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事例75 生活協同組合 コープみえ

事例75

生活協同組合 コープみえ
「人づくり」を最大のミッションとした人事制度改革により、地域や職種にこだわって柔軟に働き続けられるように

出典)生活協同組合 コープみえ提供資料より転載


会社設立年 2003年
本社所在地 三重県津市羽所町379番地
業種 卸売業、小売業
正社員数 ゼネラルコース 260名
エリアコース 5名
計265名(男性 232名、女性33名)
(2018年 11月21日現在)
非正規雇用労働者数 ジョブコース 233名
シニアパートナー 15名
計248名 (男性 25名、女性223名)
(2018年11月21日現在)
資本金
営業収益
取組概要 <背景>
・採用難や離職を背景とした「人づくり」を最大のミッションとした人事制度改革
<内容>
・2017年9月より、新しい人事制度を導入。
・雇用形態を「働き方」によるコース区分(ゼネラルコース、エリアコース、ジョブコース)に変更。3つのコース間で転換可能なルールを設定。
・人事制度の枠組みについては、コース間で統一した。
<効果・結果>
・職員の希望する働き方を受け入れやすくなった。
・ジョブコース職員のやりがいの向上

PDFデータ

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 同生協は、2003年3月に三重県内の4つの地域生協が合同して誕生した生活協同組合であり、三重県内で約19万名(2018年2月30日現在)の組合員が加入する。
 配送センターが9か所、店舗が2か所、福祉事業所が1か所、加えて本部事業所があり、共同購入、個人宅配、コープステーション、店舗、共済、福祉、夕食宅配、旅行・サービス、住まい等の事業を行っている。
 2016年9月に「コープみえ 人づくり行動宣言」を理事長名で出し、人づくりプロジェクトを発足した。すべての職員を一つの枠組の中で処遇するという方針の下、職員がやりがいをもって働き続けられることを目指し、評価、賃金体系などについて抜本的に改革した新人事制度を2017年9月から運用開始している。

1.取組の背景

◆「人づくり」を最大のミッションとした人事制度改革

 同社では、人事制度の刷新ややりがいを持って働くことができる職場づくりを中心とした「人づくり」を最大のミッションとし、人事制度改革を人事部だけで進めるのではなく、経営層もしっかりと関わる形で進めていくために、理事らが主管する人事プロジェクトを2016年4月に立ち上げた。2016年9月に理事長名で出した「コープみえ 人づくり行動宣言」は、組織が存続するためには「人づくり」が最重要課題と考えて出されたものであり、職員一人ひとりがお互いに尊重され、活躍できる組織風土改革、職員一人ひとりが自己実現できる働き方改革、職員一人ひとりがビジョンや意欲をもって働き続けられる人事制度改革の3つに取り組むことを宣言したものである。
 人事制度に関する検討においては、職員組織全体を巻き込んだ全員参加型の進め方を意識し、課題ごとに部会を設置し、職員と役員が共に参加する部会で月1回集まり、議論を行った。検討メンバーには、労働組合からの労組代表も含まれていた。
 当時の人事制度の課題の一つとして、パート職員から正規職員に登用する制度はあったものの、パート職員にとってはハードルが高く、登用制度が十分機能していない一面があった。もう一つの課題としては、親の介護が必要になったときの休職や復職の制度に利用しづらい面があり、あまり利用されていないことであった。職員の年齢構成をみると、40代から50代が多く、今後介護リスクが高まることをふまえ、決まった時間、決まった地域でしか働けないなど、個人の事情に合った働き方が選択できるようにする必要があると考えた。そこで、職員が望む働き方ができるようにしたいと考え、ライフスタイルにあった働き方を都度選択できるような制度への改定の検討を行った。また、60歳から65歳に定年を引き上げたことと関連して、定年まで元気に働いてもらうために、働き方の選択肢を増やしたいと考えた。
 旧制度から新制度への改定においては、人事制度の見直しにおける3つのポイントを、「職員が“いきいきと”“やりがいを持って”働き続けることができる人事制度に再構築する」「「私たちが目指すコープみえの職員像」を軸とした評価制度に再構築する」「実際に担っている「役割・責任」を軸とした等級制度・賃金制度に再構築する」とした。


