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  • 勤務時間を限定した正社員

事例40 株式会社チャイルドハート

事例 40

株式会社チャイルドハート
従業員の幸せを追求。多様な働き方に関するニーズを吸い上げ、働き続けられる職場づくりに向けた改善に取り組み続ける。

出典)株式会社チャイルドハート提供


会社設立年 2000年
本社所在地 兵庫県神戸市西区今寺3-22
業種 保育所ならびにプリスクールの運営、企業・病院内保育園の運営受託等
正社員数
(2017年8月31日現在)
約70名(うち短時間正社員10人)(男性5名、女性65名)
非正規雇用労働者数
(2017年8月31日現在)
パート社員 約100名(全員女性)
資本金 3,810万円
売上高
非公開
取組概要 <背景>
・創業当時から、従業員の幸せを追求
・パート社員が主戦力の職場。優秀な人材の確保。
<内容>
・127.5時間以上勤務可能なパート社員のうち、希望者について本部面談で短時間正社員に転換(理由の制約なし)。
・その後、時間給制度を導入
<効果・結果>
・育児中や介護中の職員の柔軟な働き方が可能となった。
・優秀な人材の確保。事業所数の増加及び安定した経営状況。

PDFデータ

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 1992年にチャイルドハートクラブ設立、2000年株式会社化。2001年にWEBカメラを活用して子ども達の姿を動画配信する保育サロンを開園、連れ去り防止のためのICタグも導入した。企業内保育園として運営する保育サロンも設置した。
 現在、東は三重県から西は岡山県まで、直営保育園や病院・企業内保育園など計25事業所(直営8園、委託運営の園17園)で170人の従業員が働いている。
 2002年に兵庫県新産業創造プログラムに認定され、2009年経済産業省のソーシャルビジネス55選にも選定されている


1.取組の背景

◆利用者だけでなく、『従業員の幸せ』も追求

 同社の強みは、以下の3つの視点でのバランスを常に意識していることにある。1つは、顧客が求めていることは何か常に考え、ニーズをキャッチし、運営に反映する「顧客(保護者)の視点」、2つ目は、働きやすい環境づくりと保育士の質のレベルアップを目指す「保育士の視点」、3つ目は継続した収支の安定と質の高い保育内容を目指す「経営の視点」である。
 3つの視点を持って事業を拡大しながら、安心して子どもを預けられるサービスを開発・提供し、働く親や企業をサポートする一方で、「経営目標には、利用者だけでなく、従業員も幸せを感じられるように『幸せの追求』を掲げている。代表取締役の木田氏は、子どもに良い保育サービスを提供するには、従業員である保育士がハッピーであることが大前提と考え、保育士の大半は女性であり、「従業員には出産後も職場復帰し、自分の経験を業務に生かして欲しい。無理なく、長く働き続けられるよう、一人ひとりに合った働き方を選べるようにしている」。そのため、創業時から、パートも含めた従業員一人ひとりとの面談の時間の確保を大切にし、働きやすくするためのニーズに都度対応した運用を行ってきた。


出典)株式会社チャイルドハート資料より転載




2.取組の内容(短時間正社員)

◆制約のある従業員でも正社員として活躍して欲しい

 同社では、パート社員の人数が正社員よりも多く、パート社員が主戦力となっている。パート社員は、30代・40代が約6割で、ママさん保育士が多い。パート社員の仕事内容は正社員と同じであり、面談、研修等についても正社員と同様に実施している。
 育児等の時間制約のあるパート社員で優秀な保育士が多く存在し、定着して欲しいと考えていた。短時間正社員制度があることを聞き、社会保険労務士に相談し、制度を導入した。
 パート社員から短時間正社員に転換する際には、本部の面談を受ける必要がある。試験の実施はない。短時間正社員になると、基本的に従業員が希望する勤務地(園)で働くことが可能となる。
 一方で、正社員から短時間正社員へ転換する際には、月単位の代表取締役・園長との面談のタイミングで希望を出せばよい。これまでに職員の希望により、正社員からパート社員へ転換したケースもあった。個々のライフステージやニーズに応じて、転換できるようになっている。


短時間正社員制度の仕組

出典)株式会社チャイルドハートへのヒアリング調査をもとに作成



 正社員の勤務時間は、月170時間が基本となっている。これに対して、短時間正社員(2017年現在10名)は、月に127.5時間以上の勤務が条件となっている。短時間正社員は、育児、介護等の理由を有するものが主な対象となっているが、他の理由でも適用可能となっている。週の勤務日数を少なくすることも可能だが、週5日勤務で勤務時間を通常より数時間短くするケースが多い。
 短時間正社員がいる職場では、勤務形態が不規則になったり、正社員への負荷が多少増えたりするともあるが、代表取締役による丁寧な月1回の面談実施等による職員の状況の把握により、従業員同士で協力し合う体制が整ってきた。不満のある従業員には、「いつか自分も助けが必要になるかもしれない、長い目で見て欲しい」と伝えている。最近、正社員として職場を長年支えてきた職員が結婚する際に、「制度があるから結婚しても働き続けられる」とコメントしている。
 さらに、2010年に正社員に時間給制度を導入した。基本、勤務時間は月170時間となっているが、従業員の事情に合わせて増減できるように、1日単位で時間数、時間帯を決められるようにした。時間制にすることで、企業内保育における企業の勤務日(例えば、土曜日が休みの企業内保育園)と土曜保育も実施している園の違いに対応することにしたのである。

