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事例32 株式会社クレディセゾン

事例 32

株式会社クレディセゾン
雇用形態を「正社員」に一本化。企業成長を支える「会社を変革する人材」の育成に取組む


会社設立年 1951年
本社所在地 豊島区東池袋3-1-1
業種 金融業(クレジットサービス・リース・ファイナンス等)
正社員数(※1)
(2017年9月16日時点)
3,796名(男性915名、女性2,881名)
資本金 759億29百万円
売上高(単体)
(2017年3月時点)
2,386億円
概要 <背景>
・ビジネスモデルの変革に合わせた人材育成
・過去からも処遇改善や雇用形態転換制度を実施
<内容>
・総合職正社員、専門職正社員、メイト社員の区分を廃止し、一律「正社員」として無期雇用化
・職務給制度を導入し、同一労働同一処遇を実現
・役割等級に合わせた評価制度を導入

(※1) 2017年9月16日より全従業員が正社員化

PDFデータ

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 1951年に株式会社緑屋として設立した同社は、1976年に株式会社西武百貨店と資本提携し、1980年に株式会社西武クレジットに社名を変更。年会費無料のインターナショナルカードの発行やカード即日発行、セゾンカウンターの全国展開など旧来の常識を次々と打ち破り、1989年には現在の社名に変更した。
 同社は銀行資本から分離した「独立系カード会社」であるという特徴を持ち、資本系列や業種の枠に縛られることなく、多様な提携パートナーとコラボレーションビジネスを展開している。
 近年は技術革新や価値観の変化に合わせて、現金決済から付加価値の高いキャッシュレス決済への流れを加速させるべく、クレジットカードを中心に、ブランドプリペイドカードやスマートフォン決済などの新たな決済プラットフォームの構築に取組んでいる。また、カード事業を基軸としながらも、カードのみに依存しない経営の多角化・グローバル化を進めており、2016年からの3ヵ年中期経営計画の中では、「ビックデータ活用」を核としたネット事業、リース&レンタルや信用保証等のファイナンス事業、アジア各国で展開する海外事業などを中心に、オープン・イノベーションによる提携戦略を通じて、「アジアにおいて他にない新たなファイナンスカンパニー」に挑戦する。

1.取組の背景

◆企業の成長と「殻を破り挑戦し続ける人材の育成」

 同社では、以前より従業員の働きやすさの向上や雇用形態や年功序列に縛られない適正な能力評価等に取組み、「自分で気づいて自分で学ぶ」を促しながら人材育成を実施してきた。
 近年、金融業界においてもAI技術やIoTの導入等の最先端技術による事業構造の変革や事業業態の見直しが急務となっている。合わせて、アジア圏内でのシェアの拡大等、持続的な企業成長において取組むべき課題が山積する中、同社は2016年からの中期経営計画を発表。3年間で大幅なビジネスモデルの変革に取組むこととなった。中期経営計画の達成を支えるのは従業員であるが、従業員に対し、難しいことに果敢に挑戦し、常に前を向いて成長を志向する「ベンチャースピリット」を持つことを求め、人事部としても、「殻を破り挑戦し続ける人材の育成」を目指すようになった。

2.取組の内容(正社員登用)

◆人材育成のための戦略的な人事制度改革

 中期経営計画達成のために、自分で殻を破ることが出来る人材を求める中、翻って、現在の人事制度の枠組においてその達成が可能かを検討することとなった。多くの社員の声を聞く中で、現行の人事制度の問題点が明らかになった。
 一点目は雇用形態によって、昇格上限やキャリアパスの上限が定まっていることである。当時の人事制度では主に
○基幹職である「総合職社員」
○営業や会計等専門業務に従事する「専門職社員」
○総合職の業務支援やコールセンターを担当する「メイト社員」
の三種の雇用形態があった。総合職社員と専門職社員はいわゆる正社員であり同一の職能等級制度を採用していたが、専門職正社員は昇格上限があり一定の等級で昇格が止まってしまう。また、メイト社員は非正規雇用であることから昇格体系が他の二職種と異なっており、独自体系で人材を管理していた。そのため、優秀なメイト社員であっても業務を変更するためには雇用区分を転換するための転換試験を受験する必要があった。
 二点目は、職務等級制度を徹底しづらい点である。同社は昇格等の条件に年齢の下限を設定しておらず、基本的には優秀であれば年齢や勤続年数に関係なく昇格が可能な人事評価制度を採用していた。しかし、基本的な制度設計が職能等級に基づいていることや、メイト社員については職務習熟度を年功序列的に運用する等、完全には従業員一人ひとりの役割や職務に着目した人事制度とはなっていなかった。
 これらの点を踏まえて、同社では、中期経営計画の実施のタイミングで人事制度の改定を行い、より長期的かつ多角的な挑戦を通じて自己のキャリア構築に取組む環境を整え、挑戦する人材の育成を目指すこととなった。

