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事例08 社会福祉法人春陽福祉協会

事例 08

社会福祉法人春陽福祉協会
非正規職員の正職員転換とキャリアアップ支援により、優秀な人材の育成・確保を目指す。

業種 医療・福祉
本社所在地 新潟県
正社員数
(平成30年9月30日現在)
正職員:まつはま園 52名(男性15名、女性37名)
新屋敷まつはま園 26名(男性7名、女性19名)
非正規雇用労働者数
(平成30年9月30日現在)
臨時職員(※1) :まつはま園 6名(男性 0名、女性 6名)
新屋敷まつはま園 2名(男性0名、女性2名)
パート(※2) :まつはま園 11名(男性 4名、女性 7名)
新屋敷まつはま園 3名(男性0名、女性3名)
非正規雇用労働者の主な仕事内容 特別養護老人ホーム・デイサービス・ショートステイにおける施設介護・通所介護・居宅介護支援
取組のポイント ■正職員転換制度により、非正規職員の正社員への転換がほとんど完了した。
■ 研修の実施と資格取得の受験料を負担
⇒職員のキャリアアップへの意欲向上と能力向上に寄与

(※1)1年更新の有期雇用。夜勤を含むフルタイム勤務。給与は月給制で、賞与や退職金も支払われる。賞与については、正職員と同じ支給率である。平成30年9月末現在では、定年後の再雇用の職員8名のみ。
(※2)1年更新の有期雇用。臨時職員よりも短時間・短日数勤務の雇用形態。賞与(1か月分相当)も支払われる。退職金はなし。

PDFデータ

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 同法人は、平成5年に介護老人福祉施設「まつはま園」を開園。特別養護老人ホーム、ショートステイ、デイサービスセンター、居宅介護支援事業所を運営している。平成21年からは、新たにサテライト型地域密着型介護老人福祉施設(※3) 「新屋敷まつはま園」を開設。平成27年6月現在、「まつはま園」は80床、「新屋敷まつはま園」は40床の規模で運営している。
 特別養護老人ホームやショートステイの稼働率も高く、利用者の満足度も高い。地域密着型介護老人福祉施設(※4) (ユニット型個室)を取り入れ、個々の状態に応じた生活支援を行っている。ユニット型個室にすることで、入所者の傍らに寄り添う時間が増え、要介護5の方に変化がみられたり、笑顔が増えたりすることで職員のやりがいにもつながっている。

(※3)同一法人により設置され当該施設に対する支援機能を有する特別養護老人ホームと密接な連携を確保しつつ、その施設とは別の場所で運営される地域密着型特別養護老人ホーム。
(※4)利用者が可能な限り自立した日常生活を送ることができるよう、入所定員30名未満の介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)が、常に介護が必要な方の入所を受け入れ、入浴や食事等の日常生活上の支援や、機能訓練、療養上の世話等を提供する施設。

1.取組の内容

◆非正規職員の資格取得者を育成し、正職員に転換させることで優秀な人材確保を実現(平成25年度~28年度取組)

【介護福祉士資格保有等の要件を満たす者が「正職員カリキュラム」を受講の上、上司の評価の下で正職員に転換】

 平成5年4月の開園当初は、100床に対して正職員40名の少人数体制で運営していた。その後、介護保険制度がスタートして措置制度から契約制度となり、サービス業としての自覚が生まれたこと、少人数ケアにより入所者の表情に変化がみられるようになったことから、平成18年に今までの集団ケアから個別ケア(ユニットケア)に転換した。それに伴い、職員を増員する必要が生じ、非正規職員の採用を開始した。非正規職員採用を開始した当初は、正職員への転換が制度化されておらず、正職員の退職者が出た場合のみ、人事考課制度で評価された非正規職員を正職員へ転換させていたが、平成25年度に正職員転換を制度化した。正職員転換の要件は、①介護福祉士の資格を取得していること、②人事考課による評価が優れていること、③217時間の「正職員カリキュラム」を受講したこと、としていた。「正職員カリキュラム」は、190時間の実習(OJT)と27時間の座学(Off-JT)から構成されている。

