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事例55 株式会社ベルシステム24ホールディングス

事例 55

株式会社ベルシステム24ホールディングス
「非正規雇用の正社員化」「有期雇用の無期雇用化」を実施、従業員の多様なニーズを探りながら、長期にわたり働いてもらえる職場づくりを推進

出典)株式会社ベルシステム24ホールディングス提供


会社設立年 1982年
本社所在地 中央区晴海1-8-11 晴海アイランドトリトンスクエア オフィスタワーY棟
業種 サービス業
正社員数
(2018年1月31日現在)
社員1,226名※連結(全正社員:男886名、女性340名)
非正規雇用労働者数
(2018年1月31日現在)
非正規社員数27,269名※連結(うち、無期雇用コールセンタースタッフ5,082名、事務スタッフ23名)(全非正規雇用者:男性6,578名、女性20,691名)
資本金 100百万円
売上高
(2017年2月期)
108,916百万円
取組概要 <背景>
・事業拡大にともなう地方都市への進出
・人材確保難
・高度化・複雑化する業務に対応できる人材の確保
<内容>
・非正規雇用の正社員化
・有期雇用の無期雇用化
・正社員の要件を全国転勤型のみから地域限定型の選択オプション化
・福利厚生の充実
<効果・結果>
・退職率等の改善
・現場従事者のキャリアアップ
・多様な働き方への対応

PDFデータ

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 同社は、1982年に国内初の本格的コールセンターのアウトソーシング受託サービスを開始した、先駆的企業として知られている。設立当初は、電話秘書業務を主としてスタートした。通信インフラの整備が進む中にあって、消費者対応のノウハウとそれをサポートする技術を融合させながら、コンタクトセンター業界におけるリーディングカンパニーとして、電話対応を中心としたコールセンター業務に加え、Webやメール、チャット対応等の新しい領域でのサービスを展開している。
 また、「人材確保」に向け、働き方改革への取組にも余念がなく、従業員に長期にわたり働いてもらうための仕組づくりにも注力している。

1.取組の背景

◆従業員に長期にわたり働いてもらえる職場づくりをめざす

 コンタクトセンター業務は、労働集約型ビジネスであるため、人材確保は重要な課題である。同社でも人材確保には注力しており、事業の拡大に伴うコールセンターの拡大といった局面において、当然、競合企業も利便性の高い立地に集中することになる。その結果、人材確保を容易に進めることが次第に難しくなってきている。
 さらに、顧客企業から求められる業務の難易度は、一般家庭へのIoTの浸透等により、一段と高まりを見せている。優秀な人材に長く働いてもらうことで、サービスの質を上げると同時に、安定的に高品質のサービスを提供できる体制の構築を進めている。
 そうしたことを背景に数年ほど前から、人材確保の方針を「人を集める」から、「長期にわたり働いてもらえるように」という方向にシフトさせることにし、「安心して働くことができる環境」を実現するための施策の一つとして、「正社員登用制度」の拡大を実施した。


出典)株式会社ベルシステム24ホールディングス提供




2.取組の内容①(正社員登用)

◆「正社員登用制度」の整備による正社員化の推進

 同社では、従業員の区分けに「タイプ」という考え方を取り入れている。「タイプ1」は主にマネジメント業務を担う従業員で、同社では「正社員」と位置付けている。「タイプ4」は、主にコールセンター業務に従事する従業員(以前は有期雇用の従業員だけであったが、2017年10月以降は無期雇用の従業員も併存する)、その他「タイプ2」という正社員待遇の専門職従業員により構成されている。
 同社では、以前から「タイプ4」の有期雇用の従業員を、「タイプ1」の「正社員」へ登用する制度を設けていた。しかし、対象となる人数が限られていたため、20名前後と、登用は20名前後にとどまっていた。
 その後正社員への積極的な登用に舵を切り、「正社員登用制度」を新たなものに刷新したことで、状況が大きく変わった。2016年度には231名、2017年度も上期終了時点で、すでに123名が(有期雇用の)「タイプ4」から、「タイプ1」(正社員)に登用された。
 「正社員登用制度」における「タイプ4」から「タイプ1」への変更要件として、勤続期間の制限や性別による差はない。
 登用の手続きとしては、実務での成果や貢献に加え、適性や「期待値」といった今後の成長余地も含めて、各現場の責任者の推薦を受け、本人がエントリーする形をとっている。その後、現場管掌部門の部長以上クラス、本社の人事統括部長、人事担当者による3対1の面接を経ることになるが、現場の上司の推奨ということもあり、候補者は概ね正社員に登用される。

