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  • 100~299人
  • 人材育成
  • 正社員への転換 ~多様な正社員へ~
  • 正社員への転換 ~正社員へ~
  • 処遇改善
  • キャリアアップ助成金

事例28 株式会社星野リゾート・トマム

事例 28

株式会社星野リゾート・トマム
正社員転換制度の継続的な実践と、正規、非正規の垣根のない風通しの良い社風と人材育成により、優秀な人材の確保を実現

業種 宿泊業・飲食サービス業
本社所在地 北海道
正社員数
(平成28年10月1日現在)
222名(男性140名、女性82名)



非正規雇用労働者数
(平成28年10月1日現在)
契約社員(※1) 21名
 (男性 18名、女性 3名)
パートタイマー(※2) 52名
 (男性 42名、 女性 10名)
アルバイト(※3) 14名
 (男性 11名、 女性 3名)
派遣社員(※4) 64名
 (男性 31名、女性 33名)
非正規雇用労働者の主な仕事内容 ホテルサービス業務全般


取組のポイント
・契約社員に対する正社員転換制度の実施
→契約社員のモチベーションアップと優秀な人材の確保
・正規、非正規の分け隔てない人材育成への取り組み
→優秀な人材の確保、定着

(※1) 契約期間:原則1年毎の更新制、月給制、賞与無し、手当等は正社員と同じ
(※2) 契約期間:1年を限度とする更新制、時給制、賞与無し、通勤費日額
(※3) 契約期間:1年を限度とする更新制、時給制、賞与無し、通勤費日額
(※4) 期間・給与・交通費は、派遣契約に準ずる

PDFデータ

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 同社は、旅館やホテルを人気リゾートとして運営することで知られる星野リゾートグループの1社である。
 星野リゾートグループは、2004年に経営不振に陥っていた北海道・トマムのスキーリゾート再生に着手し、同社を設立している。最大の課題は、ウィンターシーズン以外の集客で、解決の糸口になったのは、トマムで以前から働き、リフトやゴンドラの保守管理を担当していた地元スタッフから見せられた、一枚の写真だった。山頂から見える雲海の圧倒的な魅力を、集客の最大の武器としていこうと、さまざまなメンバーが集まりチームで雲海テラスを開発し、スキー場だけでなく、トマムそのものが観光の目的地となり、現在までの累計入場者数は50万人を突破している。
 同施設は、宿泊施設、レストラン・カフェなどの施設やプール、スキー場をはじめとした様々なアクティビティが充実している。「雲海テラス」は、2013年に年間来場者数が10万人を突破し、今では夏のトマムの目玉観光となっている。



1.取り組みの内容

◆取り組みを始めるきっかけ

 同社は、ホテル・旅館業であり24時間体制でサービスを提供しているため、従業員の労働時間が不規則になりがちであった。また、リゾートホテルの特徴であり、サービスの訴求点でもある自然豊かな地域に立地していることが、都市部での生活を希望している学生のライフスタイルと一致せず、新卒募集を基本とした採用活動では十分に従業員を確保するに至らなかった。
 その結果、不規則な労働時間による従業員への負担が顕在化しており、この状態は、従業員の労働意欲を維持し離職を防止したい経営層としては、是が非でも改善しなければならない最優先の課題となっていた。
 そこで従業員を確保する苦肉の策として、繁盛期のアルバイト募集により、急場の人材を確保する体制を敷いた。これにより従業員の確保の目処はついたが、抜本的な問題解決にはならないため、引き続き、雇用環境の改善に向けた取組を継続していく必要性を、社内で議論していくことになった。


