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事例58 株式会社プレステージ・インターナショナル

事例 58

株式会社プレステージ・インターナショナル
複数の転換ルートを整備し、地域限定や時間限定の正社員(無期雇用)への転換を長期雇用・キャリアアップの一環として推進

出典)株式会社プレステージ・インターナショナル提供


会社設立年 1986年
本社所在地 千代田区麹町2-4-1 麹町大通りビル14階
業種 サービス業
正社員数
(2017年9月30日現在)
1,502名(男性551名、女性951名)
非正規雇用労働者数
(2017年9月30日現在)
契約社員  922名 (男性174名、女性748名)
アルバイト社員337名(男性 41名、女性 296名)
資本金
(2017年3月31日現在)
14億1,592万円
売上高
(2017年3月)
294億7,777万円
取組概要 <背景>
・従業員のやる気の高まりやキャリアアップ支援・長期雇用等を意識し、無期雇用(正社員)への転換を積極的に推進
<内容>
・「正社員登用試験」の制度化。その後も2年のキャリアを経て転換する「正社員転換制度」を導入。さらに、できるだけ多くの従業員の転換を支援するため「臨時登用試験」を整備。一連の制度導入により、契約社員の地域限定正社員(無期雇用)への転換を促進
・地方拠点ごとの地域の特性を活かした運営
・時間限定正社員(無期雇用)を制度化予定
<効果・結果>
・2015年から毎年およそ5%ずつ無期雇用者を増やすようにし、2017年時点で約半数が無期雇用者になる。

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 同社は、金融機関や自動車保険等の企業を主なクライアントとする、コールセンター(コンタクトセンター)に代表されるBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)事業を世界14ヵ国17拠点で展開している。単に業務の一部を請け負うのではなく、「プロセス」部分を重視し、クライアントとともにサービスの企画から商品化、電話対応まで、業務効率化やサービス品質を上げるための手段を構築し、クライアントとエンド・ユーザーの双方にとって利便性の高いサービスを一気通貫で提供している。
 雇用面でも、契約社員の無期雇用である「地域限定正社員」「時間限定正社員」への転換など、正社員化・多様な働き方を積極的に推進している。

1.取組の背景

◆多様な働き方の推進

 業界の特性もあり、同社ではもともと非正規社員が多かったものの、同時に多様な働き方も積極的に推進してきた経緯がある。現在、およそ3,000名の従業員が働いているが、パート等を除く「社員」として、無期雇用の「正社員」(「総合職」のイメージが近いが、同社には「総合職」に相当する職種区分がない)と「地域限定正社員」、そして有期雇用の「契約社員」で基本的に構成されている。
 全従業員の8割近くが働く、同社の地域拠点である秋田・山形・富山の各BPOセンターの従業員は、ほぼ全員が地元の人を主に「地域限定正社員」や「契約社員」「アルバイト社員」として雇用している。地元にこだわりを持ち採用しているのは、各施設が自治体の協力を得て設けられたために、「地域貢献」を念頭に置いていることに加えて、育児や介護など従業員の家庭の事情にも配慮して運営しているためである。
 また、地方拠点のみならず、東京本社にも「地域限定正社員」が所属する。無期雇用従業員の合計約1,500名のうち1,150名程度は「地域限定正社員」で、無期雇用者に占める「地域限定正社員」の比重の高いことが特徴となっている。
 「正社員」と「地域限定正社員」の間で、昇進・昇格や給与について特に違いはないが、賞与の評価プロセスが異なるために、平均年収等でみると「正社員」の方が高くなる傾向がある。ただし、管理職・マネージャークラスになると賞与の評価プロセスも同一になるために、両者の処遇面での違いは解消される。

◆キャリアアップ支援や長期雇用を重視し、正社員(無期雇用)化の仕組を整備

 近年、同社が力を入れているのは、有期雇用である「契約社員」から無期雇用正社員への転換制度の整備である。現在、3つのルートが用意されており、いずれも合格することで、「地域限定正社員」に転換できる。


