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事例33 株式会社ユニバース

事例 33

株式会社ユニバース
パート社員から正社員への登用、正社員の地域限定社員への転換により、業務スキルに習熟し地域に密着した人材を確保


会社設立年 1967年
本社所在地 青森県八戸市大字長苗代字前田83番地1
業種 流通業
正社員数
(2017年2月28日現在)
1,046名(男性780名、女性267名)
非正規雇用労働者数
(2017年2月28日現在)
パート社員(同社では「パートナー社員」と呼称)4,416名(男性426名、女性3,990名)
資本金 15億2,290万円
売上高
1,207.7億円
取組概要 <背景>
・新店舗展開にあたっての人材確保
・部門をまとめるリーダーの確保
・地元業界における競争力強化
<内容>
・パート社員の処遇改善・人材育成
・パート社員から社員登用制度
・地域限定正社員制度
<効果・結果>
・業務に習熟しファン(スキルとネットワーク)をもった人材の確保
・地元での評価
・従業員の定着
・社員数の増加:2012年946人→2017年1,046人
・売上高の増加:2012年920億円→2017年1,207.7億円

PDFデータ

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 北東北において、地域に密着した食品中心のスーパーマーケットを経営する。
 1967年12月に第一号店である小中野店を青森県八戸地区に開店。以後、青森、岩手、秋田とエリアを拡大しつつ、着実に店舗を増やし、2017年8月現在、北東北において57店舗のスーパーマーケットを展開する。このうち31店舗が店舗面積2,000 ㎡以上の大規模スーパーマーケットで、「Customers,our Priority(私たちは いつでもどこでも 顧客最優先)」をメインコンセプトに、生鮮食品や日用雑貨等を中心として地域の方々の普段の生活に欠かせない商品を取り扱う。
 2016年7月より、ネットスーパーも開業し、多様化する地域のニーズに対応する。
 食品リサイクルや店内ECO活動など環境への取組みも推進。愛のチャリティー募金、自治体との災害支援協定締結、教員の長期企業派遣研修受入れなど、社会貢献活動にも取り組む。

1.取組の背景

◆地域密着型の事業展開を支える「パートナー社員」

 同社では、現在、正社員1,046人に対し約4.5倍(4,468人)の「パートナー社員」と称するパート社員を有する。1967年の創業以来、50年間に57の店舗を展開するまで、事業を拡大した。地域密着という理念を持ちながら発展するためには、これだけの数のパート社員を、地元である北東北において確保する必要があった。同時に、新店舗の開設にあたっては、多くのパート社員をたばねる管理監督職も必要であった。

◆重要な戦力として、スーパーマーケット経営に必要な基礎力を習得する

 一般に、スーパーマーケットがお客を獲得するためには、「価格」「品質」「品揃え」の3つの要素が、すべてが魅力あるものである必要がある。これら3つの要素のうち1つでも欠けると、その点が目立ち、お客の足は遠のく。その他に「サービス・接客」や「近さ」がある。「近さ」を越えて来訪してもらうためには、先の4つの要素を一定の水準に保つ必要がある。
 さらに、スーパーマーケットの業務は、レジ、陳列、商品加工(野菜を切って、ラップを貼るなど)、在庫管理など多岐にわたる。多様な業務、多様な作業工程により、一つの売り場をつくっていく。
 このため、スーパーマーケットを経営していくには、多種多様な基礎力が必要である。毎日、どの時間帯でも当たり前の状態を維持していくことは、非常に難しい。
 これを実現する重要な戦力として、パートナー社員についても、快適に、そして安心して働き続けてもらうための環境を整えるとともに、スーパーマーケット経営に必要な基礎力を習得してもらう必要があった。

2.取組の内容①(パート社員の処遇改善、人材育成)

◆パートナー社員の働き方選択制度(コースの選択)

 同社では、パートナー社員が、それぞれのライフスタイルや働く目的にあわせて働くことができるよう、働き方選択制度を整備している。キャリアアップコース、ステディコース、ショトタイムコースの3つのコースに分かれ、コースごとに、1週間の契約時間や転勤の有無、社員登用の有無、社会保険・雇用保険の加入、通勤手当の支給などの契約条件が設定されている。多くのエネルギーを仕事に注ぎ、キャリアアップをしたい意欲的な人、パートタイマーのままで責任ある職位をめざしたい人、家庭と仕事を安定的に両立させたい人、収入は得たいが多くの時間やエネルギーを割けない人など、それぞれの志向により働き方を選ぶことができる。
 パートナー社員への賞与も制度化しており、賞与分を先取りして時給に組み込める時給選択制も導入。それぞれの生活設計にあわせて、「賞与併用型」と「完全時給型」から選択できる。年2回の契約変更のタイミングで選択の見直しもでき、選択変更にともなう賞与や時給の変更についても規定されている。さらに、子育てや介護等のやむを得ない事情で退職しても、いつでも気軽に再入社ができ、それまでの経験が時給にも反映される再雇用制度(「おかえりなさい入社制度」)も整備している。


パートナー社員の働き方選択制度(コースの選択)




