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事例72 株式会社スープストックトーキョー

事例72

株式会社スープストックトーキョー
社員からの意見を柔軟に吸い上げ、制度改革を推進し、働き続けやすい職場環境を整備

(株式会社スープストックトーキョーより提供)


会社設立年 2016年2月1日
本社所在地 東京都目黒区中目黒 1-10-23シティホームズ中目黒 203
業種 飲食業
正社員数 184名(男性49名、女性135名) (2018年3月現在)
非正規雇用労働者数 パートナー(アルバイト)1,529名 (2018年3月現在)
資本金 1,000万円 (2018年3月現在)
売上高 100億7,000万円(グループ総計/2018年3月期)
取組概要 <背景>
・女性が多い同社では、ライフイベントを理由に30歳をラインとした離職が多かった。
<内容>
・個々のライフイベントやモチベーションに合わせて働き方の選択肢(時短勤務制度/生活価値拡充休暇制度/ピボットワーク制度)などを増やしている。
・育児・介護に限定せず、自己研鑽の理由で、時短勤務制度を利用できるよう変更し、全正社員が制度を利用できるようにした。
<効果・結果>
・ライフイベントを理由とした離職の防止と人材定着、こどもの有無にかかわらず社員のキャリア選択の拡充につながった。

PDFデータ

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 同社は1997年、(株)スマイルズ代表取締役会長である遠山正道氏が、日本ケンタッキー・フライド・チキン(株)在籍中に「スープのある一日」と題し、物語形式の企画書「スープ専門店『Soup Stock Tokyo』」を起案したのがはじまりである。1999年には、お台場ヴィーナスフォートにSoup Stock Tokyo第1号店のヴィーナスフォート店(東京都江東区)をオープンし、2000年には、三菱商事(株)コーポレートベンチャー0号として、(株)スマイルズを設立した。2016年2月、 (株)スマイルズよりSoup Stock Tokyo事業を会社分割し、(株)スープストックトーキョーが設立された。2018年3月現在、Soup Stock Tokyo 58店舗、家で食べるスープストックトーキョー9店舗、also Soup Stock Tokyo1店舗、おだし東京1店舗にまで規模が拡大した。
 「世の中の体温をあげる」という会社の経営理念の元、「誰かを温めたいと思える、温かい気持ちを持ち、それを行動により表現できる」人材こそがブランドの価値であり、強さであるとして、2016年の分社以降、働きやすい環境づくり、働きがい創出等の取組を進めている。

1.取組の背景

◆分社を機に契約社員制度を廃止、全員正社員化へ

 同社では、2016年の分社を機に契約社員の雇用形態を廃止し、パートナー(アルバイトを指す)もしくは正社員での採用のみとしている。同社では、人材確保においては働く側と企業双方の合意が重要であり、企業も働く側から選ばれる存在でなければならないと考えている。分社以前は、契約社員としての採用も行っていたが、契約社員の契約更新に際し、働く側よりも企業側の立場が強い側面があることに違和感があった。
 また、予め正社員で採用されていた方が、社員が新たな目標を見つけ、転職を検討した際に「契約社員」でなく「正社員」として働いている方がキャリア選択の広がりがあることを加味し、分社を機に契約社員の雇用形態を廃止した。

2.取組の内容①(正社員への登用)

◆パートナーからの正社員登用

 パートナーには6段階のグレードがあり、どのグレードであっても正社員になるための「内部登用試験」に応募することができる。正社員登用に関する内部向け説明会を年に数度開催しており、正社員に登用された場合、待遇、給与、職務内容等がどのように変わるかについて説明を行い、参加者からの相談に対応している。希望があれば1人からでも開催しており、1回あたり平均15人が参加している。
 実際に正社員登用を希望する際は、以下の3つの手順を踏む必要がある。

