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事例31 北新金属工業株式会社

事例 31

北新金属工業株式会社
6か月の派遣期間後の派遣社員から正社員への転用により、優秀な人材を確保


会社設立年 1972年
本社所在地 北海道恵庭市戸磯345番地24
業種 製造業(金属の切削・加工業)
正社員数
(2017年6月1日現在)
54名(男性37名、女性17名)
非正規雇用労働者数
(2017年6月1日現在)
派遣社員(同社では「契約社員」と呼称)11名(男性4名、女性7名)
<正社員+非正規雇用労働者の内訳>
(男性41名、女性24名)
(20歳代8名、30歳代11名、40歳代14名、50歳代14名、60歳代17名、70歳代2名)
資本金 2000万円
売上高 15.3億円
取組概要 <背景>
・日本最強工場になるため人員確保が必要
・中途採用者は定着が難しい
<内容>
・6か月の派遣期間後、派遣社員から正社員に転換
・正規・非正規の分け隔てがない処遇・人材育成
・70歳代が活躍する高齢者の活用
<効果・結果>
・同社の業務内容や企業風土に適した優秀な人材の確保、定着
・従業員のモチベーションアップ
・社員数の増加:2015年45名→2017年54名
・離職者の減少:2015年7名→2017年3名
・売上高の増加:2015年14.0億円→2016年15.3億円

PDFデータ

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 1962年に大阪市において切削加工所(1985年に新庄金属工業株式会社に改組)として事業を開始した後、1972年より北海道恵庭市に新工場を設置し、新庄金属工業グループ 北新金属工業株式会社として操業を始めた。
 現在は、自動車部品、各種機構部品、医療用部品等、あらゆる分野の商品加工を手掛ける。特に加工においては、独自工法の開発に力を注ぎ、提案型企業として顧客の業務に設計段階から従事する。
 大阪の新庄金属工業が多品種少量生産対応であるのに対して、北海道の北新金属工業は大量生産対応の精密切削工場として運営する。
 365日24時間稼動による高生産力、厳しい品質管理手法や検査体制の導入による高品質力を推進し、三度にわたり大阪府・北海道より「中小企業経営革新支援法」の認定授与を受ける。「ものづくりを支える北海道の基盤技術企業100選」(北海道経済部商工局産業振興課、2007年2月)、「北の大地の未来を担うものづくり企業」(北海道経済部商工局、2010年10月)、「はばたく中小企業・小規模事業者300社」(中小企業庁、2016年3月)にも選定され、好事例として取り上げられる。




1.取組の背景

◆定着が難しい中途採用者

 同社では、人材を確保する方法として、従来、新卒採用、中途採用、派遣社員活用の3つを行ってきた。派遣社員については、以前から正社員に転換し、継続して働いてもらうこともあったが、3か月を単位として契約を更新・終了することが通常であった。しかし、中途採用では書類や面談だけで選考を行うため、十分に状況を把握できず、採用後に仕事や職場に馴染めず、結果的に辞めていく者もいた。年間に5名程を中途採用していたが、このうち1年後に在籍するのは2名と、なかなか定着しなかった。

2.取組の内容(正社員登用)

◆日本最強工場となるために必要な人員確保

 金属の切削・加工業では、1990年代後半以降、多くの企業がベトナム・タイ・中国等に生産拠点を移した。国内大手メーカーのアジア進出や円高がその主な要因である。当時、アジアに拠点がないと、見積もとってもらえないと言われた。また、国内に拠点を置いていては、法人税や人件費等の面で不利な点が多く、企業経営が難しいと考えられた。
 そうした中で、同社は国内での生産・事業継続にこだわった。それは、二代目社長 益山利二氏の国内地域での雇用を守るという強い思いによる。
 同社では、「会社に関わる全ての人々の幸せを追求し、社会に貢献する」を理念に掲げる。「会社に関わる人々」とは、第一に「社員とその家族」で、「協力会社の方々」、「顧客」、そして「地域社会の方々」と続く。「社会に貢献」は、「納税」、「社員の成長」と並んで「雇用」をめざす。さらに、これらの目的達成のための手段として、「会社を継続し、成長させる」、「継続・成長の為、利益を上げる」。
 同社の経営方針の1つが、「日本最強工場を目指す」。パナソニックをはじめとする大手顧客がアジアに拠点を置き、多くの同業者がアジアで生産活動を展開する中で、海外に引けを取らず、「会社に関わる全ての人々の幸せを追求し、社会に貢献する」。そのために日本最強工場をめざし、同社では「365日24時間稼動」で事業を推進するが、この生産体制を確立・維持するために、多くの優秀な人手を確保することが必要なのである。



