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事例46 パナソニック エイジフリー株式会社

事例 46

パナソニック エイジフリー株式会社
介護職について無期雇用・時給制の「時間制正社員制度」を創設することで、優秀な人材の確保・定着を推進

出典)パナソニックエイジフリーウェブサイトより転載


会社設立年 2016年
(1998年6月19日 母体となる旧パナソニック エイジフリーサービス株式会社の設立)
本社所在地 大阪府門真市大字門真1048番地
業種 医療、福祉業
正社員数
(2017年11月現在)
4,400名
(男性30%、女性70%)
そのうち、ライフサポート事業部の介護職は約3,000名
非正規雇用労働者数 介護職約1,500名
資本金 5,000万円
売上高
(2016年度)
340億円
取組概要 <背景>
・経営戦略の変更にあわせた人事戦略の変更
・高品質なサービスを提供するために時間制正社員導入(正社員転換)を導入
<内容>
・パートタイマーは1年以上勤務すれば、時間制正社員を選択可能
・時間当たりの賃金が正社員と同水準で、退職金ポイントも付与
・連続したキャリア形成が図れ、能力・経験レベルに応じた適切な処遇を実現

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 1998年に旧パナソニック エイジフリーサービス株式会社として創立し、2016年に介護関連の子会社4社の統合により同社が誕生した。松下電工(現パナソニック)の新事業として始まり(介護保険制度が始まる以前)、〝いくつになっても、安心して楽しく暮らせる社会にしたい”そう考えた社員が集まり立ち上がったのがエイジフリー事業であった。
 同社は、品質にこだわり、地域に根ざしたサービスを少しずつ展開してきた。現在では、介護サービス事業、サービス付き高齢者向け住宅事業、介護ショップ事業(用品レンタル、リフォーム)、介護用品・設備の開発および販売事業など、全国各地で幅広い事業を行っている。介護用品を作る製造業と、商品やリフォームで生活環境を整える流通・小売業、そして介護サービスを提供するサービス業という3つの顔を持つことが特徴としてあげられる。
 働き手からみた同社の魅力は、介護という事業領域であらゆる職種を提供できること、さらにサービス拠点の責任者やショップの経営管理をするスーパーバイザーなど、キャリアアップの道が多岐にわたっていることである。


1.取組の背景

◆優秀な人材を確保・定着させることにより、継続的に「高品質なサービス」を提供

 現在日本では、内閣府の「平成29年版高齢社会白書」によると、65歳以上の高齢者人口は3,459万人、高齢化率(総人口に占める割合)は27.3%となり、高齢化率は今後さらに上昇し、2025年には30%を超えると見込まれている。一方、厚生労働省が2017年6月に発表した「2025年に向けた介護人材にかかる需給推計」によると、2025年度には介護職員が約253万人必要とされるのに対し、供給の見込みは約215万人と推計され、およそ38万人の介護職員が不足する見込みとなっている。高齢化が進み、ますます介護職員の確保が難しくなる中、同社は、優秀な人材を確保するとともに定着させていくことが、継続的に高品質な介護サービスを提供するためには不可欠であると判断し、ライフステージに応じて働き方を選択することが可能で、介護職としてのキャリアを途切れることなくスムーズに築くことが可能となる制度(時間制正社員制度)を導入することにした。
 導入の経緯としては、会社の課題について検討した際に、有期雇用について短期間の契約を繰り返すことの必要性が減っていること、また、介護職は離職率が高いこと、介護スキルは経験を経てスキルアップしていくことなどに鑑み、より高品質なサービスを提供するためには、どこを変えればいいか考えた結果、有期雇用について雇用形態を変更する必要があるとの結論に至った。
 「時間制正社員」導入は、社長による事業説明会の際に発表した。これまで介護サービス拠点の量拡大や売上目標等の数値目標を掲げていたが、質にこだわったサービス転換のための戦略の1つとして、人事戦略強化の目玉としての時間制正社員導入という位置付けとなっている。質の高いサービスを打ち出すために、経営戦略の中でこのタイミングで打ち出した施策である。
 このように、長期間安心して意欲的に働ける環境を整備することで、従業員の満足度を高め、それにより高品質な介護サービスの提供をめざすこととなった。


