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事例51 株式会社アカデミー

事例 51

株式会社アカデミー
契約社員の正社員転換を通して、優秀な社員の戦力化に取り組む


会社設立年 2006年
本社所在地 福島県いわき市中央台飯野4-2-4 いわきニュータウンセンタービル1F
業種 就職支援事業・各種教養講座の運営
正社員数
(2017年4月現在)
8名(男性1名、女性7名)(短時間正社員5名)
非正規雇用労働者数
(2017年4月現在)
8名 (契約社員等)
資本金
売上高
取組概要 <背景>
・優秀な人材を確保し、定着してもらうため
・よい人材ほど、ワーク・ライフ・バランスを大切にしているという経営者の実感から
<内容>
・短時間正社員制度を運用中
・非正規社員の正社員転換を実施
・契約社員に対して職業訓練機会を提供し正社員転換を含めたキャリアアップ支援を実施
<効果・結果>
・有期契約社員から短時間正社員へ5名が転換
・従業員のモチベーションアップ
・子育て世代の多い職場であり、短時間正社員制度によって雇用の安定化を実現

PDFデータ

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 同社は2005年に前身となる簿記学校として福島県いわき市で開設された。簿記学校の卒業生がハローワークでの求職活動を行ったことを契機に、2006年から公共職業訓練講座を主体とする現在の株式会社アカデミーとして就職支援、各種講座運営等の事業を展開している。
 主な事業は事務系職種に就職を希望する方を対象とした、パソコンの基礎、ワープロ、表計算ソフトの使用方法、経理事務などの技能を習得する公共職業訓練の開催・運営であるが、公共職業訓練の3ヶ月間の学習に留まらず、卒業後の就業につなげていくことを目的に、仕事の見つけ方、就業後の定着支援(電話や事務所への来所による相談)まで、能力開発に留まらないサービスを展開している。
 事業開始時より、受講生に女性が多いこと、また女性の多い職場であったことのほか、これまでの職業経験から、ワーク・ライフ・バランスを重視した経営方針が取られてきた。また、職業訓練を事業とすることからも人材育成に対する積極的な姿勢をもつ社風であり、キャリアアップに前向きな文化を持つ職場作りが行われてきた。こうした職場風土は、例えば東日本大震災後の流動化する東北地方の労働市場のなかで、同社が人材を減少させること無く事業を継続してきている点にも効果が見て取れる。
 多様な働き方による従業員の定着、キャリアアップを実現しながら、有期雇用社員の正社員化、短時間正社員制度の活用などを通じて従業員と経営者が良好な関係のなかで成長を目指している。

1.取組の背景

◆人材確保の前提として

 同社では、現在、原則として正規雇用(短時間正社員含む)による人材確保を行う方針としている。背景には、自社で就業して欲しい人材を確保していくために、ワーク・ライフ・バランスを維持できる職場、長期的なキャリア形成、スキルアップが可能となるような安定性のある雇用形態が必要とされているという、同社の基本的な考え方がある。
 創業者でもある現在の社長は、地元の財界活動等も通じて、多様な企業経営のあり方を知り、雇用管理のあり方によっては良い人材を逃してしまうことがあることを念頭に、自社の人材が求める働き方と自社の事業にフィットした働き方のすりあわせを行ってきた。
 同社では女性従業員が多く、さらに事業の中核を担う人材には子育て世代も多いことから、ライフステージに合わせた働き方の調整が必要であることが早くから認識されていた。また、子育て中の人材にきちんと定着し、キャリアアップしてもらうことが同社の事業の土台を固めていくことになるという考えから、従業員と経営者の良好な関係を実現していくためにも多様な働き方の実現は必要との考え方を持ち続けてきた。そして、職場環境の改善は、本来ローコストでも実現可能なものであり、経営者の考え方次第で実現可能性が大きく左右されるという社長の考え方をもとに、現在は、短時間正社員制度、正社員転換制度などを中心に有給休暇取得率100%を目指すなど、更なる職場環境改善に向けて取り組みを継続中である。


2.取組の内容(短時間正社員制度・正社員転換制度)

◆短時間正社員制度(ライフステージに合わせた働き方安定性の両立)