◆制度利用以前の状態

 都市部に在住している学生を、アルバイトによって就労させる試みは、リゾート地での「アルバイト&優雅な休日」として学生のニーズと合致したようで、多くの学生をアルバイトとして雇用し、繁盛期を乗り切ることができた。
 しかしながら、事業の継続性を考えると一時的なアルバイトに頼るのではなく、いかに生え抜きの優秀な従業員を育て、確保していくかということは依然として課題であった。
 そこで、学校卒業後も当社で働くことを希望している学生や社風と一致する学生を対象に、正社員への転換を始めることとし、10年以上が経過した。アルバイトで集まる学生の多くは、休日にスキーを楽しみたいなどアルバイト以外を目的に集まっているため、社会人になってからも「優雅な休日」を満喫できることが同社の大きなアピールポイントになること、また、仕事に対して積極的に取り組む優秀な人材も多く、これらの学生を正社員に転換することは、インターンシップのような形になり、採用後のミスマッチ防止など、通常の新卒募集にはないメリットがあった。
 この仕組みは、従来の新卒採用に変わる求人の大きなチャンスではないかということになり、徐々に正社員への転換人数を増やし、その結果、平成25年時点で、通常の新卒採用9名に対し、年平均3~5名の人材を正規社員転換で確保することができるようになっていた。


◆平成26年度よりキャリアアップ助成金を活用し本格的に正社員登用を図る

 平成26年度にキャリアアップ助成金制度の存在を知り、今まで試行的に行っていたアルバイトの正社員転換が、行政側の後押しがある正規の雇用確保のルートとして社内で認知されるきっかけとなった。
 正社員転換制度を正式に就業規則に位置づけたことにより、採用部門も積極的に取り組み始め、平成26年度は最終的に11名を正社員へ転換し、大きな成果を納めた。
 キャリアアップ助成金制度により、制度導入のほか、社内のコンセンサスが形成できたことが一番大きい。


◆正社員転換制度

 同社の正社員転換制度は、アルバイトから正社員への直接的な転換も対象となっている。
 制度利用には、本人の希望と上司の推薦を条件としており、選定は、基礎学力を確認する筆記試験と自ら目標を立案した内容等のプレゼンテーションを含む面接試験により行うこととなっている。試験の合否は、経験やスキルは考慮するものの必須条件ではなく、企業理念に基づく価値観が共有できる人材か、また、その価値観に共感し、共に働くことができる人材か、そして、その価値観を実践で具現化できているかを判断材料として決めている。このような姿勢は、厳しいようだが、仲間とともに仕事をしていく上では、単純なスキルよりも重要な判断材料として捉えることができる。中でも、チーム意識とチームとして成果を追求する意識が強く求められる。

正社員転換制度概要

              <転換条件>        <試 験>         <転 換>

◆多様な正社員

 同社は、星野リゾートグループの一社であることから、一般採用は、星野リゾートグループに共通した制度を備えている。同グループでは、多様な正社員としての働き方を次のように積極的に活用しており、同社もその中で、従業員に対し、個人に合わせた支援を行なっている。これらの制度の適用は、採用時点での契約形態にもよるが、個人の希望を尊重する体制をとっており、徹底した従業員重視の考え方を実行している。また、これらの多様な正社員においても、福利厚生など一般従業員との待遇差はない。

▶︎ 職務限定
 同社には一般採用とキャリア採用とがあり、職務限定は、キャリア採用に該当する。キャリア採用には多種あるが、ブライダルスタッフなどが適用されている。

▶︎ 勤務地限定
 星野リゾートグループは、全国32施設を展開する運営会社であり、同社もその下部組織として一体的に運営を行っている。同社で採用された場合、通常は、勤務地限定採用となるが、他の施設への異動が希望できないわけではなく、グループ採用であっても、同一施設で長期に就労することを希望することも可能である。全て従業員の希望が最優先されている。

▶︎ 勤務時間限定
 育児期間、介護従事期間においては、時短勤務の選択が可能となっており、利用にあたっては従業員と会社との話し合いによって、適用されている。該当者にとっては、継続的な就労を行うために必要とされる仕組みで、該当者の事情によって、臨機応変に時間等を設定できるように工夫しているところが実効性を高めている。

◆子育て支援

 同社は、ファミリー層向けの施設でもあることから、顧客向けの託児施設などがサービスの一環として充実している。これらを子育て世代の従業員は、福利厚生として利用可能であり、土日など保育園が休園の際などに、一時預かりで利用することが出来るようにするなど、子育て世代にやさしい職場環境を整備している。

