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事例34 社会福祉法人美竹会(みその)

事例 34

社会福祉法人美竹会(みその)
専門部署の設置、専属職員の配置等の体制整備により、人事労務管理施策を強化


会社設立年 1997年
本社所在地 愛知県豊川市金沢町稲場7
業種 医療、福祉業
正社員数
(2017年8月1日現在)
70名(男性15名、女性55名)
非正規雇用労働者数
(2017年8月1日現在)
非正規職員130名
・准職員(正規に準ずるが夜勤なし)20名、非常勤職員(短時間勤務)110名
・女性が9割
・各世代ともほぼ均等に在職
資本金
売上高
取組概要 <背景>
・一通りのサービスが揃い、人材育成及び人事労務管理体制を強化
<内容>
・正社員登用
・人事異動・キャリアアップ自己申告の仕組み
・処遇面の支援
・資格取得支援
・サブリーダー就任と役職手当支給
・職員向けキッズルーム(託児所)の運営
・65歳定年、高齢者雇用
・基盤としての人事労務管理体制
<効果・結果>
・介護報酬の加算の安定的獲得
・求人募集への応募者増加、離職防止
・資格取得による同僚への刺激、本人の自信
・職員数の増加:2013年147名→2017年200名
・事業収入の増加:2013年4.2億円→2016年6.1億円

PDFデータ

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 同法人は、現在の理事長が、地元地域に対する強い思いから会社生活にピリオドを打ち、組織的バックアップがない中で1997年に設立した。同法人では実施するサービスを「みその」と呼称するが、これは法人所在地である愛知県豊川市金沢町の一部地域の古い呼び名である「御薗」から名付けられた。「みその」という名前には、地域社会に生かされ、地域社会に貢献し、地域社会に息づく存在でありたいという思いが込められている。
 以来、ふるさとの豊かな自然の中で、「家庭的できめ細やかなサービス」をモットーに、福祉事業に取り組んでいる。1998年にケアハウス(定員40名)開設を皮切りに、以後、居宅介護支援事業所、訪問介護・訪問入浴サービス、デイサービスセンター、グループホーム、小規模多機能ホーム、特別養護老人ホーム、ショートステイと、10数年の間に介護保険制度創設の流れに乗り、事業を拡大していった。
 2017年6月に法人設立20周年を迎え、式典を催し、記念植樹や展示会を行ったところである。


1.取組の背景

◆一通りのサービスが揃い、人事労務管理体制を強化

 同法人では、おおよそ一通りの介護関連サービスを整備した2015年度、法人設立20周年を前に職員数も約200名となり、人事労務管理の体制強化を図るに至った。法人全体を掌る管理部門である法人本部を立ち上げ、同時に人事労務管理専門の職員を採用・配置した。同法人では、経営理念として「良質な福祉サービスを提供し、ご利用される方の人生を支援することで社会に貢献」することを掲げ、「家庭的できめ細やかなサービス」をモットーとする。こうした法人の考えを実現するため、「みそのブランド」の確立に向けて、人材の育成及び人事労務管理の充実を図ることとなったのである。


20周年記念植樹




2.取組の内容①(正社員登用)

◆ブランド構築に向けた人の安定

 まず人材育成強化の一環として、同法人では、2014年度より非正規職員から正規職員への転換制度を導入・開始した。介護職の非正規職員全員が対象で、勤続6か月以上であること、もしくは一定の資格を有することを要件とし、管理者の推薦があった場合に、面接試験を経て転換に至る。
 転換制度導入の要因としては、一つには、介護の世界はマンパワーが命であり、人材確保・人材育成が法人の発展に大きく寄与するとの考えがある。働く人が安定しないと、施設・法人としてブランドを築くことはできない。
 同法人では、人事労務管理を専門とする職員を配置し、いろいろな手立てをとることで、近年も必要な数の職員を概ね確保できている。このため転換制度導入のねらいとしては、人手不足解消や人材確保よりも、職員の士気高揚の意味合いが強い。非正規の者にとって、将来、正規職員になる道があること、また、実際に正規職員になることで、仕事に張り合いが出て、夢や希望をもって働くことができる。人の安定、特に人材の育成・定着を図るため、正規職員転換制度を導入したのである。


小規模多機能ホームみその




3.取組の内容②(人事異動・キャリアアップ自己申告の仕組み等)

