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事例61 株式会社たまゆら

事例 61

株式会社たまゆら
多様な働き方で人材確保・定着を進め、事業成長も果たす。


会社設立年 2002年
本社所在地 長野県飯田市北方2688-2
業種 高齢者福祉事業
正社員数
(2018年3月現在)
85名 (男性24名、女性61名)
非正規雇用労働者数
(2018年3月現在)
11名 (パート男性1名、女性8名)
(契約社員女性2名)
資本金
(2016年度)
41,950千円
売上高
(2016年度)
600,540千円
取組概要 <背景>
社会全体が人材不足であり、仕事の担い手が減少している状況にあり、特に介護・福祉分野は人材不足が深刻。人材の確保・定着に向けて、以下のような方針を立て、取り組みを続けてきた。
・女性が多い職場でもあり、ライフイベントに左右されず働きやすい環境をつくり、長く働いていただく。
・パートを集めるのではなく、パートからフルタイムに移行できるシステムをつくる。
・取組をきちんと社会にアピールする。
<内容>
・短時間正社員制度を運用中(正社員と短時間正社員の相互移行も可能)
・非正規社員(パート、派遣、契約社員等)の正社員転換を実施
<効果・結果>
・派遣社員から正社員登用、(フルタイム)正社員から短時間正社員への転換、短時間正社員から(フルタイム)正社員への転換実績あり。
・子育て世代の多い職場であり、短時間正社員制度によって雇用の安定化を実現
・必要な人員を安定的に確保できており、質の高いサービスへの好循環が生まれている。

PDFデータ

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 同社は建設業界にルーツを持ち、2003年に「デイサービスセンターたまゆら」の開設とともに福祉事業部門を分離し、独立。その後2005年に「ショートステイたまゆら』」、2007年に「介護付有料老人ホームたまゆら」、2009年に「デイサービスセンターたまゆらの丘」サービス付高齢者向け住宅「ハッピーハウスらまゆら」、「グループホームたまゆら」を開設し、飯田市内で多角的な高齢者福祉事業を展開している。2016年には社会福祉法人も設立し、2017年には特別養護老人ホームも開設した。

1.取組の背景

◆女性が多く活躍する職場

 同社が事業展開する高齢者福祉分野は女性の比率が高い業界として知られる。たまゆらでも従業員の7割は女性である。一方で、高齢者福祉分野は高齢化の進展を背景としてサービスニーズは右肩上がりの状況にあるものの、人材の確保が思うに任せない施設・事業所が多いという特徴も持つ。
 同社においても職員の多くを占める女性が長く働き続けられることこそが人材確保の根本であり、長期就業が実現されることで高齢者福祉事業におけるサービス品質も向上していくとの考え方を持っていた。「この職場で働きながら子どもを産んでもらう」ということも人材の確保・定着において重要な視点であると代表は考えてきたという。
 こうした状況のなかで、女性看護師が妊娠、退職の相談が代表のもとに持ち込まれた。退職という判断に対して、代表は産育休の後、ぜひとも職場復帰してほしいと考えたが、育児休業後の職場復帰には様々なハードルがあることを認識した。十分な保育サービスの提供なしには復職そのものが難しいこと、また、復職できるとしてもタイミングが遅れ、専門職にとっては致命的とも言える仕事の「ブランク」が生じてしまう。こうした課題に対して、同社は迅速に事業所内託児所の設置に動いた。幸い保育士の資格を持つ職員がおり、この職員を保育担当として、施設の建て替えとタイミングを合わせて2007年に事業所内託児所を設置した。こうした取組が長野労働局に注目され、一般事業主行動計画の策定を勧められるとともに、2014年には第8回ワーク・ライフ・バランス大賞受賞、2015年に厚生労働省の「くるみん」認定を受けることとなった。くるみん認定を受ける過程で就業規則の改定を進め、これが今日につながる多様な働き方の導入の契機となった。
 なお、同社では2006年以降28名の職員が42人の子どもを産んでいる。代表は「子どもが生まれるのも多様な働き方の効果」と考えているという。


2.取組の内容(短時間正社員制度・正社員転換制度)

