事例紹介

ホーム 事例紹介 事例37 社会福祉法人甲賀市社会福祉協議会

  • 医療、福祉業
  • 〜99人
  • 正社員への転換 〜正社員へ〜
  • 処遇の改善
  • 人材育成
  • キャリアアップ助成金

事例37 社会福祉法人甲賀市社会福祉協議会

事例 37

社会福祉法人甲賀市社会福祉協議会
女性介護職へのニーズが高く、人手不足の中、経験を積んだ非正規雇用職員の正規職員転換を導入


会社設立年 2004年
本社所在地 滋賀県甲賀市水口町水口5609
業種 医療、福祉業
正社員数
(2017年11月30日現在)
87名(男性23名、女性64名)
非正規雇用労働者数
(2017年10月31日現在)
非正規雇用職員(嘱託・パート職員)
・男性13名、女性146名(159名)
・20代4名、30代18名、40代37名、50代42名、60代51名、70代7名
・嘱託職員(フルタイム)11名、パート職員148名(159名)
資本金
売上高
取組概要 <背景>
・社協合併にともなう体制構築と人材確保
・女性介護職に対するニーズ
・職員の条件として資格保有が必須
<内容>
・非正規雇用職員の正規職員転換
・資格取得の奨励
・加算にもとづくベースアップ
<効果・結果>
・非正規職員のモチベーションアップ
・人材の確保
・全職員数の増加:2016年232名→2017年246名
・転換した本人の責任感の芽生え
・社協としての体制強化
・周囲の非正規雇用職員に希望を与える

PDFデータ

Get ADOBE READER

PDFファイルを見るためには、Adobe Readerというソフトが必要です。
Adobe Readerは無料で配布されていますので、左記のアイコンをクリックしてダウンロードしてください。

 2004年10月1日、旧甲賀郡7町のうち水口・土山・甲賀・甲南・信楽の5町が合併した。これにともない、町社会福祉協議会が合併し、現在の社会福祉法人甲賀市社会福祉協議会が設立された。社会福祉協議会(略称:「社協」)は、社会福祉法において1市町に1か所設置と規定されていることにもとづく。現在も、旧水口町社協を主たる事業所として、旧4町の社協が従たる事業所として所在する。
 同社協では、住民主体の原則にもとづき、共に生き、支え合い、個性が輝き、生き生きと豊かに暮らせる、人権尊重と健康福祉のまちづくりに取り組む。地域における人のつながりを基盤としたきめ細やかな福祉サービスを提供し、住民と一体となった地域福祉活動のネットワークを広げることで、地域福祉を推進する。
 あわせて、介護保険事業も展開する。旧町ごとに訪問介護事業所を1か所ずつ有する他、訪問入浴1か所、通所介護2か所、居宅介護支援4か所、訪問看護1か所の計13か所の介護保険事業所を市社協として運営する。
 在宅で力を入れているのが在宅看取り。人生の最期を自宅で迎えたいという、利用者の思いをかなえた同社協の取組は、地方で在宅看取りができたということで話題になり、マスコミ等で多く取り上げられた。


1.取組の背景

◆社協合併にともなう体制構築と人材確保

 同社協では、住民の地域福祉を推進するため各種事業を進めるが、福祉への取組も旧町により異なる。あわせて、介護保険事業をきめ細やかに展開するが、介護保険事業所も、旧水口町の事業所を本所としながら、合併前の体制のまま旧4町にてそれぞれ設置・運営する。
 同社協では、合併を契機に体制を構築するとともに、1法人として多様かつ数多くの福祉人材を確保することが必要になっていた。

◆女性介護職に対するニーズ

 同社協では要介護者は女性が多いが、女性の要介護者は、男性に身体介護をされることに抵抗感がある。このため、女性介護職に対するニーズが高く、実際、介護職は女性が多い。
 このような事情を踏まえ、同社協では、女性の介護職を求めるが、介護現場で働くことを希望する者自体が減少する中で、条件を限定することは求人をより難しくしていた。

