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  • 正社員への転換 ~多様な正社員へ~
  • 処遇の改善
  • 人材育成
  • 勤務地を限定した正社員

事例41 株式会社モスストアカンパニー

事例 41

株式会社モスストアカンパニー
リファラル採用の活用により正社員登用や就労希望者を人事部が全国的に直接フォローし、非正規の活躍・活用を促進

出典)株式会社モスフードサービス提供


会社設立年 2013年
本社所在地 東京都品川区大崎2-1-1
業種 飲食サービス業
正社員数
(2017年12月末現在)
340名(男性275名、女性65名)
非正規雇用労働者数
(2017年12月末現在)
キャスト(パート・アルバイト)4,334名(男性1,241名、女性3,093名)
資本金 1億円
売上高
158億円(2016年度)
取組概要 <背景>
・インナーに目を向けた社員採用の仕組みづくり
<内容>
・正社員登用
・勤務地限定正社員
・その他
<効果・結果>
・採用コスト大幅削減で、採用実績あげる
・留学生キャストの育成と正社員化

PDFデータ

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 同社は、フランチャイズチェーン(以下、「FC」)によるハンバーガー専門店「モスバーガー」を展開する株式会社モスフードサービスの100%出資子会社である。全国に1,300以上あるFC加盟店のうち約210店舗を運営する、モスグループ最大のFC会社である。
 元々、北日本・東日本・西日本の3地域に分かれていた法人を、2013年1月に統合して設立した。設立後、賃金・人事処遇制度とその運用に関して、3つの法人の標準化や全国規模での人材流動化策など諸整備を推進する。人材不足が逼迫した状況にある外食産業において、人材確保、採用力強化、定着促進に取り組む。


1.取組の背景

◆インナーに目を向けた社員採用の仕組みづくり

 同社では、2年前に生産年齢人口と有効求人倍率の動向を過去から分析し、今後有効求人倍率は高止まりすると予測した。明らかにこれまでとは異なる傾向がみえたため、少子化が進む状況では誰も採用できなくなり採用における戦略・マーケティングが必要と考えた。この危機感から、同社で働くインナー(社員・キャスト)に目を向けた社員採用の仕組みづくりに取り組むに至った。
 外食産業では、アルイバイト等の非正規雇用労働者を正社員に転換することは、日常的に行われている。
 同社では、雇用区分は社員と「キャスト」と呼ばれる半年の有期契約雇用で働くパート・アルバイトの2区分。全国約210か所の店舗において、社員340名、キャスト約4,500名が働く。同社の2017年度新卒採用社員9名は全員がモスバーガーのキャスト経験者であり、中途採用社員についても17名のうち15名がキャスト経験者である。会社としてキャスト経験者をねらったわけではないが、結果的にそうなった。
 同社では、これまで大手就職情報サイトを用いた求人活動を行ってきたが、このような社員採用実績を踏まえ、同社で働く者の中に潜む人材やニーズを捉えることが効果的と考えた。今後加速することが予想される人材不足を乗り切る方策として、同社のキャストの中に潜在する社員になりたい人、社員になるスキルや能力を持つ人を探す仕組みを構築するという方針を持ったのである。


2.取組の内容①(正社員紹介制度)