◆人材育成、キャリア形成支援

 星野リゾートグループでは、採用時のスキルよりも、採用後のキャリアアップに強い関心を寄せており、同社においても、従業員への閑散期のキャリア形成支援を積極的に取り組んでいる。また、従業員に有効な時間活用を推奨し、制度の積極的な利用を促すことは上司の務めとなっている。
 キャリア形成支援は、グループ全体で取り組む支援であり、人材育成の柱となっている。この支援は、会社が在職期間や役職などにより決定する従来型のプログラム制度ではなく、非正規雇用も含め従業員が自ら計画し、参加していくことが重要視されている。教育制度、研修制度の代表的な例として次のような項目がある。
• 社内ビジネススクール「麓村塾」
• 接客基本技能研修
• ユニットディレクター研修
• 総支配人研修など
 研修制度の中で最も特徴的な仕組みとして、社内ビジネススクール「麓村塾」があるが、自らの意思で、自らの時間を投資して受講する。をテーマに、自らが描くキャリアに応じてサービスの幅を広げる「文化講座」や、ビジネススキルを上げる「ビジネス講座」、地域の魅力への知見を深める「地域文化講座」など全国の事業所で開催されるバラエティーに富んだ100種以上の講座を受講できる。講座内容は、マーケティング、パソコンリテラシーといった基礎的な講座から、戦略立案、組織マネジメント、落語や温泉、ワイン、方言、歴史探索など、実際の業務にすぐに役立つ講座を中心に構成するよう工夫している。


2.効果と課題、今後の運用方針

◆正社員転換制度を利用した従業員が重要な仕事を担う

 正社員転換制度が本格稼働してからまだ日も浅いが、上司の推薦を受け、難関のプレゼンテーションをクリアし、正社員に転換した従業員のモチベーションは非常に高く、その効果が周囲にも波及していく。
 また、契約社員やアルバイトにとっては、正社員転換した従業員を目標に、将来へのステップを具体的に実感できるので、努力に対する成果を期待し、さらに努力する好循環が生まれている。
 会社としては、正社員転換に伴い給与等の負担増があるが、社内の雰囲気、当事者の意識を肌身に感じると、負担以上の効果があると実感している。彼らのような優秀な人材は簡単に採用することはできないし、仮に採用するにしても相応の負担は避けられないので、同社にとって正社員転換は負担以上に大きな効果があったといえる。また、キャリアアップ助成金を活用することにより、経費的な負担を軽減できたことも大きい。

◆従業員が将来の目標をしっかり見据えている

 自らのキャリアも役職や在職期間によって自動的に決まるものではなく、自己申告によって計画されていく。例えば、施設のユニットディレクターや総支配人も立候補制であり、立候補したスタッフは自ら運営戦略や目標を立案し、全国規模で開催される全社プレゼンテーション大会(年2回開催)にてプレゼンを行う。これはテレビ会議を通じて全国に生中継され、各地で聞いているスタッフからのアンケートなどにより、次期ユニットディレクター・総支配人が決定される仕組みとなっており、入社2年目から立候補する従業員もいる。
 そのため、従業員との定期的な面談による目標設定の支援や計画立案をサポートし、それを実施する場合の時間確保も社員全員で協力できる体制を敷いている。
 従業員自らが自己のキャリア形成の計画を立て、行動していくことができる体制は、将来の目標を確立させる非常に良い仕組みとなって機能しており、それを通じて従業員が組織の中で自立した活躍をすることが、同社の活力の源泉にもなっている。

◆環境が多様となり、従業員も多様化、異文化コミュニケーションをフォロー

 訪日外国人の数は、ここ数年大幅な増加傾向にあり、2016年は、11月末時点で2200万人となり、前年同期の22.4%アップとなった。同社もその影響を受け、集客には好影響であるが、外国人へのサービスは、日本人とは異なる配慮も必要となる。
 また、グループとしてもバリなど海外拠点の増加に伴い、外国人労働者も増えてきたため、今までのような日本人どうしのコミュニケーションだけでは、十分に社内の意思疎通が図れなくなりつつあり、従業員に対するフォローをより手厚くしていく必要がある。