◆取組にあたってのポイント

 短時間正社員制度の導入のハードルは特になかった。同社では、短時間正社員制度に関わらず、例えば退職金制度があるといいといった従業員のニーズから職場をよりよくするための検討が行われ、必要に応じて社会保険労務士等の専門家に相談の上、制度が導入されてきた。
 短時間正社員制度の導入の際には、普段から従業員同士の助け合いの精神が醸成されていて、人間関係が非常によいため、特に問題はなかった。


出典)株式会社チャイルドハート資料より転載




3.取組の内容(その他)

◆従業員のニーズを吸い上げ、従業員の働きやすさを追求し続ける

 従業員の幸せを追求することは、保育の質の向上のためにも重要と考えている。従業員の心が満たされていなければ、子どもに影響すると考えている。

【年次有給休暇取得の推進(100%取得)】
 その一環として、年次有給休暇の取得促進を行っており、取得率は正社員、パート社員ともに100%である(保育業界では珍しい)。前月のうちに休暇を申請し、事前にシフトの調整を行っている。年次有給休暇の取得を可能とするために、業務を代替するヘルプ要員を確保するためのLINE(SNS)がある。他園にヘルプ要員として入ることは、従業員にとって他園を見ることができるチャンスにもなっている。また、事業所間で月に1回、各園長が集まって報告・情報共有を行い、従業員の様子等についても共有・連携していることにより、急な欠勤時の場合でも、他園からスムーズにヘルプ要員の応援を出せるようにしている。

【各園での改善のための取組を共有】
 各現場で働き方や職場改善のための取組を行っている。全園共通の芯となるマニュアルはあるが、各園で職場改善のための取組について園長会議等の場で共有し、他の園の取組を参考に各園でマニュアルを作成し、職場環境の改善に努めている。

【人材育成のための評価の仕組み】
 人材育成のために、全従業員を対象に、保育士評価シートを作成し、月に1回面談を取締役社長自らが実施している。保育士チェック表を用意し、従業員が自己評価のコメントを記入して提出する。取締役社長は全員分チェックし、返却している。定期的な研修のほかに、従業員の目標に応じた研修にも参加させている。

【ニーズ把握のための面談や従業員満足度調査等の実施】
 また、従業員が困っていることやニーズを把握するための取組として、月1回の取締役社長・園長との面談のほかに、従業員満足度調査を毎年実施している。
 さらに、月1回の面談とは別に、『ペップトーク』と称して、栄養士、看護師、ベテランの保育士が園を2~3か月に1回巡回し、若手保育士のスキルアップをサポートしたり、相談に乗ったりしている。

【働き続けるための取組】
 出産後、子どもの育児を理由に退職する保育士は一般的に多いといわれている。しかし、同社では、職員の子どもは、自園に預けることか、または職員用の託児所に預けるかが選択可能となっている。2010年より、生後か2月から小学校入学前まで預けられる従業員向けの保育所を開園している。
 数は少ないものの、退職した従業員に対しての再雇用制度もある。

【経営理念である幸せの追求のための取組】
 新しい取組として、『ハッピーファイル』がある。自分がなりたい保育士像を従業員自身が真っ白なファイルの表側に書き、裏側にはその従業員の他の従業員によいところを書いてもらう。このような従業員の幸せを追求するための取組も、積極的に行っている。ペップトークや面談を通じて指摘されたこと、言われてうれしかったこともファイルに書き込んでいく。
 上記のように、従業員のニーズに応じて、多様な働き方の取組を実施してきている。


4.効果と課題、今後の運用方針

◆やる気があれば時短正社員でも園長に

 現在、パート社員から短時間正社員に転換した園長が2人いる。職場の人間関係がよいため、園長がフルタイムでなくても、従業員同士が助け合って働くことができている。
 短時間正社員を増やしたいと考えているものの、103万円の壁が障壁となっており、パート社員からの転換を希望しない従業員も一定数存在する。
 園ごとに柔軟に役職配置を行っており、園の規模やパート社員の多い園では、パートのリーダーを配置している園もある。