◆「地域限定勤務型」を設けて、「タイプ1」従業員への登用を促進

 「正社員登用制度」を整備する過程で、従来の「タイプ1」の要件である「全国勤務可能であること」といった点を緩和し、「全国転勤型」に「地域限定勤務型」を加えた。「タイプ4」の従業員が、出産・育児と両立しながら働いている場合に、「正社員登用を希望したいが、転勤ができない」ことで、正社員登用をあきらめるケースが生じていたからである。これにより、従来は「タイプ1」への登用希望に踏み切れなかった、優秀だが子育て中の為転勤ができないといった「タイプ4」の従業員の「タイプ変更希望」が促進されている。
 また、「地域限定勤務型」を新設したことで、「タイプ1」の従業員が、「地域限定勤務型」を一時的に選択するケースも増えてきた。例えば、子育てに多くの時間がかかる時には「地域限定勤務型」を選択し、手がかからなくなったら「全国転勤型」に変更するような、自身のライフ・ステージに応じ柔軟に制度を利用するケースもみられている。家族の介護といった際にも、一時的に「地域限定勤務型」を選択することで、退職することなく、同社で継続的に働くことができる。
 「タイプ1」の「全国勤務型」と「地域限定勤務型」の給与面の違いについては、月給に対し「地域係数」を設けており、「地域限定勤務型」の場合、勤務場所によっては、「全国勤務型」より少なくなるケースも生じる。また賞与についても、業績反映分を除けば、「全国転勤型」の方が高くなるような制度設計になっている。

◆「タイプ1」と「タイプ4」の違い

 同社の場合、「タイプ1」と「タイプ4」では基本的に業務内容が異なる。「タイプ4」の場合には、主にコールセンタースタッフとして、オペレーターやその管理的な業務を行うリーダー、スーパーバイザー等の現場の業務を担っている。他方、「タイプ1」の場合は、主にマネジメント業務を担う。
 「タイプ1」には社員の職務等級として「グレード制度」がある。グレードは、新卒社員を対象とする「グレード10」から始まり、「グレード13」までは「一般職」という位置付けで、「地域限定勤務型」の従業員は「グレード13」までの昇格となっており、「管理職」である「レベル14」以降は「全国勤務型」の従業員に限定される。なお、主にコールセンタースタッフである「タイプ4」の従業員にはグレードによる管理は行っていない。
 処遇面についても、「タイプ4」は時給制で賞与・退職金等がないが、「タイプ1」の場合には、月給制で、賞与・退職金のある点で異なる。また、研修についても、両者は異なっている。
 他方、「タイプ4」の従業員の場合、消費者との接点を担うオペレーターを経験した人が、現場の管理的業務を行うリーダー、スーパーバイザーと段階的に昇格していく。スーパーバイザーとして2~3年務めるとセンター長補佐の業務が増えて、そこが実質的にトレーニング期間となり、「タイプ4」から「タイプ1」に登用されるのが一般的な流れである。登用されると通常「タイプ1」の「グレード12」(概ねセンター長クラスのグレード)になる。


