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  • 100~299人
  • 正社員への転換 ~正社員へ~

事例45 株式会社ノベルズ本社

事例 45

株式会社ノベルズ本社
個々のニーズや制約に対応した職場環境づくりと職能等級制度の導入により多様な人材の就労継続を実現

出典)ノベルズグループ ホームページより転載


会社設立年 2006年
本社所在地 北海道河東郡上士幌町上士幌東3線259番地
業種 農業、林業
(その他製造/商社(食料品)/エネルギー)
正社員数
(2017年9月現在)
240名
(男性66%、女性34%)
うち外国人10名、高齢者3名
非正規雇用労働者数
(2017年9月現在)
48名(男性22名、女性26名)
うち外国人20名
資本金 1,000万円
売上高
(2016年12月期、グループ総売上)
139億円
取組概要 <背景>
・ビジネス拡大にあわせた人材確保・組織形成
・拡大・変化にあわせて処遇改善や雇用形態転換制度を実施
<内容>
・多様な人材(女性、高齢者、外国人)の活用
・雇用形態や年功序列に縛られない適正な能力評価(職能等級制度)の導入

PDFデータ

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 同社は2006年に創立。”十勝ハーブ牛”の生産を中心に、畜産に関わる多角的な事業を行う会社である。「海外でできることが十勝でできないわけがない」と、大規模酪農の先進国である欧米に経営ノウハウを学び、データに裏付けされたノベルズグループ独自のシステムを確立した。『日本一の牧場を創る』ことを大きな目標としており、現在、2万頭の牛を飼養し、効率と品質を両立した育成環境を実現し、創業から10年で飼養頭数規模北海道1位、全国6位にまで成長している。また規模だけでなく、技術力や利益率、福利厚生など、全てにおいての日本一を目指して成長し続けている。
 同社グループでは領域全般における技術革新や経営革新を加速させることによって、商品やサービスの生産基盤を一層強化し、どのような情勢下においても高い競争力を維持し、自らの生産ブランドの価値を高める“六次産業化”の展開にも積極的に取り組んでいる。
 同社グループは2016年度経済産業省の「新・ダイバーシティ経営企業100選」において、女性や外国人など多様な受け入れができる人事制度や、労働時間を短縮して4週6休を実現したことなどが評価され、受賞企業に選定された。
 社員は、繁殖、哺育、肥育などの部門に所属し、高い技術を持ったコンサルタントの先生などのサポートも得ながら一人ひとりが専門技術を磨き、その道のスペシャリストをめざしている。


1.取組の背景

◆生産を担う人材活用のための組織拡大のあり方の検討


出典)ノベルズグループ 採用サイトより転載

 同社は黒毛和牛の子牛と十勝ハーブ牛を生産しており、7社あるノベルズグループの中核を担っている。「長い時間と労力を費やしてこそ、美味しい牛肉が提供できる」という想いを形にするために、社内の繁殖や肥育部門の専門スタッフが戦略的に技術を高め、世界でも類を見ない肥育方式『交雑種一産取り肥育』(「一産取り肥育」は、例えば雌牛に一度だけお産をさせたあとに肉牛として出荷、子牛と牛肉の両方を得ることができるという画期的な開発手法)へと辿り着いた。



出典)ノベルズグループ 採用サイトより転載

【社外人材・多様な人材の活用と組織的経営への変革】
 同社グループは、過去3年で売上が倍増しており、急拡大している。一方で、人材定着・育成や組織化等の整備が急速な事業拡大に追いつかず、離職率の高い時期が続いた。生産を担当する人材の活用や、組織の拡大のあり方が課題となり、ビジネスの継続・拡大に影響を及ぼしていた。このため、大手メーカーに勤めていた経験のある経営人材を採用し、企業経営に関する豊富な知識と経験を持つ公認会計士等の社外専門人材を経営活動に加えた。さらに、年齢・性別・国籍によらない能力主義を基本とする人事評価の導入、現場の自律性を高める権限移譲とリーダー層の育成、多様な人材が働き続けられる勤務環境の整備など組織的経営への変革を実施した。



【人材育成と情報管理・活用のためのインフラ整備】
 2014年には事業拡大のため、人材戦略委員会と情報戦略委員会を設立し、人材育成と情報管理・活用のためのインフラづくりを行った。これらの取組により、優秀な人財が、必要な情報へ適時にアクセスできるようになり、従業員の自律的かつ創造的な行動につながっていった。
 同時に、同社グループの人材戦略の具体的な行動指針として、「すべての従業員・社員が、個々の能力を十分に発揮し、成長できる能力主義の人事制度の実現」が掲げられ、具体的な制度改革が実施されていった。

