事例紹介

ホーム 事例紹介 事例67 オタフクソース株式会社

  • 製造業
  • 300~999人
  • 正社員への転換~正社員へ~
  • 正社員への転換~多様な正社員へ~
  • 勤務地を限定した正社員
  • 勤務時間を限定した正社員

事例67 オタフクソース株式会社

事例67

オタフクソース株式会社
モチベーションの維持と社員ニーズを両立する正社員対象の「地域限定」制度を運用。

会社設立年 2009年10月(持株会社化)
継承会社たるオタフクホールディングス株式会社の設立は1952年10月
本社所在地 広島県広島市西区商工センター7丁目4-27
業種 ソース、酢、たれ、その他調味料の開発・ 製造・販売
正社員数 551名(男性361名、女性190名)(グループ連結)(2018年10月1日現在)
非正規雇用労働者数 準社員36名(男性:3名 女性33名)
パート社員55名(男性:4名 女性51名)
アルバイト社員13名(男性:1名 女性:12名)
嘱託社員29名(男性:18名 女性:11名)
派遣社員22名(男性:7名 女性:15名)
(グループ連結)(2018年10月1日現在)
資本金 1億円
売上高 240億円(グループ連結)
(2018年9月末現在)
取組概要 <背景>
・ ライフイベントにより転居を伴う転勤の難しい、また、限られた時間内での勤務を希望する社員のニーズに応えつつ、社員の成長機会を維持することを目指した。
<内容>
・ 総合職正社員を対象とした、転居を伴う転勤なしの「地域限定」の選択を可能とした。
・ 子が小学校3年生の学年度末までの短時間勤務制度。
・ 要介護状態にある家族の介護(対象家族1人当たり通算3年間)での短時間勤務制度。
<効果・結果>
・ 社員の定着促進と満足度向上に繋がった。

PDFデータ

Get ADOBE READER

PDFファイルを見るためには、Adobe Readerというソフトが必要です。
Adobe Readerは無料で配布されていますので、左記のアイコンをクリックしてダウンロードしてください。

 オタフクソース株式会社は、「オタフクソース」のブランド名でソース、酢、たれ、その他調味料の開発・ 製造・販売を手掛ける食品製造企業である。
 1922年に創業者が広島県広島市に酒・醤油類の卸小売業「佐々木商店」を創業したことに端を発する。1945年の広島市への原子爆弾投下による事業所全焼から復興し、1952年にはお多福造酢株式会社を設立。「お好み焼用」ソースを発売したことを皮切りに、「焼そばソース」、「たこ焼ソース」等を相次いで開発、発売し、業容を拡大。1975年にはオタフクソース株式会社に社名変更、1978年に現本社所在地に本社工場を移転、現在までの生産拠点として整備。2009年には持株会社制への移行に伴い、持株会社オタフクホールディングス株式会社傘下の事業会社として設立登記。
 現在は、オタフクホールディングス株式会社の中核的事業会社として、仙台、東京、名古屋、大阪、岡山、広島、高松、福岡に「お好み焼研修センター」を設け、全国的な商品・サービス展開を図るとともに、「Otafuku Foods, Inc.」、「大多福食品(青島)有限公司」、「OTAFUKU SAUCE MALAYSIA SDN. BHD.」を傘下に海外展開も図っている。

1.取組の背景

◆活き活きと働き続けるために

 同社では従来より、いわゆる正社員については総合職のみの採用を実施してきたが、社員には家庭生活と両立しながら生き生きと活躍してほしいとの思いから各種の取組を検討、実施してきた。2005年にこうした問題意識から介護・子育て支援を主体とした「オタフクエンゼルプラン」が策定され、育児のための休業期間の上限を1歳6か月に延長、短時間勤務期間の上限を小学校就学始期まで延長(2015年に小学1年生の9月まで、2017年に小学校3年生の3月まで順次拡充)、再雇用制度の新設(2005年の制度導入時には妊娠、出産、育児、介護等による退職者を対象とし、2014年には対象事由に、配偶者転勤、不妊治療を加え、拡充を図った)を行ったほか、2009年には事業所内保育所の開設を実施した。次いで時間単位有給休暇の導入など、就業継続に向けた取組を展開してきた。
 その後も仕事と家庭の両立が可能な働き方を模索し、2010年には「全員総合職=転居を伴う転勤あり」から、転居を伴う転勤をしない働き方を選択肢に入れるため「一般職」を導入。社員の選択によって「一般職」への転換を可能とした。「一般職」は、同社に勤務するすべての職種を適用対象とし、転居を伴う転勤なしの働き方とすると同時に昇格上限を課長相当とする制約を設けた。
 しかし、「一般職」の導入は、「一般職」を選択した一部の社員のモチベーション低下をもたらす副作用を生じさせたため、2014年には同制度を廃止し、総合職であっても転居を伴う転勤のない働き方(「地域限定」)を選択可能とする方式に改めた。この制度変更によって、転居を伴う転勤の可否による昇格制限は廃止されることとなった。同社の「地域限定」は「ライフイベント・個人の事情によって、勤務地を限定できる仕組み」として運用されることとなった。
 同社における各種の取組は、その多くが社員からの要望に応える形で検討・導入されてきた。2005年の「オタフクエンゼルプラン」導入時には「自己申告制度」によるコミュニケーションを行っていたが、現在は自己申告に加えて、毎年実施される全社員を対象としたモチベーション・サーベイ(「活き活きサーベイ」)によって社員の要望が把握され、記名・無記名の二つの経路で社員の率直な声を拾う工夫をしている。がこれらの「社員の声」が人事から役員層に伝達されることで各種の取組の検討・実施が行われている。