◆雇用形態を「正社員」に一本化

 同社では、2017年9月16日、全社共通人事制度を導入し「同一労働同一処遇」を実現した。
具体的には、
 ・三種あった雇用形態を「正社員」で統一し、処遇も統一
 ・「役割等級制度」と「行動評価」の導入
 の二点である。
 一点目の雇用形態の統一に伴い、専門職社員は一律でいわゆる総合職に職種転換することとなり、メイト社員については、有期雇用から無期雇用に転換することに留まらず、一律で正社員(総合職)登用されることとなった。従業員の雇用形態が一本化することに伴い、雇用形態間の区別も撤廃された。具体的には昇格上限が廃止され、福利厚生等も従前の総合職社員の水準で統一されることとなった。


雇用形態の統一と変更点



  二点目の役割等級制度と行動評価の導入については、人事評価制度の抜本的な改革となった。
  雇用形態の統一に伴ってキャリアパスも一種類に統一されたが、以前の職能等級制度ではなく、社員の「業務内容」や「役割」に基づいて整理した、役割等級制度を導入した。



役割等級制度に基づくキャリアパス




 新しいキャリアパス制度の下では、社員の業務や役割遂行能力に応じて等級が設定されている。G1からG5までは一般職であり、会社にとって必須の業務が各等級に設定されている。M等級(マネジャー職)以上が労働基準法上の管理監督者に該当する。大卒新卒採用ではG3等級スタートで採用することを想定しており、事務職や電話応対・営業サポート等の一般的に業務補助的な業務についてはG1とG2等級を想定している。
 新しい役割等級制度の特徴としては、専門分野における高度人材についても、キャリアパスを設定したことが挙げられる。ラインマネジャーとして管理職業務を中心に担うM等級からGM等級へ進むルートと、個別の業務や専門性に特化した企業内専門家であるS等級からE等級へと進むルートを設定した。社員一人ひとりの希望や適性を考慮した上で、個人にとってより良い選択となるよう、ルート選択を支援する。
 この新しい役割等級制度の導入・運用のために、人事評価制度も一新した。従来の目標管理制度に加えて、行動評価制度を導入。社員に求める仕事の進め方を5つの要素に整理し、等級ごとに評価基準を設定した。社員の日々の業務遂行等や役割に応じて求められる行動をこの新しい基準によって評価する。



行動評価制度の5つの基準




 新しい評価制度の下では、2つの評価を実施する。1つは成果目標制度に基づく評価を実施し、社員と上長による目標設定とそれに伴う評価を実施する。もう1つの行動評価はコンピテンシー評価として実施し、昇格や給与額決定の参考情報として活用される。

 新しい役割等級制度と行動評価制度の下での昇格の判断は、「現在の等級での職務遂行能力」ではなく、「上位等級に求められる役割を果たせるかどうか」という基準で決定される。また、職務や役割に応じて等級を設定しているため、年齢や勤続年数によって等級が自動的に昇格することもない。これは、常に成長を意識して行動しなければならない、という意味では社員に厳しい側面もあるが、一方で、自身の志向やライフステージに応じてキャリアパスを決定できる、という点ではより多様な選択肢を提供している。少しでも早い成長・昇格を求める社員にも対応可能であると共に、「事務職でいたいから昇格はしない」「子育てに集中したいため、一時的に昇格は保留」といった個人のキャリア観に対応することも可能である。

◆取組にあたってのポイント(迅速な制度導入と全体の処遇改善)

 新しい人事制度の導入の検討を開始したのは、2016年9月であった。同社では2016年度から総合職正社員については人事制度の見直しを実施し、社員の「現在価値」に着目した制度に変更した。その際に、総合職正社員については職務給制度が導入されており、今回の制度改正へ繋がる仕組みの下地が出来ていた。ただし、この変更は既存の制度のマイナーチェンジに留まっており、全社を含めた抜本的な改革が必要である、という議論は継続しており、前述の人事制度の課題も明確になっていた。その中で、2016年からの中期経営計画に連動させて抜本的に人事制度を改める、という経営判断がなされ、今回の制度の検討が開始された。
 制度の検討自体は2017年3月まで行われ、人事部と事業部門のメンバーに取締役を加えたプロジェクトチームが結成された。既に制度変更を経験していることや、雇用形態・処遇が似ていることから総合職社員及び専門職社員の制度設計は比較的負担が少なかったが、メイト社員を新しい制度にどのように溶け込ませるか、についての検討は制度改定趣旨の貫徹と早い制度導入の両立の観点から難しい部分もあった。
 制度設計が完了し、社内の承認手続きも終了した後、一般社員への説明を2017年6月に行った。元々労働組合への説明は制度検討時から実施しており、大幅に処遇が変更されるメイト社員も組合員であるため、正式な説明に伴う混乱は生じなかった。
 新制度の移行に伴って、全社員が新しい役割等級制度の中に位置づけられた。基本的には「現在の処遇以上」の方針の下に移行を実施したことも、混乱が生じなかった理由である。


制度移行時の考え方



3.取組の内容(その他)

