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  • 宿泊業、飲食サービス業
  • 100~299人
  • 人材育成
  • 処遇の改善
  • 正社員への転換 ~正社員へ~
  • キャリアアップ助成金

事例19 株式会社太陽エンタープライズ

事例 19

株式会社太陽エンタープライズ
業務経験を積んだ非正社員を正社員へ転換することにより、優秀な人材の確保と、離職率の低下が実現。

(平成27年12月取材)
(平成30年8月更新)

業種 宿泊業、飲食サービス業
本社所在地 神奈川県
正社員
(2018年8月1日現在)
正社員:274名(男性 257名、女性 17名)
非正規雇用労働者数
(2018年8月1日現在)
契約社員(※1) 、アルバイト(※2)
約3,150名(男性約1,350名、女性約 1,800名)
非正規雇用労働者の主な仕事内容 店舗における調理・接客業務
取組のポイント ■ 経験ある契約社員・アルバイトに対し、定期的な説明会で正社員への応募を勧奨
⇒優秀な人材の確保が実現
⇒適性ある人材を正社員に転換することにより、人材の定着に寄与

(※1) シフト制のフルタイム勤務。時給制。6か月の有期雇用。転居を伴わない人事異動の対象となる。半年毎の契約更新時には全社一律の満了手当を支給。
(※2) 希望の時間帯で勤務する。時給制。無期雇用。人事異動の対象外。

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 1977年に創業し、横浜市保土ヶ谷区にフランチャイズ契約で「ミスタードーナツ」を出店。以来、東京・神奈川・埼玉・千葉・山梨といった首都圏エリアを中心に、8業態・110店舗の飲食店を展開している(2018年1月現在)。
 展開する業態には「牛角」、「土間土間」、「DiPUNTO」、「からやま」等があり、2007年には年商100億円を突破。国内最大級のフランチャイジーである。
 フードサービス店舗の運営には「人材」が不可欠であると考え、様々な取組を行っている。
 フランチャイズの飲食店を運営する同社では、オペレーションや調理については本部からのマニュアルがあるものの、人事労務管理については同社でルールを制定し、運用している。

1.取組の内容

◆契約社員・アルバイトを積極的に正社員採用の対象に

【人材確保に課題を抱え、非正社員からの正社員転換を制度化】

 近年は人材の採用が難しくなり、加えて飲食業はどちらかといえば不人気な業種であり新規雇用をしても辞めてしまう者等、人材確保に課題を抱えていた。
 そのような中、契約社員・アルバイトを経て採用された正社員は、社外から一般募集で採用した者より明らかに定着率が高いことが分かった。そこで、非正社員に対し、正社員への応募の奨励に積極的に取り組むこととした。

【正社員への転換は本人の意思を重視し、一般応募と同様の手続きを求める】

 正社員転換試験には、契約社員・アルバイトのどちらからでもチャレンジできる。時期は特に決まっておらず、本人からの希望で随時申請が可能である。
 正社員への転換試験は、社外公募と同じ内容・レベルで実施される。ホームページに社員募集のページがあり、一般の方がそこから応募してくるが、契約社員・アルバイトも、正社員に転換試験を受けると決めた場合、同じページからIDと勤務店を記入して応募してもらうことにしている。
 この手順を取っているのは、非正社員だからといって優遇されるわけではなく、一般の応募者と同じ条件で入社試験を受けるという意識付けのためである。同社では「店長から誘われたから正社員になった」というような形での転換は避けたいと考えている。本人の、同社の一員になりたい、正社員になって今より幅広い業務に関わりたい、という意思を重視しており、自ら正式な手順を踏んで応募することとしている。

【定期的な説明会の実施により希望者が増加し、正社員転換者も増加】

 正社員転換試験は、一般採用と同じ内容・レベルで実施しており、①一次面接、②二次面接、③適性検査、がある。合格率は、一般からの応募者は16%程度、契約社員・アルバイトからの転換希望者の合格率は70%程度となっており、契約社員・アルバイトから正社員転換を希望する者は、すでに同社の理念や考え方、業務への適性や、必要なスキルを身につけているため、一般応募者と同じ試験を行ってもこれだけ合格率に差が出る。
 契約社員・アルバイトを経て正社員に転換した者は、2011年3名、2012年と2013年が4名、2014年9名、2015年16名となっている。正社員募集説明会を定期的に行ったところ、希望者が年々増え、その結果、正社員に転換する者もこのように増加する結果となった。

