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  • 正社員への転換 ~多様な正社員へ~
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  • 職務を限定した正社員
  • 処遇改善
  • 人材育成
  • キャリアアップ助成金

事例30 佐伯広域森林組合

事例 30

佐伯広域森林組合
正社員転換制度と職務限定正社員転換制度の取り組みで、人材の定着化と熟練作業の後継者育成に向けて


業種 農業,林業
本社所在地 大分県
正社員数
(平成28年9月30日現在)
104名
正社員(※1) 38名(男性32名、女性6名)
職務限定正社員(※2) 66名(男性64名、女性2名)
非正規雇用労働者数
(平成28年9月30日現在)
43名
短期雇用社員(※3) 3名(男性3名 女性0名)
契約社員(※4) 29名(男性22名 女性7名)
高年齢雇用継続社員(※4) 11名(男性11名 女性0名)
非正規雇用労働者の主な仕事内容 事務、製材業務、丸太のはい作業業務、建築用材加工業務、運搬業務、山林調査補助業務

取組みのポイント
・正社員化の取り組み
⇒人材確保と定着
・正規、非正規の分け隔てない処遇改善への取り組み
⇒職場、職務の固定化で離職を防ぐ

(※1) 所定労働時間:フルタイム(7時間45分)、無期雇用、賞与年2回支給、退職金制度あり
(※2) 所定労働時間:フルタイム(7時間45分)、無期雇用、賞与年2回支給、退職金制度あり
(※3) 所定労働時間:週30時間未満、有期雇用:初回3か月(2回目以降の更新6か月〜1年)、賞与なし、退職金制度なし。
(※4) 所定労働時間:フルタイム(7時間45分)、有期雇用:3か月(2回目以降の更新6か月〜1年)、賞与なし、退職金制度なし
(※5) 所定労働時間:フルタイム(7時間45分)、60歳で退職した正社員及び職務限定正社員を65歳まで1年の有期雇用、賞与原則なし、退職金制度なし

PDFデータ

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 同組合は、大分県南部、宮崎県との県境に位置し、平成2年に当時の佐伯市・弥生町・蒲江町・本匠村・宇目町・直川村それぞれにあった森林組合が広域合併を行い、大分県南部流域の9市町村にまたがる組合として発足した。積極的な設備投資と従業員の努力により地域の林業を支え、全国でも屈指の生産量を誇る組合となっている。
 同地区では、戦後、薪や炭などの原料になる広葉樹が主体であったが、化石燃料への転換に伴い、現在では建材需要が見込まれる針葉樹が主体となっている。また、同組合の「さいき杉」は、古くは造船用として利用され、現在は住宅用建材として利用されている。
 同組合では、「がんばろう国産材!!」をキャッチフレーズに、苗木生産から植林、造林地の保育管理、間伐の森林整備、伐採した木材を選別し製材業者への共販、丸太を角材や板材などに加工した製品販売を行っている。また、木材住宅の普及拡大を目指した森林ボランティア事業や、新たな森林作りによる二酸化炭素の貯蔵・排出抑制を通じ、地球温暖化防止の役割を持たせた木材利用までを一つのサイクルとする「佐伯型循環林業」として、木材生産と「温暖化ガスの吸収源としての森林対策(森林のもつ公益機能保全)」の両面から持続可能な森林管理を行っている。
 佐伯市は、大分県最大面積の市であり、組合が管理する森林は県内最大となっており、本所及び支所3か所、共販所2か所、工場2か所の合計8か所の事業所が広域に配置されている。また、社員数は、平成28年9月現在で147名が在籍し、全国的にも大きい森林組合である。




1.取組の内容

きっかけ

◆人材の定着に向けての正社員化の取り組み

 森林組合の業務は、事務所や工場などの事業所内業務と屋外での業務となるフィールド業務がある。一般的に正社員での雇用は、事業所内の業務、特に事務所内での業務が中心となっており、フィールド業務では、有期雇用など非正規雇用が多い。同組合では、主に新卒者を正社員として雇用しており、中途採用者を契約社員として雇用している。契約社員は、1年~2年の有期雇用契約が原則となっていた。
 正社員への転換は、制度導入前から一部で行われていたが、明確な基準もなかったため、契約更新時期には、契約更新や雇止めへの不安を感じる契約社員も多く、職の安定、生活の安定を求めて転職する社員が相次いでいた。そのため、組合の労働力は失われ、と同時に、生産能力も低下し、経営層のみならず、従業員も大きな懸念を抱いていた。
 また、林業を含む一次産業では、人材の高齢化と後継者不足による将来の労働力不足は避けては通れない問題であった。慢性的な人材不足に歯止めをかけるため、組合内で検討を行い、公益財団法人大分県総合雇用推進協議会に専門的な助言を求めることとした。協議会からは、国が進める非正規雇用労働者の正社員への転換や多様な正社員の活用などの説明とともに、助成金の活用ついても助言を受け、これを組合内で検討したところ、従業員に最も効果的で、安心して働くことができる制度という観点から、キャリアアップ助成金を活用した契約社員の正社員化に取り組み、平成27年6月に正社員転換制度を正式に導入した。