◆正社員登用・転換制度

 同社では、パート職員や派遣社員などの有期雇用職員からの正社員登用や短時間正社員と正社員の間での転換制度を運用している。これらの制度は、正社員は就業規則本則に、パート職員はパートタイマー就業規則、短時間正社員は短時間正社員就業規則においてそれぞれルールを明確化し、すべての職員が制度を利用できるよう配慮している。
 同社の制度は、多様な働き方を選択することができる制度を設けることで、休職・退職を防ぐことができるようになること、育児・介護をしながら仕事ができることにより、職員が心のゆとりを持つことができるようになるという目的・考え方を背景に整備されてきた。
 パート職員の正社員登用は、1年以上の勤務実績と登用前年度において、所定労働日数の85%以上の出勤実績を要件として上長推薦により正社員登用がなされる。
 短時間正社員は育児、介護、自己啓発等の制度利用に関する理由に一定の基準を設けた上で、本人からの申出と上長の推薦により正社員への転換が可能となっている。併せて、上記の理由による正社員から短時間正社員への転換も可能となっている。契約社員・派遣社員に関しては、勤務開始後6ヶ月以上を要件として正社員への転換が可能となっている。派遣社員等からの正社員登用は、労使双方がお互いの実力や職場環境への理解と納得を進める時間をとることができることもあり、登用後の退職はこれまでなく、高い定着率を維持している。


転換パターン・プロセス

出所)ヒアリング調査内容より作成



◆短時間正社員制度

 同社では、育児休業後復職時の育児短時間勤務の実現、定着から、現場の職員ニーズを汲み上げる形で短時間正社員制度等の仕組みが発展してきた。
 同社の正社員は、4月1日を起算日とする1年単位の変形労働時間制が適用されており、1日8時間、1週40時間以下の所定労働時間となっており、1年間の総休日は105日と定められている。始業・終業時刻は、日勤者(8:30-17:30)、始業・終業が少し遅い日勤者(10:00-19:00)、早出者(7:00-16:00)、遅出者(12:00-21:00)、夜勤者A(16:00-9:00)、夜勤者B(23:00-8:00)、デイサービス(8:25ー17:25)の区別がある(いずれも休憩時間あり)。
 これらに対して、短時間正社員は勤務時間を1日あたり6~7時間の範囲で選択する。1日あたりの勤務時間については、3時間/日を下限として運用を行っている。
 1日あたりの所定労働時間の設定等は、短時間正社員への転換を行う際に当該職員の事情・希望に応じて都度個別に相談の上、決定している。
 この他、育児短時間勤務制度があり、育児短時間勤務者は、育休明けから子が就学するまで、勤務時間を4~7時間の幅で選択できる。就学後も短時間勤務を希望する場合は、短時間正社員への転換を行い、シームレスに育児と仕事の両立が可能な働き方を継続できる仕組みとなっている。

◆スキルアップ・キャリアアップに向けた人材育成投資

 同社では、職員の教育・研修、キャリアアップ機会の提供など、人材育成投資にも力を入れている。
 職員への教育投資は、職員自身のキャリアアップや所得上昇だけではなく、会社にとってもサービス品質の向上や新たな事業展開を行っていく上で、効果が期待できるものであると考えられ、会社が認める教育・研修に関しては、旅費・滞在費、学費等も含めて全額会社が負担する方針としている。
 例えば、介護福祉士の資格試験に関しては、受験料、交通費、宿泊費を会社負担としている。職員採用時に介護福祉士資格を持っていない人材であっても人物本位で積極採用を行い、入社後に会社負担で資格の取得を奨励しており、これまでに50名以上が会社の支援のもとで資格を取得した。その他、准看護師として入社した職員が正看護師に転換を目指した際にも2年間の学修の支援(学費負担等含む)を行った実績などがある。なお、これらの教育・研修に関する会社からの支援は、正社員にとどまらず、短時間正社員等に対しても原則として同様の内容の支援が実施される。

