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事例14 株式会社お菓子の香梅

事例 14

株式会社お菓子の香梅
明確化された正社員転換制度と新人事考課制度を導入し、経験豊富な非正社員の更なる活躍を実現。

業種 製造業及び卸売業、小売業
本社所在地 熊本県
正社員数
(平成27年7月1日現在)
236名(男性85名、女性151名)
非正規雇用労働者数
(平成27年7月1日現在)
準社員:29名(男性1名、女性28名)
パート・アルバイト:97名(女性97名)
嘱託社員:21名(男性16名、女性5名)
契約社員:4名(男性1名、女性3名)
非正規雇用労働者の主な仕事内容 販売・製造・事務職(※1)
取組のポイント ■ 研修と連動させた正社員転換制度を就業規則に明記
⇒非正規雇用労働者のキャリアアップに対する意欲を喚起し、また現場管理職も長期的視点から部下を育成できるように
⇒ほかの正社員転換候補者と同時に受ける研修が良い刺激に

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同社は昭和24年創業、「くつろぎのごちそう」を企業理念として数々のお菓子を製造・販売している熊本県屈指のお菓子メーカーであり、熊本県内を中心に29店舗を構える。同社の製造・販売商品は年間300アイテムを超えるが、中でも「誉の陣太鼓」は熊本の代表銘菓として、これまでに数多くの賞を受賞している。
同社では正社員のほか、準社員、パート・アルバイト(※2) 、契約社員(※3) 、定年退職後の再雇用者である嘱託社員が働いている。

(※1)雇用形態にかかわらず職種別採用を行っており、平成27年現在の制度では原則として職種間の異動はない。事業所間の異動はあるが、通勤可能な範囲に限られている。
(※2)パートは年間を通じて勤務する者であるのに対し、アルバイトはお盆前後や年末年始等の繁忙期のみ、若しくは夜間のみ勤務する学生アルバイトである。パートは配偶者の扶養内での勤務を希望する者(1日当たり5.5時間で月21日勤務、若しくは1日当たり7.5時間で月15日勤務)が多い。
(※3)契約社員は、他社(閉店となった百貨店等)で勤務経験がある者・派遣社員であった者を新たに正社員として受け入れようとしたが「正社員になるには自信がない」というケースや、「週3日働きたい」といった例外的な勤務希望に対応するために設けている特殊な雇用区分であり、新規に契約社員として採用することは想定していない。

1.取組の内容

◆研修と連動させた正社員転換制度を整備

【パートから正社員へのステップとして「準社員」区分を導入】

同社では、平成13年度より、パートと正社員との間に「準社員」という雇用区分を設けている。パートの中でもフルタイムで勤務することができ、店頭ディスプレイの企画等、高度な業務に従事する能力と意欲のある者を、パートよりも待遇の良い雇用区分に登用することで、更にその能力を発揮して欲しいという狙いがあった。準社員になるための登用試験は特にないが、パートの中から準社員にふさわしいと思う人物に会社側が声をかけ、本人が同意した場合、次の契約期間から準社員に登用している。
準社員に登用されると、パートの時給上限額を超えて昇給がある。また、年に2回支給される手当(夏期手当、年末手当)の支給金額がパートよりも高く、1回当たり3~5万円が支給される。(※4)

(※4)パートに対する手当は年2回、1回当たり5,000円(配偶者の扶養範囲を超えて勤務する場合、勤続年数に応じて5,000円を超えることもある)が支給される。

【従業員の待遇を改善することで定着を狙う】

お菓子業界というと「きれいで簡単で楽しい仕事」というイメージがあるようで、そのイメージを持って入社する者もいるが、実際は菓子箱の運搬、上げ下ろし等の作業も多く、イメージと現実とのギャップによる早期離職がしばしばみられる。またコミュニケーション能力の不足がお客様からの苦情につながることがあり、更に年間300アイテムを超える取扱商品について全て覚える必要があるため、新規採用者が仕事を習熟するには、最低でも3年はかかる。
このような状況で優秀な人材を確保するには、既に長期にわたって同社に貢献している従業員の待遇を改善し、彼らにできるだけ長く働いてもらう必要があると感じており、その一環としてパートから準社員、準社員から正社員とキャリアアップできる仕組みの整備に力を入れている。