◆同社が目指すのは、「サッカーチーム型」のスタイル

 北海道の中心に位置し、自然が豊かな場所である一方、住環境としては不便な側面もあり、地元採用者がほとんどいない中、道外から引っ越してくる従業員にとっては、住環境の問題は大きな課題となっている。
 そのため、2017年中を目処に新しい寮を建設予定で、その他にも従業員用のアパートも検討している。
 社員全員が同じフィールドに立つチームメイトとして活躍できるよう、フラットな組織を目指しており、プレイヤー一人ひとりが自ら経営判断して行動する組織文化の育成に取り組んでいる。言いたいことを言いたい人に直接言える風土を育むため、マネジメントとして従業員の意見を大切にし、共有することで、改善につなげていっている。


3.活躍する従業員の声

マウンテンオペレーション
後木 洋祐氏

年代 30代 性別 男性
勤続年数 8年
キャリアアップの過程 2008年ウィンターシーズンだけのアルバイトとして入社。5年間のアルバイト勤務を経て2013年に契約社員へ。2015年には正社員に転換し、現在はマウンテンオペレーションとして、夏は雲海テラス、冬はスキー場の運営を担当している。


◆趣味のスキーがきっかけでアルバイトとして入社、契約社員を経て、正社員へ

 趣味のスキーを生かした仕事がしたくて2008年12月にウィンターシーズンのみのスキーパトロールとしてアルバイトで入社した。
 5年間ウィンターシーズンだけトマムで働いていたが、この土地に対する愛着がどんどん深まっていき、オールシーズンで働きたいと考えるようになり、2013年に契約社員への登用制度に応募し、契約社員となった。トマムタワーのサービスチームに配属され、スキーシーズン以外はフロント、レストランなどの業務を行うようになった。2015年には正社員転換制度にも応募し、無事合格し、正社員へ転換した。現在は、夏は雲海テラス、冬はスキー場のパトロールなど、山に関わる業務全般を行うマウンテンオペレーションの運営を担当している。

◆風通しの良い働きやすい職場でトマムの魅力を創造

 正社員転換制度へ応募するきっかけとなったのは、仕事が段々と面白くなってきたこともあったが、これまでに様々な職場を経験してきたなかで、これほど風通しが良く、信頼関係のある職場は初めてだったので、ここで長く働きたいと思うようになった。
 また、雇用形態の垣根が無く「誰が」ではなく「何を」企画、提案しているかを認めてくれる会社である。新たなトマムの魅力は何か、お客様に楽しんで貰えることは何かを自ら考えて実行していくことは、とてもやり甲斐があり、楽しんで仕事をすることが出来ている。
 一例だが、トマムスキー場では、解放エリアといわれる通常のコース外を滑走することができる。そのためには、開放理念合意書へのサインをお客さまにしていただく必要があるが、朝から記入場所は混み合う。すぐにスキーをしたいお客さまにとって、手続きは面倒でストレスになる。そこで、事前にオンライン登録できるシステムを提案し、導入してもらった。私もスキーヤーなので、朝、すぐにでもスキー場に行きたい。ちょっとした改善だが、お客さまの目線で考えれば、やるべきことも見えてきて、お客さまの満足度はぐんっとアップする。今後も、トマムの魅力を引き出し、お客様にとって楽しい施設にしていきたいと考えている。

◆︎経営参加の意識も芽生え、将来の目標もしっかり持つ

 冬の仕事の一つのスキーパトロールだが、スキーヤーの安全や滑走コースの管理といった、「保守・保全」を担当する仕事である。当然、名目通りの内容を行うことが前提となっているが、その部分をやっているだけでOKと考えているわけではない。見方を変えると、スキー場内を誰よりも熟知している人間なわけなので、スキーやスノーボードをやらないお客さまも楽しめるスキー場をつくりたいと思っているし、それもこの仕事の範疇だと思っている。様々なアイテムや環境を整えていって、国内外の方々から「北海道のトマムという場所に、面白い観光地があるよ!」と評判になるような、トマムの魅力創造をしていきたい。
 単にマニュアル上の仕事をやるのではなく、視野を広げ、顧客目線で仕事を見直すことでできることは沢山あるし、提案も真剣に検討してもらえるので、本当にやり甲斐がある。