◆取組にあたってのポイント

 同社の多様な働き方の実現に向けた諸制度は、全て実際に必要とする職員がいたこと、そうした職員に継続的に就労してもらうためにどのような仕組みが必要かを検討して生まれたものという特徴がある。育児と仕事の両立を図るために、事業所内託児所の開設や育児短時間勤務制度が導入され、それらの利用者が増加し、制度の利用が定着していくとともに、職員から新たな提案、要望が出され、それを実現するために制度を展開、拡充していくという取組の繰り返しが行われて現在の制度が組み立てられてきた経緯がある。
 各制度は、法人本部の総務課(各施設から1名ずつ参加)が中心となり、アイデアを制度化するための検討を行い、顧問社会保険労務士等の専門家の協力を得つつ、社長に提案。その後施設長会議での決定を踏まえ、就業規則等のルールとして職員すべてが利用可能な形態に整備されていった。
 こうしたサイクルが可能となる背景には、制度の利用結果や、職員が業務の中で感じていることを忌憚なく意見として会社に伝えることができる同社の組織文化も重要な役割を果たしている。また、多様な働き方を認め、働きやすく、成長機会のある職場を用意することを、同社では「投資」と捉えていることも取組の促進にあたって大きなポイントとなっている。
 事実、同社の事業は拡大傾向にあり、売上、利益ともに伸長している。サービス提供を担う人材が事業の推進力となる高齢者福祉産業にあって、人材への投資が良好な事業パフォーマンスに結びついており、好循環が生まれている。


3.取組の内容(その他)

◆長期勤続に向けた取組

 同社では職員の定着、長期勤続が採用やサービス提供においても自社の強みの一つであると認識しており、多様な働き方の実現に向けた制度、教育研修の積極展開と同様に長期勤続に向けた取組も重視している。
 長期勤続に向けた取組として、代表的なものに勤続5年目、10年目の節目に一時金と連続休暇の付与が挙げられる。勤続5年目には5日間の休暇と5万円の一時金が、10年目には10日間の休暇と10万円の一時金が支給される。
 また、中小企業退職金共済に、試用期間後に加入することとしており、退職給付にも備えており、職員が安心して長期勤続を希望できるよう取り組みを進めている。
 その他、社員旅行等の機会を設けているが、事業の特性上、社員旅行に参加できない職員に対しては、別途職員同士で旅行等に出かけることができるよう、休暇と費用の支援を行うことで、すべての職員が納得感をもって働き続けられるような配慮が行われている。


4.効果と課題、今後の運用方針

◆着実な実績

 制度運用開始後、短時間正社員から正社員への転換、正社員から短時間正社員への転換、派遣社員から正社員への登用等の実績を積んでいる。派遣社員からの正社員転換例では、転換後も離職者を出すことなく、定着状況は良好。
 また、良好な定着率と職場環境の優位性から、人材の確保・定着に強みを発揮できており、利用者定員が大きな施設を多数運営している状況においても、必要な職員数を安定的に確保できているなど、人材獲得競争上の効果も現れている。

◆経営指標における効果

 上記に関連して、同社の事業は一貫して拡大基調にある。人材の確保と歩調を合わせるように、毎年度の売上高、利益ともに上昇基調にあり、就労環境の整備や多様な働き方の導入が事業経営面においても有効に働いている。
 例えば、同社がホームページで公開している貸借対照表では、2013年時点の純資産86,116千円から毎期順調に積み増しを行い、2017年の決算公告において140,405千円まで成長を果たしている。同社代表によれば、会社は職員の処遇改善に向けた支出をきちんと行い、職員のモチベーションが高く保たれていることが事業の成長として還元されていると認識しているという。

◆職場の文化・風土への好影響

 雇用形態を超えて、職員の成長意欲が引き出され、切磋琢磨していく雰囲気の醸成にも効果が見られる。また、多様な働き方を選択する職員が多数いることにより、職員同士の助け合いや相互の事情への理解も深まり、働きやすい職場風土が維持できている。

