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事例15 株式会社ダスキン

事例 15

株式会社ダスキン
4回目の契約より非正社員の契約を無期化、
正社員への転換制度は求めるレベルを高く設定し有能な管理者を育成。

業種 サービス業
本社所在地 大阪府
正社員数
(平成27年10月1日現在)
総合職:1,245名(男性1,096名、女性149名)
エリア職:413名(男性128名、女性285名)
非正規雇用労働者数
(平成27年10月1日現在)
限定社員:221名(男性93名、女性128名)
定時社員:863名(男性253名、女性610名)
アルバイト:2,429名(男性530名、女性1,899名)
非正規雇用労働者の主な仕事内容 清掃用具賃貸、清掃、営業、店舗での接客業務、介護事業等、本社での事務作業(限定社員・定時社員)
取組のポイント ■ 契約更新回数が3回を超えた限定社員と定時社員を全員無期化
⇒優秀な人材の流出を防止
■ エリアマネジャー育成のために総合職への転換を実施
⇒店舗指導に最適な人材を育成・厳選
■ 各ランクに求められるスキルを明確化
⇒具体的な目標が定まり、従業員のモチベーションが向上

PDFデータ

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同社は、創立者がアメリカで出会った掃除用具レンタル事業を日本に初めて輸入し、昭和38年に創業した企業である。フランチャイズ事業の先駆的な企業として成功モデルを築いた。また、昭和46年に洋菓子事業を開始し、現在ではほかにもいくつかの飲食チェーンを展開している。近年では、これらの事業の海外展開を行っている。

1.取組の内容

◆契約更新が3回を超えた限定社員・定時社員は自動的に契約期間を無期化

同社では、他社にて「10年間全く待遇の改善等なく契約更新を続けたことによる労使トラブル」等が生じていたことをきっかけとして、平成17年4月に契約更新回数が3回を超えた限定社員(※1) ・定時社員(※2) を対象に、雇用契約期間の無期化を行った。無期化を実施したもう1つの理由は、同社における慢性的な人手不足である。清掃部門にはいわゆる「3K」という印象が強いため求人への応募が少なく、新たに人材を採用することが難しかった。このような背景もあって、限定社員・定時社員の契約期間を無期化することで、スキルを身につけた人材を長期的に確保しようとしたのである。
無期化の条件は「同形態の働き方での契約更新回数が3回を超えている」ということのみであり、筆記試験や面接試験等は実施していない。無期化した後も、有期契約の限定社員・定時社員と同一の給与テーブルを適用している。また、勤務地については、労働契約によって勤務地(事業所)を限定している。勤務する事業所が閉鎖した場合は、通勤可能な範囲に他店舗があり、条件が合えば店舗の異動も認めている。
無期化を実施するに当たっては、労働組合との話合いを実施したが、特に組合側から反対意見が出ることはなく、円滑に制度を導入することができた。

(※1) 契約期間は1年(ただし、契約更新回数が3回を超えたら無期化)。1日7時間45分のフルタイム勤務。労働組合に加入。
(※2) 契約期間は1年(ただし、契約更新回数が3回を超えたら無期化)。1週間の労働時間に応じて定時社員①(週実働30時間以上35時間未満)、定時社員②(同20時間以上30時間未満)の2区分に分類。定時社員①は労働組合に加入。

◆優秀な人材登用のため、限定社員・定時社員から総合職への転換制度を整備

【複数店舗を統括するエリアマネジャーの確保・育成が目的】

同社は全国に多くのフランチャイズ店舗を抱えているため、各店舗のオーナーに対して本社の意向を伝達し、各店舗の課題を解決していく有能なエリアマネジャーが不可欠である。そのため同社では、エリアマネジャーを育成するという目的の下、平成21年より限定社員から総合職への転換を、平成27年からは定時社員①から総合職への転換を認めている。これまでに限定社員から43名が総合職へ転換した。
同社の正社員には、全国転勤の可能性がある総合職と一定のエリア内で勤務するエリア職(※3) があるが、限定社員や定時社員①からの転換を認めているのは総合職のみである。これは、上述のとおり、全国で活躍するエリアマネジャーの育成を目的として正社員転換を行っているためである。
だが、一旦、総合職の正社員に転換した後は、転換後2年を経過していれば、子育てや介護等の事情に合わせて総合職とエリア職を何回でも行き来することができるため、それぞれのライフイベントに応じて、働き続けられる環境が整備されているといえる。以前は転換は2回までしか認めていなかったが、総合職でも転勤に応じられない従業員が増加してしまった。そのため、本当に転勤に応じられる従業員のみが総合職であるべきではないかという考えが生まれ、平成26年4月より、転換の回数制限を撤廃した。

