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事例27 株式会社竹内製作所

事例 27

株式会社竹内製作所
多様な働き方に対する取り組みを複数組み合わせることで、社員の満足度の向上及び社員採用に効果を発揮している。

業種 製造業
本社所在地 長野県
正社員数
(平成28年10月14日現在)
正社員:447名(男性418名、女性29名)
非正規雇用労働者数
(平成28年10月14日現在)
218名(男性189名、女性29名)
派遣社員(※1):94名
契約社員(※2):109名
嘱託社員(※3):12名
パート(※4) :3名
非正規雇用労働者
の主な仕事内容
建設機械(ミニショベル等)及び工業用撹拌機の開発・製造・販売
取組のポイント ■ 全非正規雇用労働者を対象とした「正社員登用試験制度」を導入
⇒多様な人材を積極的に活用し、高度な技術や熟練技の伝承を図る
⇒転換した社員のモチベーションアップ
■ 短時間勤務の積極活用(育児休業後、再雇用者、嘱託社員、有期雇用社員)
⇒1時間から3時間の時短勤務を行い、ライフスタイルにあった勤務を実現

(※1) 契約期間:3ヶ月、給与形態:時給、賞与の有無:無、退職金の有無:無
(※2) 契約期間:6ヶ月、給与形態:時給、賞与の有無:無、退職金の有無:無
(※3) 契約期間:1ヶ月、給与形態:時給、賞与の有無:無、退職金の有無:無
(※4) 契約期間:1年、給与形態:日給月給、賞与の有無:有、退職金の有無:無

PDFデータ

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 同社は1963年設立、1971年に世界で初のミニショベルを開発し、建設機械業界に新たな市場を生み出す。1986年には、無限軌道式クローラーローダー(※5)を開発し、小型建設機械市場においてのグローバルスタンダードとしての評価を得ている。現在は、日本国内に3工場3営業所とアメリカ、イギリス、フランスに販売子会社、中国に現地工場が1箇所ある。
 2002年にJASDAQに株式を上場。2015年に東京証券取引所第一部に変更し、5期連続の増収増益で、小型建設機械業界の「ベンツ」との異名も得ている。
 従業員は、正社員447名に対し非正規雇用労働者が200人、社員はほぼ県内または地元在住者で占められているが、近年は県外出身者のIターン就職が増加している。
 人事制度については、特に社内教育を以前から充実させており、数年前からはインターンシップや職場見学の受け入れなど、教育と連動した取組も充実させている。特に次世代を支える若者、そして子育て世代を応援する取り組みとして、厚生労働省の「若者応援宣言」並びに長野県の「子育て応援宣言」の企業として登録をしている。
 東証1部上場をしたことの効果、また技術的に特徴のある製品を開発していることで、県内はもとより県外の学生にも浸透してきており、大卒、高卒の採用も好調で、今年の新卒入社の倍率は約28倍と、非常に高い倍率となっている。
 また、新卒社員3年定着率は2年連続で100%を達成しており、これは東洋経済のCSR企業総覧に掲載されている会社のうち、情報を開示している企業で965社中、100%の定着を達成できている企業は120社と僅か12%の企業しか達成できていない。同社はこの僅か120社のうちの1社として、全国でも屈指の定着率を誇っている企業である。(過去5年間で、新卒採用を行ったのは4年だが、そのうちの2009年入社、2012年入社、2013年入社について、定着率100%を達成していることが、東洋経済のCSR企業総覧に掲載されている。)

(※5) 土砂の積込、運搬、掘削等の不整地作業に使用される。 ミニショベルや油圧ショベルが掘削した土砂をクローラーローダーがダンプまで運搬し、積み込む。
ダンプは工事現場の中まで入れないことが多く、少し離れた道路沿いに停車。ミニショベル、油圧ショベルは走行が遅く、ダンプまで運搬するには適さない。
クローラーローダーは走行性能が高い為、運搬に適している。