◆非正規も正規も区別なく、同じ戦力

 また、転換制度導入のもう一つの要因として、同法人では、人事労務管理にあたり、非正規も正規も区別なく、同じ戦力と考える。非正規と正規の雇用形態の差を埋めて、できるだけ人事面や福利厚生における条件、チャンスを同じにする。このため、非正規の者に、将来、正規職員になる道を与えることは自然の流れである。しかし転換に至るまでも、同法人では、あらゆる人事施策を、正規職員だけでなく非正規職員にも適用し実施している。

◆人事異動・キャリアアップ自己申告の仕組み

 同法人では、職員が人事異動・キャリアアップの希望を申し出る、職員適性申告書というシートを整備している。これを年1回、正規職員だけでなく、非正規職員にも用いる。このシートでは、職員自身が現在の担当業務や仕事に対するやりがい、適性、職場環境などを自己評価し、異動や担当業務の希望を書き、今後のキャリアプランや自己PRを記載する。これにより非正規職員も、現在の仕事や職場における自分の立ち位置や役割を認識するとともに、今後どうなっていきたいかを考え、法人に伝えることができる。今後のキャリアプランとしては、「多くのことを経験したマルチ職員」「その分野のスペシャリスト」「自分の興味がある業務に携わり続ける」など、多様なコースが設定されていて、そこから選択する。将来、正規職員への転換を希望するなら、そのことをシートに書くことで法人に申告できる。


職員適性申告書「キャリアプラン」(抜粋)



◆処遇面の支援

 同法人では、非正規職員として准職員とパート職員の2つの区分がある。准職員、パート職員ともに夜勤はないという点では共通するが、賃金形態が准職員は月給制、パート職員は時給制という違いがある。この准職員の俸給月額は、正規職員と同じ賃金表にもとづいて行われる。そして、准職員から正規職員に転換した際には、同一の賃金表の中で昇級及び昇給する仕組みになっている。一方、パート職員については、基本、時給単価は一律であるが、介護福祉士等の資格を取得すると、正規職員の資格手当と同じ意味合いで、時給単価がアップされる。
 さらに、資格取得に関しては、同法人では、サービスの質向上をめざした人材育成システムの一環として、正規職員だけでなく非正規職員に対しても積極的に推進する。資格取得に向けた講師を招いての勉強会開催や、介護福祉士・ケアマネジャーの資格更新の実務者研修に対し、費用負担を行っている。研修内容についても、各職場の職員をメンバーとする委員会を月1回開催して検討し、充実を図っている。
 また、准職員、パート職員であっても、上司との面談により、能力・スキル、マネジメント力があると評価されれば、サブリーダーとなることができ、就任した場合には役職手当が支給される。

◆職員向けキッズルーム(託児所)の運営

 その他、同法人では、非正規職員の働きやすい環境づくりとして、2014年より職員を対象としたキッズルーム(託児所)を開設、運営している。1歳~就学前児童が対象で、定員8名、有資格の保育士2名が常駐する。地域住民の子どもも受け入れるが、基本、同法人で働く職員の子どもが対象で、非正規職員が使うことが多い。地域に保育所が少ない中で、非正規職員は働く日数や時間が少ないため入所が困難で、キッズルームがあるから働くことができる。また、キッズルームでは、地域の認可保育所の保育料の3分の1程に料金設定をしており、所得が少ない非正規職員にとって利用しやすくなっている。さらにキッズルームがあることで、まだ子どもがいない若い非正規職員も、将来に向けて安心して働くことができている。

◆65歳定年で80歳の職員も

 最後に、同法人では65歳定年を実施しており、非正規職員130名中30名が65歳以上である。65歳以降も非正規職員として働く者もいて、調理や訪問介護などを担当する80歳の職員もいる。高齢の職員については、利用者にとっても自分と同世代ということで、気兼ねなくサービスを受けることができ、好評を得ている。また、職員にとっては、60代・70代・80代になっても働けることが、安心感となり、雇用の安定につながっている。


特別養護老人ホームみその



◆基盤となっている人事労務管理体制

 これらの取組の導入・推進の基盤となっているのが、法人本部である。月1回、法人本部会議を開催し、本部と各施設の施設管理者で人事管理情報を共有する。正規転換や資格取得支援等の制度を知っているか知らないかで、職員間に不公平が生じないよう、正規・非正規を含め職員に対する各種制度のPRに努める。また、こうした制度導入が、職員本人のやる気に大きく影響することに対し、施設管理者の理解を促す。
 制度の導入・推進にあたっては、厚生労働省のキャリアアップ助成金(正規化コース、人材育成コース)を活用した。これにより、人件費を補填できることが、制度導入を後押しした。