2.取組の内容(時間制正社員制度)

◆パートタイマーを無期雇用化「時間制正社員制度」

 同社は、業界で初めて(2017年11月22日現在 同社調べ)、介護職を対象に、時給制で、勤務時間を選択できる(週20時間以上の勤務)「時間制正社員制度」を2018年4月より導入する。パートタイマー(有期雇用)は、無期雇用の時間制正社員を選択することが可能になる。
 時間制正社員の時間当たりの賃金は正社員(月給制)と同水準で、退職金制度も適用される。また、時間制正社員はライフステージに応じて正社員を選択することも可能で、同社での介護職としてのキャリアを途切れることなくスムーズに築くことができ、能力・経験レベルに応じて適切な処遇が受けられる。


<新制度の特長>

出典)Panasonic Newsroom トッププレスリリースより転載



◆パートタイマーは1年以上勤務すれば、時間制正社員を選択可能

【制度導入前(~2018年3月末)】
 現時点(2018年1月)の介護職の雇用形態は、正社員(月給制)とパートタイマー(時給制)の2種類である。正社員とパートタイマーの業務内容の差は少なく、月給・時給、退職金の有無、有期・無期が大きく異なる点であった。働き方の違いとして、パートタイマーは主に日中のシフトで、本人の制約条件に応じて働いている従業員が多い。
 介護職の正社員の大半はキャリア採用(通年で採用)で、基本的にローカル採用のため、転勤がない(職場の異動はあっても転居はなし)。パートタイマーも通年採用を行っており、少ないながら未経験者も存在し(資格試験勉強中の方等)、門戸は広い。
 これまでは、パートタイマーから正社員への転換は、パートタイマーが希望する場合に試験(面接後に試験)を受ける仕組で、年間数名程度の転換者がいた。制約条件等のためにパートタイマーとして働いていたものの、育児負担等が軽くなってフルタイムで働けるようになって試験を受けるパートタイマーがいたが、かなりハードルが高い状況であった。


【制度導入後(2018年4月~)】
 パートタイマー(有期雇用)は1年以上の勤務をすれば、時給制で勤務時間を選べる時間制正社員(無期雇用)を選択することができる。また、時間制正社員は、正社員を選択することも可能となっている。
 1年以上勤務していることを条件としているのは、1年間の勤務状況をみることで、勤務態度や著しく適性を欠いていることがないかを把握できることによる。一般的には、入社してから3か月ぐらいでお互いのことはみえていて、問題がなければ契約更新している。そのため、1年以上勤務し、時間制正社員を希望する者のうち、転換者として不合格者が出ることはほぼ想定していない。
 パートタイマーとして5年勤務した従業員が無期転換の申し出をした場合には、週20時間以上勤務する者は時間制正社員になる。ただし、扶養範囲内の者は転換しないことを選択する可能性があるため、その場合は雇用契約を無期雇用にする。


雇用形態の変更

出典)Panasonic Newsroom トッププレスリリースより転載



◆時間当たりの賃金が正社員と同水準で、退職金ポイントも付与

 時間制正社員の時間当たりの賃金は正社員と同水準となり、パートタイマーにはない退職金制度や福利厚生制度も活用できる。退職金については、連続性があるように設定しており、時間単位でポイント付与した退職金が支給されるようにしている。


雇用形態ごとの特徴

出典)Panasonic Newsroom トッププレスリリースより転載



<連続したキャリア形成が図れ、能力・経験レベルに応じた適切な処遇を実現>

 時間制正社員から正社員、また、正社員から時間制正社員を選択した場合でも、キャリアを中断することなく、能力、経験に応じた連続性のある処遇を行うこととしている。これにより、従業員の自己実現を支援し、モチベーションの向上が図られる。
 時間制正社員が正社員に転換したい場合は、自動的にフルタイム勤務になる。パートタイマーは能力差によるものではなく、制約があるために時給で働いていると考えており、正社員に転換する際に面接等の必要性はない。これまでは正社員への転換について必要以上にハードルを高めていたが、正社員もパートタイマーも業務実態としては入り混じって業務を行っている。制約のある従業員が活躍できるよう、キャリア形成を描きやすくすることは会社にとってもメリットがある。時間制正社員になった社員はキャリアパスも正社員と同じになり、管理職になることも可能となる。
 正社員から時間制正社員への転換も可能で、正社員にとっても時短勤務以外の選択肢が増え、働き方の多様性が開ける。


