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事例69 ダイレックス株式会社

事例69

株式会社ルネサンス
従業員のニーズに応えた制度改定を続け、キャリアを形成しやすい環境整備を進める。

出典)株式会社ルネサンス提供


会社設立年 1979年10月
本社所在地 東京都墨田区両国
業種 スポーツクラブ運営
正社員数 1,282名(2018年3月31日現在)
-グローバル社員:748名
-エリア社員:279名
-ホーム社員:87名
-スペシャリスト社員:168名
非正規雇用労働者数 パートアルバイト: 2,428名(2018年3月31日現在)
資本金 22億1,038万円
売上高 約462億円(連結・2018年3月31日現在)
取組概要 <背景>
・正規・非正規の不公平感の解消
・正社員転換を促進するために、働き手のニーズにあった職務内容の設定と雇用区分別の明確な役割分担の必要性

<内容>
・正社員の雇用区分を改定し、区分ごとの役割と職務内容を明確化
・新たな正社員の区分を増やし、正社員転換のハードルを下げた

<効果・結果>
・新たな正社員区分「ホーム社員」により、正社員のままライフスタイルに合わせて働き続けられるようになり、特に女性の離職率の低下につながった
・キャリアアップの段階が緩やかになり、正社員転換が促進された

PDFデータ

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 同社は1979年、大日本インキ化学工業株式会社(現DIC株式会社)の社内ベンチャー事業から起き、事業拡大と社名変更を経て、2003年に現在の社名に変更し、現在に至っている。
 「ルネサンスに関わるすべての人たちに充実した毎日を送って欲しい。」という企業理念のもと、メインとなる会員制スポーツクラブ事業を基盤としつつ、「健康」をキーワードに様々な事業を展開している。

● 総合スポーツクラブの経営・企画・開発
 スポーツクラブ、テニススクール、スイミングスクール等の経営及び関連事業

● 新業態クラブの経営・企画・開発
 Demi Renaissance(ドゥミルネサンス)等の新たなクラブの開発・展開

● ヘルスケア事業の推進
 健康経営の推進、地域や企業での健康セミナー・運動指導の実施、健康に関する情報やコンテンツの提供、介護予防等の展開

● リハビリセンターの経営・企画・開発
 リハビリテーションに特化したデイサービスの開発・展開

● 海外事業の推進
 海外におけるスポーツクラブやスイミングスクールの経営・企画・開発、ベトナムにおける水泳の普及・発展に関する情報や商品の 提供

 健康産業の一翼を担う企業として、「日本の健康を支える仕事をしている」という誇りとやりがいをもって、多様な社会のニーズに対応すべく、積極的な事業展開を行っている。

1.取組の背景

◆以前までは、転居を伴う転勤の可能であることが正社員の条件

 元々、正社員の雇用区分として、全国転勤があるグローバル社員と、国内4区分のエリア内で転居を伴う転勤があるエリア社員の2区分を設けていた。グローバル社員、エリア社員ともに、転居を伴う転勤が可能であることが条件で、ライフイベント等の諸事情で転勤が難しくなった人に対する処置としては、「地域限定社員」という雇用区分が設けられていた。しかし、「地域限定社員」に転換した場合、転居を伴う転勤の条件が除かれる代わりに、無期雇用から有期雇用へ変更されるため、経済的な不安、心理的な不安から、地域限定社員に転換せずに、無理をおしてグローバル社員、エリア社員として働き続ける人が多かった。その結果、一部の社員は働き続けることが困難となり、結局離職してしまうという課題があった。
 このような問題を解決すべく、2016年に地域限定社員制度を廃止し、新たに、転居を伴わない正社員区分である「ホーム社員」の枠を新設した。

◆正社員転換における職務範囲拡大の課題

 以前から、アルバイトスタッフに対する正社員転換制度を設けていたが、もともと接客や指導が得意で働いている人が多いこともあり、正社員転換に伴う職務範囲の拡大に対応しきれず、困難さを感じて離職してしまうケースがあった。また、もともと接客や指導が好きという理由でアルバイトを始めた人も多く、正社員になると現場から離れた仕事(店舗運営、マネジメントなど)が増えてしまうことから、本来やりたい仕事とのギャップを感じ、離職してしまうケースもあった。
 そこで、やりたい仕事を続けつつ、ゆるやかにキャリアアップの階段を上ることができるよう、2012年に「準社員制度」を導入した。準社員(※1)とは、1年単位の契約社員であり、準社員制度とは、いわゆるアルバイトから契約社員への転換である。アルバイトスタッフの正社員転換に向けた育成を目的として開始した。接客サービスやオペレーション等の現場の仕事が中心となるが、正社員へのキャリアアップを見据えて、店舗管理などの仕事も一部担う。
 準社員制度ができたことにより、正社員へのキャリアップのステップ自体はゆるやかになり、アルバイトから準社員への転換もある程度促進されたが、当時は準社員と正社員の役割の違いが明確にされていなかったため、実態として正社員と職務内容が同じであるにも関わらず、処遇水準が正社員に比べて低く、また有期雇用のままであったことから、不満を感じて離職してしまうケースも多かった。
 人材確保が年々厳しくなる状況も踏まえ、スポーツクラブでの接客・指導サービスや運営オペレーションを担う人材確保を目的として、2017年7月に専任職(スペシャリスト社員)という新たな正社員の枠を設け、当時の準社員の全158名をこれに転換させた。