経営理念と経営方針


<経営理念>

<経営方針>



◆6か月の派遣期間を経ての派遣社員から正社員への転換制度

 多くの優秀な人手を確保する方法として、同社では、派遣社員から正社員への転換制度を整備・運用している。
 派遣会社と契約し、派遣社員として人材を派遣してもらう。その後6か月を目途に、その間の勤務状況や仕事・職場への適性などを踏まえ、継続して働いてもらいたいと考えた場合には、本人の意向も尋ねた上で正社員へ転換する。6か月の業務遂行では判断できなければ、さらに派遣期間を延長して、様子をみることもある。
 派遣会社とは、当初より正社員への転換を前提とした契約を結んでおり、派遣社員から正社員への転換にあたっては、派遣会社に転用費用を支払うこととなっている。




◆取組にあたってのポイント(転換前から正社員と区別なく)

 同社では派遣社員は、派遣会社の規定にもとづく処遇面以外は、業務や職場での対応などの点で転換前から正社員との区別がない。
 まず、業務面では、派遣社員も正社員のサポート的役割ではなく、それぞれ担当業務を割り当てられ、まかせられる形で仕事をする。派遣社員が正社員と異なるのは、朝礼には出るが発表の当番がない、掃除当番がないといったことで、仕事の内容は変わらない。
 また、同社では経営方針の1つとして、目的を達成するための「目的、ビジョン」、「情報」、「成果」の共有を掲げるが、この点についても派遣社員と正社員に違いはない。同社では、年1回全社員を対象に決算報告会を開催し、前年の事業総括と今期の事業計画の説明を行い、利益の20%を社員に還元することを約束する。この決算報告会にも、派遣社員は参加する。日常的に職場単位で実施するさまざまな集会にも派遣社員は参加し、情報の共有という点で正社員との境界を設けない。
 こういった、転換前から正社員と区別のない社内の環境整備を作ることにより、転換後もスムーズに社内に溶け込むことができる。



◆以前の中途採用としての位置付け

 前述の通り、同社では、人材を確保する方法として、従来、新卒採用、中途採用、派遣社員活用の3つを行ってきたが、中途採用者は定着が難しかった。このため、7~8年前より中途採用を廃止し、派遣社員として同社の業務に就き、一定期間を経て正社員に転換する方法の比重を高めた。同社では、派遣社員から正社員への転換制度は、中途採用に代わる人材確保の手段として位置付け、推進しているのである。
 現在、同社の従業員65名中11名が派遣社員であり、全体の2割弱を占める。同社の業務プロセスである、材料の受入検査→切削加工→洗浄→外観検査→出荷検査のいずれの工程においても派遣社員を活用している。これまでの実績として、2008年以降22名の派遣社員が正社員への転換を果たしている。

人材確保の方法



3.取組の内容(その他)

◆定年のない高齢者の活用

 その他、同社の人材確保に向けた取組として、高齢者の活用がある。
 現在、同社では定年を67歳とするが、実際には社長からみて体力・気力・技術等の点から業務を継続していける者に関しては、70歳代で働く者もいる。従業員65名中60歳代が17名、70歳代が2名と、60歳代以上が全体の約3割を占める。
 金属の切削・加工の工程において、機械のセッティングや、刃物を研ぐなどの機械や部品のメンテナンス、管理業務など、体力的に負荷の小さい業務も多く、経験とスキルをもった高齢者が活躍する場面は多い。また、「365日24時間稼動」を推進するため、休日や日中以外の時間帯に働く者が必要だが、高齢者は融通を利かせ、そうした日時の勤務に対応してくれることも多いという。
 上記の内容を踏まえて、経営理念として掲げる「社員の成長」にもとづき、生涯現役をめざし、70歳になった時に先があることが必要であり、近々、定年はなくす予定である。




4.効果と課題、今後の運用方針

◆職場にあった適切な人材を確保、定着も促進

 同社では、派遣社員を対象とする正社員転換制度の効果として、近年、着実に従業員数を増やし、人材確保を図っている。正社員数は、2015年の45名から2017年には54名に増加した。また、以前よりも社員が定着するようになったことも、正社員転換制度の効果としてあげることができる。離職者数は、2015年の7名から2017年には3名へと減少し、定着率の向上にあわせて、売上高は14.0億円から15.3億円に増加した。
 先述の通り、以前の中途採用方式では、仕事や職場に馴染めず辞める者がいたが、これに加えて、金属の切削・加工という業務の性質上、取り扱う材質や薬液の皮膚への影響や匂いなど体質上の問題で辞めていく者もいた。こうした仕事に関わる能力・スキル、企業理念や職場文化との適合、周囲との協調性、体質上の適否など、同社で働くにあたってのあらゆる面での適性を、派遣社員としての業務期間中に会社と本人が互いに確認する。その上で正社員に転換するという流れは、職場にあった適切な人材を集め、自ずと定着促進につながっているのである。
 一方、派遣社員から正社員に転換した者にとっては、安定した仕事と収入を確保することで、仕事に対するモチベーションがあがるという効果がある。さらに、70歳を過ぎて活躍する高齢者を間近に見ることで、刺激を受けるとともに、自分の将来像を思い描き、同社への定着を促進している状況が推察される。