◆職員は資格保有が必須

 さらに、同社協では、在宅系の介護職は、ホームヘルパー2級もしくは介護職員初任者研修の資格保有を必須とする。非正規雇用職員についても、資格がないと働くことができない。このため、ハローワークで常時、募集するが、該当者が少なく、人材不足の状況にあった。

法人本部の事務所の様子




2.取組の内容(正社員登用)

◆パートからスタートし、タイミングがあえば正社員に転換

 同社協では、女性介護職へのニーズが高く、求職者も減少したことなどから、経験を積んだ女性非正規雇用職員の正規職員化を取り入れることとなった。2013年度から、嘱託職員・パート職員を対象に、正規職員への内部登用を実施した。主に子どもが小さいことを理由にパートタイムで勤務する女性職員が、子どもの成長にともないフルタイム勤務が可能になったタイミングで、正規雇用の機会を与えた。おおよそ職員の年齢としては40歳ぐらいに該当する。正規職員転換は責任や事務量が増えることから、本人は望まないこともある。子どもの手がかからなくなったものの、一から仕事をするのは難しい。それまでも、このタイミングで、職員のニーズと法人のニーズが合えば、雇用契約に反映し就労時間数を増やしてきた。それを制度化し、運用することになったのである。

◆外部採用とあわせて内部登用を実施

 正規職員転換の手順としては、法人として正規職員を募集する時、法人運営部労務担当者が内部の職員にも広く知らせ、非正規雇用職員に対しては内部登用が可能であることを周知徹底する。これを受けて非正規雇用職員は、部署の所属長の推薦をもらい、正規職員採用試験を受験し、合格すれば正規職員として採用される。
 試験は、選択式の筆記試験と作文試験の後、部長職と職員による個人面接、同職種でディスカッションを行う集団面接と続く。毎年秋に、正規職員募集及び採用試験を行い、これと同時期に非正規雇用職員の転換試験も実施する。
 内部登用は、所属長の推薦があり、かつ即戦力となることから、外部採用に比べ有利である。転換試験の受験資格は所属長の推薦のみで、試験の内容は外部採用と同じである。
 正規職員転換の実施にあたっては、社会保険労務士のアドバイスを参考に、厚生労働省のキャリアアップ助成金を活用した。まず、同助成金制度に即してキャリアアップ計画を作成し、様々なコースがある中で当時の同社協が導入できる内容を精査して、その結果を踏まえ就業規則の見直しを行った。キャリアアップ助成金が、正規職員転換の制度導入を後押しした。


3.取組の内容(人材育成・処遇改善)

◆資格取得の奨励

 同社協では、正規・非正規に関わらず、職員のスキルアップを目的に、法人として資格取得を奨励する。等級制度も、資格を取得すると等級が上がる仕組みになっている。介護系の職員ならば介護福祉士の資格を持ち、その後、介護支援専門員(ケアマネジャー)の資格を取り、50代を迎えると必要に応じて社会福祉士資格取得もめざすというように、ステップアップごとに対象となる資格も変わっていく。
 資格試験の受験にあたっては、資格を持つ人が受験者にアドバイスをし、個人のスキルアップを皆で支援する。一人で勉強していると孤独になるが、自分と同じ思いの人が複数いると、刺激になり、モチベーションも上がる。
 さらに、資格取得に対する職免(職務に専念する義務を免除する)制度を導入している。職場で求められる資格を取得する際に、職員がスクーリングや研修会などに参加する場合、事前届出により当日は年次有給休暇ではなく、職免扱いとなる。そうすることで、職員は、職場や仕事を離れやすく、資格取得が促進される。
 その他、同社協では、非正規雇用職員(嘱託職員)の人材育成として、正規職員と同様に人事評価制度を導入している。チームで目標管理を行い、その中で各自がどうするかを計画する。チームで1つの目標に向うことで、チームに一体感が生まれ、一人ひとりの能力開発につなげている。

サマースクールの様子

出典)社会福祉法人甲賀市社会福祉協議会提供



◆加算にもとづくベースアップ

 また、同社協では、処遇改善加算を受けているが、加算分を処遇改善加算手当とするのではなく、職員の基本給のベースアップとして活用する。このことにより、嘱託職員・パート職員も毎年基本給部分の定期昇給および時間単価のベースアップが図られ、非正規雇用職員を含め介護現場や作業所現場で働く職員の処遇アップに努めている。