(※1) 準社員…有期雇用の契約社員(1年契約)、グレード(等級)なし、転居を伴わない転勤のみ、住宅手当なし、家族手当なし、退職金なし、賞与は2か月固定。

2.取組の内容①(雇用区分の再設定)

◆正社員の雇用区分の見直し

 現在、同社の正社員区分は、大きく「基幹職」と「専任職(スペシャリスト社員)」に分かれる。

●基幹職

 同社における従来の正社員の雇用区分を引き継いでいる。
 将来にわたりマネジメント業務を担当し、主にチーフ、支配人、本社管理職等を担う。マネジメント業務が中心ではあるが、接客サービス・運営オペレーションも担当する。


表 基幹職の雇用区分


●専任職(スペシャリスト社員)

 準社員制度が基盤となっており、将来にわたり接客サービス・運営オペレーションを担当する。
 Sコース、Dコース、Kコースの3つのコースに分かれる。

表 専任職(スペシャリスト社員)のコース区分


◆グレード(等級制度)の見直し

 準社員制度の運用時、各雇用区分の役割の不明確さが課題となり、社員の不満増長や離職につながってしまった。その反省を踏まえて、今回の雇用区分の見直しでは、基幹職と専任職の役割を明確にした。基幹職のグレードは、下図の通りである。どのグレードがどの役職フレームに該当するのかを明らかにすることで、キャリアアップの道筋を明確化した。

図 基幹職のグレード

(出典:株式会社ルネサンス提供資料より)

 対して、専任職(スペシャリスト社員)のグレードは、「F」、「J1」、「J2」の3等級が設定されている。この等級は、基幹職(「F」、「J」)と連動しており、スペシャリスト社員のキャリア形成を後押しするとともに、自身の成長を認識・実感してほしいという狙いである。

◆評価制度の見直し

 人事評価については、基幹職も専任職も同じ仕組みである。評価は「目標評価」と「行動評価」の2本立てで、賞与・昇給・昇格に反映している。行動評価は、職務によって求める定義(評価基準)を変えている。

図 評価制度

(出典:株式会社ルネサンス提供資料より)

3. 取組の内容②(正社員転換制度)

◆アルバイトから正社員への転換

 アルバイトのキャリアアップに関しては、アルバイトから専任職へまずは転換した後、専任職から基幹職への転換というステップ方式となっている。アルバイトの日頃の業務の様子や成果は、人事部ではなく営業部が把握していることから、営業部の判断で専任職への推薦が行われる(※2)。本人の希望が確認されれば、営業部長等との面談を実施し、営業部長が転換の可否を決定する。

(※2) 自薦ではなく、他薦を原則とする。

◆専任職から基幹職への転換

 2018年12月より、専任職から基幹職への転換を開始した。
 転換試験は、主に「J2」までのグレードに達しており、かつ、在級年数4年以上の人が対象となり、さらに店舗の支配人からの推薦を受け、エリアマネージャーの承認を得る必要がある。
 エリアマネージャーから承認を得た後は、筆記試験(一般常識、フィットネスクラブ・マネジメント技能検定からの抜粋)、面接(営業部、人事部、その他事業の部門長の3つの視点)を受け、総合的な結果から転換の可否が決定される。
 2018年12月の転換では、推薦者34人に対し、合格者11人という結果だった。専任職から基幹職への転換は今回が初年度であったこともあり、推薦基準にばらつきがあったようで、合格者が1/3という割合になった。2018年度現在の結果を踏まえて、次年度以降の評価基準や推薦基準の見直しを図りたいと考えている。
 基幹職へ転換後は、「J」のグレードとなり、ホーム社員として勤務する。その後、エリア社員、グローバル社員へとステップアップすることができる。

図 評価制度

(出典:株式会社ルネサンス提供資料より作図)

◆基幹職内での転換

 家庭の事情等により、グローバル社員又はエリア社員からホーム社員へ転換することも可能である。特に面接等の試験はなく、上長を経由した人事部への申請のみとなる。転換後に事由が解消した場合は、元の社員区分であるグローバル社員、エリア社員に再転換が可能である。

4.取組の効果、今後の運用方針

◆働きやすさが改善され、離職率が低下

 ホーム社員が新設されたこともあり、ここ数年間の女性の離職率を約3%下げることができた。また、男性社員のホーム社員への転換も多く、ホーム社員のうち1/3にまでのぼる。現在、詳細なニーズを分析中ではあるが、共働きの家庭が増えたことや、家族を介護している社員が多いことから、男性社員のライフ・ワーク・バランスのニーズにマッチした結果ではないかと考えている。