 同社では、2014年より短時間正社員制度を導入している。通常の正社員の所定労働時間は8:50~16:20の設定であるところ、短時間正社員については所定労働時間を6時間ないしは6.5時間(休憩含む)としている。
 短時間正社員制度は、従業員のライフステージ上の制約への対応として導入され、採用時点で短時間正社員として入社することが可能となっている。また、短時間正社員制度は、後述する有期雇用従業員の正社員転換制度においても活用可能である。
 ライフステージの変化への対応という意味で、フルタイム勤務の正社員から短時間正社員への転換も可能であるが、短時間正社員からフルタイムへの転換の実績が多い。背景には同社での就業継続と従業員のキャリアアップ志向があり、代表は制度の前向きな運用がなされているとの感触を持っている。


正社員登用までのプロセス

出典)株式会社アカデミーへのヒアリング調査をもとに作成



◆正社員転換制度(人材育成制度との一体運用)

 正社員転換制度は2015年に運用開始し、既に5名が有期契約社員から短時間正社員に転換を果たしている。
 同社では今後の新規採用を原則として無期雇用(フルタイムの正社員もしくは短時間正社員)とする方針であるため、正社員転換制度については有期契約社員として働いている従業員を対象とした運用となっている。
 正社員転換は、対象者の希望及び能力に応じてフルタイムの正社員もしくは短時間正社員として登用するもので、転換希望者に対して昇格試験、面談等を実施のうえで採否が決定される。転換に要する社内基準は、正社員としての適正な能力水準にあることを重視しており、正社員転換を積極的に展開しつつ、転換基準の緩和等は行っていない。一方、正社員転換に必要な水準のスキル形成に対する支援を行うことで、転換希望者への支援としている。具体的には事務系、講師職等への転換に必要となるスキル要件を満たすべく、職業訓練の受講が可能な仕組みとしている。
 さらに、キャリアアップに関しては「今後どのような仕事をしていきたいのか」、「そのためにどのようなスキルが必要なのか、どのように身に着けるのか」といった事項を相談できるキャリアコンサルティングを受けることもでき、社員各自が自身のキャリアプランを具体化していくことが出来る仕組みとなっている。

◆取組にあたってのポイント

 同社の短時間正社員制度は、基本的な制度枠組みの中で、個々の対象者の状況に合わせたオーダーメード的な運用がなされている。制度の導入や運用にあたっては、代表が社会保険労務士等の専門化のアドバイスを受けつつ、都度調整を行うことで条件設定がなされる。
 制度運用にあたっては、労働関係法令をはじめとするコンプライアンス面など、実務上の細かな課題が取組み推進の阻害要因となる可能性があることから、専門家、行政等のアドバイスを適切なタイミングで受けることも重要となる。
 短時間正社員制度等の調整にあたっては、従業員のライフステージへの配慮をはじめとする就労環境の整備・改善と言う視点とともに、経営側の視点、要望なども明確化し、双方が納得できる方法を見出すことに注力している。こうした忌憚のない要望を出し合い、従業員と会社の良好な関係を築くためにも調整のための面談等は代表自ら対応し、制度任せの運用とならないよう留意している。また、従業員の状況、要望を代表自身が受け留めることで、制度運用へのフィードバックが迅速に行えるなど、PDCAサイクルを即座にまわしていけるというメリットも実感されている。
 同様に正社員転換に関しても、面談等は社長自身が実施し、どのような人材を求め、どのような貢献を期待しているかを丁寧に伝えられるよう配慮している。人材育成制度と連携した運用とすることで、従業員のスキルアップとキャリアアップの両立が可能となる。


3.取組の内容(その他)

◆有給休暇取得率上昇に向けた取組

 同社では有給休暇取得率85%を目標として掲げている。もちろん、取得率の数値目標の達成自体を目的しているわけではなく、それを可能と出来るような職場環境、働き方の実現を目的とした、個別制度によらない総合的な職場環境改善の取組である。同社の有給休暇取得率は既に70%代後半に達しているが、この背景には従業員が自律的にお互いの仕事をカバーしあう文化が根付いていることがある。
 具体的にはスキルの共有化などがあげられる。同社の主力事業は講義を通じた職業訓練の提供であり、講師であれば急な休暇取得は授業の穴となって事業にダメージを与えてしまうこととなる。一方で、同社の従業員には子育て世代も多く、子どもの病気など、急な休暇取得が必要なる場面や学校行事など平日のイベントへの参加が必要な場面も多い。こうした事態に対応するため、各社員がお互いの業務を知り、必要に応じて一部を代替できるようスキル形成を行っている。いわば、社員同士が互いの仕事内容についての勉強を常に行っているような環境が同社の柔軟な働き方と事業活動の両立の源泉のひとつとなっている。