【挑戦し続ける人材の育成】
 近年、持続的な企業成長において取り組むべき課題が山積する中、同社は2016年からの中期経営計画を発表し、3年間で大幅なビジネスモデルの変革に取り組むこととなった。中期経営計画の達成を支えるのは従業員であり、従業員に対し、難しいことに果敢に挑戦し、常に前を向いて成長を志向する「ベンチャースピリット」を持つことを求め、人事部としても、「殻を破り挑戦し続ける人材の育成」をめざすようになった。


2.取組の内容(多様な人材の活用)

◆多様な人材が活躍できる環境づくり・仕事のやり方の整備


出典)ノベルズグループ 採用サイトより転載

 平均年齢33歳、30歳以下のメンバーが50%以上という若い従業員が多く、女性も3割、道外出身者も4割、外国人も1割と多様であり、かつ従業員数が伸び続けている同社。多様な従業員が活躍できる環境づくりを強化し、仕事のやり方や社内制度を整備している。


【多様な人材が働き続けられる勤務環境づくり】
 人材不足が顕在化している農業において、様々な事情や制約のある人材にも活躍してもらえる場を作りだすことが必要不可欠となっている。同社では多様な人材が働き続けられる勤務体制を整備している。農業の現場は一般的に休みが取りづらいとされているが、人員を増やしてローテーションで生産現場を回す仕組みを導入し、休日を以前の「週休1日」から「4週6休」に増やし、女性や高齢者のパート社員なども勤務しやすい制度としている。
 また、短時間勤務制度を導入し、育児中の女性スタッフのキャリア構築をサポートしたり、65歳以上の高齢者の継続雇用を実施したりする等、働く意欲のある人材の確保に成功している。かつて同社では一定の年齢以上の正社員はほぼ男性に占められていたが、制度導入等によって女性管理職の全社員に占める構成比率は26%にまで向上している。
 現在も、働き方改革を継続的に推進しており、全スタッフに労働環境等についての議論に参画してもらい、広くスタッフの意見を取り入れることで、多様な社員のニーズに対応した、より一層働きやすい職場環境をめざしている。このような職場環境や待遇を改善する働き方改革に継続的に取り組み、意欲とチャレンジ精神あふれる従業員のキャリア形成をバックアップしている。

【正社員への登用】
 パート社員について、半年から1年程度の仕事ぶりを見て、本人が希望すれば上長推薦により正規転換することが可能となっている。転換によって変わる点は、賞与の有無である。転換制度は、2006年の創立当初から存在しており、優秀な人材の確保に役立っている(計50人以上がこれまでに正社員に転換)。
 これまでに転換した者については、非正規雇用の高齢者は、やりがい重視で、技術指導等を行っており、特段正社員になりたいと希望して働く者は少なかったものの、働きかけると転換に応じる場合が多かった。
 非正規雇用の女性は、正社員転換の話を持ちかけても家の事情等によりパート勤務を希望する人が多く、勤続年数が長いパート社員が多いものの、転換の促進が難しい一面がある。
 外国人については、「十勝ハーブ牛」の海外展開に向けて獣医師資格を有するベトナム人を正社員として雇用しているが、それ以外の外国人は研修生として搾乳部門で働く者がほとんどで、非正規雇用が多い。外国人の雇用も増やしたいと考えているが、採用については入国管理による人数制限があり、それほど増やせない状況である。研修生の研修期間は3年間で、その後の在留資格の取得が難しく、帰国する者がほとんどである。

【外国人の働きやすい職場づくり】
 誰もが働きやすく、業務を的確に実施しやすい工夫を進めてきた経験を経て、外国人の活躍にも奏功している。ベトナムの農業大学を卒業した獣医師の資格をもつ人材などを正社員として獲得しているが、その給与体系を含む雇用条件は日本人正社員と同等にし、公平に評価される仕組となっている。さらに、日本語が堪能ではない外国人に配慮し、牧場内では写真などを多用したマニュアルを作成している。これらのマニュアルは、外国人だけではなく、視覚的な業務内容の把握が可能となることで、新入社員などへの教育にも効果的であった。


出典)ノベルズグループ 採用サイトより転載

【勤務地はニーズに配慮して配属】
 道内に、肥育、育成、酪農の8牧場を経営しており、1牧場の新設準備中である。採用については、勤務地限定スタッフの配置状況やグループ事業展開などを理由に、異動や転勤が発生する場合もあるが、家庭の状況など個別の事情に充分配慮して決定している。
 運用上、勤務地限定にする理由は、Uターンの社員の約半数が実家の近くでの勤務を希望しているため、そのようにニーズに配慮した配属を行っている。