各雇用区分の関係(※4)

(※3) 2時間以内で通勤可能な範囲に勤務地を限定している。給与体系は総合職と同様であるが、総合職は転勤のリスクがあることからエリア職の基本給は総合職の80~85%程度である。また、エリア職が昇格試験を受けることができる時期は総合職に比べて1年程度遅く、管理職の最上位の等級には就くことができない。
(※4) 定時社員と限定社員の違いは、パートタイム勤務かフルタイム勤務かということのみである。転換については定時社員を限定社員に転換した後も十分な業務があった場合、労働者との合意の上で転換している。

【多くの従業員に転換試験にチャレンジしてもらうためにイントラネットでの周知に加え、対象者へ告知】

勤続年数が3年以上で40歳未満の限定社員と定時社員①には、総合職正社員への転換試験の受験資格が与えられる。当試験については、イントラネットでの告知をするだけではなく、対象者に対して人事部より直接案内を出すことで、受験を促している。年齢制限を設けている理由としては、現在総合職には43~49歳の者が多く、今後はより若い世代の総合職を育成したいという意図がある。なお、この試験は、3回までチャレンジすることが可能である。

【筆記試験及び面接試験を経て総合職に】

転換希望者は、まず小論文と筆記試験を受けることとなっている。その後人事部による面接を受ける。面接では、「年配のオーナーに対しても対等に話をすることができる」、「業績に関して適切な指導をすることができる」等、エリアマネジャーとしての資質があるかどうかを確認している。このように実効性を重視した選抜を行っているため、転換試験は「狭き門」である。平成26年度は10名が試験にチャレンジし、合格者は3名であった 。(※5)
エリアマネジャーとしての資質の見極めをしっかりと行うため、今後は、本社の部長クラスの推薦ではなく、従業員本人をよく知る店長や本社勤務の店舗担当の社員推薦を、転換試験の受験資格を与える条件に加えることも検討している。

(※5) 介護スキルを有した社員が通常の転換ルートとは異なるルートにて2名が総合職に転換している。

【1年かけて実力を判断し、実力に応じた等級に格付】

総合職へ転換後は、期中入社の初任給表に応じて格付し、1年をかけて実力や将来性を判断した上で、再度格付をすることになっている。このように同社では、限定社員や定時社員から総合職へ転換した者であっても、自分の総合職としての実力が明確になり、その実力に応じた昇進・昇格が可能となっている。

◆担当事業に合ったスキルアップのための教育システムを実施

同社ではアルバイト等も含めた全社員を対象として、コンプライアンスや経営理念等、社員として身につけておいてほしい事項に関する研修を実施している。
その一方で、部門によって従業員に求められるスキルも大きく異なっているため、同社では部門ごとにドーナツの作り方、接客方法、清掃用具の知識、営業方法を学ぶ教育体制を整備し、人材育成を行っている。例えば、多くのアルバイトを店舗に配属している洋菓子部門では、詳細なランクアップ制度を整備しており、ランクごとに求められるスキルが決まっている。必要なスキルを身につけると次のランクに昇格でき、昇格に応じて時給もアップするという仕組みになっている。また、どの部門においても1年に1度の契約更新時に上長との面談をすることになっており、その面談において、自身のスキルを確認している。

2.効果と課題、今後の運用方針

◆限定社員と定時社員の契約期間の無期化と総合職への転換によって優秀な人材の確保が可能に

契約更新回数が3回を超えた限定社員と定時社員①の雇用期間を無期化したことで、スキルを身につけた人材を一定程度確保することができている。また、「エリアマネジャー候補者を育てる」という明確な目的を掲げ、限定社員や定時社員①から総合職への転換制度を整備したことで、優秀な人材を厳選して採用することができている。
エリアマネジャーには本社の代表者として施策を店舗に伝え取組を促したり、経営指導を行ったり、加盟店の店長を助け、自社のブランドを維持するという非常に重要な役割が求められている。総合職への転換試験は「狭き門」であるものの、この厳格な転換試験を設けることで、エリアマネジャーに適性のある人選が可能となっている。

◆昇格と時給額の連動によって従業員のモチベーションが向上

例えば飲食部門においては、ランクごとに求められるスキルを明示し、そのスキルを身につけて昇格・昇給する仕組みを整備することで、「このスキルを身につければ昇格し、時給もアップする」ということが明確になった。従業員が明確な目標を立てやすくなったこともあり、従業員一人ひとりの仕事に対する姿勢が改善したと感じている。