各雇用区分の関係

【助成金の利用を契機に、転換条件を明確化した正社員転換制度を導入】

以前から正社員転換を慣行的に行っていたが、転換条件は明確に定めておらず、「そろそろこの人は正社員にしても良いのでは」といった感覚的な人選が行われていた。また、「正社員へ転換する前のステップ」という意味もあって準社員という雇用区分を導入したが、業績等の理由で正社員への転換があまり進まず、準社員の数のみが増加するという状態になっていた。
準社員の中から優秀な人材を正社員に転換させたいと思いつつ、人件費増加の負担が厳しく転換者数を増やすことができていなかったが、平成26年度、キャリアアップ助成金の利用を契機に、転換条件を明確化した正社員転換制度を導入することとなった。支給されたキャリアアップ助成金は、従業員の教育訓練を更に充実させる費用に充てたいと考えている。

【転換に必要な条件を明確に規定し、研修と連動させた選考を実施】

転換候補者の選出は毎年6月に行い、その後選考を経て、合格者は10月1日付けで正社員に転換する。
新制度では、正社員転換候補者となるための条件として、①勤続1年以上であること、②フルタイム勤務が可能であること、③前年度の人事考課結果が上位30%以内(A評価以上を続けて獲得)であること、④所属長(課長等)の推薦があり、部門長の面接試験に合格し、会社が認めた者、の4点を就業規則に定めている。
選出された転換候補者は、次の選考段階として「キャリアアップ研修」に参加する。キャリアアップ研修では、工場や特色のある店舗の見学、各部門長からの講義、就業規則の説明、文書の書き方等のビジネススキル・マナー研修が2日間にわたって行われ、各事業所から推薦された転換候補者がほかの候補者とともに受講する。このキャリアアップ研修は選考プロセスの一環であり、受講者には見学の感想や新たに学んだこと、1年後はどんな自分になりたいか、といったテーマに関するレポートの提出が課され、このレポートをもとに正社員転換の可否が最終的に判断される。同社では、「正社員に転換する前に改めて自社について知ってもらいたい」という思いから、このような研修機会を選考プロセスの一環として組み込んだ。
制度上、キャリアアップ研修を受講した結果、不合格になることもありうるが、初年度である平成26年度は、転換候補者全員(製造部門から2名、販売部門から13名)が合格した。

◆実用性の高い新人事考課制度の導入

【パート・準社員に対しても年に2回の人事考課を実施】

パート・準社員に対しても年に2回の人事考課を実施している。人事考課に用いる評価表にはパート用と準社員用の2種類があり、後者は正社員の人事考課で用いるものと共通である。
パートに対する評価表は、「勤怠」や「技能」、「後始末」、「作業の美しさ」等10項目からなり、それぞれの項目ごとに10段階で評価を行う。プロセスとしては、まず自己評価を行った上で、更に直属上司及び所属長による評価が行われ、最終的にSからDまでの5段階で総合評価が与えられる。
これまでは評価後の面談をあまり実施できておらず、自己評価と上司評価との間に大きな差があってもその理由についてフィードバックが十分できていなかったため、本人の納得のいく評価とは言い難い状態であった。平成27年度より人事考課の制度を見直し、本人と必ず面談を行うよう定めたほか、自己評価と上司評価に大きな差がある場合には、複数店舗を統括する係長が確認・調整するなど、公平性を保つことができる仕組みとした。

【社内コミュニケーションの充実を狙った新人事考課制度を導入】

平成27年度の人事考課制度の見直しに際して正社員・準社員用の考課表を大きく改訂し、名称を「人事考課表」から「人財育成評価シート」に変更した。
これまでは情意評価項目を中心として上司からの一方通行的な評価が行われていたが、新制度では、期初に定めた目標の達成度を評価する目標成果管理を導入した。目標には、本人が自ら設定する目標と、店舗や工場の部署(商品ごとに分かれている)単位で設定する目標があり、期末にそれぞれの目標達成度が評価される。新制度においては、事業所単位の目標設定では従業員全員が話し合って目標を決めることとし、また評価に際しては上司と本人との面談の機会を必ず設けるよう定めるなど、社内のコミュニケーション強化を重視している。
目標成果管理導入は同社にとって初の試みであり、人事部で冊子を作成して係長以上の管理職に説明を行った。目標設定の際は「○○をがんばる」といった抽象的な目標ではなく、「○○検定の3級を取得する」といった、達成が評価しやすい具体的・客観的な目標を設定するよう指導している。
準社員に対する人事考課も、パートの考課と同じく、SからDまでの5段階で最終的な評価が行われる。準社員には半期に一度、3~5万円の範囲内で手当が支給されるが、この人事考課の結果によって、具体的な支給金額が決定する。考課結果は昇給にも若干影響する。