◆リファモス:リファラル採用を用いた社員採用

 インナーに目を向けた社員採用の仕組として、一つは、昨年4月に専用アプリ(大手人材サービス会社が開発、提供している「MyRefer」)を用いて人材紹介を行う制度「リファモス」を構築した。社員採用のための専用アプリを用意し、同社で働く社員がそれを使って、社員になりたい人などに募集情報を紹介し、応募があれば人事部に直接データがとんでくる。
 それまでも、同社ではキャストから正社員登用を行ってきたが、アナログでやり取りしていた。さらに、社員になりたいと思うキャスト本人が、本社人事部に連絡するルートはなく、各店舗の店長やスーパーバイザー(担当エリア内の店舗の営業を担当。以下、「SV」)を通す必要があった。このため、店長からの連絡が遅れ、タイミングを逃すことや、本人の意思が本社人事部に届かないこともあった。また、店舗を切り盛りする店長やSVにとって、通常業務も行う中、キャスト本人と人事部を仲介しつつ、正社員登用にかかる連絡調整を行うことは負担が大きかった。
 このような状況を踏まえ、SV・店長が負担なく社員になりたいキャスト、社員になって欲しいキャストに求人情報を紹介できるリファモスアプリを用意し、紹介した人から応募があれば、人事部にWeb上で知らせが届き、続く手続きを人事部が本人と直接行う仕組みを整えたのである。リファモスアプリは、パソコン、スマートフォンどちらでも使用できる。社員の新卒採用・中途採用のどちらにも対応しており、アプリから求人情報のURLを相手のLINEやフェイスブックに送ることで、紹介を行う。同社で働くキャストにとどまらず、友人や家族に案内することもある。紹介した社員には、試用期間経過後に5万円を支給している。人事部は、アプリを通して社員への応募の連絡を受けると、直接本人に連絡して会社説明を行う。続いて、一次面談、適性検査、能力試験、二次面談と進める。これは、従来行ってきた新卒採用及び中途採用と同じ流れである。
 社員になりたい人をキャッチする、潜在的に社員になりたい人を探し、タイムリーに対応する。同社人事部では、2017年春に店長を集めて、リファモス制度を案内した。それを受けて、リファモスアプリを社員約300名中約130名がダウンロードし、リクルーターとなっている。


リファモスアプリ(スマートフォン画面)

出典)株式会社モスストアカンパニー提供



◆ディグモス(dig-up Mos深堀り):優秀なキャストを人事部が一本釣り

 インナーに目を向けた社員採用の仕組みの二つ目は、人事部が優秀なキャストを一本釣りする「ディグモス制度」である。
 同社では、店長がキャストの働きぶりなどを評価する。これまでも一部の店舗では、店長独自に評価制度を作成し、データにもとづく客観的評価を行っているところもあった。こうした動きも踏まえつつ、今回、人事部において、店長の協力を得て評価制度を再構築した。その評価結果のデータをもとに、優秀な人材をみつけ、人事部がどこにでも直接会いに行く。
 同社は、2013年1月、北日本・東日本・西日本の3地域に分かれていた法人が統合して、設立した。このため、店舗は全国に点在する。店長に相談して、社員としてやっていける可能性がわずかでもあるなら会いに行き、直接話して、本人の不安を解消する。
 攻めのリファモス、ディグモス、これが今後の人材不足時代を見越し新しくトライアル中の、同社のインナーに目を向けた社員採用の二つの仕組みである。


3.取組の内容②(勤務地限定正社員)

◆社員採用の全国展開を支える就労地特定勤務制度

 さらに、人事部による社員採用の全国展開を支える制度として、同社では、2014年4月に勤務地の範囲で社員区分を設ける新人事制度を導入した。
 社員が勤務地の異動・転勤の範囲を選択できる制度で、従来の一定エリア内の異動に限定する「A(エリア)社員」に加えて、全国転勤を可能とする「N(ナショナル)社員」、自宅通勤に限る「J(自宅通勤限定)社員」を設定した。これら3つの社員区分による昇進昇格の基準に差はなく、基本給のうち社員の等級で決まる本給部分と賞与で差をつけている。また、3つの社員区分の登録は、柔軟に変更可能である。
 制度導入時、既存社員の78%がA社員を選び、N社員を希望した者は9%、J社員は13%であった。ほとんどの既存社員が一定エリア内での異動を受け入れる中、自宅通勤に限定するJ社員の区分を設けた背景には、優秀な若手人材を獲得するというねらいがあった。以前、同社では中途採用をメインにしていたが、20歳代前半~30歳代半ばの入社希望者の中に、エリア内の異動であっても受け入れることが難しいという声が多くあった。しかし、事情をよく聞いてみると、結婚や介護などの理由で当面は自宅にいたいが、そうした理由が解消されれば全国で勤務してみたいという意欲を持つ者が少なくなかった。一方、全国異動を可とするN社員の区分を設けた理由は、元は別会社であった3支社間の人材流動性を高めるとともに、社員にとっては全国を異動して、他のエリアでの異なる仕事の仕方や考え方等を体験してもらいたいという思いによる。
 リファモスやディグモスの制度によりキャストから社員に転換した者は、地元の出身で、自宅から通勤する者が多く、地元や自宅から通勤できる範囲、もしくは現在勤める店舗での勤務を希望する傾向がある。就労地特定勤務制度はそうしたニーズに対応し、キャストから正社員への円滑な転換を促す。