◆取組にあたってのポイント(雇用形態や年功序列に縛られない適正な能力評価の導入)

【職能等級制度の導入】
 同社では、以前より従業員の働きやすさの向上や雇用形態や年功序列に縛られない適正な能力評価等に取り組み、「自分で気づいて自分で学ぶ」を促しながら人材育成を実施してきた。
 仕事を通じた会社への貢献が公平に評価される能力主義をベースにした賃金制度を導入しており、職能のランクに応じて時給単価を決定し、労働時間に応じて給与を支払う制度を導入している。
 「頑張った人が報われる仕組」を導入することで個々の社員のモチベーションを最大限引き出すことを目的としており、年齢や性別、国籍によらず、職能要件と照らして個人の等級を決定する方式に改定した。この制度導入によって、「時給」による給与の積算ができるようになり、労働時間に応じて給与が支払われるようになった(例:短時間勤務適用の女性社員等について公平な評価の実現)。
 また、業務内容や権限によって処遇が明確化することによって、異業種の人材の採用・登用することが容易になった。また、現場管理者に採用権限を与えており、必要な人材のスキルや経験に応じた配置が可能となった。
 評価については、能力主義の評価とあわせて全社員に目標管理制度を導入し、上司との面談および査定を実施している。社員が設定する目標・計画に対して、上司が具体的な方策を検討することで効果的な育成につながっている。
 現在は、上記の制度導入時よりも組織体制がさらに拡大していることや、賃金制度の等級区分が細かいことに対して、さらなる評価・賃金制度の見直しに取り組んでいる。

◆経営感覚を持って戦略的に取り組む

 畜産の仕事は一つひとつの業務をどれだけ戦略的に進めるかが重要と考え、同社では部門ごとに数値化された達成目標を設定している。質のよい受精卵の生産量や堆肥のコストダウン等を念頭に置き、すべての社員が“経営感覚”を持って取り組んでいる。このように「今やるべきことは何か」を明確にし、現状を数字に表すことで“問題点”を浮き彫りにし、それを“課題”として捉え挑戦できる仕組となっている。
 生き物を扱う仕事は毎日が変化の連続であり、想像力を使い、柔軟に対応できるようになると働く楽しさも深まり、おのずと部門を牽引する人材へと成長していくと考えている。あわせて早期管理職育成制度も導入し、会議体に出席させる等の育成を行っている。若手で早期に管理職になりたい社員のモチベーションアップにつながっている。
 このようなさまざまな取組が有効的に作用し、多様な視点や経験を有する社員が自立的に行動できる組織に変革できている。


3.取組の内容(その他)

◆シフト制や4週6休制の導入

 より働きやすい職場づくりをめざして、現在も重要プロジェクトとして働き方改革が進行中である。
 酪農事業部については、早番・遅番のシフト勤務となっており、適切にシフトが組まれ、しっかり休める体制を整えている。
 また、4週6休制(年間週休78日間)となっており、農業分野においては休みがしっかり取得できるようになっている。さらに、将来的には週休2日の実現にむけて、シフトが組める体制づくり(従業員目標500名)を目指している。
 勤続休暇等(入社3年:3日、入社5年:5日、以後5年毎:10日付与)の取組も行っている。


4.効果と課題、今後の運用方針

◆自律的に行動できる組織(現場)に変革することによる業務拡大と人材獲得

 急スピードで事業拡大し、従業員規模も拡大する中で、専門的な畜産の知識を有する業界経験者のみならず、組織マネジメントやプロジェクト業務のノウハウなど、多様なキャリアを持つ人材を獲得している。新卒採用は 2013年の6名から、2017年4月の29名(うち大卒が18名)と、若者の就農確保に成功している。新卒だけでなく、同社の取組に共感した転職者(若者)が道外からも男女を問わず集まっている。
 また、現場への権限移譲(多様な視点や経験を有する社員が自立的に行動できる組織への変革)と組織化した企業運営、さらにそれらを支える人材の育成が有機的につながり、「勝てる農業」に不可欠な規模拡大と生産性向上を達成してきている。
 また、シフト制の生産現場(酪農、肉牛等)においては、多岐にわたる日常業務に関する課題発見・改善を繰り返す仕組ができあがった。「農業を企業に」する視点が定着し、徹底した数値管理とPDCAサイクルを回すことにより、事業規模を継続的に拡大することが可能となった。2013年の売上高70億円から2016年12月期)には139億円にまで達しており、さらなる拡大が予想される。






 本原稿は、株式会社ノベルズ本社へのヒアリング及び提供いただいた「平成28年度新・ダイバーシティ経営企業100選 ペストプラクティス集(経済産業省)」資料を参考に作成している