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事例39 株式会社メンバーズ

事例 39

株式会社メンバーズ
契約社員の正社員化と全国一律賃金を同時実施。社員と企業が目標を共有し、生産性の向上と働きやすい環境づくりに取り組む。

出典)株式会社メンバーズ提供


会社設立年 1995年
本社所在地 中央区晴海1-8-10 晴海アイランドトリトンスクエアオフィスタワーX37階
業種 情報通信業
正社員数
(2017年9月30日現在)
(単体)618名(男性356名、女性262名)
(連結)773名
非正規雇用労働者数
(2017年9月30日現在)
約5名(単体)
資本金 807百万円
売上高
8,088百万円(連結・日本基準)
取組概要 <背景>
・事業拡大に伴う優秀な人材確保の必要
・業界内の人材不足による採用難化
<内容>
・契約社員「ネットクルー職」の一斉正社員化
・給与体系の全国一律化
・プロジェクトチームによる働き方の検討
<効果・結果>
・離職率の低下:14%程(2015年)→7%程(2017年)
・社員のエンゲージメント指標の改善(社員意識調査における女性社員の友人への入社推奨意向):31%(2015年)→53%程(2017年)
・女性管理職比率の上昇:15%程(2015年)→30%(2017年)

PDFデータ

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 同社は、企業向けWebサイト、ホームページ作成などの「デジタルマーケティング支援」を行っている。国内トップクラスのB-to-C分野の企業をメインの顧客として、各クライアント企業に「専任チーム」を設けて、クライアントと同社社員が一緒に運営する「エンゲージメント・マーケティング・センター」によるサービス提供を特徴としている。
 会社設立は1995年で、社員数(単体)約618名、(連結)773名(2017年9月30日現在)。東京証券取引所市場第1部に上場しており、ネット業界の中では大手企業の一つに数えられる。
 事業の拡大に伴い、人員が急増している同社は、働き方改革にも積極的に取り組んでいる。2016年には、2019年度を目途に残業50%削減、年収20%アップ、女性管理職比率30%をめざすことを掲げた全社員参加型プロジェクト「みんなのキャリアと働き方改革」に取り組み、「第6回日本HRチャレンジ大賞 人材マネジメント部門優秀賞」(後援:厚生労働省、株式会社東洋経済新報社、株式会社ビジネスパブリッシング、ProFuture株式会社)を受賞する。


1.取組の背景

◆業界・会社の成長とともに優秀な人材確保の困難さに直面

 ネット業界は、以前から即戦力人材となる中途社員の採用が主流の業界である。同社でもかつては中途採用が多かったが、専門学校生の新卒採用にも取り組んでいた。しかし、専門学校を卒業した新入社員と即戦力の中途採用を比べると、その実力差は歴然としていた。そのためWebサイトの制作事業、広告運用、ソーシャルマーケティング事業といった領域でアシスタント業務を担う新卒採用者は、「ネットクルー職」という育成社員的な位置付けで採用を行っていた。
 今ほど人材不足が深刻化していなかった7~8年前のネット業界では、専門学校生は契約社員での採用が主流であった。同社でもネットクルー職は契約社員として採用していたが、採用当初から経験を積んで成長したネットクルー職は、正社員へ転換することを想定していた。
 しかし、世の中ではさまざまなもののデジタル化が進み、投資も急増。「インターネット専門職」といわれる人材の不足が顕著で、今では求人倍率も5倍、7倍と言われるような状況が生じている。同社にとっても人材を採用・育成し、大規模なチームを組んで業務を進めていくことは、事業の根幹にかかわる問題であり、事業拡大のためにより多くの人材を必要としていた。
 一方、新卒で契約社員として採用したネットクルー職は経験を積んで成長し、その多くが採用後3年程で正社員に転換していた。その実績を踏まえると、ネットクルー職を最初から正社員で採用しても問題はなく、むしろ「人材の採用・確保・育成」における、採用競争力を高め、離職防止にもつながることから、2016年4月に契約社員であるネットクルー職全員の正社員化を決断することとなった。


出典)株式会社メンバーズ提供




2.取組の内容①(正社員登用)

