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事例65 株式会社ヨークベニマル

事例 65

株式会社ヨークベニマル
約30年前から、勤務地限定社員の制度を採用し、社員が勤務地を選択することを可能としている。


会社設立年 1947年6月
本社所在地 福島県郡山市朝日2丁目18番2号
業種 小売業事業
正社員数 2,697名(男性2378名、女性319名)
(2018年2月末現在)
非正規雇用労働者数 パート社員:11,903名(男性1,473名、女性10,430名)
(2018年2月末現在)
資本金 99億2千7百万円
売上高 4,290億6千4百万円
(2018年2月末現在)
取組概要 <背景>
・事業地域の拡大に伴い、社員の転居を伴う異動が必要となった。同時に異動について、社員の意見を尊重し、自分で勤務地域を選択できる社員群制度を導入した。
<内容>
・勤務地が限定される「エリア社員」、「エキスパート社員」を制度化した。
<効果・結果>
・低水準の離職率の維持
・地元志向が強い社員や新入社員のニーズへの対応

PDFデータ

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 株式会社ヨークベニマルは、福島県を中心にスーパーマーケットを展開する小売企業である。
 1947年6月に株式会社紅丸商店として設立し、1948年9月福島県郡山市にて「ベニマル商店」1号店を開店し、福島県下で事業を展開してきた。1972年11月には福島県外進出第一号店として山形県米沢市に米沢店を開店。翌年、1973年3月に株式会社イトーヨーカ堂と業務提携をし、同年10月に株式会社「株式会社ヨークベニマル」に商号を変更した。1989年2月には、関東第一号となる店舗を栃木県に開店し、関東圏に進出する。現在、同社は株式会社セブン&アイ・ホールディングス傘下の一員として、東北地方と関東地方で220店舗(2018年2月末)を運営している。

1.取組の背景

◆転勤の必要性と社員の意思の尊重

 1989年に出店地域を栃木県に広げるにあたり、県外異動に伴う社員の転居転勤の必要性が浮上した。一方で、地元に根差した企業であることから、社員やその家族の多くは地元志向を持っている場合が多いこと、同社としても、単身赴任による異動は同社社員の家族の在り方として全員に受け入れられるものとは言えないとの考えのもと、社員の家庭環境にも配慮した人員配置の方法を探ることとなった。会社都合で異動を命じるだけではなく、社員の意思を尊重するべく、社員が勤務地を選べるような社員制度を導入した。


2.取組の内容

◆勤務地を限定した「エリア社員群」「エキスパート社員群」

 本人の希望に応じて、勤務地が限定される「エリア社員」群、「エキスパート社員」群を制度化した。現在、制度化されている社員群については表1のとおり。現在の編成は、いわゆる無限定の正社員総合職に相当する「ナショナル社員」、地域限定正社員に相当する「エリア社員」、転居を伴わない準正社員「エキスパート社員」のほか、直接雇用のパートタイマーとなる「パートナー社員」、「ヘルパー社員」からなる。

表1 制度化されている社員群制度



 月給制である「ナショナル社員」群、「エリア社員」群、「エキスパート社員」群は「異動範囲」と「所定時間」によって基本給に差はあるが、福利厚生、昇進や職務内容については、社員群に基づく差はない。(※所定時間の長短による評価の差はない)
 社員群間の処遇は、賞与、退職金等において、地域限定性の有無によって、差を設けている。また、評価制度においては5つの社員群においていずれも年に3回(4月、夏季賞与前、冬季賞与前)行われる。各社員群の待遇等については表2で示す。

表2 各社員群の待遇



◆社員群間の変更

 社員の希望と適性に応じ、社員群間の移動を可能としている。
 「ナショナル社員」群⇒「エリア社員」群⇒「エキスパート社員」群⇒「パートナー社員」群⇒「ヘルパー社員」群というように、地域限定性を強める方向での社員群変更の場合は、本人の希望により随時変更を可能としている。
 一方、異動範囲を広げる方向で社員群を変更したい場合は、年2回実施される転換試験を受けることになる。試験は、筆記試験と面接による(部門によっては一部実技試験もある)。「エキスパート社員」群から「ナショナル社員」群「エリア社員」群へは年間40人が転換試験をうけ、社員群を変更。パートタイマーも年間100人が推薦を受けて「エキスパート社員」群へ変更している。

◆3年間は自宅から通勤できる暫定制度

 介護や育児など急なライフステージの変化に対応できるように、3年間は自宅から通勤を可能とする暫定制度がある。本来転居が伴う異動が生じる「ナショナル社員」群や「エリア社員」群であっても、社員群の変更を行わずに暫定的に3年間は自宅から通勤可能な範囲内での異動とする制度である。現在、約50名の社員が利用している。

3.その他の取組

◆モチベーションアップのための取り組み

 社員の意欲を維持、向上させるため、社員群を問わず表彰制度や業務改善活動の発表会も実施している。業務改善活動の発表会の優秀者には海外研修の受講などの機会を与えている。