就労地特定勤務制度

出典)株式会社モスストアカンパニー提供資料をもとに作成




4.取組の内容③(キャストへの重点施策)

◆就労環境整備に向けた諸制度とキャストのキャリアアップ

 リファモスは、キャスト紹介の機能も備えており、キャストがキャスト希望者を紹介することができる(社員がキャスト希望者を紹介することもできる)。このリファモスーキャストについては、就労後3か月続くと紹介した人と紹介された人それぞれに1万円が支給される。リファモスーキャストは昨年8月スタートから約150名がリクルーターになっており、紹介数230名、応募90名、採用80名に至っている。
 さらに、食事補助制度として、キャスト・社員ともに半額で商品を購入できる制度を、2016年度下期よりスタートした。有給休暇については、4月と10月の雇用契約更新の際に雇用契約書内に有休残日数を明記し、必要な場合に有給休暇を前もって申請しやすい環境を整備した。キャストのキャリアアップ、研修面では、前述のディグモスで紹介した「キャストキャリア評価制度」で評価の高いキャストを全国から集め、それぞれのスキルの確認と底上げ、共同体意識の共有を図るためのトレーニングセンターの設置を準備している。


5.取組の効果、今後の運用方針

◆社員とキャストが築く信頼と人脈を採用に活用

 リファモスー中途については社員5名採用、リファモスー新卒は内定者3名となっている。これまで同様、今期も大手人材紹介サイト等を使って社員募集したが、結果は期待を大きく下回った。一方でリファモスの運営にかかる年間費用はリーズナブルな固定費で、インセンティブは企業の方針次第であるため、採用コストの投資先をリファラル採用へ早急にスイッチしようとしている。
 リファモスは、特にキャストがキャストを紹介する制度が好評である。キャスト募集に関しても、リファモスでこれまで100名弱の応募あり、約80名採用した。
 紹介で来る者は、紹介した人が面倒をみるので辞めない。結果的に、一緒に働きたいと思っている紹介した者・紹介された者双方が定着するという。
 広告媒体に頼り切らないキャスト採用へ移行、定着率改善による採用費の低減と有効利用を加速する方針を明確に持っている

◆外国人の社員採用:社内実験を開始

 同社では、若手を採用するコスト及び時間が多大になり、年々困難になってきているので、優秀な留学生キャストの登用の検討を始めたところである。しかし、人材不足を単純に外国人で対応すればよいということではなく、既存社員による生産性向上、機能化・自動化が最優先と考えており、慎重に思案している。現在は、キャスト経験2年、語学堪能なネパール人の留学生自身から新卒入社希望があり、就労ビザ申請を進めている。理念共有、働く目的を共有できることを確認できれば、留学生キャストの正社員採用という大きな社内実験に取り組んでいく意志は強い。


6.活躍する従業員の声

東日本支社
スーパーバイザー
鉢村 友佳子さん

年代 40代 性別 女性
勤続年数 社員歴5年
キャリアアップの過程 2003年頃、自宅の近くのモスバーガーの店舗で、パートとして働き始める。当初は夜間勤務。
2013年6月に同店舗をモスストアカンパニーが運営することとなった。
2013年7月正社員に転換。店長経験を経て、現在はスーパーバイザーとして6店舗担当

