内のコミュニケーションの活性化に寄与している。

◆充実した研修と育成制度で全体のレベルアップを図る

【雇用形態に関わらず、社内研修を実施】

同社では、営業部門のアルバイト、契約社員にも、勤続時期によって適切な研修を設け、より意欲的に従事できるよう研修計画を立てている。入社時研修は隔月開催で、入社後半年以内の受講が必須となっている。入社時研修では、会社の理念、各部署の協力体制、接客・商品についての基礎知識等を丁寧に説明している。「アルバイトにもしっかり教育してくれる」、「期待してくれている」と前向きに受け止める従業員が多く、研修の効果を実感している。そのため、営業部門だけでなく、製造部門の従業員についても、同様の研修体系を導入すべく検討を考えている。

【全従業員を対象に自己啓発のための講座受講を全額補助】

自己啓発のための講座受講についても、管理職の推奨コメントや社長の手書きメッセージを添えて、積極的に薦めている。136種類の講座が受講可能で、内容は英会話、ファイナンシャルプランナー、販売士等の一般教養等多岐にわたる。この中から自由に選び、修了した場合に、費用の全額を会社が負担している。外国のお客様に商品の良さを伝えられず残念だと感じていた従業員が英会話を受講するなど、興味と仕事を結びつけ、楽しみながら選んでいるようだ。職場の仲間内で、各々興味のある講座を同時期にはじめ、お互いに励まし合って修了するなど、チームワークの一助にもなっている。この制度をきっかけに従業員の向上心も高まり、制度導入後の「従業員満足度調査」でも高い評価を得ている。

◆全従業員対象の従業員満足度調査を年に1度実施

同社では、従業員の声を直接収集し、従業員満足度を追求する目的で毎年「従業員満足度調査」を実施している。アルバイトも含めた1年以上勤務する全従業員が調査対象である。同社は、人を笑顔にさせるお菓子を販売することを理念として掲げており、そこで働く社員も健全で笑顔であらねばならないという意識が強く、職場環境や従業員の充実度・満足度を上げることに特に力を入れている。

2.効果と課題、今後の運用方針

◆正社員転換した正社員の意欲的な取り組み方から良い影響が社内に広がっている

正社員登用制度導入から年月は浅いものの、その効果は非常に大きいと実感している。立場が安定し待遇も良くなった従業員は、これまで以上の情熱と責任感を持って従事しており、その真摯な態度に周りの社員たちも大いに触発されている。非正規雇用の従業員の離職率は2009年の19%から2014年に7%と下がってきており、今後、定期的に行われている従業員満足度調査にも効果が表れてくることが期待できる状況である。

◆国の助成金等を指針として取組を進め、社員の満足度がより高い会社へ

同社が正社員登用制度を検討していた時期に偶然「キャリアアップ助成金」の存在を知り、活用申請するに至ったが、これにより、国が企業に対して様々な支援をしていることを知った。そこで得た情報を基に、現在は、従業員が育児休業から復帰しやすい仕組みを整備するため、「両立支援等助成金」(※4) に対応する面接シートの作成等に取り組んでいるところである。申請の手続きのために、専門家(復帰プランナー)のアドバイスを受けることができ、学ぶことも多い。国が助成金を設け、推奨している事項に沿って社内制度を改善していくことは、社員にとって気持ちの良い企業への指針になると感じている。

(※4) 従業員の仕事と家庭の両立支援や女性が活躍できる環境整備に取り組む事業主に対する助成金制度

3.活躍する従業員の声

直販部 東急・港北ブロック
ブロック長 櫻井幸恵氏

年代 40代 性別 女性
勤続年数 13年
キャリアアップの過程 2002年にアルバイトとして入社、翌年契約社員に転換する。店長を9年務めた頃、社内に正社員登用制度が発足。第1期生として正社員転換を果たす。現在は8店舗を統括するブロック長職に就いている。

◆子どもの頃から今も変わらず大好きな亀屋万年堂のお菓子を販売したかった

入社時は週に3日のアルバイトだったが、働きぶりが評価され、1年後には上司の推薦を受け契約社員になった。社会人経験がないまま家庭に入ったため、社会貢献したいという気持ちが人一倍強く、子どもの頃から大好きな亀屋万年堂のお菓子を販売できるということが嬉しくて、毎日弾む気持ちで店頭に立っていた。その前向きな姿勢は、お客様はもちろん、上司からも高く評価され、所属店の店長が退職する折に期せずして店長に抜擢された。

