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事例74 株式会社安心ダイヤル

事例74

株式会社安心ダイヤル
転居を伴う異動がなく深夜勤務の有無を選択できる「地域限定社員」制度を新たに導入し、正社員転換のハードルを見直し、更なる人材定着を図る。

会社設立年 1989年
本社所在地 埼玉県所沢市日吉町10番21号 リ・クリエ所沢B館
業種 総合アシスタンス・コールセンター事業
正社員数 310名(男性123名、女性187名) (2018年11月現在)
非正規雇用労働者数 ・パート社員459名(男性93名、女性366名)
・派遣社員264名(男性71名、女性193名)
・出向者・シニア36名(男性27名、女性9名) (2018年11月現在)
資本金 4億9千万円 (2018年11月現在)
売上高 215億円 (2017年3月現在)
取組概要 <背景>
・意欲のあるパート社員に長く安定して活躍してもらうため、正社員転換制度を設けているが、期待したほどは応募者がいない。
・パート社員の多くは、家族と同居する近隣の主婦層である。安定して就業したいという希望はあるものの、正社員に転換された場合、転居を伴う異動の可能性、夜勤シフトの可能性があり、挑戦したい気持ちがあっても、応募に至らないことが課題であった。
<内容>
・転居を伴う異動の対象とならず、夜勤シフトの有無を選択できる「地域限定社員」制度を導入し、正社員転換へのハードルを下げた。
・さらに、家庭と仕事との両立を支援するために、社内託児所の設置や制度充実にも取り組んできた。
<効果・結果>
・2018年度から「地域限定社員」の社内登用と外部募集を開始した。社内登用はこれまで22名(2018年12月現在)、パート社員のモチベーション向上と優秀な人材の新規採用につながっている。

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 1989年の創業以来、同社はアシスタンス・コールセンター業界の先駆者として「ロードアシスタンス」、「ハウスサポート」、「コンシェルジュ」の3つの事業を手掛けている。2011年には大手保険グループである「MS&ADインシュアランスグループ」の関連事業会社となり、安定した経営基盤を獲得した。グループ企業である三井住友海上火災保険株式会社、あいおいニッセイ同和損害保険株式会社をはじめ、クレジットカード会社、自動車メーカーなど国内大手企業の顧客に対し、365日・24時間体制で対応している。
 急速な少子高齢化が進む中、コールセンター業界全体で人材の確保・定着が課題となっており、同社もその点で例外ではない。そこで、従業員が長期に安定して就業できる環境作りに力を入れ、2017年9月には、埼玉県が定める「多様な働き方実践企業」として、最上位ランクである「プラチナ」の認定を受け、さらに同年11月には、男性の育児休暇の取得等、男性の働き方を見直す取組も評価され、「プラチナプラス」の認定を受けた。
 また、2018年6月には「子育てサポート企業」として、次世代育成支援対策推進法に基づく厚生労働大臣の認定(くるみん)も受けた。

1.取組の背景

◆正社員転換を妨げていた「転勤」の壁

 365日・24時間体制での対応が求められるコールセンター事業の性質上、業界全体で人材不足と高い離職率が課題となっている。少子高齢化の加速等、社会構造の変革を見据え、抜本的に社員の働き方を見直し、長期に安定した就業環境の整備が必要とされていた。
 同社では、正社員の定着率は高いものの、パート社員、派遣社員の定着率は低い。直近2年(2017年度、2016年度)で、正社員は24名を採用し、うち7名が退職、パート社員の場合、281名を採用し、うち164名が退職した。人材の定着率を上げるため、正社員への転換を促進し、就業環境を整え、会社に対して高いロイヤルティをもってもらうことが課題であった。
 同社では4月の定期異動の際、組織活性化と人材交流を目的に、沖縄センターへ毎年複数名の正社員が転勤している。この転居を伴う異動があることから、正社員への転換がなかなか進まない状況であった。赴任期間は、これまで概ね3年~5年程度だが、本人の希望や業務遂行状況により決定し、明確に基準が定められてはいない。同社のパート社員には、本社所在地である埼玉県所沢市や近隣の市町村に在住の子育て中の主婦層が多い。正社員として長期安定就業してもらいたいと考える会社側の考えと、正社員に転換したいが、子どもの学校や配偶者の勤務地等の事情で地元を離れることができないパート社員との間でミスマッチが起こっていた。
 このような状況を鑑み、正社員転換のハードルを下げ、2018年4月から勤務地を限定した新しい雇用形態を設けた。

2.取組の内容①(正社員への転換)

◆勤務地と職務範囲を限定した「地域限定社員」

 2018年4月から開始された新しい制度である「地域限定社員」は、能力や意欲の高いパート社員が、ワーク・ライフ・バランスを維持しながらキャリアアップすることができる新しい働き方である。全国転勤のある正社員との違いは、「表 1 比較表」の通りである。