◆各雇用区分の人数構成を意識した正社員転換の促進

 専任職(スペシャリスト社員)の枠を新たに設けたことで、年間約100人ずつのペースで、アルバイトから専任職への転換が進んでいる。キャリアアップのハードルが下がったことで、キャリア転換がしやすくなったと、現場からの感想も寄せられている。
 人手不足が深刻化する昨今、優秀な人材の確保・定着のために正社員転換を推し進めたい一方で、円滑な事業運営のためには、ただやみくもに各社員区分の人数を増やすのではなく、基幹職と専任職との人数構成のバランスを考える必要がある。今後は、アルバイトから専任職への転換だけではなく、専任職から基幹職への転換をいかに促すかが課題である。

◆専任職の教育体系の見直し

 基幹職の場合、新入社員からキャリアが始まり、経営幹部までのキャリアアップを見据えて、OJTなど手厚い教育・研修を受けることができる。対して専任職(スペシャリスト社員)は、もともと準社員の位置づけであったことから、十分な教育体系を構築できていない。特に初期教育が基幹職と比べると手薄であり、この点を改善すべく、教育制度の見直しを行っており、来年度から運用を開始する予定である。

4.活躍する従業員の声

ルネサンス亀戸店
スイミングチーフ
小磯 あゆみ さん

年代 30代 性別 女性
勤続年数 2年7か月
キャリアアップの過程 2008年に新卒採用で正社員(現在のグローバル社員)として入社。スイミングコーチとして勤務した後、2014年12月に退職。2016年7月にホーム社員として同社に再入社した。

◆ホーム社員制度をきっかけに、同社に再入社

 2008年に新卒採用で正社員(現在のグローバル社員)として入社した。最初は、ルネサンス淵野辺に3年3ヶ月勤務し、その後奈良県に転勤し、ルネサンス登美ヶ丘で1年半勤務した。さらにその後、東京に転勤し、ルネサンス富士見台で1年半勤務した。グローバル社員のため、1年半~数年のサイクルで転勤が発生したことや、スイミングコーチという仕事の体力的な負担から、2014年12月に一度退職した。退職後は、医療事務の仕事をしていたが、ホーム社員が新設されたタイミングで、同社の元上司からホーム社員もしくはアルバイトの形で同社に戻らないかと声をかけられた。医療事務の仕事を経験したことで、スイミングコーチの魅力を再発見していたこともあり、元上司からの声かけをきっかけに、同社で再度働くことを決めた。
 同社に復帰する際は、面接を受け、ホーム社員として採用された。採用後は、スイミングコーチとして、ルネサンス亀戸へ配属された。

◆復帰後はスイミングコーチ以外の業務にも挑戦

 復帰後しばらくは、役職なしのスイミングコーチとして勤務した。転勤の不安が解消されたことで、心理的な負担が軽減され、また、心配していた体力面も特に問題はなかったという。スイミングコーチとしての業務だけでなく、キャリアアップを見据えて運営やマネジメントに関する業務にも携わり、例えば2017年に、スイミングの親子ベビークラスのサービスを見直すプロジェクトに参画した。ルネサンス亀戸の親子ベビークラスは1レッスンに約60組と利用者が非常に多く、特に日曜日に参加者が集中することから、参加者一人ひとりに対する指導・サービスが十分に行き渡っていないのでは、という課題意識があった。そこで、年齢によるグループ分けをモデル的に試行したところ、子どもや保護者とのコミュニケーションを増やすことができ、より丁寧な指導・サービスを提供できるようになった。この結果を受けて、年齢別レッスンの形が全社統一でマニュアル化され、2018年4月より開始された。
 このような業務経験を通じて、スイミングコーチとしてのやりがいのみならず、サービスの品質向上など、より上位の業務に携わることの面白さややりがいを感じるようになった。

◆チーフとして売り上げやサービス品質の向上に貢献したい

 2018年4月にはスイミングチーフに任命され、スイミングコーチという仕事に加え、現場のマネジメントも行う立場となった。部下である社員は4名、アルバイトスタッフは18名おり、マネジメントを行いながら、アルバイトスタッフと業務バランスを調整して、業務を遂行している。チーフとして業務バランスの調整ができるようになったことで、自分が抱える仕事量が改善され、以前よりも業務の負荷が軽減された。
 今後は、チーフとして、売上管理やサービス品質の向上に取り組み、ルネサンス亀戸の運営に貢献したい、チーフとしてどこまで成果が出せるか挑戦したい、と考えている。
 柔軟な制度改定を行ってきた成果として、現在の同社は非常に働きやすい環境であると小磯さんは感じている。後輩社員に対し、自身の働き方を1つの参考モデルとして、長い目をもって様々なことに挑戦し、キャリアを形成してほしいと考えている。