1.取組の内容

◆全非正規雇用労働者を対象にした「正社員登用試験制度」を導入

 同社では、平成27年2月から「正社員登用試験制度」を導入した。導入の目的は、多様な人材を積極的に活用し、高度な技術や熟練技術の伝承を図り、顧客ニーズに合った高品質・高性能な製品を安定的に供給するためである。
 1年以上働いている契約社員と派遣社員を対象としており、基本的に部署や職種に制限を設けていない。27年2月実施から3回実施し、これまでに延べ74名が受験し、9名が合格している。合格率は非常に低く、狭き門となっているが、これは、安易に正社員転換を認めてしまうと、厳しい選考を突破した新卒採用の正社員と中途キャリア採用の正社員との公平性を損なう恐れがあるためである。しかしながら、この制度では対象者は合格するまで何度でもチャレンジできるため、たとえ不合格になったとしても「次こそは」という思いで、次回の転換試験に向け自己研鑽に励むことができる。
 そして、この制度により「仕事を頑張り、評価されれば正社員になれる」ということや、正社員に転換すると賞与や退職金の制度が適用されるため年収ベースでは約120万円増えることから、非正規雇用労働者のモチベーション向上に大きく寄与している。
 また、合格基準に惜しくも満たなかった不合格者に対しても、時給の改定(昇給)をすることにより、正社員に転換できなかった場合の、モチベーションの維持または向上に寄与している。
 選考の過程は、書類審査、筆記テスト、グループワーク、面接の4段階で、初年度は年2回2月と8月に実施していたが、現在は年1回2月に実施している。書類審査は、受験者の履歴書・職務経歴書の他に、勤務評価等の人事データをもとに行い、約7割が次の筆記試験へ進む。筆記試験は、一般常識・国語・数学・英語といった内容で、高卒程度の知識があるかどうかを確認していることから、ほぼ全員が次の段階であるグループワークを受験することになる。グループワークは、事前に、メーカーとしての品質問題に関する問題点・原因・解決策等のテーマを与え、それについて各自の考えをまとめて、4人程度のグループで討議をする形式となっており、役員及び人事部門がオブザーバーとなり、審査している。審査のポイントは主に課題発見力やグループ内でのコミュニケーション力、発表時のプレゼン力で、合格者が1人も出ない場合もあり、狭き門となっている。また、グループワークに先立ち、候補者が一人ずつ自己紹介をする時間を設けているが、これが役員に対するアピール時間として、役員が候補者の意気込みを直接確認する機会でもあり、役員にとっても良い刺激になっている。
 試験後、約2週間で社長、役員、部長、人事による判定会議を行い、合議制で合格者を決定し発表を行う。合格者には辞令授与を行い、正社員としての自覚を持たせるようにしている。
 また、不合格者に対しては、初回は人事課と応募者の所属長同席のもと、フォロー面談を全員に行い、2回目以降は所属長から本人へのフィードバックを行っている。

正社員登録試験制度概要

正社員登用試験制度実績

 正社員登用試験制度の実績は上記の図表の通り、年々合格率が低くなっている。
 これには理由があり、一つは、受験回数に制限がない公募であることや不合格の場合でも時給が上がることがあるため、本人にとっては昇給のチャンスと捉え、再受験者や合格基準に達しない者が増えたことが挙げられる。しかしながら、この転換試験があることが、会社に留まる動機になっているとも考えられるため、不合格者であっても、結果として熟練の技術者が社内に残るため、会社としても相応のメリットがあると考えている。
 制度導入前は、賞与時期になると離職する契約社員が多くなる傾向があった。これは、正社員には賞与が支給されるのに対し、契約社員には支給されないため、差別感を感じるのが大きな理由であり、会社としても課題に感じていた。制度導入後は、前述のように、転換試験が仮に不合格の場合であっても、昇給などのチャンスがあるため、契約社員の退職率が低下したことは、一つの大きな効果である。
 また、この制度は派遣社員にも適用しており、実際に3名が派遣社員から直接正社員に転換した実績もあるため、同社への派遣を希望する社員が増え、派遣会社のスタッフ確保にも一定の効果をあげているという。このことから、制度導入が同社だけではなく、地域にある他社の活性化にも波及している。