【3か月に一度の正社員募集説明会により転換制度を周知】

 契約社員・アルバイトから正社員に転換できることは、採用時に説明しているほか、3か月に1回程度、正社員募集説明会を実施している。
 説明会の開催が決まったら案内を各店舗に送り、店舗ではそれを誰もが見ることができるようにバックルームに貼り出して周知をしている。この説明会は、契約社員・アルバイトだけを対象に行う場合と、一般応募者と合同で行う場合のどちらもある。開催場所は、本社のある横浜やそのほかにも店舗がある山梨等の地域で開催している。平日夜や土曜日等、できるだけ学生も参加しやすい日時で開催している。
 出席者は1回の説明会で10~20名程度、フリーターと来春卒業予定のアルバイトが多い。中にはすぐに正社員になりたいわけではないが話を聞きたい、自分が働いている店とは別の店舗や業態の話を聞いてみたい、という参加者もいる。

各雇用区分の関係

◆非正社員の働く意欲にも大きく影響する店長の役割を重視

 同社では、店長をとても重要な役割と位置付けている。飲食店は店長次第で業績が大きく左右されるため、店長には大きな裁量権を与えている。
 昨今の飲食業界では、非正社員が店長になる、1名が複数店舗の店長として配置されるというような状況があるが、同社では正社員を店舗当たり2名程度の配置とし、店長になれるのは正社員のみである。
 正社員として長く働いていても能力・評価を満たしていない者は店長にはなれず、採用されてから店長になるまでには平均3~4年を要している。能力が足りないのに店長に登用することは、本人にも店舗にもマイナスになる。正社員になってから店長に昇格するまでに、しっかり勉強する時間を設けている。
 良い店長の下ではやりがいを持って働ける、毎日仕事が楽しいといった良い環境が生まれ、非正社員にも大きな影響がある。

◆アルバイト勉強会、新入社員研修等の教育機会を設定

【各地からアルバイトが集まり意見交換をする勉強会の実施】

 同社では、アルバイトだけを対象とした勉強会を定期的に実施している。業態ごとに、例えば、今日は牛角の勉強会、というような形で各店舗から1~2名ずつ、本人の希望又は店長の推薦で参加する。
 他店舗のアルバイト同士が意見交換等を行い、刺激を受けてもらうことを主な目的としており、本社の会議室で実施することが多く、山梨や静岡の店舗からも横浜に集まる。この勉強会は勤務扱いとなり、時給と交通費を支給している。
 マネージャーが講師となり、議題を出してディスカッションをさせたり、グループワークを行ったりしてサービスについて学ぶことが多い。

【正社員転換した際にも、一般入社と同様の研修を実施】

 契約社員・アルバイトから正社員になった者に対して、3日間の「新入社員研修(ビジネスマナー、社会人の心得等)」及び、6か月後の「フォローアップ研修(店内でのクレーム対応やチームビルディング等)」を行っている。これは一般募集で入社した新入社員が受ける研修と同じである。
 このほかにビジネスマナー等の外部研修も実施しており、各店ミーティングでフィードバックを行っている店舗もある。
 契約社員・アルバイトのための入社時研修は、各業態でそれぞれのマニュアルがあり、マニュアルに従って採用の度に各店舗でOJTを実施し、接客や用語について学ぶ。業態によっては座学も実施する。

◆チェックリストを使用し、評価・昇給を行う

 契約社員・アルバイトには、業態毎にチェックリストを使用し評価をしている。この評価は直属の上司である店長と店舗の正社員が行い、エリアマネージャーが最終的な判断をする。昇給もこの評価で決まることとなり、チェックリストの内容は、基本的な項目と、フロアー業務、キッチン業務に分かれており、達成度を判定する。
 各業態により、牛角では3~4か月に1度、ラーメンの事業部では2か月に1度、店長がアルバイトと面談を実施し、評価のフィードバックも行っている。
 チェックリストは非正社員用のものであり、業態によっては正社員用もあるが、非正社員用とは内容が異なっている。

チェックリスト・例

◆店舗表彰、技能コンテスト等の実施により、働く動機を形成

【覆面調査を実施し優秀店を表彰】

 同社では業者に委託して、顧客満足度調査(覆面調査)を行っている。調査結果を各店舗の点数一覧表にして社内報で共有する。
 この結果、上位3店舗を表彰し、副賞として賞金を授与している。
 このような調査をフランチャイズの本部が実施することもある。その結果は店舗とエリアマネージャーにフィードバックされる。
 また、例えば牛角では、お客様アンケートによって「輝きスタッフ」に選出された従業員を月間で表彰するなど(店舗による)、業態により様々な表彰を実施している。