時給選択制



◆背景にあるのがパートナー社員の人事考課

 これらのパートナー社員に対する諸制度の背景として、同社では、半年に一度パートナー社員を対象に人事考課を実施する。「パートナー社員昇進昇格規程」「パートナー社員賃金規程」を定め、パートナー社員については5段階の資格等級ごとに定義・職能要件・主な対応職位が定められている。パートナー社員であっても、職級によってはヘッド(業務リーダー)もしくはヘッド代行者になることができる。また、担当部門や時間帯など仕事の内容による各種加給についても明確に体系化されており、人事考課の結果、項目ごとの評価結果の積み上げにより職能ポイントが付与され、それが時給に反映される。

◆未経験者も安心して働ける人材育成・人材教育

 経験の有無に関わらず、安心して誰でもパートナー社員として仕事ができるための制度も充実している。パートナー社員を上司やメンター(相談・サポート担当)が個別にフォローする仕組みや、成長ステップにあわせてキャリアアップできる能力開発制度が整備されている。パートナー社員を対象に集合研修も実施しており、スーパーマーケット基礎講座をテーマに、実技の他、専門用語や原価率など経理・財務的な内容などについて講義する。社内検定の仕組みもあり、パートナー社員のキャリアアップにつなげている。
 その他、パートナー社員が安心して働けるための福利厚生として、5日間連休の連続休暇制度、生活サポート休暇(失効した年次有給休暇を病気有給休暇として22日まで積立でき、病気や育児・介護休業時に有給の休暇として使える制度)、定期健康診断・追加健診補助等の実施、保育園・幼稚園の紹介等も実施している。
 同社では、これらのパートナー社員に関する制度や規程を、「パートナー社員人事制度のご案内」という冊子にまとめ、入社時にパートナー社員一人ひとりに配布し、説明を行っている。


「パートナー社員人事制度」の主な特徴





3.取組の内容②(社員登用制度、地域限定正社員制度)

◆パートナー社員から試験を経て正社員へ

 同社では、2007年よりパートナー社員の社員登用制度を導入している。これは、先に紹介したパートナー社員の働き方選択制度のうち、キャリアアップコースの延長線上にある制度という位置付けである。
 同制度は、自薦もできるが、実際は上司が声をかけるケースが多い。一定の条件を満たす者が、面接と筆記試験(SPI適性検査)を経て、正社員に転換する。制度設立当初は、パートナー社員として2年間の業務実績があり、かつ、上位の成績であることが登用の条件であった。しかし、この条件では実質的に中途採用の合格基準より厳しくなることから、より多くのパートナー社員に正社員に転換し、もっと活躍してもらうため、2013年から半年間の業務実績があり、かつ、平均以上の成績であるというように条件が緩和された。
 会社側にとってパートナー社員から正社員に登用するメリットは、中途採用等に比べ、入社後の会社と従業員双方のギャップが小さいことにある。スーパーマーケットの仕事は、包丁を上手く使えるなど各担当において必要なスキルがあり、それが実践できてこそマネジメントすることができる。会社としては、部門を取りまとめるヘッド(業務リーダー)が欲しい。入社時にすでにスキルに習熟している点が、社内転用のよさである。
 しかし、パートナー社員で正社員登用制度に応募してくる方は、2015年13人、2016年8人と少ない。このため、まだまだ正社員の数が足らず、今も中途採用を実施している。

◆転居をともなう異動がない地域限定社員制度

 同社では、もう一つ、人材の確保・定着のための方策として、転居をともなう異動がない地域限定社員の制度がある。自分で基準となる「母店」を決め、そこを中心に30km圏内を勤務地とする。これは、おおよそ自宅から車で1時間以内に通勤できる範囲に該当する。同制度は10年前から運用しており、現在、正社員1,046人のうち約100人が地域限定社員である。
 同制度の利用にあたっては、入社3年以上が条件となる。パートナー社員についても、パートナー社員として3年以上の勤務実績があれば、正社員登用と同時に同制度を活用できる。
 ただし、地域限定正社員は、管理職には適用されない。また、制度利用者の賃金は、一定率減額される。
 新卒やIターン、Uターンで同社に入社する者については、子育てや介護等の目的をもつ場合が多く、自宅から通勤可能な地域限定社員制度は有効性が高い。

4.効果と課題、今後の運用方針

◆地域の信頼を得ながら発展

 同社では、パートナー社員を対象とする処遇改善や人材育成、社員登用制度、地域限定社員制度の効果として、近年、着実に従業員数を増やし、人材確保を図っている。パートナー社員数は、2012年の4,098名から2017年には4,416名に増加した。また、正社員数は、2012年の946名から2017年には1,046名に増加した。売上高は920億円から1,207億円に増加した。
 同社では、今後も北東北の商圏を守り、地域に根ざして事業展開していく方針である。これまでの実績を踏まえ、地域において「きちんとしている」「しっかりしている」というイメージがあり、信頼は高い。県外から大手同業他社が進出する中で、地元発祥の同社は、地域のことを知っているという点で、独自のポジションを維持・確保している。北東北の地域では、お盆や年末年始などハレの日に、皆でご馳走を囲むのが習慣である。その時には、自宅からの「近さ」に関わらず、多くの人が同社に買物に来る。食べ物の地域性は大きく、地元の家庭が料理に使う食材や調味料に関しては、同社が一番品揃えがよいからである。「ユニバースなのに・・・」という投書が、同社にとっては一番厳しく感じるという。
 今後も地域での信頼を守りながらやっていく。それを支えるのが、4,000人を越える地域に根ざすパートナー社員であり、パートナー社員から転換した正社員、地域限定社員である。そうした社員が安心して働きやすく、活躍できる環境づくりに今後も取り組む。