正社員(無期雇用)への転換ルート

出典)株式会社プレステージ・インターナショナルへのヒアリング調査をもとに作成



 業界の慣行もあり、同社でも以前は入社にあたって、「契約社員」として採用するのが一般的であった。しかし次第に「子どもが大きくなったので、有期社員から正社員になりたい」といったライフスタイルの変化により、契約社員等から正社員への転換を希望する従業員も出てきた。そのため、そうした従業員を対象に、年1回「正社員登用試験」を行い、毎年数十名程度の優秀な「契約社員」を「正社員」へ登用する制度を整備した。
 ただし、業界知識や会社の状況等を問う筆記試験のほか、面接も繰り返し行うなど、しっかりとした試験を課すために、難易度も高く、合格するのは必ずしも容易ではない。
 時間の経過とともに社内では、「やる気があってチャレンジしていきたい」という従業員側の要望も目立つようになってきた。そうしたニーズに対して、「しっかりキャリアアップするためのプロセスを設ける」「できるだけ長く勤め続けて欲しい」という形で応えるために、無期雇用の比重を高めていくように考えた。
 他方、2013年の労働契約法改正に伴い、同一企業との間で、有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えた時に、労働者の申込みにより無期労働契約に転換される「無期転換ルール」が制度化された。
 同社においては、各BPOセンターが、託児所等の施設を併設するなど働きやすい環境づくりに力を入れてきた結果、離職率が業界水準よりも下がっていた。そのため法改正された時点で、すでに雇用期間5年を超えて勤務する契約社員等の有期雇用の従業員が多数働いている実態があった。
 従業員の意識や勤続年数の長期化といった状況変化に加え、法改正も一つの契機となって、労働時間の実態にあわせて無期雇用の比率を高めていきたいと考え、2013年10月から2年の経験を経ることで、「契約社員」から「地域限定正社員」に転換できる「正社員転換制度」を新たに導入することにした。


2.取組の内容①(正社員登用)

◆「正社員転換制度」-転換希望者が2年のキャリアを経て正社員に転換

 「正社員転換制度」により転換するためには、「契約社員」で採用された本人が正社員(無期雇用)になることを希望すること(「キャリアアップコース」を選択すること)が前提となっている。そして2年経過後に正社員(無期雇用)への転換試験を受ける権利が発生し、2年間の勤怠実績や上司評価を踏まえて試験・面談を行い、「地域限定正社員」への登用がなされる。
 2015年10月に「正社員転換制度」としての第1回目転換が行われ、約300名が無期雇用である、「地域限定正社員」への登用を果たした。合格率は95%以上と高く、その後の実績としても同水準にある。「キャリアアップコース」を選択して2年間しっかりと業務を遂行していれば、希望者がほぼ全員が「地域限定正社員」になれる形で運用がされているために、従来から年1回行っている「正社員登用試験」と比べて難易度は高くない。
 その意味で、転換の権利が生じるまでの2年間は、会社側と社員自身の双方が「当社の仕事が向いている・向いていない」「もっと上を目指したい」等の適性を考えるための期間とみることができる。
 「正社員転換制度」開始後も、契約社員の採用は継続しているものの、無期雇用の採用も積極的に進めており、直近では採用者数の約3分の2が無期雇用者となっている。
 2015年から毎年およそ5%ずつ無期雇用者の割合を増やしてきている。現在、従業員全体では無期雇用と有期雇用の比率はほぼ半数ずつとなっているが、計画では今後75%まで無期雇用の比率を高めていく予定である。


出典)株式会社プレステージ・インターナショナル提供



◆無期雇用転換促進のために「臨時登用試験」を新たに創設

 積極的に無期雇用の従業員を増やす同社では、2018年の法改正の施行に伴う無期期間の到来を前に、無期雇用への転換を一層活発化させている。
 特に2017年度は「正社員登用試験」1回、「正社員転換制度」2回に加え、新たに「臨時登用試験」を1回行う。
 「臨時登用試験」枠を新たに設けたのは、「法改正に伴う無期雇用転換ルール」により転換するという受動的な理由ではなく、正社員(無期雇用)になりたいというチャレンジ精神を持ってもらいたいためである。1年以上勤務実績があれば対象者になることができ、「正社員転換制度」とは異なり上司の推薦ではなく、自薦での応募も可能である。また上司評価があれば、勤務後数か月でも応募が可能とするなど、応募範囲を広げてエントリーしやすくしている。

◆「契約社員」と「地域限定正社員」での仕事の内容に差はない

 同社のBPOセンターに勤務する大多数の従業員はオペレーションスタッフである。主に電話受付業務を行うオペレーターやそれをまとめるリーダー、その上にスーパー・バイザー、マネージャーといった役割があり、オペレーターからマネージャーまでステップアップしていく形になる。やる気があればいろいろチャレンジさせようというのが同社の方針であるため、「契約社員」と「地域限定正社員」といった雇用形態の違いにより基本的に仕事内容が変わることはない。


キャリアパス(地域限定正社員/オペレーションスタッフ)