「タイプ4」(T4)と「タイプ1」(T1)の違い

出典)株式会社ベルシステム24ホールディングス提供資料より転載



◆「タイプ4」の従業員のうち希望者を無期雇用化へ

 同社は、「タイプ4」の従業員に、長く、安心して働いてもらえるようにすることを目的に6か月以上継続して勤務した人を対象に、希望・申告で有期雇用から無期雇用に転換できる(有期雇用社員無期化)施策を2017年10月より開始した。対象となる約23,000名の自宅に、無期雇用化による「安心」というメリットなど同制度の詳細を記載した案内を送付し、社内に問合せ窓口となるコールセンターを設置、社員からの質問にも対応した。
 募集開始から4か月を経た、2018年2月末時点の応募状況(対象人数約26,000名)は、全体の2割強となっているが、年齢別で顕著な違いがみられる。10~20歳代の従業員は「無期雇用」に関心が低く、10%に満たないが、年齢の高い、特に50歳代以上は、40%近くが「無期雇用」を希望している。


出典)株式会社ベルシステム24ホールディングス提供資料より転載



 若い人の中には音楽や演劇活動など自己実現の場が別にあり、生活の糧として同社の業務に従事している人も比較的多い。こういった従業員にとってみれば、「無期雇用」に転換しても大きなメリットがあるとは思えず、雇用期間が無期化、以外の処遇が変わるわけではない。こういったことが、上記の数値に現れているものと推察される。


3.取組の内容②(その他)

◆福利厚生の充実

 同社では福利厚生の一環として、企業と契約し、従業員向けの各種優待や割引などを提供する福利厚生代行サービスを導入しており、以前は主に「タイプ1」従業員向けの制度であったが、2017年10月より利用できるサービスに制限はあるものの「タイプ4」の従業員でも利用できるようにした。
 当初、「タイプ4」の従業員には、レジャーやグルメなどの利用が多いのではと予想していたが、実際はeラーニングなどを通じて学ぶことへの意識が高いことがわかった。「タイプ4」の従業員において、「教育・学習機会」へのニーズが高いことを把握できたため、今後の対応の参考にしていくとしている。


出典)株式会社ベルシステム24ホールディングス提供




4.効果と課題、今後の運用方針

◆退職率等の改善

 これらの取組の結果、定着率が上昇してきている。さらに、以下に後述する従業員向けの多様化の取組の開始を控えており、引き続き退職率の改善が見込まれる。

◆「タイプ4」従業員のキャリアの整備

 今後は無期化による「安心」という以外の新たなメリットを提示できるよう、無期化となった従業員に向けた新たなキャリアプランの構築を進めている。これまでのキャリアパスでは、昇格の際に、現場のオペレーション業務から離れてマネジメント業務に就くこと、つまりゼネラリストとなる必要があった。しかし、今後は、現場で電話対応といった専門性を極めていくことを評価する複線型のキャリアパスの構築を検討している。

◆従業員のニーズを探り多様な働き方に対応

 同社の場合、厳しいながらも、現状では人材をある程度確保できている。しかし、今後さらに人手不足が深刻になると予想される中、その対策として、従業員に継続して働いてもらえるようなコミュニティをいかにつくるか、そして、多様な従業員のニーズに対応するために社内の制度も多様性を持ったものにしていく必要があると考えている。
 そのための試みとして、「働く人が本当に求めていること」について、アンケートや直接社員の声を聴くといった取組を行ってきた。しかし実際、非正規雇用の従業員においても、正社員になることを望んでいる人もいれば、あえてそのスタイルを選択する人が存在することや、地域や年齢によって異なるニーズを持つなど、様々である。
 「これをすれば、従業員の満足が向上」という共通解はなく、多様性を受け入れ、選択肢を拡充して行くことが必要と考えている。


出典)株式会社ベルシステム24ホールディングス提供




5.活躍する従業員の声

人材開発部 人事制度グループ
藤田 舞子 さん

年代 40代 性別 女性
勤続年数 10年
キャリアアップの過程 2008年5月、非正規社員として入社。
2017年10月より有期雇用から無期雇用に転換。人材開発部の人事制度グループで主に社員の福利厚生や新しい人事システムの開発に携わる。
(注:2018年3月より、正社員登用。)