◆社員のライフスタイルに応じた短時間勤務の導入

 同社では、社員の子育て等を応援することを目的に、育児休業後の全社員に対し積極的に短時間勤務を選択するよう推奨しており、所定労働時間は7時間55分のところ、規程上は2時間短縮が原則であるが、1時間短縮・3時間短縮も追加運用している。待遇面においても1時間当たりの給与等はフルタイム勤務と変わらない。
 育児休業からの復帰前1ヶ月程で行う面談の中で、時短勤務を希望するか本人に意向確認をし、希望があれば所定の申請書を提出してもらうが、不受理とした例はなく100%受理している。なお、男性の場合も配偶者の出産に合わせて、短時間勤務を取得することも可能だが、現在のところ取得実績はない。しかしながら、育児休業を取得した男性社員は1名いるため、今後は、短時間勤務取得の障害になっていることがないか等を、彼らの意見も取り入れながら改善していきたい。
 平成26年度、平成27年度は4名の利用実績、28年度も5名の利用実績がある。その他、高年齢者対象の時短勤務も実施しており、現在8名が利用中である。
 また、派遣社員の短時間勤務についても同様のプロセスを経て、短時間勤務へ移行する。

短時間勤務導入実績

 育児休業後の社員以外にも、定年後再雇用者、嘱託社員、契約社員に対しても短時間勤務または週の勤務日を調整できるといった対応を行っている。
短時間勤務を運用するにあたって成功する秘訣は、制度で細かく決めることはせず、極力シンプルな仕組みにした方が良いと考えている。制度で細かく要件を設けると、現場では押し付けられた感覚が強くなるため、あまり干渉はせずに現場の柔軟な対応に任せている。
 例えば、短時間勤務は育児休業から復帰した社員を前提に制度化したものの、高年齢者からの要望により範囲を拡大したことをはじめ、規程上、時短制度は9:00〜16:00となっているが、保育園の送迎時間に合わせて、9:30〜15:30の時短勤務も可能となるよう追加運用している。
 その背景として、長野県の保育園は通常8:30から開園し、お迎えの時間が16:30過ぎからになっており、通勤時間が40分~50分掛かる社員にとっては、前後1時間合計2時間の時短では意味をなさないため、追加した制度である。
 反対に、両親と同居している等の理由や、子どもが年長になり手間が掛からなくなったため、仕事量を増やしたいという理由で勤務時間を延ばすことも選択可能である。また、妊娠中のため体調が良くない社員に配慮し、妊娠中の時短勤務を認めている。こちらは平成28年9月から1名が引き続き活用している。今後もなにかニーズがあれば、それに対応していく考えである。


2.効果と課題、今後の運用方針

◆今後の課題として、福利厚生制度についても見直しを行っていく方針

 非正規雇用労働者の正社員転換、子育て世代応援の短時間勤務といった、多様な働き方に対応した取り組みを行っており、併せて、全社員を対象とした社内講師と外部研修を併用した充実した教育研修制度と「企業は人によって成り立っており、企業の盛衰は人によって決まる」との考えのもとに運用している職能資格等級制度、そして、それらと連動した人事制度により社員のモチベーション向上に一定の効果を上げている。

教育研修制度概略

 また、正社員転換制度を導入することによりコスト削減についても効果を上げている。削減効果は大きく分けて①採用コストの削減②教育訓練費の削減③非正規社員の人件費削減④雑費の削減と4つある。