出典)株式会社プレステージ・インターナショナルホームページより転載



 また、幹部従業員など一部を除くと、雇用形態によって職位が制限されることもない。有期雇用の「契約社員」でもキャリアアップは可能である。だが無期雇用の従業員の方が、キャリアアップのスピードが早く、それに伴い業務範囲が広がる。
 また、「契約社員」であっても、月給や福利厚生、受けられる教育等については、「地域限定正社員」と違いはなない。しかし、「契約社員」の場合、責任ある役職へ就いたとしても、処遇面は「地域限定正社員」と違いがある。そのため有期雇用から無期雇用に転換することで、より多くの従業員にとってキャリアアップの道が広がるとともに処遇面の対象も広がるので、無期雇用への転換を積極的に進めている。


3.取組の内容②(その他)

◆ハード面、ソフト面からの働きやすい環境づくり

 各地のBPOセンターは、地元採用の地域限定社員を中心に運営しており、県民性などそれぞれ地域の特性も活かしながら、働きやすい環境の整備等を進めているのが特徴となっている。
 例えば、BPOセンターでは多くの女性が働いているために、育児をしながら仕事を続けられるように託児所を設けている。また、いずれも積雪エリアに位置するため冬場は外出しづらい。そこで社内にカフェテリアを設置するなど従業員が過ごしやすい環境を整備し、ハード面でも働きやすい環境を整えている。
 同時に個々の社員への対応といったソフト面での取組にも力を入れている。例えば、新卒社員を対象にメンター制度を取り入れて、先輩社員への相談をしやすくするようにしている。また、社員面談の機会も多く設けて、社員個人の状況の把握にも努めている。30~50名のチームで3か月に1回の頻度で、管理者は必ず全社員と個別に面談を行っている。

◆多様なライフスタイル実現のための新卒採用での工夫

 今まで同社では、新卒者は「大卒・短大卒・高卒」という学歴で業務内容を区別して採用していた。しかし、2017年度の途中から、「どういう働き方をしたいのか」という観点から仕事が選べるように、「クラス」という考え方を打ち出した。
 具体的には、将来的に同社の幹部を担うことをめざす「マネジメント」、ITなどの専門的な技術を高めることをめざす「スペシャリスト」、同社の技術・サービス・スキルを磨きたい人向けの「プロフェッショナル」、育児や出産を経て安定して働きたい人には「ワーク・ライフ・バランス」と、4つのクラスを新卒者向けに用意している。これまでの「総合職」「一般職」といった区分とは異なる採用を通じ、多様な働き方への取組の推進を図っている。


新卒者向け4つのキャリアプラン(クラス)

出典)株式会社プレステージ・インターナショナルへのヒアリング調査をもとに作成




4.効果と課題、今後の運用方針

◆無期雇用化による意識の変化に期待

 同社としては、無期雇用の正社員への転換によって「責任範囲」の部分で、本人も含めて「意識」が変わり、「どういう成長やチャレンジをしていくのか」を面談や評価時に確認し、「成果・結果」と「期待するポジション」が高まることを期待している。それは会社のみならず社員にとってもメリットのあることだと考えている。
 また、「正社員転換制度」により転換するためには、「契約社員」で採用された本人が正社員(無期雇用)になることを希望するキャリアアップコース」を選択することが前提となっている。しかし、そのコースを選択していない従業員の中から、従来から年1回実施している「正社員登用試験」を受験する者も増えているなど、従業員の「正社員になりたい」といった意欲の高まりも感じられる。

◆モチベーション向上策を含めた対応が課題

 同社では今後、無期雇用である正社員比率を現在の50%強から75%に上げることを目標に掲げている。だが、残り25%の社員の中には、家庭の事情などやむを得ない事情で週5日働けない、いわば働く時間に制限のある人が多く含まれている。この層にどう向き合うかは大きな課題である。
 できるだけ多くの従業員が無期雇用に転換できるよう制度の整備を進めており、2018年4月には「時間限定正社員」という雇用形態を設けて、無期雇用化を一段と進める予定である。しかし、制度を設けるだけでは対応としては不十分であると考えている。そうした人達に対して、同社が掲げる「チャレンジする」という意識付けの代わりに何が提供できるか、モチベーション向上のための施策を含めて、どのような取組ができるのかが今後の課題と考えている。


5.活躍する従業員の声

出典)株式会社プレステージ・
インターナショナル提供

グループ会社管理部
岩下 紘子さん

年代 30代 性別 女性
勤続年数 7年8か月
キャリアアップの過程 2010年同社グループの派遣会社からの派遣社員として受付業務に就く。その後、同社の契約社員となり2014年に社長室へ異動し、正社員に転換した。