左:甲賀福祉作業所外観   中央:甲賀福祉作業所での製菓作業   右:製造したバウムクーヘン

出典)社会福祉法人甲賀市社会福祉協議会提供




4.取組の効果、今後の運用方針

◆法人・職員双方に多様な効果

 2013年度以降これまで、12名の非正規雇用職員が正規職員に転換した。内訳は、下表の通りである。

非正規雇用職員の正規職員転換の実績

出典)社会福祉法人甲賀市社会福祉協議会へのヒアリング調査をもとに作成



 正社員転換の効果として、まず、事業運営及び人事労務管理に対する効果がある。同社協では、ソーシャルワーカーであれば社会福祉士または社会福祉主事、介護職員は介護福祉士または実務者研修等、看護師は看護師資格、ケアマネジャーは居宅介護支援専門員、事務員は簿記資格など、その業務を行う上での国家資格またはそれに準ずる資格を保有することを、概ね採用の条件としている。このため、人材確保が困難な状況にあった。一方、資格保有者にとっても、いきなり正規職員として仕事ができるか不安に感じる者もいる。このため、まずは非正規雇用職員として働き経験を積んだ後、正規職員として雇用されるチャンスを設けることで、本人の仕事に対する励みを生み、やる気を高めることができている。同時に、同社協にとっても人材を確保し、円滑な事業運営につながっている。全職員数は、2016年の232名から2017年には246名へと増加した。
 さらに、非正規雇用職員の立場では、仕事の内容に踏み込めず、上の指示で言われたことをするだけで、正規職員に対して遠慮する部分もある。これに対して正規職員への転換後は、仕事を任される部分が生まれ、情報や指示を発信する側になる。自分が中心になりながら、在宅系のパート職員や嘱託職員に指示をし、取りまとめ、皆の世話をする。そのことにより、本人に責任感がより芽生えるという効果が生まれている。
 一方、社協としても今までやりたかったが、やる人がいなくてできなかった業務ができるようになる。1人でも非正規雇用職員から正規職員に転換すると、体制が強化され、社協全体が底上げされる。
 また、正規職員への転換制度は、転換した本人だけでなく、他の非正規雇用職員に対しても好影響を与える。パートで入って、パートで終わるわけではない。正規職員に転換するチャンスがあることで、希望を持って働くことができる。
 さらに、こうした正規職員に転換した本人及び周囲の職員への効果は、先述の人材育成や処遇改善の取組と組み合わさることにより、相乗効果を生んでいる。

◆今後の展望

 同社協では、近年、職員総数は少しずつ増加しているが、よい人材が流出しないよう手立てをとる必要を感じている。小さいパイから人材をどう集めて、どう引き止めるか。細かな点で課題は多い。
 パート職員については、多様な時間延長のあり方を、法人と職員双方の条件にあわせて、雇用形態として整備していきたい。
 介護職・看護職は、数が不足している。これに加えて、365日24時間の対応が必要で、緊急対応時に連絡を受けるための電話を携帯する。この担当は3~4日ごとに交代するが、精神的負担が大きく、改善する必要がある。
 また、合併前は水口町の社協には、水口町に住む人が勤務するというように、いずれの支所も職員は近隣からの通勤に限られていた。今は他の町の支所で働くこともあり、職員の通勤の負担が大きくなっている。
 社協は、市から事業を受託して実施する。市と住民の間に入り、両者をつなげ、地域福祉を推進することが社協の役割。福祉団体や住民を巻き込み、支援者を育成することが社協の得意とするところ。この社協の強みを生かし、今後も地域福祉を推進し拡充する。その基盤として、一人ひとりの職員のスキルアップを図り、法人全体の価値を上げる。同社協は、これからも甲賀市全体の福祉向上に向けて活動を続ける。

地域福祉活動計画策定委員会での協議の様子

出典)社会福祉法人甲賀市社会福祉協議会提供




5.活躍する従業員の声

事務職
坂口 照美さん

年代 40代 性別 女性
勤続年数 9年
キャリアアップの過程 2007年7月に事務職の嘱託職員として同社協で働き始める。
2014年4月に正規職員に転換。
担当業務は事務で、転換後は市から受託する新事業の企画・運営にも従事。

