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  • 宿泊業、飲食サービス業
  • 100~299人
  • 人材育成
  • 処遇の改善
  • 正社員への転換 ~正社員へ~
  • キャリアアップ助成金

事例16 ホテル日航熊本

事例 16

ホテル日航熊本
契約社員を順次、正社員へ転換。若年層を定着化することで長期的な競争力強化を狙う。

(平成27年取材)
(平成31年3月更新)

業種 宿泊業、飲食サービス業
本社所在地 熊本県
正社員数
(2018年7月1日現在)
267名(男性 172名、女性 95名)
非正規雇用労働者数
(2018年7月1日現在)
パート:72名(男性23名、女性49名)
アルバイト(※1):39名(男性23名、女性16名)
非正規雇用労働者の主な仕事内容 サービス・調理・本社業務
取組のポイント ■ 正社員転換制度を整備し、過去に入社した契約社員全員を順次正社員に転換
⇒若年層の正社員を確保し、長期的な競争力強化を狙う

(※1) 勤務時間が週30時間未満の者を「パート」、30時間以上の者を「アルバイト」と区別して呼んでいる。両者の仕事内容や待遇等に差はない。

PDFデータ

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 同社は2002年、JALホテルズグループ(現:オークラニッコーホテルマネジメントグループ)であるホテル日航熊本をオープン。熊本市の中心部で宿泊、ブライダル、コンベンション等、多彩な事業を手がける。正社員・非正規雇用労働者(パート・アルバイト)合わせて約378名のスタッフを擁する。
 また、同社は家庭と仕事の両立支援に積極的に取り組んでおり、2011年に「くるみん」マークを取得、育児休業を経て復帰する女性社員は多い。

1.取組の内容

◆原則として全ての契約社員を正社員に転換

【雇用区分間の待遇の違いが契約社員の意欲低下につながる状況への課題意識】

 現代表取締役会長の田川憲生氏は、社長就任時(2012年)より「従業員を大切にしたい」という想いから、全従業員を対象とした「社長直行便」というアンケートを行うなど、従業員の希望や意見を聞き取る取組を熱心に行っていた。
 その中で、正社員に近い仕事をしながらも正社員と給与水準が異なる契約社員を、正社員に転換させる必要性を認識し、「契約社員をいずれ全員正社員にする」という方針を打ち出し、現代表取締役社長の川崎博氏が実現させた。
 同社では以前より、高卒若しくは専門学校卒の新規学卒者及び中途採用者を契約社員として、大卒の新規学卒者を正社員として採用していた。契約社員の役割としては、各部署におけるパート・アルバイトに対する仕事の指示、通常のルーティーン業務が多く、正社員と変わらない仕事をする場合も多々あった。
 しかし、正社員と契約社員の給与水準は異なり、待遇の違いが大きかったため、契約社員は正社員ほどの意欲を持てずに仕事に従事していたケースもみられた。このような背景があり、同社では契約社員の正社員転換について積極的に検討を行い、2014年、正社員の賃金制度の見直しと同時に、すべての契約社員の正社員化を進めることにした。

【筆記試験・面接試験に合格した契約社員を正社員に転換】

 新制度においては、よほど欠勤が多い場合や社会人としての自覚を欠いた行動がない限りは、部長による推薦を行い、段階的に全ての契約社員を正社員転換の対象とすることとした。
 部長の推薦を得た契約社員には、筆記試験と面接試験からなる「登用試験」が課せられる。筆記試験には会社概要など同社の基本情報に関する知識を問う問題が出題されている。転換候補の対象者に対しては、試験前に総支配人による1時間程度の講習会を行い、どのような範囲から問題が出題されるかなどについてあらかじめ説明している。面接試験は最終的な意思確認の場と位置付けており、社長及び人事役員が面接官となって、受験者に今後の抱負等を尋ねている。

各雇用区分の関係

【正社員転換後は賞与が支給され、年収増】

 2014年4月に22名、2015年4月に31名の契約社員とアルバイトが正社員に転換した。2016年4月には、過去2年間に転換の対象外であった、2014~2015年に入社した契約社員を、正社員に転換させた。また、2016年度からは、原則として契約社員という雇用区分が廃止された。賞与が支給されるようになるため、年収は20~30%程度増加する。