◆プロジェクトチームによる今後のキャリアと働き方の検討

 2015年頃の同社では離職者も多かった。社員からも「業界での人手不足、労働時間も長く、今後も働き続けられるのか不安」、また「テクノロジーが急速に変化しており、スキルアップし続けないと働き続けられるか不安」といった声があがっていた。
 そこで、現場社員20~30名を集め、2015年10月から翌年3月にかけて、社内横断的なプロジェクトチーム「みんなのキャリアと働き方改革3か年プロジェクト」を立ち上げ、「今後のキャリアと働き方が、どのようになるのか」ということについて検討を行った。
 アンケートを行うなどして社員の声を集め、「長期的に安心して働けることをめざす」「処遇は業界の中でもよくしていく」といった方針を確認した。そして、「年収を2割アップさせる」「残業を5割削減させる」「女性管理職比率を上げていく」「男性も両立支援制度、育休・在宅などの制度を使う」といった目標・施策・方針を取りまとめ、2016年3月に公表した。

◆契約社員であるネットクルー職の一斉正社員化

 当時、契約社員であったネットクルー職の正社員化についても「みんなのキャリアと働き方改革3か年プロジェクト」の中で検討が行われた。
 処遇での正社員と契約社員の大きな違いは、「雇用の安定」にある。検討前までは正社員の賞与は業績に連動をさせており、例えば「この半年は月給の何か月分出る」というような形で支給していた。一方、契約社員のネットクルー職の賞与については、基本固定で5万円、10万円等となっており、正社員と水準が大きく異なっていた。さらに、持株会等も長期雇用が前提にあったため、契約社員であるネットクルー職は入れないといった違いもあった。
 契約社員であるネットクルー職を長期的に安心・安定できるようなものにしたいと考え、2016年3月に当時約100人いたネットクルー職全員を一斉に正社員に転換した。その後もネットクルー職の採用は続くが、採用時から正社員として雇用するよう変更となった。これにより、一部の中途契約社員やアルバイト等を除けば、原則全社員の正社員化が図られた。
 正社員への一斉転換前は、契約社員であるネットクルー職は、成長することで正社員転換への道が開けていた。このため、以前から多くのネットクルー職が正社員に転換していたこともあり、特に正社員化に伴う難しさはなかった。


キャリアマップ

出典)株式会社メンバーズ提供資料をもとに作成



◆ネットクルー職の正社員化と全国一律賃金の同時実施

 ネットクルー職が契約社員から正社員へ転換し、これまで正社員と異なっていた賞与や持株会への参加等は同一となったが、それらを除けば基本的な制度等の変更はない。元々基本給は、契約社員時から正社員と給与テーブルが連続したラインになっており、一斉転換でも月給面で大きな問題を生じることなく進んだ。
 また、2016年4月のネットクルー職の一斉正社員化と同時に、正社員の給与の全国一律化を行った点に大きな特徴がある。
 本社が東京で、仙台市と北九州市にそれぞれ100人規模の拠点がある。一般的にネット業界では、地方に拠点がある場合でも、本社は東京で地方はオペレーションセンターやサポートセンターとサポート的位置づけで別会社化するなど、給与を含めて人事制度も異なるケースが多い。同社でも、当初、仙台市や北九州市の拠点の給与は、地方の相場に合わせる形で、東京よりも1割低く設定していた。
 しかし、東京・仙台・北九州で「1つのデジタルマーケティングチームをつくる」というコンセプトのもと仕事の分担がされており、東京と地方で処遇を分けている意味が薄れていると感じていた。2016年4月のネットクルー職の正社員転換と同じタイミングで、東京の給与水準に合わせ地域間格差をなくして給与テーブルの全国一律化を行った。それに伴い、地方のネットクルー職から正社員に転換した社員は、給与が増額することとなった。


3.取組の内容(その他)

◆年収2割増

 元々、正社員の賞与は、完全業績連動制であった。そのため極端なケースでは、赤字であれば賞与はゼロになり、過去最高益となると一気に増えることが想定されが、「みんなで会社をうまくいかせよう」という状況下では非常にうまく機能した制度であった。
 だが、会社としてはたくさんの賞与を支払っているにも関わらず、社員にしてみれば金額が毎年大きく変動してしまい不安定な面があった。不安定さにより社員は賞与を自分の年収に含めて捉えておらず、社員は必ずしも喜んでいないことがアンケート等の結果からわかった。
 そこでこの制度を廃止し、固定給を上げていくという方向性に切り換えることした。固定給に換えることで、コストが一定になるため経営的にはリスクを抱え込む面はあるが、長期的にみれば固定給に切り換えてもあまり大きな影響はないと考えた。加えて、世間並以上の報酬を払っていきたいと考え、「この位の水準はめざす」ということで年収2割増の目標を決めた。