4.効果と課題、今後の運用方針

◆着実な実績

 制度運用開始後、有期契約社員から短時間正社員への転換は5名の実績を有する。これ以外にも2016年度の年次有給休暇取得率は76%を達成、育児介護事由による退職者の再雇用なども実現している。
 短時間正社員制度や正社員転換制度の運用開始以前より、所定労働時間の設定における工夫やワーク・ライフ・バランスの実現、キャリアアップに対する支援姿勢などから、就業環境の良さには定評のあった同社では、2016~2017年の人手不足下(福島県での有効求人倍率約1.8倍)においてもハローワーク経由での1名の募集に対して40名の応募者があるなど、人材獲得における競争力を発揮することが出来ている。応募者からは就業環境面などから「以前より働きたいと思っていた」という声が聞かれ、多様な働き方の実現に対する継続的な取組、社風の醸成が人材獲得面でも有効であることが明らかとなっている。

◆今後に向けた課題

 多様な働き方の実現と人材の確保・育成の好循環を築いている同社だが、より働きやすい職場に向けて解決すべき課題も明確化している。
 例えば、教室の開催スケジュールの関係で講義日程が重なり、出講講師の業務調整が難しさを増す時期があるなど、業務の繁閑差を平準化していく工夫が必要だと認識されている。現在のところ繁忙期にも残業などの対応はせず、経営トップを含めての全員対応で繁忙期を乗り切れているとのことだが、状況の変化に備え、解決策を検討していく必要があると考えている。また、子育て世代では、子どもの病気などの際には社員間でのフォローを行うことで対応してきているが、学校行事の重なりなど、調整が難しい局面があることも認識されている。
 さらに、これまでは仕事に影響を与えるライフステージ上の変化の典型として育児が念頭に置かれてきたが、10年後には介護による仕事への影響についても対策を取っていく必要があると考えられている。介護については介護休業制度の整備等はすでに行っているが、介護のための短時間正社員制度のあり方など今後実際の運用の中で実際に活用しやすい仕組みづくりに取組んでいく必要があると考えている。
 なお、同社はこれまで公共職業訓練の場を提供することで地域に貢献を続けてきたが、代表は自社での多様な働き方の経験から、地域産業界の啓発の必要性も感じている。自社での取組を継続することはもちろんのこと、自社単独ではなく、他社からの短時間勤務型の出向者受入などを通じた体験型の啓発活動も始動している。短時間正社員としての働き方を経験してもらうことを通じて、ワーク・ライフ・バランスを実現した働き方のよさを体感してもらうことが出来るという。
 こうした取組を通じて、キャリアコンサルティングなどの機会に寄せられる従業員のニーズや地域のニーズを汲み取りつつ、同社では今後も自社及び地域社会での多様な働き方の実現を図っていく予定である。


5.活躍する従業員の声

インストラクター(講師)
大和田 亜紀さん

年代 40代 性別 女性
勤続年数 8年
キャリアアップの過程 短時間正社員として入社。
PC、簿記等の職業訓練講座の講師を務めながら子どもの中学校進学を機にフルタイム正社員に転換。キャリアコンサルタントの資格を取得し、業務の幅も広げつつキャリアを積んでいる。