◆働き方改革との連動

 2017年9月16日よりスタートした新しい人事制度と同時に、働き方改革に関する施策も導入された。基本方針は、「富を生み出すビジネスパーソンへと成長できる環境の整備」であり、労働時間や働き方そのものの柔軟性を高めて、社員一人ひとりの選択肢を増やすことにある。
 第一に、所定労働時間を全社員で統一。一日7.5時間とし、総合職・専門職社員にとって年間30時間の所定労働時間を削減する一方で給与水準は変更しないことで、「短く効率良く働く」ことを基本として示した。
 第二に、1時間単位の有給休暇の取得を可能にすることで、全社員がより有給休暇を取得しやすい体制を整えた。
 第三に、短時間勤務制度や短日勤務制度の適用拡大を行った。育児や介護等のライフイベントによる申請以外に、自己啓発の為の制度適用が可能になった。
 最後がテレワーク制度とフレックスタイム制度の導入である。働く「場所」や働く「時間帯」に柔軟性を持たせることで、画一的な就業形態への対応が難しい社員も力を発揮しやすい環境を整えた。



4.効果と課題、今後の運用方針

◆ベンチャースピリットの醸成と「自分でキャリアを考えること」

 抜本的な制度改正を実施したことにより一時的に費用面でのコストが発生することについては、人件費単体で判断するのではなく、企業収益も含めた会社全体で判断する方針を採用している。新制度導入の効果が出るのは少し先のことではあるが、中期経営計画の達成を支援する体制の一環として実施しているため、最終的には企業の収益や事業成長への貢献が求められている。これらの最終的な目標達成のために、人事部では前述する「ベンチャースピリットの醸成」が必要であると考えている。
 全員が「正社員」となり、役割等級制度が導入されたことで、社員全員が会社のあり方について考えるべき立場になった。元メイト社員には、正社員としてのキャリアや会社でどのように貢献していくかを考えてほしいと人事部では考えている。一方で、従来正社員であった方には、今一度、役割等級制度の中で自分がどのようなキャリアを目指すのか、という点を見つめ直してほしいと考えている。そして、自分のキャリアを見直す際に必要な視点が、「ベンチャースピリット」である。
 人事制度の大幅な変更は全社としては混乱もなく進んだが、社員一人ひとりに着目すると、今後のキャリアを不安に感じる、役割等級制度を負担に感じる等、自分の将来に不安を感じている社員はいるはずである。彼らの不安を取り除き、前向きに自分のキャリアと向き合うための支援策について、現在人事部では検討中である。

5.活躍する従業員の声

財務部 渡部 恵理子 さん

年代 30代 性別 女性
勤続年数 10年
キャリアアップの過程 2007年よりメイト社員として入社。
出納業務や資金管理業務に一貫して従事。
2017年9月16日より正社員に転換。

◆「正社員」として、成長を続けられる喜び

 渡部さんは、2007年にメイト社員として同社に入社。入社前は正社員として接客業に従事していたが、自身の適性や興味関心から事務専門職として転職活動を実施した結果、有期雇用であるメイト社員として同社に入社することとなった。入社後は一貫して経理・財務関連の部門に所属。出納業務や資金管理業務を中心に経験を積んできた。
 2017年6月に人事部より新人事制度の説明を受けた時は、「何よりも嬉しかったし、その後も不安を感じたことは一度もなかった」と語る。福利厚生を中心に就労環境が向上することに加えて、確定拠出年金等の処遇の向上等、「働く」という点では労働条件が良くなることについてメリットを強く感じていたと言う。加えて、正社員になることでキャリアパス上はマネジメント職への挑戦も可能となったため、将来のキャリアプランも選択肢が増えた。メイト社員の同僚の中には「有期雇用であるメイト職から突然正社員になると、急に責任が重くなるのでは…」という不安の声もあったが、雇用形態の統一にあわせて役割等級制度への移行も説明されると、制度を前向きに捉える者が増えたという。

◆「自分で決められるキャリア」と今後の挑戦

 渡部さんが新しい人事制度で魅力を感じている点は「キャリアを自分で決められること」だという。役割等級制度を導入したことで、同じ業務を続けたい場合には該当する等級に留まることも可能になった。一方で、挑戦してより責任の重い仕事に取組みたい場合には採用時の雇用形態に関わらず、挑戦が可能となった。
 渡部さんの場合には、10年間の間に出納業務や資金管理業務以外の仕事に取組みスキルアップしたいという思いを元々持っていたこともあり、新人事制度の導入が決定した頃から新しい業務にも取組む機会を得た。一つ目がマネジメント業務で、チームリーダーとしてメンバーをまとめる立場となった。二つ目が業務改善などの企画業務であり、所属部門以外の人と連携して一つの仕事を進めることに現在挑戦している。

◆転換は自分のキャリアを見つめなおす機会

 新人事制度の社員への説明から導入までの期間は3ヶ月。転換試験を実施しない今回の制度においては、この期間が自分のキャリアを見つめ直し、かつ正社員として気持ちを切りかえるための時間だったと話す渡部さん。
 今後の目標については財務部門での経験を生かして、社内のコスト削減案を検討したいと考えている。また、「正社員」として自分を見つめ直したことで、プレゼンスキルやマネジメントスキル等、自分に足りない経験や能力が明らかになった。今後はこれらの不足している部分を補っていくとともに、自分の得意な部分を伸ばして、会社を支えていける人材を目指して日々の業務に取組む。