◆研修インストラクターを務めた経験が更なるキャリアアップへの原動力に

店長になると、店舗が入っているテナントの接遇研修に参加する機会を得た。かねてより、お客様の期待を超えた感動の接客を、と心がけていたが、改めて、接遇教育の重要性を再認識し、年に3回(※5) 設定する目標に「社内研修をしたい」と記した。契約社員が社員研修をすることは前例がなかったが、当時の研修等を主管していたCS(Customer Satisfaction=顧客満足)担当チーフが「立場に関わらず良いものは取り入れるべき」と強く後押しし、実現した。企画から資料作成、講師まで全てを担当した研修はほかの部署からも要請を受け、研修期間は2年に及んだ。教え子である当時の新入社員は、現在店長として活躍している。

(※5) 現在の評価制度では、目標設定は年に2回であるが、この当時は3回設定することになっていた。

◆正社員登用制度の制定により念願の正社員に

正社員になりたいという気持ちは、アルバイトで入社した当時からずっと持ち続けていた。2013年に正社員登用制度が社内で制度化され、上司の推薦を受け、正社員転換の1期生となった。試験は面接のみで、社員一丸となって同じ方向を向いてこの会社を盛り上げていきたいという、入社当時からずっと温め続けている気持ちを伝えた。

◆正社員転換によって仕事の幅が広がり、難しさとともに意欲も向上

正社員に転換後は、すぐにブロック長となった。これまでは主にお客様と接してきたが、現在は8店舗の統括ブロック長として、店長やスタッフに接客指導等を行っている。各店舗を巡回して、従業員が気持ち良く仕事ができるよう、お客様へより良いサービスを提供するにはどう改善していくべきかを常に考えている。店長の時は、毎日顔を合わせる気心の知れたスタッフとの意思疎通であったが、現在は8店舗45名程度のスタッフを抱えているため、信頼関係の構築の難しさを感じている。言い回しや受け取り方次第で伝わり方が違い、こちらの提案を受け入れてもらえるかも変わってくるので、相手に寄り添った言葉かけを学んでいるところである。

◆亀屋万年堂のお菓子が永年愛され続けるために

アルバイトの時から大好きな亀屋万年堂のお菓子が100年、200年と顧客に愛され続けられるようにとの思いがある。数あるお店の中から選んでいただいたお客様に感謝し、その御礼の気持ちを接客という形で伝えるための研修を全社的に進めていくことが現在の目標である。
お客様にとっては、アルバイトも正社員も関係なく、従業員全員が「亀屋万年堂の顔」であり、多くのアルバイトが店舗を支えている。かつての自分のように、垣根なく、意欲を尊重してもらい活躍できる場があれば、全てのスタッフが伸び伸びと自身の資質を活かせるのではないかと思っている。

購買課
田久好範氏

年代 30代 性別 男性
勤続年数 10年
キャリアアップの過程 2005年に契約社員として入社。9年間の契約社員としての勤務を経て、2014年4月に正社員へ転換。入社時より一貫して購買課において資材の購買、在庫管理等の仕事に従事している。

◆前職の経験も活かして、契約社員として入社

2005年7月に契約社員として採用され、正社員登用制度導入の翌年に当たる2014年4月に正社員に転換した。入社以来、継続して購買部門を担当している。主な業務は、お菓子の原材料や副材(箱やお菓子をくるむフィルム等の資材)の購買で、受発注や在庫管理等に従事している。
入社以前には同業他社で働いており、その在職時に取得したフォークリフトの免許をより生かせる職場を希望したところ、ハローワークの紹介により採用となった。前職でのリーダー経験を生かし、積極的に業務に従事している。

◆入社9年目に正社員に転換

正社員転換のきっかけは、上司からの声かけだった。育児休業を取得したこともあり、まさに子育て世代であるため、より安定している正社員へ転換してはどうかと打診を受けた。軽度の障害があったが、率先して自分で考えて仕事に取り組む様子や、コミュニケーションも良好である点を上司は高く評価していた。
面接試験の際には、実際の業務で支障をきたしている点について改善点の提案や、今後予想される状況とその対応策、転換後に意欲的に取り組みたいことを積極的にアピールした。会社からは、正社員へ転換すると、営業部門への部門転換もありうるが対応可能か確認をされたが、特に問題ないと返答した。同社の環境であれば、会社や周囲のフォローが十分にあるので、経験のない部門でも、その場で上司に確認しながら従事すれば対応できると感じている。

◆正社員になり、より強く責任を感じつつ業務を遂行

正社員になり、特別な権限が増えたわけではないが、責任を強く感じるようになった。携帯電話を常に携行し、問合せに早急に対応することや、他部署を応援するような仕事(※6)で指示を出すことのほか、業者との立ち合いが増えた。そのため、より責任を感じ、失敗をしないようにしようと心構えをしている。
今後も、できるだけ会社に貢献できるよう頑張っていきたいと思っている。

(※6) チームプレイにより残業時間を短縮するなど、生産性向上活動を進めている。