表 1 比較表


 地域限定社員の特徴は大きく2つある。1つ目は転居を伴う異動がないこと、2つ目は現在の職務内容のプロフェッショナル性の追究することが可能なことである。以前までは、正社員に転換すると職務範囲にマネジメント業務が含まれ、職責範囲の拡大があることから、応募を躊躇するパート社員が見受けられた。管理職への昇格は希望せず、オペレーターとしてスキルアップを突き詰めたいというニーズもあることから、地域限定社員制度では、限定された職務を深く追求し、その分野における専門性を高めることが可能なキャリアパスの設計を行った。パート社員の時は、単なる1オペレーターとして自身の業務を遂行するだけであるが、地域限定社員オペレーターになることで、OJT担当として後進の育成・指導に携わることもでき、やりがいを感じるとともに仕事を通じて自身も成長していくことができる。
 全国転勤のある正社員の場合、夜勤(21時~翌日9時)のシフトに入ることもあるが(※1)、地域限定社員の場合は、免除を希望することもできる。また、この先子育てがひと段落したり、家族構成が変化して勤務ができる状況になれば、夜勤シフト希望を申請することも可能だ。
 第一線で活躍している子育て世代の社員にとっては、ワーク・ライフ・バランスを崩すことなく長期に安定した就業ができ、子育てが一段落し時間的余裕が生まれた世代の社員にとっては、夜勤シフトによって安定した収入(夜勤手当支給)が確保でき、個人のライフプランに合わせ自分で働き方を選ぶことができる。
 2018年12月時点では、内部登用・外部採用合わせて22名が、地域限定社員になった。

(※1)ただし、育児・介護休業法に基づき、深夜業の制限の請求可能な旨、就業規則に定めている。

◆毎年10月に正社員総合職への転換試験を実施

 同社では、毎年10月に正社員転換試験を実施している。試験に合格することで、パート社員から地域限定社員、総合職正社員への転換、または、地域限定社員から総合職の正社員へ転換することができる(※2)
 正社員転換試験のうち総合職正社員への転換の応募資格は、3年以上の勤続年数と転居を伴う部門異動が可能なこと(※3)であるが、地域限定社員への転換の場合は、1年以上の勤続年数であれば、登用試験に応募することができる。どちらも1次試験として筆記試験を実施し、2次試験では役員面接を行う。1次試験のスコアが合格基準に達しない場合は、2次試験に進むことができない。総合職正社員への転換試験と地域限定社員への転換試験は難易度が異なる。役員面接が行われる前には、所属部長が候補者に面接指導を行い、経営理念の確認や想定される質問の答えに助言などを行っており、年々合格率が上がっている。不合格となってしまった場合でも、転換試験の再受験が可能である。
 2018年10月、総合職正社員への転換試験に5名が合格した。正社員転換制度は、現在の業務領域を広げたい社員や、管理職を目指す社員のモチベーションになっている。

(※2)現在、総合職正社員から地域限定社員への転換は、制度に盛り込まれていない。
(※3)パート社員からの転換、地域限定社員からの転換であっても、総合職正社員への応募資格は同じである。

3.その他の取組

◆子育て世代にやさしい環境づくり

 代表取締役社長である平氏は、「地域社会の信頼と満足を創造し、お客さま、従業員、クライアントの皆さまから選ばれる企業でありつづけたい」という思いから、さまざまな活動に力を入れており、そのひとつとして、社内に託児所を設置・運営している。
 本社所在地である所沢市は、待機児童数が比較的少ない地域であるが、近隣の東村山市や清瀬市など都心に少し進むとまだまだ待機児童数は多く、働きたくても働くことができない子育て世代が多いため、意欲ある子育て世代が働きやすい職場環境づくりを積極的に行っている(※4)
 社内託児所は、0歳から小学2年生までの子どもを預けることが可能で、子どもの突発的な発熱などの際、すぐに託児所から親の所属部署へ連絡が入り、様子を見に行くことができる。会社から外に出ずに、すぐに駆けつけられることが1番のメリットだ。利用料は1時間の利用につき200円で、子どもの人数や預ける回数に関わらず、社員の負担額上限額は月額2万円、残りは会社が負担している。2018年11月現在でおよそ50人の社員が登録している。朝ベビーカーを押して出勤する男性社員もおり、バリアフリーの廊下をベビーカーが通る光景が日常だ。
 同社は、年末・年始・お盆・GWなどが繁忙期となるが、事前登録さえ完了すればいつでも託児所を利用することができ、子どもの預け先がない、急な出勤の時等、突発的な事態であっても利用することができる。このように子育て世代が働きやすい環境づくりに積極的に取組を続けてきた結果、同社では出産や育児による退職者はおらず、育児休業後の復職率は100%となっている。