現場でのOJTを中心に、多彩なスキルアップ支援を実施

【現場でのOJTによる教育訓練を重視】

同社の教育訓練は、現場でのOJTが中心である。特に入社から3か月間は、「入社時プログラム」と称して計画的OJTが行われ、カリキュラムに基づいた研修が実施される。店舗では商品知識や基本的なルール等がこの期間に指導され、工場では危険予知等安全衛生教育に重点が置かれている。
加えて、パートや準社員を含めた全社員のうち希望者を対象に、会長による研修が行われており、参加者は会長から直接、会社の経営方針等を聞くことができる。

新入社員研修カリキュラム(イメージ)

【ペン習字や観光文化検定等多彩な自己啓発支援】

店舗では、のし書きやお礼状等、ペン習字のスキルが役に立つ。希望者のみの任意参加ではあるが、ペン習字等の通信教育を会社が希望をとりまとめて申し込むなど、受講しやすくしている(受講料は個人負担)。
また、同社のお菓子は熊本県の歴史や文化と深い関わりを持つことから、熊本の名所旧跡等の知識を問う「熊本・観光文化検定」の取得を推奨している。外部から講師を招聘して社内で講習会を開催しており(2時間程度、無料)、2級以上を受験した場合は受験料のうち2,000円のキャッシュバックを受けることができる。合格者は、名札に「熊本・観光文化検定1級合格」等という文言を入れて接客を行っている。

2.効果と課題、今後の運用方針

◆正社員転換制度を明文化したことで、非正社員と管理職双方の意識が変化

転換の条件や選考プロセスが制度として明文化され、その制度において実際に転換者が出たことで、転換していないパートや準社員も「この会社で頑張れば、自分もいずれ正社員になれるかもしれない」という希望を持つようになった。その結果、店舗運営に関わるアイディアを出すなど、向上心を持って積極的に業務に取り組む姿勢がみられるようになってきたと感じている。また、定着率も向上した。
正社員転換を目指して努力するようになったパート・準社員は、これまでよりも「お客様のために」という意識が強くなり、一歩踏み込んだ接客等ができるようになる。そのような姿勢を保ち、高い技量を身につけるパート・準社員が増えることで、現場の管理職やほかの正社員がフォローしなければならない領域が減り、結果として管理職・正社員の負担軽減につながっていることから、現場の管理職は、正社員転換制度が定められたことを契機に「将来的な正社員への転換を見据えて部下(パート・準社員)を育てていくことが、現場全員の負担軽減につながる」という共通認識を持ち、より本制度を意識し、積極的に部下の教育に当たるようになった。
更に、正社員転換に関する例年のスケジュールが定められたことで、転換を目指す者にとっても現場の管理職にとっても「○月までに正社員転換候補者レベルになる(育てる)」といった一つの目標や、「○月になれば正社員が増える」という人員計画の目安ができた。計画的な育成・人員管理を行うに当たり、正社員転換を制度として明文化したことには大きな意義があったと感じている。
今後も継続して正社員転換を推進し、5年間で30名程度を正社員に転換する見込みである。

◆研修と連動させた正社員転換制度は、転換候補者にとって良い刺激に

各店舗の代表が集まる会議等に出席する機会のある正社員と異なり、パートや準社員にはほかの事業所の従業員との「横のつながり」をつくる機会が少ない。正社員転換の選考プロセスの一つとして実施されるキャリアアップ研修は、これから正社員となる者たちが事業所を越えて「横のつながり」をつくる機会にもなっている。
また、自身が働く事業所とは異なる店舗・工場を見学することで、その売場づくりの方法や運営の仕方を学び、その上で自身の事業所ではこれからどうしていくかということを改めて考えるきっかけになっている。これは、同社の将来を担う正社員転換候補者にとって良い刺激であり、今後も継続していきたい。