正社員転換制度を導入することによりコスト削減

 上記、①~④を金額換算すると以下の通りになる。
 例えば、3ヵ月後に50名の増員体制を整備しようとした場合、正社員転換制度の導入前と導入後では、試算上増員にかかる費用約4600万円の削減効果が期待できる。
 また、現状の生産体制を維持する場合でも、以前の離職率等から試算すると、社員の入れ替えに伴う上記①~④の費用が3分の1程度になり、金額ベースで3億9260万円の削減効果になる。正社員登用制度は非正規社員のモチベーションアップだけでなく、大きなコスト削減効果があるため、経営面でも大きなメリットがあると考えている。加えて、キャリアアップ助成金制度も積極的に活用している。
 今後は、数年間継続して増収増益と会社が成長している中で、最近の福利厚生の傾向を調べ、福利厚生制度についても見直しを行っていく方針であるが、同社はそういった制度に関心の高い社員が多いため、充実した制度を構築しないと、社員の理解を得難いと考えている。
 個別の課題としては、例えば、全社員の休暇取得の促進や休暇の楽しみを増やすために、有給休暇の取得日数が平均以下の社員に対して、取得を促進するように社内通達を出すなどを取り組んできたが、今後は何か別な仕掛けも検討しているところ、更に地元社員が多い会社として慶弔休暇を取得できる家族の範囲を広げること、子供手当の充実といった検討課題のほか、限定正社員の導入も検討したいと考えており、社員の帰属意識をさらに高める施策を考えている。


3.活躍する従業員の声

組立三課  関 高美氏

年代 40代 性別 男性
勤続年数 6年
キャリアアップの過程 派遣社員 3 年間勤務
直接雇用(有期契約社員)2 年間勤務
直接雇用(無期雇用準社員)6 ヶ月勤務
2 回目の正社員転換試験で合格
組立三課に所属し、主任級としてステーションと呼ばれる作業単位の業務を担当している。


◆同社における仕事を一生の仕事と考え、より安定することを求めて、正社員転換試験にチャレンジ

 前職は運送業の正社員として勤務していたが、2010年から同社へ派遣社員として入社。異業種からの転職であったが、元々ものづくりが大好きだったので困難は感じずに、楽しみながら難しい作業を習得できた。同社で扱っている建機製造職のやりがいは、自分が組立てた完成品が動き回るところを見ることができることである。特に走行してトラックに乗り、出荷されるシーンを見る瞬間がとても好きで、「自分が作った機械だ!」という達成感が味わえるところがとても魅力的で、夢中で仕事に取り組んだ。
 その後、直接雇用の準社員となったが、同社における仕事を一生の仕事と考え、また、当時の職場長やたくさんの同僚からの勧めもあり、より安定することを求め、正社員転換試験にチャレンジした。
 1回目の試験では、残念ながら筆記試験の成績が悪かったという理由から不合格となったが、この制度では、何回でもチャレンジすることが出来るので、受験までに筆記試験についてテスト対策を行い、また、日々の業務に邁進し技能を高める努力を継続、自らの不足していた部分に磨きをかけ、6ヶ月後の試験に再チャレンジした。特に前回試験の際に指摘された筆記試験に気をつけ、グループワークでもテーマの課題に沿って、積極的に討議に参加し、合格することができた。  

◆企業との間により深いコミュニケーションや人間関係を構築

 派遣社員、準社員の頃から会社の社内環境が良く、正社員転換制度が導入されてからは非正規雇用労働者の意見等も積極的に採用してくれるようになった。
会社との間でより深いコミュニケーションや人間関係を構築することができ、意欲向上に繋がっている。

◆︎受身的な仕事ではなく、主体的に業務に取り組む

 上司や同僚からの支援と応援で正社員になれたことに感謝し、今後も受身的な仕事ではなく、自ら創り出す、工夫する、提案する、改善するなど自発的に業務に取り組み、生産性を上げ、会社の業績アップに貢献していきたい。このように自発的に業務に取り組むことは、今までになかったアイデアを生みだしたり、周囲のモチベーションアップにもつながると思う。