事例紹介

ホーム 事例紹介 事例59 株式会社タニタハウジングウェア

  • 製造業
  • 100~299人
  • 正社員への転換 ~正社員へ~
  • 処遇の改善
  • 人材育成
  • キャリアアップ助成金

事例59 株式会社タニタハウジングウェア

事例 59

株式会社タニタハウジングウェア
パート・契約社員の正社員への転換制度を導入。各種助成制度を活用し、社員が安心して働き続けられる環境を整備。


会社設立年 1947年
本社所在地 東京都板橋区東坂下2-8-1
業種 製造業
正社員数
(2017年10月1日現在)
132名(男性96名、女性36名)
非正規雇用労働者数
(2017年10月1日現在)
パート社員2名(男性2名、女性0名)
資本金 7200万円
売上高 非公開
取組概要 <背景>
・パートや契約社員の雇用不安への対応、処遇の改善
・個々のライフスタイルに合わせた働く環境の整備
<内容>
・パートや契約社員の正社員転換制度の導入
・各種助成金制度の活用
・「ジョブカード」の導入と社内人事評価制度の整備
・多様なライフスタイル実現に向けた工夫
<効果・結果>
・社員としての自覚の高まり
・外部研修を活用した人材育成の将来的な推進
・今後の課題としての、女性活躍推進と高齢化への対応

PDFデータ

Get ADOBE READER

PDFファイルを見るためには、Adobe Readerというソフトが必要です。
Adobe Readerは無料で配布されていますので、左記のアイコンをクリックしてダウンロードしてください。

 同社は、雨とい等の建築用外装材を手がけるメーカーで、今年、創業70周年を迎える。元々、地方から中学生を集めて寮生活で仕事をしながら夜間の高校や大学に通う環境で人を育ててきたため、社員が家族のような存在となっている会社である。
 家族的な雰囲気を持ちあわせているため、また、産休・育休取得者も100%職場復帰し、定年後もほぼ100%再雇用されるなど、離職者がほとんどいないのが特徴となっている。
 近年は、子育て世代が安心して仕事と家庭の両立が図れるように両立支援制度の整備も積極的に進めており、そうした取組が認められ、「TOKYOワークライフバランス認定企業」に認定されるなど、自他ともに認める「働きやすい職場」である。

1.取組の背景

◆パートに対する処遇改善の必要性

 離職者の少ない同社であるが、秋田工場では毎年定期的に高校新卒者を正社員として2名位採用している。全社的に、長期間働く社員が多いため、本社部門などでは定期的な採用は行っていない。必要性が生じた時に採用を行っている。
 同社では、ほとんどのパートは正社員と同じ内容の仕事をしている。人事評価も同じものを使い、福利厚生面などの違いも特にない。しかし、両者で賃金体系が異なり、処遇面ではパートの方が劣る。生活レベルも変わってしまうため、長い期間にわたって正社員と同等に働く優秀なパートに対しては、以前からきちんとした処遇をする必要性を感じていた。

◆経営状況悪化に伴うパートの雇用不安解消のため、「正社員転換制度」を導入

 リーマンショックの影響で、2009年には経営状況が悪化し、パートの雇用継続の見通しがもちにくくなった。そのため、一時期パートの契約期間を1年から半年へと短くしたが、パートからは、「不安でしかたがない」といった雇用への不安の声があがった。社長も面談を通じて、パートの雇用不安を把握しており、正社員転換に向けて準備を重ね、2012年に「正社員転換制度」を導入し、4名のパートが正社員に転換した。





2.取組の内容①(正社員登用)

◆パートから正社員への転換制度

 同社では1等級から6等級までの等級制度を運用している。部署ごとで等級基準の違いはあるものの、基本的に高校新卒は1等級から始まり、通常は数年後に2等級に昇格する。4等級までが一般社員で、5等級からは管理職と専門職の2種類のコースに分かれる。
 パートも、基本的には正社員の場合と同様の人事評価制度に基づき、評価が行われる。評価表は1等級のものを使い、「重点課題」といった目標管理制度を適用、半期ごとに上司との面談も行っている。
 「正社員転換制度」は、就業規則上「2年間の評価をもって行う」ことになっているため、基本的にパート採用の2年後から適用となる。その間の人事評価結果を踏まえ、作文、ストレス耐性の適性試験、役員面接を経て、正社員に転換する。転換後は、部署により違いはあるものの、基本的には3等級に位置付けられ、1年間様子をみて、等級を確定するという運用を行っている。