◆社員とその家族とともに100年企業をめざす

 同社では、今後もこの正社員転換制度を続けて実施していく方針である。
 正社員転換制度については、派遣社員から正社員へと直接雇用に切り換えることで、会社としては、人件費をはじめコスト面での負担が大きくなる。しかし、こうしたデメリットも、優秀な人材、会社や職場に対して適性の高い人材を雇用するために必要なコストと考え、今後も6か月の派遣期間を経ての派遣社員の正社員転換を継続する。
 同社では、「100年企業」の推進、実現をめざす。1962年の前社長による創業を起点に、現在の二代目社長を経て、2062年に創業100周年記念パーティの場で三代目社長が四代目社長に引き継ぐ、それまでの主な出来事をロードマップとして描く。同社の3つ目の経営方針は、「ダム経営で永続企業を目指します」。第一のダムは、「人材」のダムである。同社にとって派遣社員としての6か月の期間は、2062年の創業100周年に向け、「100年企業」として一緒にやっていく仲間づくりのための期間なのである。

5.活躍する従業員の声

業務課 Kさん

年代 40代 性別 女性
勤続年数 1年3か月
キャリアアップの過程 2016年4月に派遣社員として同社業務に従事。
6か月の派遣社員としての勤務を経て、2016年10月より正社員転換。
派遣社員の頃から、生産品の外観を検査する外観作業を担当。

業務課 Hさん

年代 40代 性別 女性
勤続年数 1年3か月
キャリアアップの過程 2016年4月に派遣社員として同社業務に従事。
8か月の派遣社員としての勤務を経て、2016年12月より正社員転換。
派遣社員の頃から、生産品の外観を検査する外観作業を担当。

◆6か月で正社員転換、70歳まで働けることが魅力で見学

 KさんとHさんは、以前に同じ職場でパートとして働いていたが、派遣会社に登録し、短期で派遣社員として働いたことをきっかけに、派遣社員として働こうと考えるようになった。派遣社員は、社会保険制度に加入し、各種福利厚生制度が整備されているなど、パートにはない利点があった。
 派遣会社から紹介されたのが同社で、6か月で正社員に転換できる可能性がある、70歳まで働くことができる、という点に魅力を感じ、二人で見学に行くことにした。工場を見学したところ、これまでと仕事内容が大幅に変わらないことを知り、安心した。扱う製品も、拡大鏡や顕微鏡を使って外観をチェックするという作業も、これまでの仕事と同じであった。その場で工場長の面談を受け、工場長からも6か月で正社員になれる可能性があることを聞き、同社で働くことを決めた。
 二人とも、1年を通じて安定した働き方をしたいという思いがあった。パートとして働いていた際は、季節により業務の繁閑の差が大きく、収入も月により異なった。KさんもHさんも、子どもがある程度大きくなって時間が自由になる一方で、住宅ローンや教育にお金がかかる。このため、安定的にしっかりと働きたいと考えるようになったタイミングで、月や季節によりばらつきのあるこれまでの就労状況を改善したかったのである。




◆派遣時代も社員と区別なく、毎日必死

 二人一緒に、2016年4月1日から派遣社員として同社で働き始めた。毎日覚えることが多く、仕事に追われ、必死でがんばった。正社員に転換したいという気持ちはあったが、そのためにアピールする余裕はなかった。
 Kさんは、6か月が経つ頃に工場長から仕事を続けるかどうかを尋ねられ、継続の意思を伝え、同年10月1日より正社員として働くこととなった。Hさんも、同様に同年12月1日に正社員に転換した。
 二人とも、「正社員になってからも、派遣時代とやっていることは変わらない、派遣時代からよくしてもらっていた」と言う。
 派遣社員の頃から、仕事の面では正社員と区別がなく、仕事をまかされていた。職場で開催する品質会議や決算報告会にも、派遣社員の頃から参加していた。担当業務である外観には問題がなくても、製造のプロセスで問題があった場合には、全員で共有する。そういう場で専門用語を聞き、意味はわからないが、担当以外の仕事に興味を持った。また、決算報告会では、社長から全社員と一緒に会社の事業計画について説明を受けることで、会社全体に関心をもつようになった。

◆仕事は大変だが、楽しみもある

 仕事以外の面も、派遣社員の頃から社員と区別がなかった。派遣社員も、社員と同様に会社で実施する健診を受診し、食事会や忘年会などのイベントにも参加する。電気ポットが欲しい、仕事中、足元が寒いといった意見・要望を出すと、会社はすぐに対応してくれる。職場では、60歳代・70歳代のシニアが、健康を気遣いながら、パワフルに活躍することに驚く。
 Kさんは「仕事は大変だが、楽しみもある」、Hさんは「仕事の内容が好き、一緒に働いている人も楽しい」と、今後も70歳まで同社で働く意欲をもつ。