◆業務の効率化・営業時間の適正化

 業務効率化を通じて、残業の削減とワークライフバランスの改善を目指してきた。この他、店舗立地や時間帯別の客数変動などを勘案し、一部の店舗では閉店時間の繰り上げを行うことで営業時間の適正化を図っている。

4.効果と課題、今後の運用方針

◆低い離職率の維持と人材確保

 同社は社員の希望やライフステージに合わせた勤務を可能にすべく、地域限定社員を約30年前から取り組みを続けてきた。その結果、離職率は約3%と低い水準を保っている。また、一度退職し、他社で勤務した社員が同社に復帰する場合も多くあり、これまでの取り組みが人材の確保に有効に働いている。また、地元に根差した企業であることから新入社員も地元志向が強く、同社の社員群制度はこの志向に応える形で採用活動の利点となっている。
 今後は育児・介護ニーズや、生まれ育った地域でさらに上の役職を目指したい主婦層のニーズ、年々、地元志向が強くなってきている学生のニーズに応え、より良い人材を獲得するために現行の社員群制度のさらなる転換を目指していく。

5.活躍する従業員の声

荒井店
副店長 古川 正浩さん

年代 50代 性別 男性
勤続年数 35年
キャリアアップの過程 1983年に「ナショナル社員」として入社。家族と一緒に暮らすため約20年前に「ナショナル社員」から「エリア社員」に変更した。複数の店舗や本部での勤務を経て現在は同社荒井店の副店長を務める。

◆家族と暮らすために「エリア社員」に変更

 当初は勤務地に制限がない「ナショナル社員」であったが、単身赴任や子どもの転校等の可能性を考慮した場合、待遇面に多少の変化があっても家族とともに地元にいることを優先させたいと考えて、約20年前に「エリア社員」に変更した。子どもがある程度成長した後は、自身の親の生活についても考慮する必要が出てくると考えている。その場合、県内に限定された「エリア社員」での異動であっても、親への支援が難しくなる可能性もある。そうした場合は、転居転勤のない「エキスパート社員」への変更も考えられる。ライフステージや家庭の都合によって勤務状況を調整できる同社の制度は、家庭での責任を果たしながら仕事を続けていきたいと考えている人にとって、非常に有用と考えている。

◆社員群に関わらず獲得できる成長の機会

 「エリア社員」も「ナショナル社員」と異動の範囲が異なること、また、異動範囲に応じた待遇差が設けられているだけで、仕事の内容や責任は変わらない。そうした意味では、日々の仕事が「楽になる」というものではなく、仕事の面での成長機会も十分に用意されている。ポストの関係から、異動範囲の広い「ナショナル社員」のほうが昇進が早いケースもみられるが、仕事内容の面で違いがあるとは感じていない。同社では総じて社員のそれぞれの事情が十分配慮されていると実感している。
 加えて、同業他社と比べ給与水準が高いことや、地元志向の強い若者への門戸を開いている「エリア社員」群での新卒採用など、働く者のニーズに応えている同社の取組や方針ついて高く評価している。

荒井店
デイリーマネジャー
石井 義明さん

年代 30代 性別 男性
勤続年数 19年
キャリアアップの過程 1999年に「ナショナル社員」として入社。子どもの学校や地域活動の都合から約10年前に「ナショナル社員」から「エリア社員」に変更した。現在は荒井店にてデイリーマネジャーを務める。

◆地域での役割を考慮して「エリア社員」に変更

 約10年前、子どもの学校で役職を務める必要性や自身が取り組んできた地域での活動などとの兼ね合いから転居を伴う異動が難しい状況にあり、一時は退職まで考えていた。その際に社員群の変更を勧められ、これに応じることで「エリア社員」へと社員群の変更を行った。
 変更当初は同時期に入社した「ナショナル社員」と比べて仕事で後れを取るのではないかといった心配もあり、実際に同期が昇進した際など、複雑な気持ちになることもあった。ただ、プライベートを充実させることができる社員群の制度はすばらしいと考えている。実際に「エリア社員」に変更したことで、プライベートが充実し、多くの経験を積むことができていると感じており、そうした経験を糧に、さらに会社にも貢献できることを実感している。

◆自身が生活と仕事に何を求めるかを考えるきっかけに

 賞与や退職金等の待遇において一部「ナショナル社員」との差があることについても、社員がそれぞれの価値観によってプライベートと待遇のどちらを優先させるかを選択できる制度としてとらえると、各自が何を重視して仕事に臨むのかをきちんと考えていくことが求められる仕組みでもあり、そうした機会を社員にも提供している制度であると考えている。

◆更なる同社の取組を期待

 同社の社員群制度については、社員への配慮を会社が形にしたものとして評価している。今後は、昇進の基準の明確化による納得性の向上や、更に細かい勤務エリアを設けるなど、社員のニーズに応じた方向での取組を期待している。