 ①店長とエリアマネージャーとの面談
 ②店長とエリアマネージャーからの推薦
 ③内部登用試験

 店長とエリアマネージャーとの面談では、普段の店舗での働きぶりから、正社員として職責を全うするだけのポテンシャルがあるかが確認される。ポテンシャルがあると判断された場合、店長およびエリアマネージャーからの推薦を受けることができ、人材開発部が行う内部登用試験に進むことができる。内部登用試験は複数種類が用意されており、表現力選考と呼ばれる好きなものについて自由にプレゼンを行うというものや、店舗で働く様子を実際に見に来てもらうなどの試験が用意されている。用意された試験の中から1つを自由に選択し、受験することができる。
 1回あたりの合格率は、7割程度である。内部登用試験を受ける人は同社のブランドに対する思いが強く、不合格となった場合でも、再チャレンジする人が多い。また、最終面接で受験者に対するフィードバックと次に向けた目標設定を行っているため、不合格となった場合でも、目標が達成できた頃に再び正社員登用に挑戦する人も多くいる。
 また、正社員登用試験は何度でも受けることが可能である。受験者のブランドへの思いを汲むという理由もあるが、その他に、家庭の事情により正社員からパートナーへ転換した従業員が、ライフイベントに合わせて再び正社員に戻れるようにという配慮もあり、何度でも受験可能にしている。

3.取組の内容②(時短勤務制度(※1)

(※1)同社では、短時間正社員制度を「時短勤務制度」と呼称している。

◆本人の希望に合わせた職務内容と期限設定

 同社では、時短勤務制度の利用期限がない。少なくとも年に1度、人材開発部と面談を行い、時短勤務制度の利用を継続するか否かを判断する場は設けているが、基本的には個々の事情に合わせて利用期間を設定することができる。
 時短正社員の場合、勤務時間は125時間/月以上となり、時短勤務可能店舗でのみ勤務が可能となる。業務内容、職責、待遇等はフルタイム勤務者と同じである。ただし、フルタイム勤務者と同じ職責はプレッシャーになるとして、本人から希望があれば、職責、職務内容をグレードダウンすることも可能である。

◆時短勤務制度は全社員利用可能

 当初、同社における時短勤務制度は「育児」と「介護」に限って利用可能であった。しかし、制度利用者から、利用者が限定されていることで、周囲に対し心苦しい思いをしながら働いているという意見が寄せられていた。会社としても、個々人の働き方・生き方の本質的な向上に向けた取組推進を検討していたことから、2016年度より育児・介護の他、自己研鑽を目的とした場合でも時短勤務制度の利用が可能となった。
 自己研鑽による時短勤務制度を利用したい場合、まずはエリアマネージャーに相談を行い、その後、人材開発部との面談が行われる。自己研鑽の目的、目標、仕事とどのように両立させるかについて確認を行い、目的やプランに問題なければ、原則的に認められている。
 現在、育児を理由とした利用が中心ではあるが、昨年度は、全体の利用者のうち1割が、起業や資格取得、専門学校への通学等の自己研鑽を理由に利用した。

4.その他の取組

 同社では、「はたらくことと、生きることはつながっている」という考えの元、組織、組織に属する個々人が主体となり、「働きがい」、「生きがい」を模索し、本質的に人生を豊かにするような働き方を目指している。その取組の一環として、2018年4月1日より「働き方“開拓”」をコンセプトに、以下2つの新制度を導入した。

◆生活価値拡充休暇

 給与はそのままに、年次有給休暇とは別に、生活価値拡充休暇(※2)として12日が付与され、合計で年間120日の休日休暇が与えられることとなった。これは本社社員に限らず、店舗社員に対しても同様である。単なる労働時間の抑制、休日確保を目的としているのではなく、生活価値拡充休暇では、自己研鑽や生きがい模索等、人生を豊かにするための時間に充ててもらうことを目的としており、利用理由の申請や上長の承諾は不要である。