◆今後に向けた課題

 多様な働き方の実現と人材の確保・育成、事業の成長という好循環を築いている同社だが、より働きやすい職場に向けて解決すべき課題も明確化している。
 例えば、高齢者福祉事業では有料老人ホーム、グループホーム、ショートステイ、特別養護老人ホームなど、24時間体制での職員配置が必要となる施設・事業所もある。こうした施設・事業所での夜間帯の勤務については短時間正社員等の配置は難しく、子育てや介護などの短時間就労が必要な事情を持たない職員(男性職員や独身者など)が職務を引き受けることが多くなっているという。同社では、法人傘下の施設・事業所の種類も多く、法人全体での職員配置のバランスを考慮しつつ、人事異動等によってこれらの課題に対応してきた。ただし、高齢者福祉分野に求められる社会的ニーズに応え続けていく場合、夜間帯の勤務があるサービスの重点化などが必要となる可能性もあり、社会的要請に応えつつ、多様な働き方を選択した職員の働く場を整備していく必要があると認識されている。
 同社では、上記のような課題に対応しつつ、「少子高齢化と言われる時代にあって、出産年齢にある女性のみならず、男性も子どもを持つ意欲を持ってほしい」と考えている。そのために、子どもを産み、生活をして行くための職場があり、子どもを育て上げていくための収入が得られるような社会の実現に向けて、今後も取り組みを続けていくという。


5.活躍する従業員の声

介護職(係長)
F.A さん

年代 40代 性別 女性
勤続年数 10年
キャリアアップの過程 前職も介護職として勤務経験あり。
派遣社員として同社デイサービス事業所に入職。
正社員登用制度により、入職後最初の契約更新のタイミングでフルタイムの正社員に転換。
以降、デイサービス担当の介護職として勤務。

◆派遣社員として入職、正社員に転換

 現在、デイサービス事業所の係長として介護の仕事に就くF.Aさん。F.Aさんはたまゆらに入職前は老人保健施設で介護職として働いていたが、夜勤が自身の生活リズムと合わず、日勤帯で働ける職場を探していたという。
 人材派遣会社経由でたまゆらのデイサービス事業所での介護職の仕事が紹介され、同事業所に約10年前に入職した。もともと介護職としての経験もあり、その仕事ぶりが認められ、初回更新のタイミングで職場の上司、社長から正社員への転換を打診された。
 F.Aさんも派遣社員として働く過程で、たまゆらの「働きやすさ」を認識していたといい、会社からの打診を受ける形で正社員転換を果たした。
 仕事の内容は前職と比較して、夜勤がなくなったことと送迎業務が加わったことが大きな違いだったという。ペーパードライバーであったF.Aさんは送迎のための自動車の運転に当初は緊張したというが、現在は運転技術も上達し、日々利用者の送迎からケアまでをこなしている。
 たまゆらで派遣社員から正社員に転換したことで、福利厚生などを含めた労働条件面の変化と自身の意識や仕事に向き合う姿勢の両面で変化があったという。
 労働条件面では正社員転換に伴い、加入する社会保険が変更になったこと、賃金面でも将来の計画が可能になり、キャリアや生活のプランが広がったという。また、入社後に会社の支援制度の適用を受けて介護福祉士資格を受験、資格を取得することができた。
 意識面では、介護福祉士資格の取得も一つの契機として、介護職員としての意識が高まったという。自身がそうであったように、介護福祉士資格の取得を目指す新人や後進の指導にも意識を向けるようになったといい、指導にあたって、更に自身の知識やスキルを高めていきたいと考えるようになったという。
 F.Aさんは正社員としてキャリアを積む中で、仕事への責任感を認識するようになり、自分が動き、また、他の職員を動かしていく必要や、そのために職員同士が気を配り会う関係を作ることの重要性を実感している。こうした職場環境に対する責任感は、職場の選択に対して融通の効く派遣社員とは異なるものだと考えているという。
 今後、F.Aさんは新入職員がきちんと定着できるような職場づくりに貢献していきたいと考えている。そして、自身や職員の成長を通じて、デイサービスをもっと良くしていきたいという気持ちで日々の業務にあたっているという。そのために、介護の初心者でもケアの手順がわかるよう、職場の同僚と業務の「見える化」に取り組み始めている。また、介護職としての経験・スキルを向上させていくとともに、新人指導や現場のリーダーとしても経験を積んでいきたいと考えているという。さらに、最近では認知症ケアについても関心を持つようになり、将来的には認知症ケアにも関わってみたいという希望を持っている。