◆短時間正社員として入社、子育てと両立しながらフルタイム転換

 現在、PCと簿記の講師を務める大和田さん。短時間正社員として入社し、現在はフルタイムの正社員として活躍する。
 アカデミーに入社する前は、前職でフルタイム正社員として経理を担当してきた。前職では残業等もあり、子どもを保育園に預けながら働いてきたが、会社の事業所整理の一環で、勤務先がいわき市から撤退、県外の本社勤務を打診されるが、子育てしながらの県外通勤は難しく、退職を決断した。
 離職に伴い、それまでの経理の経験を活かした仕事につきたいと考えたが、一方で子どもと過ごす時間を大切にしながら働きたいという思いもあった。そのタイミングでアカデミーでの講師という仕事と出会った。講師として必要とされる経理の知識などは前職での経験が活かせることから、講師としては未経験であったものの、講師という仕事にチャレンジすることを決めた。
 アカデミーの人材募集そのものはハローワークで目に留まったことがきっかけ。アカデミーはハローワークの求職者向けにも生徒の募集を行っているので、社名自体に馴染みはあった。アカデミーの求人に関心を持ち、話を聞いたところ講師の仕事は授業時間に合わせて9:00-15:50であること、それ以外の時間については仕事に応じて調整が可能であるということで、自身の希望する働き方にフィットする可能性が高いと感じ、短時間正社員として入社に至ったという。
 短時間正社員として働き始め、フルタイムであった前職と比べて子どもと過ごせる時間が圧倒的に増えたことが大きな違いとして実感された。もちろん、短時間正社員であるため、フルタイム時よりも収入の額面は減少したが、子どもと過ごす時間を得られたことなど、納得できるものであったという。その後、下の子どもが中学校に入学したことを機にフルタイムに転換した。仕事内容は入社以来一貫して講師を務めてきたが、フルタイムへの転換を機にキャリアコンサルタントとしての仕事もするように。短時間正社員であった頃から将来のフルタイム化を見据え、キャリアコンサルタントの資格取得に向けて勉強をしてきた。
 フルタイム化に伴って、キャリアコンサルタントの仕事が加わるとともに、講師としての準備時間等も短時間正社員時代よりも長く取れるようになるなど、従来から続く業務でも余裕を持てるようになった面もあったという。フルタイムへの切り替えに際しては不安もあったが、2時間単位の有給休暇が取得可能ということもあり、フルタイム転換に伴うデメリットは殆ど感じていない。家族からはフルタイム転換の必要性について疑問の声もあったというが、子どもの高校受験を通じて将来の学費負担など、収入という面も重視ししてフルタイム化を決めたという。
 今後は取得したばかりのキャリアコンサルタントとしての資格を活かし、現在は短時間勤務者が主力の「就活カフェ」事業で短時間勤務者の穴を埋めていくような役割も果たしていきたい。また、今後は子育てから両親の介護という問題も出てくると考えている。会社として、職員としてどのように対応していくべきか考えていく必要があると考えている。


就職支援室
村上 玲子さん

年代 30代 性別 女性
キャリアアップの過程 短時間正社員として入社。
現在は子育てと仕事を両立しながら受講生の就職フォローや短期講座の講師を担当。
子どもの成長に合わせて今後のフルタイム転換も視野に業務経験を蓄積中。

◆子育てと仕事の両立・今後を見据えたキャリアプランも

 職業訓練後の再就職支援、就職フォロー、講師の支援を担当する村上さん。現在は短時間正社員として8:50~15:40の勤務をこなす。もともとはアカデミーの開講する講座の生徒であったが、妊娠・出産し、就職活動はせずに講座を終えた。出産後2年ほど経ち、アカデミー代表から事業を手伝ってもらいたいとの声がかかったことが入社のきっかけ。
 入社後は再就職支援・就職フォローをメインに、短期間(1ヶ月、2週間など)のPC講座講師なども務めている。職業訓練のコースは通常3ヶ月程度と長期に及ぶため、家庭の都合で休暇の取得等が必要な状況を勘案し、講師としての仕事は短期の講座を担当するようにしているという。入社後は、担当する仕事に応じて自身で勉強をすすめるほか、OJTによる業務経験を蓄積することでスキルアップを図ってきた。
 アカデミーではフルタイム正社員と短時間正社員とで、業務量に明確な差がつけられているわけではないため、村上さんは短時間正社員として働く上で、出来る限り業務の先を見通して「先取り」、「段取り」を意識して仕事をすすめるように意識しているという。
 短時間正社員としてのメリットは子どもとの時間をきちんと取ることができること。今後は子どもの成長とともに手が離れると考えているが、同時に学費など経済的な負担も増えていくと予想している。そうした見通しのもとで、将来的にはフルタイム転換し、収入面での充実も目指していきたい。また、フルタイム転換によって、現在の担当業務にもより深みを持たせることができるようになるのではないかと考えている。
 現在は子どもにきちんと向き合う時間をほしいという面とともに、親子が密着しすぎず、同年代の子ども同士の関係づくりもしていってほしいと考えていることから、短時間正社員としての働き方は子育て面でもバランスが取れていると感じている。この点については家族も現在の働き方に賛成してくれており、家庭からの後押しもある。
 将来のフルタイム転換については、子育てしながらフルタイム転換を果たした先輩がいることで、仕事と家庭の両立が可能な職場であるという安心感ももっており、今後、事情が許すようになればフルタイム転換することに前向きな気持を持つことができているという。
 会社では、介護休暇制度も整えた。介護休暇制度の導入については村上さんも検討に参加したという。今後は整えた制度がどのようにきちんと運用されていくかが課題になっていくだろうという。現在でも有給休暇の取得などはし易い環境にあり、介護休暇もスムースに運用できるのではないかという感触ももっているという。