4.取組の効果、今後の運用方針

◆多方面にわたる取組の効果

 このような同法人における正規だけでなく非正規も含んだ職員全体のキャリアアップや職場環境整備に向けた取組は、多方面にわたって効果を生んだ。
 一つには、介護福祉士の資格取得者を増加させることにより、法人として、安定的に介護報酬の加算を得ることができるようになった。
 二つ目には、人事労務管理上の効果として、同法人は職員研修に力を入れ、職員の資格取得を応援するという評価が広まりつつある。このような評判を聞いて求人募集に応募してくる者も出てきており、人材確保がしやすくなっている。同時に、職員の離職防止にもつながっている。
 三つ目として、同僚が介護福祉士の資格を取得試験に合格することで、次は自分が資格を取りたいと、職員が自覚を持つようになった。また、資格取得した本人も、自信をもって仕事をするようになった。受験勉強を通して、これまで業務としてやっていたことを知識として理解し整理するとともに、さらに新しい知識を得たことによる効果である。
 最後に、職員数が2013年147名から2017年200名に増加し、事業収入が2013年4.2億円から2016年6.1億円に増加するなど、経営上の効果も生んだ。

◆今後の課題と展望

 同法人では、2017年度作成予定の中長期計画(計画期間:2018年度~2027年度)において、人材育成や人事管理の方針を定める予定である。
 非正規職員の働き方に関しては、法人として多様な働き方を認め、推進する方針である。子育てで忙しい間は短時間で働き、子どもの手が離れたらフルタイムで働き、夜勤もこなす、そうした働き方もよい。しかし、働き方の多様性を認めると、平等・公平の観点から職員間の理解を深めることが課題となる。例えば、個人によるシフトの偏りなどは、一部の職員の不満につながることもある。また、正規と非正規の区別がない賃金体系の確立に向けた同一労働同一賃金の流れや、非正規職員の期末手当の扱いなど、全国的な動向にも注視する必要がある。
 こうした諸課題を踏まえつつ、同法人は、設立20周年を機にますますの発展に向け、「みそのブランド」の確立をめざす。



5.活躍する従業員の声

グループホームみその
ユニットリーダー
田中 和子さん

年代 50代 性別 女性
勤続年数 14年
キャリアアップの過程 2003年10月に、パートとして同法人で働き始める。
3年間の准職員の期間を経て、2017年4月に正規職員に転換。
入社以来グループホームの仕事に就いており、現在は認知症高齢者の介護全般に従事。

◆徐々に働く時間を延ばし、正規職員を希望

 田中さんは、14年前に同じ保育所に子どもを預ける友人からの誘いがきっかけとなって、同法人で働き始めた。ちょうど子どもを保育所に預けて、何かしようと思っていた時であった。最初は、パート職員として、訪問入浴サービスの仕事に従事した。
 その後、グループホームの仕事に就く。徐々に、食事、入浴、生活全般の介助と業務の幅を広げ、雇用形態もパート職員から3年前にはフルタイムの准職員に変わり、働く時間も延ばしていった。
 最近は子どもも大きくなり、手が離れ、夜勤もできるようになった。また、高齢者とおしゃべりしながら、介助や見守りをする今の仕事は、自分に合っている。それで、正規職員になりたいと思っていた。

◆まずは介護福祉士の資格を取得

 そこで、まずは介護福祉士の資格を取得した。資格保有は正規職員転換の要件ではないが、資格を持っていると上司の推薦を得やすいからである。
 資格試験の受験にあたっては、介護福祉士実務者研修と受験対策講座を受講した。同法人の取組により、研修期間中は出勤扱いとなる。これに加えて、受講料も法人が負担してくれる。「とても助かる制度であり、引き続きこのような制度を継続して実施して欲しい」と、田中さんは語る。
 一方で、こうした研修や講座の受講は、仕事や職場を離れる必要があるので、他の職員の勤務に影響を与えてしまう。それを乗り越えるためには、「日頃から周囲のメンバーとのコミュニケーションを強化して、理解を求めることが重要」と言う。