2.取組の内容

◆転勤なしの「地域限定」制度

 2014年より正社員(総合職)を対象に転居を伴う転勤のない働き方「地域限定」を選択可能とした。
 正社員が「地域限定」を選択する際は、「自己申告制度」による申告を基に適用の判断がなされる。具体的には毎年度実施される「自己申告制度」における「希望調査」による社員からの意思表明を経て、決定がなされ、翌年度から適用されることとしている。この際、勤務地の限定は、申請時の勤務地とされるため、希望する地域に異動しての限定とはならない。
 「地域限定」を選択できる事由は表1に限定されている。


表1 「地域限定」の適用事由


 「地域限定」適用者の処遇は、「地域限定」の適用のない総合職と比較して、「基本給の控除」(「プレイヤー職」(一般職層)は5%、「マネジメント職」(管理職層)以上は10%の控除)、控除後の基本給を算定基礎とする賞与額の差(乗数は同一)のみとなる。

表2 「総合職」・「地域限定」の処遇差


 昇進・昇格、評価・能力開発に差が設けられていない背景には2010年~2013年の期間に運用された昇進・昇格上限付きの「一般職」適用者のモチベーション低下があり、「地域限定」ではこの点を是正しようとしたもの。この結果、「地域限定」の適用があるか否かにかかわらず、目標設定、評価、職務等は同一のものとなる。
 現在、「地域限定」の利用者は毎年度60名程度であり、適用中の者は正社員の約10%に相当する。「地域限定」の適用事由は育児が多い。

◆短時間勤務制度

 同社では育児短時間勤務として子が小学校3年生の3月までの適用を認めている。育児短時間勤務は上述の「地域限定」と重複適用が可能であり、子育て期にある社員の多くに利用されている。短時間勤務適用者の処遇は、賃金、賞与について時間按分となる。
 短時間勤務の所定労働時間のバリエーションは表3の通り。

表3 短時間勤務のバリエーション例(※)

※標準的な始業終業時間が8:00~17:00に設定されているエリアの場合


◆適用制度の変更

 「地域限定」は年に一回、「短時間勤務」は随時の変更が可能。さらに、個別の事由により、「地域限定」かつ「短時間勤務」の重複適用も可能。

図1 適用制度の変更


3.その他の取組

◆多様な働き方を支える取組

 同社では、「地域限定」や「短時間勤務」に加え、多様な働き方を支援する取組として、以下の施策を制度導入、実施中である。

表4 多様な働き方を支援する取組


4.効果と課題、今後の運用方針

◆定着とモチベーションアップ

 同社では社員の希望やライフステージに合わせた勤務を可能にすべく、「一般職」の導入、その後の「地域限定」制度への変更など、試行錯誤を行ってきた。
 これらの取組を経て、様々な事情をかかえていても継続就業できるという安心感を得ることができ、社員の満足度も高まっているという。会社としては、それをもって、社員一人ひとりが活躍できる職場づくりに今後も注力していく。

◆風通しの良い社風を維持し、施策を展開

 同社の取組の多くは社員のニーズをモチベーション・サーベイ等でくみ上げ、役員層がそれをタイムリーに検討、実現してきたことで成立してきた。こうした「風通しの良い社風」を今後も維持し、社員ニーズと社業を両立できる仕組みづくりを続けていく。

5.活躍する従業員の声

人事部
チーフスタッフ 吉廣 景世さん

年代 30代 性別 女性
勤続年数 11年
キャリアアップの過程 総合職として入社。お好み焼課に勤務し、育休から復帰後にホールディングス経営企画部に異動、現在は人事部所属。「地域限定」を選択し、現在はチーフとして勤務中。

◆ライフイベントとキャリア継続の両立に向けて

 吉廣さんは、もともとは関東地方で子ども時代、学生時代を過ごし、就職にあたって両親の出身地である広島の会社を選択した。社員を大切にする会社ということで両親の勧めもあった。
 総合職として同社に就職、お好み焼課に配属され、お好み焼きの普及、お好み焼き体験教室、お好み焼き店様の開店指導等に従事してきた。その後出産、育児休業を取得、復帰時に短時間勤務を選択するとともに、復帰の翌会計年度から「地域限定」を選択し、現在に至っている。
 同社の「短時間勤務」、「地域限定」はいずれも総合職をベースに一定の制約を設けるもので、業務内容は限定の無い他の総合職と変わるところはない。吉廣さんは子育てと仕事の両立を実現しつつ、業務を通じた成長機会も得ることができている。業務内容や昇進限度に差が設けられていないことで、キャリア上の「足枷」を感じずに済む制度であると感じており、今後のキャリア形成を見越しつつ、家庭との両立が図れる仕組みであると評価している。
 地域限定に加えて、短時間勤務も選択している吉廣さんによれば、短時間勤務により勤務時間に制限があることは仕事に対する取り組み方を見直すきっかけになったといい、職業人としての成長も実感できている。現在はホールディングスの管理部門に所属している吉廣さんだが、今後はよりお客様の近くで仕事をする機会も得たいとのこと。
 人事担当者としては、現在の地域限定が現勤務地への限定を意味しており、広島出身の社員が多い同社にあって、現在広島以外で勤務する者の「広島に帰りたい」という希望を必ずしも叶えるものではない状況への対応が今後の課題と考えている。社員各自の希望と会社の事業とのバランスをどのように実現していくかは今後のテーマになりうると考えているという。