【技能コンテストではアルバイトの入賞者も輩出】

 フランチャイズの本部が主催して「技能コンテスト」が実施される業態がある。例えばミスタードーナツでは年に1度、正社員・非正社員を問わずエントリーできるコンテストがあり、これまでに非正社員もたくさん出場している。各店舗から1名が代表となり、地域大会で上位入賞すると全国大会に出場できる。製造部門とサービス部門があり、製造部門ではマニュアル通りの作り方・仕上がりで制限時間以内に何個作れるかなどを競う。同社からは、2017年は契約社員1名とアルバイト4名が神奈川で入賞し、うち2名が全国大会へ出場している。地域大会が近づくと、同社の本社で約半日をかけて勤務扱いの勉強会を開くなどバックアップをしている。

【店長の裁量で表彰制度やコンテストを活用し、店舗のレベルアップにつなげる】

 同社では店長の役割を重視していると前述したが、表彰制度やコンテストでも、店長のマネジメント能力が発揮されている。
 店長が、表彰制度での受賞を目標にかかげて店舗全員で受賞を目指す、伸び悩んでいるアルバイトにコンテストの出場を薦めてステップアップのきっかけを与えるなど、この機会を利用して店舗をうまく盛り上げている例がこれまでにいくつもみられる。表彰の副賞である賞金も使い方は店長の裁量に任せており、例えば飲み会等を開催して楽しい時間を持てば、また来年も店舗全員でがんばろうという雰囲気ができ上がる。
 このように、優秀な店長はコンテストひとつを取ってもうまく活用して従業員のやる気をアップさせ、その結果たくさんのお客様に来てもらえる店舗となり業績が上がっていく。

◆正社員の評価に契約社員・アルバイトも参画する360度評価

 年に1回、10月頃に正社員の賞与と昇給を決める評価を行っており、契約社員・アルバイトも評価に参画している。
 評価項目には、売上と利益のほかに、人物評価をおこなっており、人物評価は能力評価と行動評価にわかれており、この行動評価に契約社員とアルバイトが参画する。行動評価は顧客満足度・誠実さ・等、4項目がある。各店舗で契約社員・アルバイトから選出された10名~15名程度が、その店の店長と正社員の行動を評価する。その結果、売上・利益の評価と行動評価を併せた人物評価でそれぞれ3段階、それを基に最終的には9段階の評価を出す。店長の中から評価上位者5~6名は、アメリカへの研修旅行に参加できる。
 20年近く継続して実施しており、契約社員・アルバイトも会社の運営に参画しているという自覚や、会社への興味を持ってもらう効果があると考えている。

2.効果と課題、今後の運用方針

◆非正社員を正社員転換したことにより、離職が低減

 新規で外部から採用した正社員は、「思っていた仕事と違う」というような理由から辞めてしまうこともあるが、会社・仕事について既に理解を深めた上で、契約社員・アルバイトを経て正社員になった者は簡単に辞めることはない。これまでの実績から、両者の離職人数の差は明確になっている(2016年非正社員から転換した正社員の離職者は0名、一般応募から採用した正社員の離職者は9名)。
 正社員に転換した元契約社員・アルバイトの活躍する姿を身近で見ることによって、自分も正社員を目指そうとする非正社員も出てきている。
 また、作業習熟度が一定レベル以上にある非正社員を転換することによって、研修コストが抑えられるといった効果も生じている。

◆魅力的に働く正社員を増やし、正社員を目指す者を増やしていく

 全従業員に、これからも更に長期間、やりがいを持って働いてもらうためには、店長や正社員が上司として魅力的であること、魅力的に働いていることが大切だと考えている。
 アルバイトが、これからもこの人の下で働きたい、自分もこんな店長になりたいと思うような店長を育て、後に続く従業員がたくさん出てくる環境をつくっていきたい。そのために、同社としては労働環境を整え、研修や評価制度にはこれからも工夫を重ね充実させるなど、様々な施策によって従業員をバックアップしていく所存である。2018年からは、半年に4日間、併せて年間8日間のリフレッシュ休暇を導入した。

3.活躍する従業員の声(※3)

(※3)いずれの事例も平成27年12月取材時の情報である。

店長
A氏

年代 30代 性別 男性
勤続年数 11年8か月
キャリアアップの過程 5年間、アルバイトと契約社員として勤務。店舗で働く中で、営業や経営にも携わりたいと思うようになり正社員に転換。これからも向上心を持って更にステップアップを目指していきたい。

◆飲食業に魅力を感じ、営業や経営に興味を持ち正社員に転換

 アルバイトから契約社員になり、入社から5年ほど勤務する中、飲食店の仕事にとても魅力を覚え、もっと深く関わりたいと考えるようになった。営業や経営にも携わりたいと思い正社員に転換した。
 当時勤務していた店舗の店長をとても尊敬しており、自分もこのようになりたい、もっとキャリアアップをしていきたいという思いも強かった。
 また、その頃ちょうど結婚も控えており、安定した収入を得るため正社員になろうと考えるきっかけにもなった。
 同社はアルバイトの頃からしっかりサポートしてくれており、必要なことは現場と研修で学ぶことができるため、正社員になることに不安はなかった。