◆資格取得、正規転換とともに、ユニットリーダーに

 田中さんは、介護福祉士の資格を取得し、正規職員に転換すると同時に、グループホームのユニットリーダーとなった。リーダーへの昇格の話があった時、はじめは自分では考えられなかったが、次第に、ずっと働いている職場であり、職場ではすべてのことをやっているので、もう少しやってみようと思うに至った。
 リーダーになった後は、今までとは自分の意識が違った。リーダーとして責任を持って仕事をしようと思い、仕事に対するモチベーションが上がった。リーダーという資格に負けないよう、他のメンバーと利用者のことを十分に共有しながら、やっていこうと思った。
 毎日昼に、利用者の状態をスタッフで共有するための話し合いを行う。昨日はこうだったが、今日はこうだ、というように利用者の状態の変化を、スタッフ全員で共有する。スタッフが話すよう、リーダーとして会議をリードする。そのことで、担当スタッフが代わっても、誰であっても、利用者に対して皆で同じケアを行うことができる。
 今は、介護福祉士の資格を取り、正規職員に転換し、月6回程度の夜勤もこなしながら、ユニットリーダーとして忙しい毎日を送る。そのような中でも、「利用者に対しては、これまで通りに接したい」と言う。日常的に会話をしながら、身体の状況や表情を読み取る。利用者によいケアをするためには、一緒に働くスタッフと、よりよい関係を築くことが重要。現場が好きで、いかにスタッフと一緒に利用者をケアしていくか。そのことを考え、仕事に励む日々である。


グループホームみその



デイサービスセンターみその
サブリーダー
戸田 和子さん

年代 40代 性別 女性
勤続年数 2年10か月
キャリアアップの過程 2014年10月に、准職員として同法人に入社。
一貫して、デイサービスの仕事に従事。
現在も准職員として、デイサービスで高齢者の介護全般を担当。

◆前職の事業縮小により、同法人に転職

 戸田さんは、2014年10月に同法人に入社。それまでは他社で介護の仕事にパート職員として従事していたが、事業が縮小し、担当の仕事も減り、収入も減ってきていた。そうした頃に、同法人の理事長と知り合いの友人から紹介され、同法人に転職した。
 以来、デイサービスの仕事に就いており、食事や入浴の介助など、デイサービスを利用する高齢者の介護全般を行う。

◆資格取得と同時にサブリーダーに

 戸田さんは、介護福祉士の資格を取って、キャリアアップしたいと思っていた。それで、法人負担で介護福祉士の実務者研修と受験対策講座を受講して、資格試験を受けた。
 資格を取ると手当がつくのもうれしかったが、もっと勉強が必要と思っていたことが大きい。デイサービスの仕事の範囲は広く、認知症の介助や声かけの仕方など、自分の知らない知識を得たかった。「そのために目標をもって勉強しようと思った」と、戸田さんは言う。前職の担当業務は訪問介護で、ホームヘルパー2級の資格を取って従事していた。しかし、それはかなり以前のことであり、また、訪問介護とデイサービスの仕事は、全然違っていた。
 2017年1月に資格取得し、同時にサブリーダーになった。そのことで自分自身よかった点は、一つには、資格手当と管理職手当が増額になるという収入アップがある。これに加えて、サブリーダーとして中心になって、デイサービスセンターみそのを支えていかなければならないという自覚ができた。
 最初、サブリーダーになる話を聞いた時は、自分にできるか不安に思った。その一方で、まわりに認めてもらっていることが自信になるとともに、期待を感じ、それに応えていこうと思った。デイサービスをよりよくするために、自分ができることをやっていきたい。そのために、自分も成長していこうと思った。

◆スタッフ同士の関係づくりを中心に

 デイサービスをよくするためには、まわりの協力も必要。スタッフ同士の関係づくりを中心に、職場環境を整えることが重要である。スタッフ同士が一つにならないと、利用者も満足しない。利用者は、スタッフの表情や態度を読み取る。利用者に寄り添い、気持ちよく、帰ってもらいたい。
 スタッフが一つになるためには、声かけ、挨拶が重要。自分からスタッフに声をかけるよう、心がけている。離れたところにいるスタッフにも、自分から行って、挨拶をする。「最近どう?」と声をかけることで、スタッフの不安を除くことができる。スタッフの表情を見ながら、様子を聞くようにしている。
 今後のキャリアについては、子どもが大きくなったら、正規職員をめざしたい。今は、まだ子どもが小さいので、夜遅くまで残れず、やれることが限られる。これからもっと、自分ができること、他のスタッフと一緒にできることが増えるとよい。
 利用者の笑顔は、デイサービスを利用してよかったと言ってくれている。利用者に笑顔が増えて欲しい。利用者の人達は人生の先輩。そうした人達から、いろいろなことを教えてもらいながら働くことができる。利用者とのふれあいに感謝や喜びを感じる戸田さんである。


デイサービスセンターみその