◆出産・育児を経験し、さまざまな会社を経て再び同社に入社

 藤田さんは、2008年から同社の本社人事部門で非正規雇用の従業員(以下、「非正規」)として働き始めた。専門学校卒業後、メーカーの人事部で正社員として勤務していたが、出産を機に退職。産後まもなく、住宅メーカーに有期雇用の従業員(以下「有期」)として勤務したものの、関わることのできる業務が限定的であったため、退職を決意した。
 元々、採用業務を希望していたこともあり、同社の採用部門で募集を行っていることを知り、応募。契約社員として、本社の人事部門に勤務することになった。藤田さんにとって同社は、メーカーに勤務する前に2年半ほど勤務したことがあり、いわば古巣に復帰した形である。
 「いつかは正社員になりたい」という希望はあったものの、当時は子どもがまだ2歳半と小さく、急な発熱や保育園都合で勤怠が不安定であったことから、「働きながらキャリアプランを考えよう、と思っていた」と、当時を振り返る。
 入社後は、一貫して人事部門の所属であるものの、藤田さんの仕事の内容は変化してきているという。最初の頃は、役員サポートや人事における事務局的な仕事が多かったが、その後、「有休取得推進プラン」「禁煙キャンペーン」といった社内イベント業務に携わる機会が増えていった。
 現在は正社員化や有期雇用社員の無期化(以下、「無期化」)等を行うグループに所属する傍ら、社員の福利厚生や移行中の人事システムの開発にも携わっている。

◆有期雇用から無期雇用に

 同社では2017年10月1日より、無期化を順次進めており、藤田さん自身もその制度に則り無期雇用に切り替えた。「40歳を超えて子どもがいると、『有期』、『無期』、『正社員』というステップの中で、なるべく正社員に近づきたいという気持ちがあった」と言い、自身も無期雇用になったことで、「正社員に近づけた」という実感があるという。また、有期の場合には必要であった、半年に1度の契約更新機会がなくなったことで(契約更新がなくなるかもしれないという)不安が解消された気持ちになったという。

◆子どもと会社の両者に向き合える働きやすい環境

 同社では、雇用形態の整備を進める一方で、雇用形態に区別なく、全社員が働きやすい環境づくりをめざしている。例えば、事前申請が必要であるものの、正社員であるなしに関わらず在宅勤務が利用できたり、勤務時間も柔軟に設定することができる。藤田さんも、以前であれば、子育てと会社のどちらかを犠牲にしなければいけないと思っていた。しかし、今ではそうした環境に支えられて、両者を両立できるようになった。


出典)株式会社ベルシステム24ホールディングス提供



◆正社員をめざしながら、働き続けられる会社づくりに取り組む

 「雇用形態にとらわれず、どのような仕事でもやらせてもらえるというのは、この会社の魅力」と藤田さんは語る。
 有期から無期に転換し、正社員に一歩近づいたと感じているものの、「やはり、また正社員として働きたい」という思いはあるという。責任をもって家族を支えるという意味でも、待遇面の向上を望んでいる。けれども、「ここまでやったにもかかわらず、私はこの給料しかもらっていない」という不満があるわけではなく、むしろ、「これだけの仕事をさせてもらっているのは、すごくありがたいこと。さらに頑張って、それにお金がついてきたらいい」という。
 人事部門の立場として、従業員にはぜひ会社の制度を積極的に利用してもらいたいと思う。そして、結婚・出産、介護等が原因で仕事を辞めることなく、働き続けることができる会社づくりに携わっていきたいと意欲を示す。
 現在、同じような立場にある社員の座談会等に積極的に参加し、意見を聞いているが、やはり悩みどころは同じで、「子どもを産んで会社に迷惑をかけるのではないか」「子どもを持ちながら『キャリアアップしたい』と言ってもいいのだろうか」というような女性社員自身の悩みもあれば、「夫にも、もう少し育児に参加して欲しい」という声も多い。女性だけでなく男性も使いやすい制度を作っていきたいと考えている。
 そして、「子どもが母親の働く姿を見て仕事への希望や憧れを持ってくれて、それがどの家庭でも当たり前となる、そんな社会にしたい」と大きな夢を抱いている。