◆教育訓練の体系化が今後の課題

現在は現場でのOJTを中心に教育訓練を行っているが、教育訓練の充実については今後の課題と認識している。キャリアアップ助成金の「人材育成コース」の利用も視野に入れ、階層別の研修や、従業員同士が会社経営について議論できるような場の設定、個々人に合わせた体系的な研修等について検討していきたい。

◆キャリアアップを希望しない者への動機付けや短時間正社員制度導入について検討中

同社は、従業員それぞれにキャリアアップしてもらいたいと考えているが、中には正社員転換を希望しない者も多い。正社員になることで、売上げに対するプレッシャーが増えることに心理的な負担を感じていると思われる。そのような従業員に対し、今後どのように動機付けを行っていくかが今後の課題である。
また、短時間正社員制度の導入についても検討はしているが、短時間正社員と既存の雇用区分(パートや準社員)との区別が難しく、また1店舗当たり通常7~8名で業務を遂行している現状では、その限られた人員の中で、短時間正社員を考慮したシフトを組むことは非常に困難である。製造部門であれば導入できる可能性もあるため、引き続き検討したい。

3.活躍する従業員の声

帯山店
大和輝氏

年代 20代 性別 女性
勤続年数 4年
キャリアアップの過程 平成23年、高校在学中にアルバイトとして入社。平成24年に準社員に昇格し、平成26年に部門長推薦を受けて正社員に転換。入社以来一貫して店舗での販売業務に携わっている。

◆会社に認められ短期間でステップアップを実現

平成23年2月、高校卒業直前にアルバイトとして入社。人と関わることが好きで、接客の仕事をしてみたかったというのが応募動機であった。同年3月には勤務時間変更に伴い、パートへ転換。翌年1月には会社からの声かけに応じる形で、準社員へ転換する。平成26年6月に部門長の推薦を得て正社員転換候補者となり、「キャリアアップ研修」を経て同年10月に正社員転換した。現在は正社員として帯山店に勤務している。
準社員、正社員とステップアップするにつれて責任も重くなるため、不安がなかったわけではないが、「お客様のために、自分にできることをしたい」という思いから、挑戦することができた。雇用形態が変わったことで心持ちが大きく変わることはなかったが、「お客様のために」という気持ちはどんどん強くなってきている。

◆イベントや店舗づくりのアイディアを積極的に提案

主な仕事内容は入社した頃と大きく変わらず販売中心であるが、現在は「戦略店舗」と呼ばれる、喫茶スペースやイベントスペース(ギャラリー、コンサートスペース)等を備えた店舗に勤務しており、店舗でのイベント企画等にも携わっている。
喫茶スペースではコーヒーを美味しく淹れる技術が求められ、更にイベントに関しては企画力や音楽・絵画に関する知識も求められる。新しく勉強することは多いが、イベント企画では、出展者に対して「このような展示にしてはいかがですか」と自らが提案する機会も多く、やりがいを感じている。
従業員のアイディアを取り入れる懐の深さがある会社なので、積極的に店長とコミュニケーションを取り、自ら提案することも多い。例えば七夕の時は浴衣を着て接客をしたり、ひな祭りには店長が持ってきた段飾りのひな人形を店の中心に置いたりと、季節ごとに様々な工夫をしている。
また、よくご注文をいただくお客様等に、お礼や季節のご挨拶をはがきで出しているが、そこには自筆の絵やメッセージを入れている。時にはそのはがきに対するお礼のお電話をいただくといった嬉しい経験もある。
売上げの管理等は店長が主に担当しているが、自分を含む店長以外の従業員も売上げ等の数値について把握し、それをもとに「その後どうしていくか」を一人ひとりが考えている。

◆今後は更に接客のスキルを磨きつつ、後輩たちをサポートしたい

今後の目標としては、より接客のスキルを磨き、お客様に自分の名前・顔を覚えていただけるようになりたいと考えている。接客がとても好きなので今後も店舗で販売の仕事をしたいと考えているが、もしほかの職種に異動ということがあれば、自分を必要としてくれる部署で頑張っていきたい。
正社員となった今は、後輩へ指導をすることも時々ある。様々な知識を教えるとともに、接客中に困ったらすぐに声をかけるよう伝え、必要に応じてサポートしている。後輩たちには、思うようにいかない時があっても諦めずに仕事に取り組んでいれば会社は見ていてくれるし、正社員転換を含む色々な道が開けるのだということを、伝えていきたいと思う。