制度導入によるキャリア形成の変化

出典)Panasonic Newsroom トッププレスリリースより転載



◆取組にあたってのポイント(戦略変更からのスピーディな制度導入)

 7月の戦略変更から検討を開始し、人事課題の抽出等を経て、9月頃にはおおよその制度設計ができ、11月にプレスリリースを行った。準備として、社員へのヒアリングを行った。社内にはプレスリリースとほぼ同じタイミングで発表した。大きい枠組については11月に各施設等の責任者を通じて発表しており、4月の導入に向けて、組織を通じて上司からパートタイマーに個別に説明し、転換の希望を聞いている(1月下旬~2月上旬)。ヒアリング等の情報によると、内部の評価は高い。
 2018年4月1日から移行するが、1年経ってないパートタイマーについては1年経った時点で転換の希望を聞く(移行のタイミングは、半年ごとの予定)。転換者向けの動機づけ等の研修は準備中である。


3.効果と課題、今後の運用方針

◆離職者発生による新規採用・育成コストの減少

 介護職のパートタイマーは全員で約1,500名だが、全員が転換を希望した場合でも歓迎したいと考えている(パートタイマーのうち週20時間以上勤務者は約半数)。実態として、介護職が1人離職した際には、みえないコストやロスが発生する。大勢の転換者が出ることはコストアップになるが、新しい職員を採用し育成するコストも含めて考えると、十分にロスが回収できると考えている。人が入れ替わることによって、人事コストだけでなく、現場や上司の負担も大きく、最低1か月は稼動しない。従業員には、長く勤めてもらうことが重要である。
 導入の効果については、これからではあるが、新規の入職への影響についても期待しており、長く働きキャリアアップしていきたいという人に選んで欲しいと考えており、新たなパートタイマー採用の応募者で時間制正社員について知り、応募した人もいる。

◆キャリアの明確化とモチベーションアップに期待

 職位、キャリアパスについて、時間制正社員も(働いた時間ではなく)能力で昇格できるようにし、時給で働いている等級を付与する。
 パートタイマーは、正社員になると無理なシフトを求められる、転勤がある、責任範囲が変わるという誤解をもたれることが多い。従業員に長期的に働き続けてもらい、能力を積み上げてそれに見合った報酬を出せる会社にしたいと考えている。時間制正社員の仕組を選んだことで、自身の将来のキャリアがわかりやすくなり、がんばっただけ時給が上がることでさらにモチベーションを高めて欲しい。このように、転換者のモチベーション向上の効果についても期待している。

◆評価制度や人材育成もあわせて強化

 現在は、パートタイマーの評価は上司の評価による部分が大きく、その評価結果によって時給が決まるようになっている。今回の制度導入に伴ってより透明性・納得性の高い評価の整備も必要と考えている。パートタイマーと社員の業務の共通部分については同じように評価するようにすることで、社員にとっても納得のある転換になると考えている。
 介護職の新しい技術に対する興味は高い。処遇、働き方、上司マネジメント、会社風土、人間関係等、さまざまな要素が影響して定着率の上昇につながる。今回は処遇面における制度を導入したが、今後は戦略と関連して人材育成、スキルアップに向けてのインフラや育成機会の増加についても力を入れていきたい(正社員およびパートタイマー)。


4.取組の内容(その他)

◆小学校への出前授業

 高齢者やからだの不自由な方の困りごとについて理解を深め、「介護」の仕事の重要性を伝えるため、小学生を対象に介護の体験型授業「エイジフリー出前授業」を開催している。疑似体験装具等を用いて高齢者体験や訪問入浴のデモンストレーションを行い、子どもたちが高齢者や介護サービスを身近に感じる体験となっている。このような体験が、将来の職業観にも影響することを期待している。


左:車いすで介助する側・される側の視点を体験
右:訪問入浴介護のデモンストレーション

出典)パナソニック エイジフリー株式会社 会社案内より転載







本原稿は、パナソニック エイジフリー株式会社へのヒアリング及び提供いただいたプレスリリース資料を参考に作成している