(※2)有給休暇。

◆ピボットワーク制度

 生活価値拡充休暇制度に合わせて、ピボットワーク制度を立ち上げ、社外複業、グループ内複業を解禁した。休日休暇が増えたことによって得た余裕を、本業を磨くための学習時間として使いたい人や、新卒採用で入社したものの、自分にどのようなスキルがあるのかがわからないため、スキル開発をしたいという人が、主に利用している。グループ内複業の場合、スマイルグループの各ブランド(※3)での勤務が可能である。現在、社外複業を行っている人は3名、グループ内複業を行っている人が5名いる。グループ内複業の場合は、イベント等の業務が多く、月1~数回程度の頻度でグループ内複業に従事している。
 また、正社員の中には、新卒採用で同社に入社したために「他社も知りたい」というニーズを持っている人もおり、そのような人が辞めずにニーズを満たせる制度としても活用されている。

(※3)PASS THE BATON(セレクトリサイクルショップ)、giraffe(ネクタイ専門点ブランド)、100本のスプーン(ファミリーレストラン)、PAVILION(LOVEとARTがテーマのレストラン)、刷毛じょうゆ 海苔弁山登り(海苔弁製造・販売)のブランドがある。

5.効果と課題、今後の運用方針

◆離職抑制、人材定着に効果

 女性が多い同社では、ライフイベントを理由に30歳前後での離職が多かったが、上記の取組によってゆるやかに改善されている。しかし、現在平均年齢が31歳であり、40代、50代、60代のモデルが少ない、あるいは、いない状況である。長く働きたいと考える社員が働き続けるための環境整備と制度整備を行うためには、引き続き、経過観測と社員からの意見の吸い上げを行い、柔軟に対応していきたいと考えている。

6.活躍する従業員の声

ストアマネージャー 兼
アシスタントエリアマネージャー
武 慶子 さん

年代 30代 性別 女性
勤続年数 12年
キャリアアップの過程 2006年度に新卒で入社。 エチカ表参道店でアシスタントストアマネージャーののち、京王モールアネックス店(※現在は閉店)でストアマネージャーに就任。その後、アトレ新浦安店立ち上げなど複数店舗を経験、そしてスーパーバイザーを1年半務め、産休に入る。 復帰後は、西武新宿店でアシスタントマネージャーを務め、半年後、第二子出産のため再び産休に入る。 復帰後は店舗勤務だけでなく人材リーダーを兼務。2019年より、ママ店長としては初めてのアシスタントエリアマネージャーに就任。

◆時短勤務制度の利用範囲拡充に貢献

 時短勤務制度が自己研鑽を理由に利用できるようになった背景には、武さんら社員と人材開発部との間の定期的な意見交換が影響している。武さんは、育児を理由に時短勤務制度を利用した際、周囲に心苦しさを覚えながら働かねばならないことに問題意識を持っており、人材開発部に相談したところ、制度改正につながる1つの重要な意見となった。「制度はただ用意してもらうのを待つ、利用するだけではなく、利用者から積極的に意見を伝えることで、さらに使いやすく、良くすることができる」と武さんは言う。
 人材開発部では、社員との面談を定期的に行っており、社員との信頼関係の構築を大切にしている。人材開発部や経営層に対し、社員が自分の意見を伝えやすい環境づくりが行われており、常に様々な社員から会社の制度や課題に対して意見が寄せられているという。常に社員の意見を吸い上げ、把握することで、制度改革や新たな取組検討等、柔軟に取り組んでいる。

◆自らモデルとなり、将来を開拓する

 武さんは、現在、ストアマネージャーとアシスタントエリアマネージャーを兼務しながら、人材開発部の一員として、店長育成やエリア巡回、パートナーへの研修等に尽力されている。店舗スタッフは体力面から主に20~30代が多く働いているが、武さんは年齢に関係なく、できることに取り組んでいきたいと考えている。現場で働く上で体力的に厳しくなった場合には、新たなポジションを作り、経験値が高い人材として別の形で現場を支えるなど、自らがモデルとなり、仕事や働き方を積極的に開拓していきたいと考えている。また、自らの「働き方“開拓”(※4)」を通じて、後輩に対して、意見を積極的に伝えることで働き方を変えられる、様々なことに挑戦できることを伝えたいと考えている。

(※4)経営が旗を振るだけの"改革"ではなく、組織及び個々人が「主体」となって、働き方・ 生き方を模索し、"開拓"していく取り組みを指す。