◆離職率が低く、入職者も「働き続けたい」という意志が強い

 一般的に保育業界は離職率が高いが、多様な働き方を可能として、働き方も改善することで、離職率が低くなり、業界内でみても非常に低い離職率となっている。前述のように、企業内保育があるため、保育の離職理由の上位に入っている「出産・育児」というライフイベントがあっても働き続けることが可能であり、結婚しても働き続けたいという意志のある者が入職している。職員の紹介(口コミ)による入職も多い。現在は、結婚・出産による退職はほぼない(夫の転勤による退職はある)。
 退職希望者には、退職の際に、「他の園を見た上で戻りたくなったら戻っておいで」と、取締役社長は伝えている。
 同社の経営理念が浸透しており、従業員のモチベーションが高く、従業員は日々自分で考えて行動している。現場の先生達が、みんなで園をつくっているという意識を持っている。前述の評価のチェックシートには、従業員の提案を記入する欄がある。従業員は、自分の意見が反映される機会があると感じており、提案が採用されると認められたと感じ、承認欲求が満たされる。提案は全社で取り入れられた場合には、アイデア賞として、商品券が支給される。
 事業収益も安定しており、営業活動を行うことなく、園の評判のみで年々事業所数が増えている。

◆多様な働き方に向けて改善し続けたい

 今後は、給与水準を上げるための評価の方法についても検討しており、現在試行錯誤中である。また、家賃借り上げ制度についても検討したいと考えている。
 介護を理由とした短時間勤務を希望する従業員も今後増えてくることが予想され、それらの新たなニーズに合わせ、その都度一緒に改善策を検討していきたいと考えている。これからも多様な働き方のニーズに対応できるよう取組を続けたい。


5.活躍する従業員の声

内閣府企業主導型保育事業
チャイルドハート舞子園
園長  山下 容子さん

年代 30代 性別 女性
勤続年数 14年
キャリアアップの過程 2003年よりパート社員として入社。
2009年頃にパート社員の園長に。
2014年にパート社員から短時間正社員に転換。

◆パート社員のまま園長に昇格

 山下さんは、結婚し現在の住まいに転居した2003年に、パート社員として入社。気楽に、数時間のパート勤務のイメージで働き始めた。他の保育士と同じようにパート社員の保育士として働いていたところ、園の数が増えていく中で、2009年頃に取締役社長から「そろそろ園長やってみない?」と声をかけられた。当時は、二人目の子どもを希望していたので、最初は躊躇したが、勤務日数や就業時間等について相談の上で引き受けた。
 社員に転換することも勧められたが、家事・育児と両立したかったため、パート社員でい続けることを希望し、週4から5日、9時から16時勤務で、103万円以内となるように調整し、園長として勤務。
 短時間でも園長としてうまくやっていけた理由は、役割分担が明確になっていたからである。3つのシフト時間に応じて、役割が明確で、誰が休んでも何をしなければいけないかを共有していたため、突然誰かが休んでも問題がないようになっていた。一人の従業員に仕事が偏ることなく、業務を進めることができた。

◆「103万円の壁」の制約からはずれる(パート社員から短時間正社員へ)

 2014年にパート社員から正社員に転換したきっかけは、103万円以内に収めるのが難しくなっていたことが一つの理由である。また、下の子が小学生になって自分の時間が少しできたこともある。そのタイミングで、定期的な面談時に取締役社長に短時間正社員への転換について相談した。
 現在の勤務時間は、基本は週に4日、9時から18時勤務。園長兼保育士である。平日に1日休めることで、子どもの行事への参加や通院なども可能となる。平日の1日を有効に活用でき、ありがたい。子どもの病気等があった月でも、必ずしも127.5時間をクリアする必要はなく、時給で調整できるので、制度に柔軟性があって助かっている。
 舞子園は、ヘルプ要員もあわせて従業員13名の体制(ヘルプ要員1名、短時間正社員が園長1名と保育士1名、パート社員10名)。週に2回出勤のパート社員もいる。人数自体は充実している。
 転換してよかったことは、のびのび働くことができるようになったこと、時間の枠にとらわれずにやりたい仕事に取り組めるようになったこと。パート社員の時は、もっと働きたくても、103万円を超えないように働く時間を制限する必要があった。休むことで他の社員やパートに迷惑をかけることもあり、保育に影響が出てくるとよくないと悩んでいた。今は、他のパート社員が年末調整に入った時に働くことができ、助け合うことができている。

◆今後のキャリアアップも考えているが、まだしばらくは子育ても大切にしたい

 子どもがもっと大きくなって、もっと自分の時間ができたらスキルアップしていきたいと考えている。しかし、まだ子どもが小学生と中学生で、留守番の日が多く、「おかえりなさい」と言えないことは心苦しいと感じている。中学生になっても、一人にさせたくない、話し相手になってあげたいと考えており、しばらくは短時間正社員として働き続けたい。小学生何年生までといった制約がないため、個人の希望に沿った柔軟な働き方が可能となっている。
 働き方については、かなり満足している。子どもの病気や手術があったりと、子育ては平坦でない。10年以上働き続けられたのは、社長や現場の支えがあったからこそと感じている。社長の対応力や「大丈夫よ」と言ってくれる安心感があったからこそ、働き続けられた。
 同じ法人で働き続けることのメリットは、保育の方法を変える必要がなく、また生活スタイルも変えないで済むことである。今後も、子どもの成長を見つつ、タイミングを見て働き方を変える等、キャリアアップしていけたらと考えている。