◆パートから正社員に転換

 鉢村さんは、今から15年前に、自宅の近くでモスバーガーの加盟店が新規オープンした際に、キャスト(パート)として働き始めた。家計の足しにすることが目的で、子どもが小さいので、夫と入れ替わりで仕事に出る、夜間勤務からスタートした。21時~25時の勤務の後、掃除をして、26時に帰宅するという日々であった。
 その後、働く店舗は同じだが、オーナーが2回代わり、この間に、子どもの成長にともない、勤務時間を延ばしていき、フルタイムになっていた。年数が経つ中で、最終的にアルバイトマネージャーになり、シフトをつくるなど、社員業務の代行もやるようになっていた。マネージャーになると、時間帯責任者になるため、講習会を受講し、テストなども受けて認定に至った。
 2013年にモスストアカンパニーの運営となった際、正社員転換について声をかけられた。先々のことを考えるとずっと働きたいと思っていたが、自信がなかったので、とびついたわけではなかった。正社員になると異動があることが不安だった。働いていた店舗は、自宅から10分で通える。電車に乗って、通勤できるのか心配だった。店長や人事部の担当者に不安を話して、一つ一つ説明してもらった。そして、店舗は変わっても、モスバーガーとしてやる仕事は全部同じということがわかったほか、J社員として自宅からも通えることも決め手となり、正社員としてやっていこうと決心した。

◆私がめざすお店があるといい

 モスバーガーチェーンの店舗では、経営理念をはじめとする「モスの心」を具現化するために「HDC」を合言葉に毎日の営業を行っている。「HDC」とは、「H:Hospitality(ホスピタリティ)―心のこもったおもてなし」、「D:Delicious(デリシャス)―安全で高品質なおいし商品の提供」、「C:Cleanliness(クレンリネス)―磨き上げられた清潔なお店」という意味である。
 日々のHDC活動をあらためて見直すために、HDC強化期間を年2回設け、店舗のレベルアップをめざした活動を行っている。強化期間には、オーナーや店舗同士の相互評価によるコンテストが開催される。HDCを高めて、お客様に満足いただき、喜んでもらい、売上を上げる。全国に20ある支部ごとに取り組み、このコンテストで受賞することはとても名誉なことであり、各店舗とも力が入る。
 自分が勤める店舗が、HDCで賞をとれるよう、がんばりたい。しかし、パートでは情報量が違う。社員になると、勉強するチャンスも増える。モスバーガー共栄会の活動にも参加できる。(モスバーガー共栄会とは、モスバーガーチェーンの本部と店舗、そして店舗同士が相互にコミュニケーションをとりながら、信頼関係を育んで協力し合うために発足した組織で、全国20支部ごとに情報交換や相互啓発、モラールアップを目的に活動する。)
 HDC期間は、それぞれの店舗ががんばるので、一体感が生まれる。お客様の笑顔がうれしく、働いている人も笑って欲しい。アルバイトの立場で感じる楽しくない部分について共感できるからこそ、私にしかできない社員としてのアプローチがあるのではないかと思えた。
 そうした思いが、鉢村さんにとって正社員として働くモチベーションとなった。




◆スーパーバイザーとして女性目線の店づくりをめざす

 正社員に転換後は、店舗も異動し、電車通勤となった。スーパーバイザー兼務店長として赴任し、ゼロからのスタートであった。
 異動した翌月に、ヘルニアで1か月寝たきりになった。異動して早々に不在となった店長への不満や反発は出てきたが、徹底的に話し合うことで皆が理解してくれた。これをきっかけに、その後は楽しくやれている。皆が協力してくれるようになった。
 「自分はネガティブな性格で、できない、できないと思う、いじけ虫」と、鉢村さんは言う。できることから一つでもやる、自分ができることをがんばる。皆と一緒にやって、いろいろな目標を達成する。
 今はスーパーバイザーで、6店舗を担当する。お店に行くと、遠慮なくスタッフの中に入っていく。それぞれのお店は立地が違うが、営業はキャストが要であることは変わらない。キャストの笑顔が増えることが重要。チームワークを直すことも仕事である。
 今後は、スーパーバイザーの中でのステップアップをめざす。1店舗当たりの時間は減るが、他のスーパーバイザーの話も聞きたいし、自分の思いや考え、経験も伝えたいし、違うエリアの店舗にも行きたい。
 スーパーバイザーは、勤務が不規則なので、女性が少ない。東日本支社2名(18名中)、北日本支社2名、西日本支社はいない。女性がもっとなれるようになればよい。女性目線の店づくりをめざしたい。