人事制度改定に向けた働き方に関する制度の具体的方針

出典)生活協同組合 コープみえ提供資料より転載


2.取組の内容

◆雇用形態を「働き方」によるコース区分に変更

 2017年9月に導入した新しい人事制度では、旧制度の正規職員/勤務地特定職員/パート職員に対して、職員にとって柔軟な働き方ができることを目指し、「共通の枠組み」を適用した上で、「職種(部署)/勤務地/時間」という働き方によって処遇を区分する3つの雇用区分(ゼネラルコース、エリアコース、ジョブコース)を設計し、雇用形態の転換を可能とする制度とした。
 これまではパートから正規職員に転換する制度はあったものの、フルタイム・転勤ありのゼネラルコースから転勤なしの働き方への転換の道はなかった。新しい制度の導入により介護等の状況にあわせて一時的にエリアコースやジョブコースへの転換が可能となった。また、転換のきっかけとなった介護などの問題が解決した場合、再びゼネラルコースに戻れるようになった。
 また、「エリアコース」と「ジョブコース」において、旧制度よりも上位の役職・職位まで登用可能とした。そして、人事制度の枠組みについては、コース間で統一した(ただし、異動の制限等に基づき、賃金水準や一部の手当は異なる)。雇用形態による待遇や昇進の差が小さくなり、地域や職種にこだわって働き続けるという選択肢があることで、職員の働くモチベーションの向上が期待できる。
 「働き方の違い」とは、具体的には「職種(部署)や勤務地の異動有無・制限」や「勤務体系」を指し、エリアコースやジョブコースでは、個人のニーズに基づいて、特定の就業条件の中で働いてもらうことが前提となる。


働き方によるコース区分

*1:いずれも、職務・職場の異動はありうる。

出典)生活協同組合 コープみえ提供資料より転載


 なお、エリアコースの「通勤可能事業所」については、原則としてコース転換時に決定する。「通勤可能事業所」は、原則として3箇所以上とするものの、長時間の通勤時間(目安としておおむね片道1.5時間超)が必要となる事業所を選択せざるを得ない職員については、組織の承認の下に2箇所のみの選択とすることもありうる。

◆ゼネラルコースに準じた給与体系

 給与体系については、ゼネラル/エリア/ジョブの各コース間で、大枠を共通化しているが、給与項目・内容の一部は異なる。勤務地や職種の変更有無などの違いを勘案し、各コースの賃金を設計している。
 給与の軸になる「基本給」は、勤続1年ごとに一定期間自動昇給する「勤続給」と、毎年の評価で給与改定される「能力給」から構成されている。「能力給」は、役割に応じた給与水準を実現するため、等級間で金額が重複しないテーブルとし、ジョブコースについても同様に「勤続給」を導入した。
 賞与については、大枠はコース間で共通とし、固定賞与及び業績賞与ともに、コース間で共通の枠組みを適用している。

◆昇進可能な職位の拡大

 新制度によって、エリアコース、ジョブコースの職員の昇進可能な職位が増えた。それまでは小型店におけるパート職員の店長はいたが、現在はセンター長・店長・課長まで昇進可能となった。コース転換においては、本人の意欲や業務に直結する能力に基づきコース転換を決定している。ゼネラルコースに転換する職員には、ゼネラルコースの職員と同様の能力を期待しており、実際に与えられている業務の中で実績を上げている職員が対象となる。

◆65歳までの定年延長と定年後の再雇用

 働き続けられる環境づくりとして、65歳までの定年を延長し、また、定年(65歳)以後について、一定要件を満たす場合は「シニアパートナー職員」として再雇用し、継続勤務を可能とした。また、65歳以上のアルバイト(短期雇用者以外の期間雇用者)についても、シニアパートナー職員の仕組みを適用した。
 シニアパートナー職員は、有期契約(1年単位、更新あり)とし、条件を満たした場合に、雇用を延長している。なお、シニアパートナー職員に対しても評価を実施しており、結果は契約更新等の判断材料としている。評価対象や具体的な評価項目は、運用性を鑑み、出来る限りシンプルな評価内容としている。
 定年が延びたことで、職員の安心感は増したと聞いているが、一方で65歳まで働き続けられるのだろうかという不安を感じている職員もいるため、高年齢のキャリア形成を考える機会づくりが今後の課題である。ベテランの職員については、ヒューマンスキルに長けているため、後輩への指導者としての活躍の場をつくっていきたい。

3.効果と課題、今後の運用方針

◆希望する働き方に近づくことによるやりがいの向上

 パート職員からジョブコースへの改訂は、賃金ベースをゼネラルコースと統一させたことで、元パート職員にとって収入が増えるといったメリットがあった。
 コースに関係なく、昇給・等級の考え方が同じになったため、能力のある職員が昇格し、グループ長に昇進したジョブコースの職員が増えた。
 また、旧人事制度では、パート向けの人事制度と、正規職員の人事制度に分けられていたが、評価についても一つの制度に統合し、等級が同じであれば評価基準の軸を同じにした。目標の立て方について、プロセスと成果を分けた目標設定を行うようになったことで、職員にとっては、プロセスをきちんと組み立て、その過程が評価されることについての満足感が得られている。
 転換の実績は、2018年4月は3名のコース転換があった(パート職員→ゼネラルコース1名、ゼネラルコース→エリアコース2名)。今後も転換予定の職員がいる。
 コース転換が可能となったことで、職員の働き方に関する希望を受けやすくなったと考えている。能力の高いパート職員が、ゼネラルコースの職員に転換したことでやりがいが向上したと聞いている。また、制度ができたことで、家族の介護の不安を相談しやすくなったという声もあった。