出典)株式会社メンバーズ提供



◆残業5割減

 現在、新卒採用のうち女性が半分位を占め、全社でも女性の割合が4割強になるなど、女性の増加が顕著である。だが、出産して、子育てをしながら活躍しているという女性のモデルケースがあまりないことも含め、女性が男性と比べて、将来に対する不安の割合が高いなど、会社に対するエンゲージメントが高まり切らない、といったことが社内アンケート調査からわかった。
 この点を受け止め、「将来の不安を払拭するために、しっかりとした道筋をつけなければならない」ということで対応を始めた。
 当時、全社の月平均の残業時間が30時間位で、業界の中では少ないと認識していた。しかし、月に30時間残業があれば、女性が子育てをしながら仕事を続けるのは難しい。そこで全社で残業時間を15時間位に半減することをめざすことにした。そのために社員が生産性を向上させなければならないということを共通認識として持ち、残業時間の削減に取り組んでいる。


4.効果と課題、今後の運用方針

◆社員自身のキャリア、めざす姿・イメージの社員と経営との共有化

 働き方改革のポイントは、働き方だけではなく、長期的に社員自身のキャリアがどうなるのか、またそのめざす姿・イメージを社員と経営者側双方でしっかり共有することにあると考えている。この考え方を踏まえて、「みんなのキャリアと働き方改革3か年プロジェクト」において、契約社員の正社員化だけではなく、全国の給与体系の統一による昇給など、同社ではさまざまな取組を進めてきた。それらの成果として、いくつかの効果があらわれている。
 一つは、離職率の低減である。取組前には14%程であった離職率が7%程に半減している。また、社員アンケート調査による社員のエンゲージメントの指標をみても、多くの指標で改善がみられる。さらに、女性管理職比率も取組前には15%程度であったが、すでに30%の目標を達成している。社員に働きやすい職場として認知されてきていることが明らかである。

◆生産性とサービスレベルの向上

 会社の規模自体は順調に成長し、社員数も毎年100人単位で増えている。だが、企業が成長し、社員数が増えれば増えるほど、業務が煩雑になり、生産性が落ちてしまう懸念がある。業務経験のない新卒社員を大量に採用しながらも生産性を向上させ、一段と高まるクライアントが求めるサービスレベルに対応していくか等、「社員やチームのサービスレベルのアップ」は今後の大きな課題である。
 人材育成は、個人のスキルだけの話ではない。チーム・会社としてのサービスレベルを今後ますます強化していく必要がある。

◆今後入ってくる社員との価値観の共有

 「働き方改革」を掲げた当初、固定給をアップするためには、お客様に対するサービスの付加価値を上げて、会社として売上を増やしていかなければならず、生産性も向上させなければならない。そのために経営で取り組む部分、社員が個人で取り組む部分、社内のチームで取り組む部分もあり、「全員参加でやる取組だ」ということを共通認識としていく必要があった。これを実現させるために、社員と経営側がしっかりとコミュニケーションをとり、さまざまな取組を進め、皆でゴールを共有したことの意味は大きい。
 しかし今、同社では事業成長に伴って、毎年多数の新卒社員が入社してきているため、目標設定や取組に至るこれまでの苦労やその大事さを知らない社員が増えることになる。そのため目標の達成は自分を含めて皆で達成するのではなく、「会社がやってくれて、いい会社だな」といった受け身になってしまう懸念がある。新しい世代とどのように価値観を共有化していくのか、急成長しているが故の難しさであり、今後の課題である。


出典)株式会社メンバーズ提供



◆ライフスタイルの変化にも対応できるチームとしてより働きやすい環境整備

 例として、クリエイターの立場において、日本で一番クリエイターが幸せな会社をつくる、というのが大目標としてある。そのため、働き方や処遇については、引き続き向上させていく。
 同社の子会社の一つで、どこで働いてもよいという「里山エンジニア事業」の取組を進めている。ただし、フリーランスではなく、どこでもチームとして働いてもらうことを考えている点が特徴である。 ネットワーク的な環境等を担保しながら、フリーランスで働くよりもいい仕事・良い職場を提供し、高い付加価値を出せるようにし、その結果を処遇にも反映させることをコンセプトとしている。
 クリエイターにとって、「働く場所がどこでも自由」ということは、単純に「気持ちよく働く」という面だけでなく、さまざまなライフスタイルの変化へ対応しやすくすることでもある。最近、社内でも介護問題などにより、「田舎へ帰る」ということを考える社員が出てきている。この事業を普及・推進すれば、離職することなく田舎でもチームとして働き続けることが可能となる。