◆働く仲間に良い影響を与えられるような上司になりたい

 正社員転換後、社会人としての基本的なマナーやルールから、仕事に対しての取り組み方等の細かいことまでしっかり教えてもらいながら勤務してきた。
 現在は教える側の立場になり、人に教えることで、自分自身の成長にもつなげることができており、以前より更に高い目標を持って努力している。
 正社員に転換する際に尊敬していた、自分もこうなりたいと思った店長のように、これからは自分が周りに良い影響を与えられるような存在になっていきたい。

店長
B氏

年代 20代 性別 男性
勤続年数 1年3か月
キャリアアップの過程 最短で正社員になるための努力をし、入社から約半年で店長に昇格。常にキャリアアップを意識し、能力の向上に努めている。

◆最短での正社員転換を目指して努力

 2014年の9月にアルバイトとして入社し、10月に契約社員、翌1月には正社員になることができた。入社当初から最短での正社員転換を目指して努力してきたため、ようやく認めてもらえたという思いだった。
 正社員になって3か月後の4月には店長に昇格し、その後、会社からはキャリアアップのための支援や直属の上司からの期待等が大変励みになり、正社員転換後も引き続き努力を重ねることができた。

◆現状に満足せず、ステップアップする度に始まりだと思いたい

 入社時から目標は正社員ではなかったため、店長になって初めて、やっとスタートラインに立ったという思いだった。当然、責任も仕事も増えて重圧は増したが、それよりもやりがいの方が大きかった。
 今は、支援をしてくれる会社や上司に応えるためにも現在の立場で良い実績を出すため努力している。今後も自己啓発・自己学習に励み、常に上の段階を意識してステップアップしていきたい。次のステージに上がっても、また始まりだという思いで働いていきたい。

C氏

年代 20代 性別 男性
勤続年数 10年7か月
キャリアアップの過程  入社から約10年を経て正社員に転換。社会人経験ゼロからのスタートで、先輩方に支えられてきた。これからは店長を目指して更なる経験を積んでいきたい。

◆店長の言葉に励まされ、正社員に転換

 長い間アルバイトとして勤務してきて、この仕事を自分の仕事としたい、更に責任を伴う業務にも関わっていきたいと思い、正社員転換を考えるようになった。しかしアルバイト以外に仕事をした経験はなく、自分には社会人としての常識が欠けているのではないかという思いがあり自信を持てなかった。
 そのような中、とてもお世話になっていた店長から、「自信を持って取り組めば大丈夫、経験を積んでいるのだから心配ない、並んで働けることを楽しみにしている」という言葉をもらい、正社員にチャレンジする決心ができた。

◆責任ある立場だと覚悟を決め、逃げずに努力を続けてキャリアアップ

 正社員になっても突然大きく仕事内容が変わったわけではないが、アルバイトとは違い、管理する立場である。しかしこの意識を変えることがなかなかうまくいかず、上司から指導を受けることも度々あった。
 けれども責任ある立場になったのだから逃げられないと覚悟を決めて、指導されることも全てキャリアアップにつなげていこうと考えることができるようになり、少しずつ前に進んでこられたように思う。苦しい時期を乗り越えて、自分自身にとってとても良い経験になった。
 現在は店長を目指し、1店舗を自分が運営することを思い描きながら日々勤務している。

D氏

年代 20代 性別 男性
勤続年数 4年7か月
キャリアアップの過程 アルバイトを経て入社から3年後に正社員に転換。上司に影響を受け、会社説明会で入社を決意。仕事でのキャリアアップはもちろんだが、仕事を通して人としても成長していきたい。

◆アルバイト時に上司の正社員により仕事への興味を引き出され、会社説明会で入社を決意

 2011年にアルバイトとして入社。当時の上司がとてもうまく指導してくれて、仕事への興味を引き出してくれた。良い環境で働く中で仕事の楽しみを覚えることができた。
 そのような中、会社が契約社員・アルバイト向けに行っている説明会に参加してみたところ、企業の概要や理念を改めてきちんと聞いて、新鮮な思いがあった。数年間アルバイトとして働いてきたが、これまで自分が勤務する店舗のことしか知らなかったのだと実感した。これからもこの会社で働き、もっと幅広く業務に携わってみたいと思い正社員になることを決意した。

◆仕事のキャリアアップだけでなく、人間性もキャリアアップしていきたい

 正社員になってからは以前より裁量を持たせてもらい、その分社員としての自覚を持つようになった。また、社会人の仲間入りをしたという達成感を感じることができた。
 今後は、更に経験を積んでキャリアアップを目指していきたいが、それに伴い仕事を通じて人間性もキャリアアップしていきたいと考えている。