正職員カリキュラムの内容

教科名 時間
実習(OJT) 安全衛生 2
社会福祉における顧客満足度の捉え方 34
介護における顧客満足度の捉え方 128
医学と医療の基礎 4
リハビリテーション 2
介護実習(直接的援助の実習) 20
OJT小計 190
座学等(Off-JT) 学科 社会福祉概論 2
介護概論 2
医学と医療の基礎 2
老人福祉論 2
リハビリテーション 2
社会福祉援助、生活援助 2
職業能力評価 4
実技 接客接遇 2
書類作成と情報活用 2
社会福祉援助技術 2
生活援助技術 1
介護実技(所内実習) 4
Off-JT小計 27
合計 217

 これらの要件を満たした者に対して、ユニットリーダーの評価と全フロアの課長・部長の評価が加えられ、施設長が正職員転換についての最終決定を下していた。最終決定で不合格になった場合、施設長が面接し、足りない部分を伝えていた。
 なお、介護福祉士の資格取得には、最低3年の実務経験が必要であったため、無資格者の場合は、同会で3年間勤務しつつ介護福祉士資格を取得し、その後「正職員カリキュラム」を受講することとしていた。資格保有者は、非正規職員として3か月間勤務したのちに「正職員カリキュラム」を受講し、転換していた。
 正職員転換制度を整備していることについては、採用面接の際にも伝えていたが、毎年4月第1金曜日に行われていた全職員研修で説明し、周知を図っていた。また、正職員転換制度を盛り込んだ就業規則は、誰でも見られるように各部署でファイルに保管していた。

【正社員転換制度の実績と現在の状況】

 正職員転換制度を実施後、平成25年度に3名(全員女性で20代が2名、30代が1名)、平成26年度に4名(30代男性が2名、40代が男女それぞれ1名で計2名)が、臨時職員から正職員へ転換した。パートも正職員に転換できるが、これまで正社員転換を希望するパートはいなかった。
 平成28年4月に、定年後に再雇用された臨時職員と、自らの希望によりパートを選んでいる人を除く非正規職員の正職員への転換が完了した。現在残っているパートは、資格取得済や、正職員と同等か正職員以上のスキルを保有する人が多いものの、育児などの個々の事情により希望してパートとして勤務している。正社員に必要な条件やスキルをすでに保有していることと、新しく制定した採用方針に基づき、現在は、上司から毎年定期的にパートに声がけを行い、希望があれば個別に対応の上、正職員に転換する仕組みとなっている。個々の事情に配慮しつつ、希望があれば正職員に転換できるよう柔軟な姿勢で対応している。

◆正職員への転換が十分に進み、新たなステップとして採用方針を変更

【正職員採用方針の転換と応募条件の緩和】

 定年後の再雇用、および、自らの希望によりパートを選んでいる人を除き、正職員への転換が平成28年4月に完了したことを受け、平成28年4月からさらなる人材確保を目指し、採用方針を変更した。具体的には、資格の有無に関わらず、はじめから正職員として採用する方針に切り替えることにより、幅広い人材の確保ができるようになった。以前より、資格取得の支援をおこなっているが、さらにキャリアアップ制度を規格化することにより、資格取得後の処遇改善等を目指せる点を踏まえて、採用方針を転換した。

◆資格取得支援や研修を通じて人材育成を促進

【職員の資格取得費用を負担し、月1回の研修を実施】

 毎月1回、全職員を対象とした研修を行っている。外部講師を呼ぶ場合もあれば、正職員が講師をする場合もある。内容は、理学療法士による訓練指導や歯科衛生士による指導、薬剤師による薬の研修や、看取り、感染症予防等、職員の能力を向上させるものとなっている。平成27年度より、研修の受講を臨時職員やパートを含む全職員に義務付け、勤務等で欠席した場合は後日レジュメを読んで感想文を書かせることとした。
 ほかにも全職員に対して、各種資格取得のための受験費用を負担している。ユニットリーダー研修、認知症実践者研修、認知症実践リーダー研修等は、受験費及び交通費も負担し、出張扱いとしている。ケアマネジャー等、更新が必要となる資格についても、研修の受講料を負担している。
 また、新潟県社会福祉協議会主催の研修(経験年数別の研修や、認知症ケア・対応研修やターミナルケア研修等のテーマ別研修)は、全職員について出張扱いとして、受講費及び交通費を負担し、人材育成に力を注いでいる。