◆企業で受付の仕事をしてみたい」という思いから、派遣社員として受付業務をスタート

 岩下さんは、以前、化粧品販売会社の正社員として、2年半程度勤務した経験を持つ。「企業で受付の仕事をしてみたい」という思いから、2010年に同社のグループ会社の一つである派遣会社に派遣社員として登録し、同社での受付業務をスタートした。
 当時は20代半ばということもあり、派遣や契約社員といった雇用形態にあまりこだわりはなく、「やりたい仕事をしつつ、ステップアップできるところがみつかれば、その先もやっていけるかもしれない」と、若さ故のところもあった。
 派遣社員として勤め始めて4か月程経った頃、同社の契約社員になった。契約社員となっても基本的な仕事内容はあまり変わらなかったが、派遣社員の場合に「ずっと勤め続けられるのか」という不安に加え、毎月派遣会社へ提出する書類作成なども必要であった。契約社員になってからはそうした書類作成が不要になり、契約更新が1年ごとにあるものの、勤められる期間が長くなったことで安心感もあった。
 契約社員になってからは、「どういう仕事をやっている会社に自分が今いるのか」をより考えて働くようになるなど、仕事に取り組む上での「意識」が変わった。

◆契約社員から正社員への転換による意識の変化

 元々、受付という職種にこだわって働き始めたので、最初の2~3年は仕事が楽しく、「ずっとこのままでもいいかな」という気持ちもあった。しかし時間が経つにつれ、この会社で長く働いていける感覚が高まっていった。そうしたタイミングで社長室の社長秘書への異動という話があり、この出来事が岩下さんにとって働き方を大きく変えた。
 「秘書業務への興味はあったものの、自分の知識や事務処理能力の不安が大きかった。しかし自分が成長していかなければ務まらないのは明らかで、その期待を込めて異動の話を前向きに捉えた」という。未熟な自分に声をかけてもらえ、こんなチャンスは手放す理由はなく、挑戦することを決意して社長秘書業務が始まった。
 少し経った頃、正社員登用試験の話を受けた。これまでの働きをみてもらえたことがうれしく、「もっと会社の期待に応えたいと思った」という。もし、契約社員のままであったら、仕事のボリュームや責任に対して自分の置かれた状況が不安定で、あまり仕事に身が入らなかったかもしれない。
 正社員になって一番に思ったのは「両親を安心させられた」ということ。自分自身も正社員になったことで安心したし、親に仕事・職場のことを話せることは大きかった。同時にこの会社で今後も働いていく覚悟ができたなど、「意識」の面での変化は大きかった。
 正社員になりボーナス・収入が多少増え、任せてもらえる仕事が増えたことで、秘書業務全体を捉えて自分で判断できることが増えた。未経験でスタートした分、社長と社長に関わる周りの方から安心して仕事を任せてもらえるよう、秘書検定の勉強に取り掛かり、準一級を取得した。

◆正社員になったことで、将来のキャリアアップも余裕をもって考えられる

 以前は、派遣社員や契約社員で働き続けることを考えていた時期もあるので、「自分のスキルが市場でどのくらいの価値があるのか」ということへの関心が高かった。派遣社員や契約社員の場合、パソコンや英語のスキル・資格を持つなど「即戦力」として役立つことが求められる。また、「今日の自分は会社にとってプラスになるような仕事ができていただろうか」と常に追い込みがちであったため、心理的不安感が強く、自分の将来を考えるのも難しいところがあった。
 正社員になったことでより長いタイムスパンで、自分の将来像やキャリアアップを考えることができるようになった。必要な資格等があれば、会社にいながら身につけていく余裕もできた。また、正社員になって会社とのつながりが深くなり、仕事で関わる人たちも大きく変わっていった。


出典)株式会社プレステージ・インターナショナル提供



◆働きやすい職場環境で、今後も働き続けたい

 岩下さんは、2017年7月からはグループ会社管理部に異動した。16社ほどあるグループ会社の総務や人事といった親会社に報告すべき事項の確認等、親会社とグループ会社をつなぐ役割を担うなど、活躍の場を広げている。
 受付業務としてスタートした当初、「これほど長くこの会社にいるとは考えていなかった」という。今後も長く仕事を続けていきたいと思っており、福利厚生が充実し、女性でも安定して働き続けられる同社の環境はとてもありがたく感じている。
 今後は、「これまでの受付と秘書業務の経験を活かし、今のグループ会社管理部では、管理部のプロとなれるよう知識を習得していきたい。自分の経験にもとづくだけでなく、社会全体で通用する知識と自分で判断できる力を蓄えていきたい。また研修・教育分野にも興味があるので、いずれは管理部として携わってみたい」と抱負を語る。