◆他社、他業界に遅れぬよう、働き方の多様化に対応

 具体的な一つの方向性として、パートナー社員の働き方選択制度や地域限定正社員制度をはじめ、人事に関する諸制度を、働く側に寄り添い、働き方の多様化にあわせて拡充していく。
 以前は、「社員=バリバリ働く、パート=家庭を守りながら働く」という固定概念があった。会社も以前は皆、上を目指すことを期待していた。今はいろいろな考え方を尊重し、多様な働き方を認めるようになってきた。多様性を認める働き方を推進するためには、仕組みよりも、理解や意識が重要である。
 人材確保の点からは、流通業界にとどまらず、他の業界もライバルである。スーパーマーケットは土日に勤務があり、長時間就労であるなど、元々不利な点が多いので、他の業界から取り残される可能性がある。業界を問わず、他社に遅れをとらないよう、働き方の多様化を推進することが今後の課題である。




5.活躍する従業員の声

白銀店 ヘッドチェッカー 
西 明香さん

年代 30代 性別 女性
勤続年数 13年
キャリアアップの過程 2004年にパートナー社員として入社。
2016年12月より正社員(同時に地域限定社員制度を利用)に転換。
入社以来、一貫してチェッカー(レジ)の業務に従事。

◆育児との両立のためパートナー社員として入社

 西さんは、2人の子どもがそれぞれ1歳と2際の時に、パートナー社員として同社に入社した。学生時代に同社でアルバイトをしたことがあり、また、自宅の近くにお店があったので、同社で働こうと思った。そして何よりも、保育園の送り迎えと両立する上で、パートナー社員であれば、仕事の時間を固定できる点がよかった。
 担当業務は、学生のアルバイトの頃から現在に至るまで、一貫してチェッカー(レジ)である。アルバイトとしての経験はあったものの、入社後は先輩社員が1人つき、あらためてレジの操作方法等を習った。
 子どもが小さい頃は、8時30分~14時30分の早番として、6時間勤務で働いた。開店前に出社し、釣銭の準備から従事した。その後、徐々に勤務時間を延ばしていき、いったん19時まで延長したが、子どもの送迎ができないという理由で、18時20分までに戻したこともある。子どもが小さい間は、仕事の時間が40分延びるだけで、仕事と育児が両立できなかった。

◆子どもの手が離れ地域限定社員に

 パートナー社員として入社後13年が経った2016年に、店長から正社員への転換の話があった。2~3年前にも店長に声をかけてもらったことはあったが、その時は体調がすぐれず断った。これが、二度目のチャンスであった。
 西さん自身、「正社員に転換できたらいいなと思っていた」。パートナー社員と正社員では、仕事の範囲が違う。正社員は、部門の全体管理など、いろいろな業務、責任がある業務を任してもらえる。正社員になって、もっといろいろな仕事をしたかった。
 子ども達もそれぞれ中学生・高校生に成長し、正社員として長時間働くことが可能になった。ただ、引越などで環境が変わることは避けたかったので、社員登用制度と同時に地域限定社員制度を活用し、2016年12月に地域限定社員に転換した。
 さらに、2017年7月には異動があり、勤務するお店が変わるとともに、複数のチェッカーを取りまとめるヘッドチェッカーになった。西さんは、今、「バタバタしているが、充実している」、「与えられた業務をがんばりたい」と言う。前にいたお店のお客さんが、新しいお店に西さんに会いに来てくれることもある。そうしたお客さんとの関係が、西さんの励みになっている。

◆今後はヘッドチェッカーとして若者を育成、仲間を増やす

 7月の異動後、ヘッドチェッカーとして、14人のパートナー社員の業務シフトを組むようになった。新しいお店で一緒に働き始めた新しいメンバーであり、まだ人間関係はできておらず、それぞれのメンバーの組み合わせのコツがわからない。勤務時間は、早番・中番・遅番の3つに分かれる。メンバーにがんばって働いてもらうためには、どの人はどの時間帯を望むのかを理解する必要がある。空いた時間帯は、自分が入ることで埋める。そのために、遅番になることもある。「自分もパートだったから、パートの気持ちがわかる」。
 西さんは、パートナー社員と正社員では、「将来が違う」と言う。目標は、前にいたお店のヘッドチェッカーの先輩女性。自分もこれからもヘッドチェッカーをやっていく、ヘッドチェッカーとして若い人を育て、仲間を増やしていく、それが西さんの今後の夢である。