(※4)託児所の利用は、直接雇用の社員に限定する。

◆その他の人材確保対策①:キャリアリターン制度

 同社はお客さまの車の故障や困りごとに対し、適切なサービスを迅速に提供するロードサービスを主力とした総合アシスタンス・コールセンターであるため、何よりも品質を重視しており、社員の研修教育に一定以上の時間をかけている。入社後、一通りのサービスがお客さまに提供できるようになるまで半年から1年近くかかることもあり、お客さまから「あなたに対応してもらって助かった、ありがとう」といってもらえることが、社員の何よりも大きなモチベーションとなっている。そのため、社員たちは様々な研修をこなし、膨大な車の知識とサービス内容を覚え、安心・満足・感動していただけるサービススキルを日々磨いている。
 そのような中、介護や配偶者の転勤等の理由で、仕事にやりがいを感じながらも退職に至る社員が多いことから、2018年にキャリアリターン制度を導入した。やむを得ない理由で退職した社員(※5)に対し、近況伺いと現在募集している職務ポジションの案内を行っており、募集業務に興味がある場合は、メールや電話で人事部に問い合わせてもらい、面接の日程を調整する。介護が一段落した、配偶者の転勤先から地元に戻ってきた等、退職時と家族事情や家庭環境が変化している場合も多く、再び同社に就職してもらい、努力して覚えた知識やスキルを再び発揮してもらうことが狙いだ。キャリアリターン制度を利用して復帰した社員は、2018年11月時点で2名である。
 勤務地や勤務時間の調整だけでは仕事と家庭の両立が難しい人にとって、このキャリアリターン制度があることで、ライフプランや個人の事情に合った働き方ができる。会社としても、多様な働き方を支援することができる他、優秀な人材の確保と定着に有効であり、会社にとっても社員にとってもメリットが高く、今後も積極的に続けていく。

(※5)在籍中の評価、所属部長の意見、社内推薦などの情報を総合的に判断の上、人事部で人選を行う。

4.効果と課題、今後の運用方針

◆正社員比率の向上を目指す

 2018年4月に新たに地域限定社員の区分を設けてから、同年12月までに22人が地域限定社員となった。「長く安定した就業が可能な正社員の比率を上げ、人材の定着を目指す」という当初の目的に照らし合わせると、順調なスタートを切れたと感じている。
 地域限定社員は、正社員総合職登用と同時に募集をしている。地域限定職、総合職の違いを事前に知り、理解した上で、自身のワーク・ライフ・バランスに合った働き方を選べることは、パート社員にとって大きなメリットと考えている。今後、この22名のプロフェッショナル性を追究する働き方を見て、他のパート社員が刺激を受け、地域限定社員への転換を前向きに検討してくれることを期待している。
 地域限定社員制度は、住み慣れた場所で家族と一緒に暮らしながら仕事を続けることができ、将来設計が立てやすいというメリットがある。一方業務の側面では、仕事がルーティン化しやすく、長期にわたって本人のモチベーションを維持することができるかどうか、今後の課題と考えている。
 今後は「正社員比率30%~50%」を1つの指標にし、社会情勢や雇用環境の変化に順応しながら、弾力性のある人事制度をひとつひとつ丁寧に設計していく予定である。働きやすい会社に整えていくことで、社員の就業時間中の仕事の取り組み方も変わり、業務のクオリティも向上していく、という好循環が生まれていくことを、同社人事部として大きな期待を持っている。

5.活躍する従業員の声

第3オペレーション部
片山 輝晃 さん

年代 30代 性別 男性
勤続年数 1年6か月
キャリアアップの過程 2015年2月から約2年間、派遣社員として勤務。その後は、別会社に正社員として入社したが、身体を壊してしまったことをきっかけに退職。所沢市でアルバイトをしていたところ、同社の社員から声掛けがあり、2017年5月に同社にパート社員として入社。今年5月から地域限定社員に転換し、現在に至る。

◆スーパーバイザーを目指し、まずは地域限定社員へ転換

 片山さんは、2017年5月にパート社員として入社した。入社当初から、オペレーションの現場を統括するスーパーバイザーを目指していたが、スーパーバイザーとなるためには、総合職の正社員になる必要がある。正社員転換試験の受験条件を考慮し、まずは地域限定社員への転換を目標に、業務に取り組んだ。
 2018年5月、正社員転換試験を受験し、地域限定社員への転換を果たした。地域限定社員に転換後は、職務内容に大きな変化はないが、オペレーターとして品質や生産性に対する意識、責任感が以前よりも増したという。また、パート社員として勤務していた頃は、自ら望んで夜勤のシフトを多めに組み込んでおり、労働時間が非常に多かったが、地域限定社員となった現在は、月3回程度の夜勤となっている。労働時間が減ったことで、ゆとりをもって仕事に取り組め、プライベートの時間も充実しているという。
 今後は、地域限定社員としてスキルを向上させつつ、転換試験の勤続年数の条件をクリアでき次第、総合職の正社員への転換試験に挑戦し、スーパーバイザーを目指したいという。

◆地域限定社員のより柔軟な運用を

 転勤を伴わず、夜勤も調整可能という点で、地域限定社員はゆとりをもって働きやすい雇用区分であると感じている。片山さんのように、ゆくゆくは管理職を目指しているケースもあるため、今後は、地域限定社員であってもスーパーバイザーになれるような制度に改正されることを望んでいる。個々の多様なニーズ、事情に応じて、働く人のモチベーションアップにつながるよう制度が利用されるとよいと考えている。