等級制度の概要

出所)ヒアリング調査内容より作成



◆助成金制度の活用

 「正社員転換制度」の導入にあたっては、パートの雇用不安解消といったニーズに加え、「国の助成金」も制度導入を後押しした。
 同社は以前にも、両立支援の助成金を受給したことがあるなど、助成金に関して東京都の担当者と情報交換を行ってきていた。パートの正社員への転換を検討しているタイミングで、東京都の職員から、「パートを1人正社員に転換すると、会社が国から1人目について40万円の助成金をもらえる」制度(キャリアアップ助成金)を紹介してもらった。社員のためになる提案は比較的通る社風であったため、「やるなら今のタイミングがよい」という形で制度導入に向けて話はスムーズに進んだ。
 同社では、東京都からの情報提供の他にも、社会保険労務士会の開催するセミナーなどにも足を運び、社会保険労務士からも各種助成金の紹介などを受けてきている。
 助成金について、「管理部門は基本的に売上に貢献することはなく、費用を使う部門である。しかし、助成金制度を積極的に活用することで、財務面でも会社に貢献できる」、また、「社員の働きやすい環境を生み出すこともできる」と考えており、積極的な受給意向を持っている。受給にあたっては、残業時間の管理や解雇実績のないことなどが求められるため、労務管理面で不具合を起こさないよう、丁寧な対応に努めている。

◆多様なライフスタイル実現のための工夫

 パートと正社員は、処遇面が大きく異なるため、会社としてもできる限りパートに対しては正社員への転換を望んでいる。
 しかし、個々の事情により正社員への転換を希望せず、パートや派遣契約を継続する場合もある。また、7年ほど派遣社員で勤めて、これまで正社員への転換を希望していなかった人が、ライフスタイルの変化によって、正社員になった人も最近いる。現在2名いるパートのうち1名は、高校新卒の障害者雇用で雇用している。採用にあたって、学校の先生も含めて相談した結果、「頑張れば正社員になれる」ということもあり、それであれば「本人も仕事をより頑張れる」ということからパートで採用した。
 同社では、パートの正社員への転換を望みながらも、個々のライフスタイルにより多様な働き方ができるように柔軟な制度運用の工夫もしている。


3.取組の内容②(その他)

◆「ジョブカード」の導入と社内人事評価制度の整備

 同社では、以前から離職が極めて少ないことが、一つの特徴となっている。しかし、そのことは必ずしもプラスの面ばかりではなく、人材育成の観点からみると、社内の人事評価基準だけに基づいて社員が育成されてしまうという懸念があった。そのため、雇用環境の変化等で、社員が当社から離れなければならなくなった時に、「自分の能力はこれだけある」ということを社外の基準で示せるようにしておくことも重要であると考えた。
 そのような時に、公益財団より、東京都の「キャリア診断」事業、社会保険労務士より「企業内人材育成制度」助成金の情報が入った。それらの事業を活用し、「ジョブカード」をベースにした、人事評価制度の構築を進めることにした。その後、2016年から「ジョブカード」を本格導入し、人事評価制度でも活用している。


4.効果と課題、今後の運用方針

◆社員としての自覚を持たせる

 同社の場合、パートが正社員へ転換しても、仕事の内容は大きく変わらない。しかし、正社員になることで、雇用が安定することに加え、年収が大幅に増えるなど処遇面は大きく変わる。そうした違いを通じて、「社員としての自覚」が高まると考えている。
 「正社員転換制度」は、転換するパートにとって良い制度であるので、今後ともパートで入社する者に対しては、本人の希望に配慮しつつも基本的に2年で正社員に転換してもらう方針である。

◆「ジョブカード」導入により、外部研修の受講を通じた人材育成がスムーズに

 「ジョブカード」制度については、制度導入後からまだ1年しか経っていないこともあり、具体的な効果の実感はまだない。しかし以前から、その考え方を取り入れて人事評価制度を導入していたこともあり、うまく機能はしていると考えている。
 人材育成は同社にとって重要な課題であるものの、例えば外部研修を受講するとなると、相応の費用がかかるため、本人、上司ともに受講をためらいがちであった。しかし、「ジョブカード」を人事評価に活用し、上司と本人が面談することで、「この仕事をするには、こういう能力が必要」ということを明確にすることができる。本人も「自分がどのようにキャリアアップをしていくのか」が明確になり、推薦する立場の部長もその必要性を理解しているため、費用のかかる外部の研修であっても、上司・本人の双方が納得感を持って参加し、人材育成を一段と進めやすくなった。