◆地域・事業部限定の正社員制度の導入や働きやすい環境を整備することで定着率の向上を目指したい

多様な取組を行っている現在でも、景気回復により、労働者に有利な市場になっていることも影響して同社では人手不足を感じており、現在勤務している従業員の離職を防ぐことが喫緊の課題となっている。契約期間を無期化したとしても、会社が従業員の働き方のニーズに応えなければ人材は離職してしまうとの考えの下で、現在は、より働きやすい環境を作るべく、プロジェクトチームを立ち上げて、地域限定、事業部限定の正社員区分の導入を検討している。
また、有給休暇の取得率を上げる取組や労働時間の管理の徹底等、労働環境の改善についても様々な取組(※6) を実施している。更に、限定社員や定時社員、アルバイト全員に対して、年間に約3,000円の予算で福利厚生費を実費負担している。小額ではあるが、歓送迎会等のイベントに参加し、少しでも親睦を深めてもらえればという願いが込められている。
これらの取組を通じて、「ダスキンが好き」と思ってくれる人材を育て、長く定着してもらいたいと考えている。

(※6) 年間の有給休暇取得計画表を作成し、全社で使用している。前期における有給休暇取得率が50%未満の場合、公休日を含めた5連休の取得を必須とし、有給休暇の取得を啓蒙している。また、全社員の毎月の労働時間を管理し、担当役員や部門へのフィードバックを行っている。

3.活躍する従業員の声

大阪 エリアマネージャー
井脇一美氏

年代 40代 性別 女性
勤続年数 14年
キャリアアップの過程 大学在学中のアルバイトをきっかけに卒業後正社員へ。引越等を経て数々の形態にて勤務。総合職へ転換後は広報業務を経験、現在はミスタードーナツの総合職のエリアマネジャーとして23店舗を管理。

◆エリアマネージャーを目指し、総合職転換を決意

大学在学中にはじめたアルバイトがきっかけでフランチャイズ加盟店雇用の正社員になり、3年ほど勤務したが、引越することとなり引越先の店舗にてアルバイトとして2年間勤務した。その後、アルバイトでの長時間勤務が難しくなったため、定時社員①や限定社員として7年間勤務し、店長として店舗をまとめていた。平成22年にアルバイト時代や定時社員①として勤務していた時には、ほかの社員より指示を受けて仕事をすることが多く、仕事の裁量が限られていた。店長として店舗をまとめていた頃よりエリアマネジャーとして複数の店舗をまとめていきたいという思いがあったため、総合職への転換を決意した。総合職では転勤の可能性が生じるが、転居に対する不安はなかった。
平成23年に転換後は、4年間広報業務を担当し、マスコミ等からの取材対応を担当した。平成27年4月より念願のエリアマネジャーに就任し、現在は大阪府内の23店舗を統括している。

◆広報業務では、自身の発言が及ぼす影響力の大きさを実感

限定社員から総合職に転換したことで、限定社員や定時社員への見本になれるように仕事をしていきたいという思いが生じたという。また待遇も上げてもらったので、それに見合う働きをしなければならないと思った。
総合職への転換直後に担当した広報業務では、自分の言動1つで企業のイメージが変わる可能性があり、契約社員やアルバイトとして勤務していた時とは異なる責任の大きさを感じていた。しかし、同時に、全国1,300店舗に対して対応するという規模の大きい仕事を担当できたことはやりがいにつながった。

◆各店長の考えを尊重しながらも本社の意向もしっかりと伝えていきたい

現在は、フランチャイズの店舗をとりまとめているが、各フランチャイズ店舗のオーナーの考え方はそれぞれ異なっている。各オーナーに対して、本社の意向をいかに伝えて浸透させるか、店舗の不備を減らしてお客様に気持ち良く利用していただくためにはどのようにすれば良いか、常に意識して業務を遂行している。
具体的には、月に1回、統括するエリアの店長を集めて行う会議の中で、お互いの意見や経営方針等を共有できるような機会を設けている。一方で、ただ店長の意見を聞くだけではなく、エリアマネジャーとして自分の意見やビジョンを各店長に伝えていくということも、統制を図る上では非常に重要だと考えている。
エリアマネジャーに就任してまだ2か月であり、試行錯誤することも多いが、今後は、他のエリアの見本になるようなマネジメントを行っていきたいと思っている。

◆非正社員のキャリアアップのために

現在、限定社員や定時社員が正社員登用を目指す際には、まずは総合職にしか転換が認められていない。転換を希望する者の中には、様々な事情で転勤ができず、チャレンジを断念している者も多いのではないか。有能な者が転換を断念することは、企業としての損失だと思うので、限定社員・定時社員からエリア職への直接の転換を認めることで、正社員転換を希望する者が増えるのではないかと考えている。