【資格取得による待遇改善】

 平成28年4月に新たに設定された採用方針に基づき、資格を取得していなくても正職員として採用が可能となったが、資格を取得している人と取得していない人とでは、給与水準や各種手当が異なる。
 同法人には、人事考課規程及びキャリアアップ規程に基づいた昇給制度があり、人事考課規程に基づく人事考課の結果に加え、キャリアアップ規程に示された職務経験を積み、技能を習得したことにより、昇給や各種手当の支給が決定される。
 入社時に資格未取得の者は、介護福祉士資格の取得等による昇給もある。

2.効果と課題、今後の運用方針

◆正職員転換制度の整備により公平なキャリアアップ機会を実現

 正職員転換制度を整備したことにより、正職員への転換基準や正職員へのキャリアパスを明確に示すことができ、職員の不公平感を解消し、公平なキャリアアップの機会を実現することができた。定年後の再雇用者や自らの希望によりパートとして勤務している者を除く非正規職員を全て正職員に転換させ、人材を育成・確保することができ、利用者の満足度も高く、職員の自信や仕事への意欲向上につながっている。現在パートとして勤務している職員に対しても、正職員転換の希望確認を継続し、個々の事情に配慮しつつ、希望があれば正職員へ転換できるよう、引き続き対応する方針である。

◆資格取得支援や研修を通じた人材育成と定着を目指す

 同法人では、採用方針による人材確保と資格取得支援や研修を通じた人材育成により、引き続き、優秀な人材の定着を促進させたいと考えている。
 業界の特性として、若年層の人材獲得が困難であるが、職業体験等で来所した小中学生に、入所者から感謝される、やりがいのある職業であることを理解してもらう等、様々な機会を通じて人材確保に努めていきたい。

3.活躍する従業員の声

まつはま園
特養 介護職員 藤本寛氏

年代 30代 性別 男性
勤続年数 8年
キャリアアップの過程 平成22年に臨時職員として入職。勤続4年を経て介護福祉士の資格を取得し、正職員カリキュラムを受講、正職員に転換。

◆臨時職員として採用されても正職員になれることを信じて入職

 平成22年3月、求職時にハローワークでヘルパー研修を勧められたことを一つのきっかけに、他業界から転職した。採用当初は臨時職員であったが、採用面接時に、無資格であっても3年以上の勤務経験を積み、資格を取得すれば正職員への道があると知り、同法人で働くことを決めた。
 事前にホームヘルパー2級の資格を取り、実習を経験していたものの、実際に勤務すると利用者とのコミュニケーション等に戸惑いを覚えた。ただ、慣れてくると、マスコミ等で言われているほどつらくなく、入職して約3年を経たころ、ようやく一通りの業務がこなせるようになった。それでも、入所者の体調不良時の対応については苦労した。
 約1年間、過去問等を勉強して介護福祉士の試験に合格した。資格取得後に、同法人から「正職員カリキュラムを受講しないか」と声をかけられ、カリキュラム受講後、正職員に転換した。

◆リーダー的仕事も増え、キャリアアップへ意欲

 正職員転換後は、施設で行われる花見やぶどう狩り、敬老会等のイベントでリーダーを任されるようになった。また処遇面では、給与が上がり、生活も安定し、安心して働くことができるようになった。今後は、パートや臨時職員に指導する機会が増えていくと思われる。先輩職員を見習いつつ、ケアマネジャーの資格取得等にも積極的にチャレンジして、ユニットリーダーを目指して頑張っていきたい。