◆女性活躍の推進

 同社の場合、工場を除くと女性は少なく、全体の2~3割程度にとどまる。女性は少ないものの、社員を大事する経営を心掛けてきていた同社では、両立支援への取組は積極的である。
 プラチナくるみんの取組を始め、社長が社員の家族を招く、「ファミリーデー」や社員の子どもが小学校・中学校・高校・大学・(専門学校)の入学時に祝金として10万円を支給したりしているのもその一環である。その他、家族的な社風のため「子どもが熱を出した」「具合が悪くなった」といったときに、「お互いさま」という感じで気兼ねなく休むことができる。
 ただし社内では女性が少ないこと、また女性管理職がいないこともあり、「女性活躍推進」の取組は、今後の課題の一つである。

◆高齢化社会のなかでの働き方改革

 働き方改革も課題となっている。その一つとして、今後増えると考えられる介護による離職をいかに防ぐかは大きなテーマである。現状でもイントラネットをクラウド化して情報共有化を進め、「出社しなくても仕事ができる」環境を整備しているが、一層の環境の充実が必要と考えている。
 また、定年後の再雇用にも課題がある。同社では定年は60歳であるが、定年退職者のほぼ100%が65歳まで再雇用となっている。
 再雇用後も定年前と同じように目標管理を行い、勤務時間もそれまでと変わらないものの、年金との調整により、基本給はおよそ6割となる。その結果、再雇用者のモチベーションが低下してしまった。対策として、再雇用者に対して2014年に賞与を支給、2018年には6割基準を廃止、仕事にあった賃金支給の制度に改定を予定している。





5.活躍する従業員の声

マーケティング部
松田 冴子さん

年代 40代 性別 女性
勤続年数 5年
キャリアアップの過程 2013年よりパート社員として入社。
マーケティング部に所属し、問い合わせ対応、見積もり、営業サポート業務等従事。
2014年に正社員に転換。

◆子育てとPTAの役員をしていたためパートとして入社

 松田さんが入社したのは30代。以前は設計事務所に勤務し、その後、飲食店に勤めていた。その時に、設計事務所勤務時から知り合いであった現在の会社の社長と偶然再会し、「働かないか」と誘いを受け、同社で働くこととなった。
 当初は、正社員での採用を提案されたが、子どもが小学生で、PTAの役員を引き受けていたことから、勤務時間が8:30~17:30の正社員では難しいと考え、相談の上9:30~16:30のパートでの採用となった。

◆パートとして正社員並みに働くことで自信につながり、正社員を希望

 入社後、マーケティング部に所属し、問い合わせ対応、見積もり、営業サポート業務を1年間パートとして勤務した。通常より早い勤務1年経たない頃に、パートから正社員への転換の話をもらった。その時は既に、PTAの役員は終えており、正社員とそれほど変わらない仕事をさせてもらっていたので、正社員として働くことを受け入れることにした。
 「正社員として雇用してくれるのか」と不安を感じていた時期でもあり、正社員への転換の話があった時には、「嬉しく、ありがたかった」と言う。

◆パートと正社員で変わらぬ仕事内容

 正社員になったことで給与は上がり、ありがたいと思っている。一方同社では、「パートだからこの仕事」「正社員だからこの仕事」というような、パートと社員で仕事面で区別はないため、「正社員になったから、ここがつらいといったことはない」と言う。
 確かにパートから正社員になったことで、出社時間は1時間早くなり、退社時間は1時間遅くなったので、勤務時間は2時間延び、最初はきびしい部分もあったが、基本的に定時で仕事も終わる。家が近いこともあり、子どもを送ってからや子どもと一緒に出られることもあり、慣れてしまえば問題なかった。

◆将来を見据えてステップアップを目指す

 正社員になってからは、今後の計画、「3年後、5年後をどうしたいのか」、計画性なども求められるようになったと感じている。正社員は技術・知識を習得するために、外部の勉強会に参加させてもらえるなど、優遇されている面もある。
 現状では、子どもが中学生と高校生なので出張などへの対応は難しいと考えているが、将来的にはステップアップも希望している。正社員になったことで将来的なものを見据えやすくなった。