5.活躍する従業員の声

出典)株式会社メンバーズ提供
仙台オフィス
漆畑 聖香さん

年代 20代 性別 女性
勤続年数 3年
キャリアアップの過程 2015年4月に新卒で契約社員として仙台オフィスに入社
2016年4月正社員に転換
Web業界のさまざまな業務を経験後、現在はデザインを中心とした業務に従事

◆地元、東北でWebの仕事を求める

 漆畑さんは2015年4月に専門学校の新卒として同社に入社し、現在3年目。仙台オフィスでデザイナーとして働いている。
 漆畑さんは、以前から地元の東北でWebの仕事をしたいとの思いが強く、同社を志望した一番の理由は、「仙台オフィスが設けられ、仙台で採用が行われている」ことがあったという。また、仙台オフィスが、東日本大震災の復興支援を目的につくられたもので、漆畑さん自身、東北出身者として地元東北地方に貢献できる仕事をしたいという思いから入社を決めた。
 入社当時は、専門学校の新卒は契約社員であるネットクルー職の採用枠に限られていたため、他の選択肢はなかった。契約社員ということで、「何年かして正社員に上がれないと、契約を切られてしまうのではないか」という不安もあった。しかし、同じ専門学校の卒業生の中でも、同社にネットクルー職で入社して正社員に上がった先輩がいたため、「私も数年後には正社員になれるようにがんばろう」と目標が持てた。「ネットクルー職だから」「契約社員だから」という負い目のようなものはなく、社内の教育制度もしっかりしており、自分のキャリアを考える上での不安はなかった。

◆手厚いサポートがある働きやすい職場

 入社当時は、デザインだけでなく、運用業務等、Web業界のさまざまな仕事を幅広く経験させてもらった。新卒で入った当初は、「思っていたよりも非常に速いスピードで周りが流れて行くと感じ、苦労した部分もあった」という。しかし、先輩が必ず1人専任でつくなどサポート体制がしっかりし、支えてくれる人がたくさんいたため、働きやすい環境であると感じ、挫折することもなく続けられた。そのような環境で経験を積む中で、「デザインをやっていきたい」という思いが一層強くなり、希望を出して、デザイン中心の仕事に携わるようになった。

◆正社員になることで雇用不安が解消

 2016年4月に契約社員のネットクルー職が一斉に正社員に転換することになった。「契約社員のままで何年か経って、正社員になれなかったら切られるのではないか」という不安がなくなったことが、一番うれしかった。反面、先に入社した先輩方の苦労なども知っていたので、「自動的に正社員に上がってよいのか」という戸惑いもあった。
 契約社員から正社員になって大きく変わったのは給与面である。だが、契約社員の時から元々「仕事はがんばろう」と思っていたので、正社員に切り換わったからといって、仕事の内容や気持ちの面では、あまり変化はなかった。正社員にはなったものの、ネットクルー職であることに変わりはなく、周りの見方や接し方も「まだまだこれまでと同じくがんばろうね」というもので、特に変わった様子は感じなかった。
 現在、全社をあげて残業時間の削減の取り組みを進めているが、漆畑さんの直近の残業時間は15~16時間程度である。「まだ3年しか会社にいないが、それでも3年前に比べたら格段に減ったという実感がある」と言い、庶務などの仕事の効率化を図り、残業時間削減にも取り組んでいる。

◆将来は会社を代表するデザイナー


出典)株式会社メンバーズ提供

 今後の自身のキャリアについては、長いタイムスパンで考えれば、「もっともっとデザイナーとして成長していきたい」という思いが強い。「1年後にはチームで1番、3年後には仙台オフィスを代表するようなデザイナーになりたい。さらに10年後には社内で1、2を争うようなデザイナーになり、デザインでお客様を支え、ビジネス成果につなげる存在になりたい」という。そのために資格取得も考えている。資格取得については、会社から試験費用を負担してもらえ、取得すれば報奨金が出ることもある。また、社内評価のグレードにも大きく影響する部分もある。漆畑さんは、さまざまな案件に携わり、必要な資格を取って夢の実現をめざしている。