◆賃金制度改革を行い、若年層の活躍を狙う

 同社では、2014年、正社員における賃金制度改革を行った。従来は年齢給を採用していたため、年齢が上がるに従い昇給する賃金体系となっていたが、若年層の働きに報い、より積極的に活用するために、この年齢給を廃止した。
 年齢給を廃止した代わりに、職務等級別に賃金を定める役割給を導入した。正社員(非管理職)には下から「一般職」、「キャプテン職」、「アシスタント職」というランクがあるが、各ランクを更に10の等級に分け、それぞれの等級に応じた賃金テーブルを定めることとした。
 賃金体系の変更については、今後の経営を考えたときに、新賃金体系の導入と契約社員の正社員化による若年層の活用が不可欠であることを全従業員に繰り返し説明し、理解を得られるよう努めている。
 なお、契約社員から正社員に転換した者については、原則として「一般職」からスタートする。転換直後に「一般職」の中のどの等級に位置付けられるかは、個々の能力や経験を勘案して個別に決定されるが、転換者の意欲をより高めるため、契約社員であった頃よりも給与額が高くなるように留意している。

◆現場でのOJTを中心としつつ、各自の自己啓発をバックアップ

【部署ごとに教育訓練体制を整備】

 同社の人材育成は、現場でのOJTを中心としており、それぞれの職場で育成の仕組みを考え、実行している。例えば調理部門では、新規に採用した従業員に対して一人ずつ教育担当が付き、仕事を教えると同時に、仕事上の悩みを聞くなど心理的なフォローも行っている。調理部門は比較的早期離職の割合が高い部署であるが、早期離職を防止し定着を促進するため、このようなきめ細やかな指導体制を整備している。
 また入社時には、全ての従業員に対して同社の理念やコンプライアンス、安全衛生等に関する基本的な講習を実施している。これは採用部署に関わらず全社共通の講習であり、総務部が担当する。
 更に、オークラニッコウホテルマネジメントグループでは様々な研修プログラムが用意されており、希望者はそれを外部講習という形で受講することができる。中にはQC活動のホテル版や「日本らしいサービス」の講習といったものもあり、組織活性化に役立っている。

【資格取得を奨励し、九州一、ソムリエの多いホテルに】

 正社員については、自発的に現場で必要な資格を取った場合、取得にかかった費用の一部を会社が負担している。同社では、特にソムリエ資格にチャレンジする者が多い。
 以前から、同社ではソムリエに関心を持つ従業員が多く、「ソムリエ資格を取りたい」という声も多く上がっていた。売上高の中で飲食部門の占める割合が大きいこともあり、現会長の社長就任後、「ソムリエ資格取得を積極的に奨励し、それをホテルのアピールポイントにしよう」という方針が打ち出された。その結果、多くの従業員がソムリエに挑戦するようになり、2015年現在では、九州で有数のソムリエの多いホテルである。

2.効果と課題、今後の運用方針

◆正社員転換により若年層の人材確保に成功、今後の更なる効果に期待

 ホテル業界は離職率が高いと言われるが、契約社員から正社員という安定的な雇用区分に転換させ、更に若年層の待遇を向上させたことで、今後、離職率の低下にもつながるのではないかとの期待をもっている。更に、このように若年層を活用している企業だという認識が広まれば、優秀な人材が集まり、会社の活性化につながることを目指している。
 正社員転換制度導入後、転換者の表情が生き生きとし、仕事に対する姿勢も積極的になったようである。正社員転換の効果は、定着率向上や売上増といった具体的な数値にはまだ現れていないが、徐々に現れてくるのではないか。実際に、転換した社員からは「社会的地位の安定という観点から、結婚に対して前向きになったほか、自信と責任感が向上した」「賞与等の対象となったことで社員としての実感を得、充実感がある」等の声が上がっている。

◆キャリアアップ助成金の利用が、翌年度以降の制度充実につながる

 契約社員から正社員への転換に当たってはキャリアアップ助成金を利用した。正社員転換による人件費の増加による負担は決して軽くはないものの、助成金の利用によりその負担を軽減することができた。これにより、翌年度以降、教育訓練制度の拡充等の新たな取組を行う余力ができた。

◆教育訓練の体系化が今後の課題

 今後の課題としては、教育訓練制度を充実させていきたいと考えている。これまではソムリエ資格をはじめとする各従業員の資格取得支援や、各部署がそれぞれ行う教育訓練が中心であったが、今後10年を見通したときに、会社として計画的に人材を育成していく必要があると感じている。
 2014年以降、全ての契約社員を正社員に転換するという改革を行ったが、転換者の経験や能力にはばらつきが大きいため、これから正社員として活躍してもらうためには、更に充実した教育訓練が必要である。また、今後若年層を活用していくに当たっては、「教える側」である中堅層やマネジメント層に対する教育の必要性も高まっている。次の10年、これまで以上に競争力を強化させるため、どの時期にどのようなスキルを身につけさせるか、そのためにどのような研修を行うか、教育訓練の体系化を行っていく予定である。
 また、中国をはじめとした海外からの観光客も増えているため、従業員の語学学習支援等の充実も今後の課題となっている。