◆職務限定正社員制度を追加導入

 同組合では、正社員転換後も、基本的には職場や職務の変更はなく、また、事業所ごとに森林保全・製材など業務が専門化しており、職務、職種も異なる。就業規則についても事業所ごと、職務、職種ごとに作成・周知していたことから、従業員の働き方の選択肢を拡げるためにも、職務限定正社員として、これまでの正社員と区分を明確化し整理することとした。これにより、職務限定正社員制度を創設し、労働局の事業主支援アドバイザーの助言も受けつつ、キャリアアップ助成金の「多様な正社員コース」を申請することとした。

◆正社員転換概要

 正社員及び職務限定正社員転換制度の対象は勤続6ヶ月以上の契約社員で、以下の条件を満たした者が対象となる。これら転換制度は、勤続6ヶ月間以上であれば、本人が希望する場合に申し出ることができ、転換時期については、個別協議の上、決定している。
① 正社員及び職務限定正社員の勤務時間・日数で勤務が可能な者
② 勤務成績及び勤務態度が良好である者
③ 筆記試験及び面接試験に合格した者



転換前と転換後の処遇の変化





雇用転換実績





◆人事評価制度で社員の能力向上を図る

 植林地や工場の作業に携わる社員は、他の職務、職種と比べ危険度が高い。この為、安全衛生教育が必須であり、入社段階から力を入れているが、林業では、命に関わる事故の可能性もあるので、単に教育で終わらせるのではなく、しっかりと身に付けさせることが課題となっていた。
 そこで、同組合は、安全衛生教育を徹底させ、併せて社員の能力向上を図ることを目的に、人事評価制度に安全衛生の観点を組み込んだ形で運用している。人事評価制度は、社員の能力把握だけではなく、次の目標設定につながるので、社員本人の意識づけという観点からも機能している。また、同組合の制度は、評価基準が明確に示されているので、評価する側、される側の双方に理解が得られ、社内に不満が起こらないように工夫されている。
 人事評価制度は、管理職と非管理職それぞれ、半期ごとに目標シートを作成している。目標シートの縦列には、行動区分として基本行動と成果実現行動の項目があり、横列には①目標設定項目、②具体的取組事項、③実施スケジュール、④目標を達成した時のイメージ状態、⑤ウェイト、⑥成果報告(自己報告)の項目を設け、従業員に記入させ、それを基に上司である管理職が評価と指導事項を記入し、二次評価、最終評価を行い翌年期の昇給に反映している。
 その他、社員からの「休日を増やして欲しい」という要望に応え、週休2日制の導入を進めたが、その一方で非正規雇用の場合は日給制であるため、休日が増えると年収が下がってしまうという課題があった。給与の増額は困難であったため、社員と話し合いをし、毎日の休憩時間を15分短くすることにより、休日の増と年収の維持を両立することができた。小さなことではあるが、社員との話し合いを通して、働き方の満足度を高めることが出来たと感じている。









2.効果と課題、今後の運用方針

◆有期雇用から正社員及び職務限定正社員への転換で、定着率がアップ

 ここ10年で社員数は110名から147名(平成28年9月現在)に増員している。正社員及び職務限定正社員への転換で、60歳定年まで、さらには定年後65歳まで高年齢雇用継続社員としての就業が可能となり、また、有期雇用社員時には支給されていなかった年2回の賞与と退職金制度が適用されることとなる。社員の不安は、大幅に解消されるとともに、職の安定、生活の安定が図られたことによる定着率の改善にもつながっている。
 正社員へ転換した社員は、当事者意識が向上するとともに、より責任感を持って業務に取り組んでいる。また、職場環境や業務上の改善点について、社員自らの提案が数多く出てくるようになった。社員の提案を、組合が積極的に採用することにより、提案しやすい環境が生まれ、更なる提案が出てくる。こうした好循環により、組合は活性化し、生産性の向上が図られ、長期スパンで見ると労働生産性の向上に繋がっている。

◆今後の計画として、ジョブ・カードの導入で人材育成を行い、スキルの高い社員を増やす

 同組合も社員の高齢化は避けて通れず、全社員147名のうち43名が50歳以上の社員となっており、その割合は30%近くになっている。若年労働者の確保に向け、正社員転換や処遇改善を進めているが、社員の平均年齢を飛躍的に下げるまでの効果は出ていない。10年後には、高齢の労働者の大半は退職することになり、事業の継続的な成長と安定を図るためには、人材確保と人材育成が、同組合にとって喫緊の課題となっている。

  人材育成の取組として、同組合では、ジョブ・カードを導入し、正社員の経験が少ない非正規雇用労働者に対して、有期実習型訓練を行うことを計画している。予定しているカリキュラムは、森林管理・総務事務コース、ボイラー管理業務作業訓練コース、製材工養成訓練コース、現業コース(製材及び木材加工)など複数のコースで、同組合の業務全般をカバーする横断的な内容となっている。講師は、外部及び同組合のOBを招き、視野が広がるようなOFF-JTを組み込むなど、訓練生の将来にも配慮した内容となっている。これらの計画は、現在、まだ案の段階で、大分県地域ジョブカードセンター(大分商工会議所)と打ち合わせをしている。できるだけ早期に労働局に計画を提出し、認定を受けたいと考えている。