◆同じ働くなら、モチベーション高く

 坂口さんは、2007年7月に、事務職の嘱託職員として、同社協で働き始めた。事務職といっても、地域福祉の担当職員を補充する求人募集に対する採用であり、実際はソーシャルワーカーとしての業務担当であった。坂口さんは、元々、同社協が実施する、高齢者を対象とするボランティア活動に参加していた。また、高齢のおばが一人暮らしをしていて、ボランティアにお世話になっていたので、この仕事に興味を持った。当時は子どもが小さかったので、あまり帰りが遅くなかったことも、同社協に就職した理由であった。
 その後7年程働き、2014年4月に正規職員に転換した。それまでは介護職とソーシャルワーカーにしか内部登用はなかったが、この年に事務職にも門戸が開かれた。上司に声をかけられたのがきっかけで、試験を受けて合格し、転換することとなった。受験にあたっては迷いもあったが、仕事は大変になることを覚悟して、家族に相談し協力体制を得た。子どもも手を離れ、同じ働くなら、正規職員としてモチベーション高く働きたいと思ったのである。

在宅生活支援部事務所の様子



◆苦手なこと、新しいにもチャレンジ

 正規職員に転換する頃には、本部として、同社協がかかえる13か所の介護事業所の事務業務の取りまとめを担当していた。全事業所の時間外労働の確認、集計、パートの就労状況の整理や、県に提出する書類作成などが主要業務であった。
 正規職員に転換後は、事務業務の取りまとめに加え、全事業所の事務職のリーダーとして、事務手続きを統一する業務を担当することになった。これまで、事務業務は事業所により「でこぼこしているところ」があった。伝票の起こし方や会計のルールが、人により、事業所により異なっていた。事務業務の適正化、効率化を図るためには、事業所間の事務手続きを標準化する必要があったのである。事業所の事務職の人達を集めて検討会を開き、質問や意見を受け付けながら、方向性を決めて皆に共有していく。坂口さんは、「人前で話すのは苦手だが、会議を仕切って、やっていく」と言う。
 また、転換後は、事務業務とは別に、同社協が市から受託した新事業の事務局も担当となった。市の職員と一緒に、事業を企画・推進し、つくりあげていく。これまでの事務業務とは、まったく異なる仕事である。
 具体的には、坂口さんは、認知症サポーターキャラバン事業を担当する。同事業は、認知症の人と家族の応援者である認知症サポーターを養成し、認知症になっても安心して暮らせるまちづくりをめざす。まずは、認知症サポーターキャラバンの活動を、地域に知ってもらうための業務に従事し、続いて、認知症サポーター養成講座を担当した。

左:認知症サポーターの目印となるブレスレット「オレンジリング」
右:認知症サポーター養成講座テキスト



◆1人でもサポーターを増やし、地域を変える

 認知症サポーター養成講座は、同社協が所管する地域全体で市内のキャラバンメイトにより、年数十回開催する。「参加者に今日の講座はよかったと言ってもらえると、うれしい。受講者が徘徊している認知症の人をみつけて、声をかけ、家族に連絡をした。そのことで、認知症の本人と家族の両方の不安を解消できたことがあった。こうしたことがあると、講座を開いた意義があったと思う」と、坂口さんは語る。
 見守りなど、さりげなく認知症の人やその家族をお手伝いするために、サポーターを増やす。もっと自分にできることがあると考えている人に、具体的な活動の内容や方法を提案する。
 また、地域の郵便局に今年異動してきた職員50名に、サポーター養成講座を受けてもらった。郵便局の職員であれば、窓口を担当している時や配達中に徘徊した人を助けてもらえる可能性がある。そういう人も含めて講座を開催した。
 地域に、認知症の人やその家族を助ける人が1~2人いれば、状況は変わってくる。全員でなくても、1人、2人でもいればいい。自分は何もできないが、サポーターとなる人がたくさんいれば、大きな力になる。坂口さんは、「1人でもサポーターを増やし、地域を変えていきたい」と言う。