◆「上から改革」を「下から改革」にして、若手でもリーダー意識持つ育成制度の取り入れ

 「社外派遣制度」は、社員の交換を前提として、他企業に半年~1年間社員を派遣し、他企業おける業務や雇用管理などについて体験してもらう制度である。同組合では、林業だけ、自社だけといった限られた知見ではなく、広く一般社会の経験を積んでもらうことを期待して、この制度の導入を検討している。この制度は、正規社員、非正規雇用の区別なく、全員が対象となっている。
 「改善提案制度」を導入している企業は多いが、特に安全衛生面での効果が大きく、同組合でも導入を前向きに検討している。同組合の考える「改善提案制度」は、社員の提案に対して少額ではあるが報奨金を支給し、提案が採用された場合は別途報奨金を支給する仕組みとなっている。自ら考える社員を育て、さらに社員のモチベーション、安全衛生意識、生産性などの向上に繋がればとの思いがある。
 その他、同組合では、職場環境や労働条件等について、新入社員が、上司だけではなく、気軽に相談できる環境を整備するため、若年層の離職対策として有効であるメンター制度の導入を検討している。
 同組合は、これらの新しい制度を通じて、従来の「上から改革」を「下から改革」に変更していきたいと考えている。若い社員にもリーダー意識を植え付ける育成制度を導入し、組織の意識改革を進め、新しい林業を目指せる組織を作っていくことを標榜している。

  






3.活躍する従業員の声

宇目工場 染矢順一氏

年代 30代 性別 男性
勤続年数 2年
キャリアアップの過程 2014年7月入社、1年間の有期契約社員を経て、2015年7月から職務限定正社員に転換。現在は宇目工場で梱包、高速モルダーの作業に就いている。

◆いつかは正社員になりたいと希望を持ち続け、職務限定正社員に転換

 当社に入るまでアルバイトでの生活が長く、将来への不安が消えなかった。アルバイトの間は、ずっと安定した正社員の仕事に就きたいと思っていたが、正社員の仕事はなかなか見つからなかった。前職のアルバイトでは販売の仕事をしていたが、仕事は正社員と変わらなかったので、正社員になれることを期待していたが、当社のような正社員転換制度はなく、正社員になれる可能性のある仕事を探そうと考えた。縁あってこの組合にお世話になることができ、採用時は有期雇用契約社員として入社したが、正社員転換制度の説明を受け、いつかは正社員になると希望を持ち続け、仕事も積極的に頑張ってきた。転換制度には、勤続年数の条件があったので、それを待って上司に相談したところ、翌年には晴れて職務限定正社員に転換することができた。本当に感謝している。正社員転換の道があることは、非正規社員であっても仕事への意識も変わってくるし、何よりも未来に夢を抱けることが大きい。
 正社員になって嬉しかったことは、契約社員の時にはなかった賞与が支給されたときです。定年まで働けることで職も安定し、生活も安定したことにより、益々がんばろうという気持ちになっている。
 今後は、普段の業務で迷惑をかけないようにし、他の作業工程も覚えたい。また、利用できる教育制度があれば、積極的に勉強するようにしたい。



宇目工場 今山龍矢氏

年代 20代 性別 男性
勤続年数 2年
キャリアアップの過程 2014年3月入社、1年4か月間の有期契約社員を経て、2015年7月から職務限定正社員に転換。現在は宇目工場で製品を仕分ける作業等に就く。


◆職務限定正社員になり責任感も強くなり、職場改善のための意見も言えるようになった

 前職は、実家の農林業を手伝っていた。個人事業でもあり、農林業は天候等に左右されやすい。収入自体に不満があったわけではないが、収入が不安定であることは心配だった。親に依存した仕事でもあり、成人として自立をしたいという思いや、将来のことを考えれば、一般企業で安定した職に就いてみたかった。
 最初は、有期雇用契約社員として入社し、更新の繰り返しになるのではないかと不安があったが、正社員転換制度の説明を受けて、しっかり頑張って努力していこうと思った。翌年には正社員転換制度の条件が整い上司に相談したところ、職職務限定正社員として転換できた。収入もアップし、生活もさらに安定した。上司と周囲の協力には、とても感謝している。
 職務限定正社員になったことにより、責任感も強くなり、職場改善のための意見も言えるようになった。契約社員では、やはり仕事への取組でも、発言でも、あまり積極的なことをいうのは、気がひけるところもあり、遠慮していたが、正社員になった今ではその考え方は全く逆転している。
 また、周囲も意見を聞いてくれるし、期待してくれていると実感できている。仕事は、まだまだ覚えることは多いが、正社員になって、将来も見えるので、しっかり仕事を身に付けていきたい。
 今後は、自身のスキルを向上させもっと広い視野で業務改善に取り組み、ステップアップして主任クラスを目指して業務に取り組みたい。