◆職員の意識の変化

 職員に対する制度の周知のため、人事の担当者が全事業所を回って制度に関する説明会とヒアリングを実施した。その際には、パート職員からジョブコースの職員に変わる上での心構えについて説明した。能力のある職員には、雇用区分に関係なく、さらに能力を発揮してもらいたいと考えており、パート職員であっても自身を補助的な立場と捉えずに、今後は主体的に働いてもらいたいと考えている。今後は、パート職員の意識付けのために半期ごとの目標設定等の取り組み等により働きかけていきたいと考えている。

◆より使いやすい制度に

 新しい制度は、人を採用する上でのアピールだけでなく、定着につながる効果があると考えているが、すべての職員新しい制度のメリットが十分に伝わっているとは言えず、今後の工夫が必要と考えている。
 また、現在は、ゼネラルコースからエリアコース、ジョブコースへの転換の理由について介護と育児に限定しているが、業務に役立てるための自己研鑽等にも拡大できないか、今後検討したいと考えており、より使いやすい制度としていきたい。

4.活躍する従業員の声

ジョブコース 店長
Nさん

年代 50代 性別 女性
勤続年数 9年
キャリアアップの過程 2009年1月にサービス部門のレジ担当でパート職員として入職。2013年冬にパート職員の副店長に昇格し、2017年にパート職員からジョブコースへと移り、現職(店長)。現在は1日7時間、週5日勤務している。

◆人事制度の検討プロジェクトに参加

 2009年にパート職員として入社したNさん。以前は、勤務時間が終われば残った仕事を正職員にお願いして退社するなど、正職員とパート職員の間にはっきりとした役割の違いがあると感じていた。
 パート職員の立場で人事制度の検討に関するプロジェクトのメンバーに加わった。新しい人事制度については、パート職員であっても自分のやる気次第で等級が上がり、エリアコースの職員やゼネラル職員になりたいという意思があれば、上司の了解を得てコース転換の可能性もある良い制度だと感じている。また、人事制度の検討に関するプロジェクトの際に、自身が感じていることについて意見を取り入れてもらった経験から、会社に対する理解が深まり、仕事に対するモチベーションが上がったという。
 その一方で、収入が増えることは嬉しい反面、責任が重くなり負荷がかかるのではないかという不安も感じていたが、実際には、それまでの働き方が大きく変わることはなかった。

◆本部研修で異なる組織の職員に出会い、立場の違いによる考え方の違いを実感

 2013年冬に、Nさんはパート職員の副店長になった。前例がなかったため、仕事内容などについては手探り状態で、試行錯誤しながら取り組んできた。新しい人事制度に伴い、パート職員からジョブコースへと転換して、店長となった現在は、ジョブコースのまま、職種異動なし、勤務地異動なしで働き続けたいと考えている。
 パート職員として入社してから10年近くずっと入社時からの店舗で働いてきたNさんにとって、副店長になった際に受講した本部での研修は大きな経験になった。受講者に男性が多かったため最初は戸惑ったものの、初めて異なる組織の職員(センター長など)と一緒に研修を受講し、経営側の視点など、新しく学ぶことが多い良い経験になったと感じた。

ゼネラルコース 共同購入事業部
地域担当
木田 裕也さん

年代 30代 性別 男性
勤続年数 6年
キャリアアップの過程 2012年にパート職員として入職し、共同購入部の地域担当職員として勤務。伊勢で勤務していた際に人事制度が変わったことを受け、ゼネラルコースに転換。コースを転換したタイミングで伊勢から津南センターに異動し、現職。

◆以前にもましてやりがいを感じて業務に取り組む

 木田さんは、パート職員として共同購入事業部の仕事を始めたときから、人と接することが好きであり、この仕事を続けたいと考えていた。人事制度が変わった際に、ゼネラルコースへ転換できると知り、申請し、転換した。
 ゼネラルコースへの転換によるメリットは、収入面のメリットに加え、以前に増してやりがいをもって業務に取り組めることである。例えば、これまで受けられなかった研修を受ける機会が増え、現在は商品マイスター研修(愛知、岐阜、三重3生協の合同の専門研修の一つであり、商品に関する知識などを深める研修のこと)に参加できる。この研修を通して詳しい商品知識を得て、組合員に生協の商品を届ける際に商品の背景などについてより詳しく説明できるようになったこと、様々なことについてセンター間で情報共有できるようになったことなどが良かったと感じている。

◆共同購入部門で経験を積んでいきたい

 木田さんは、現在勤めている津南センターでの共同購入部門における業務の経験を重ね、これからも好きな仕事を続けたいと感じている。また、自身の経験から、コースの転換を検討している後輩がいたら、努力すればジョブコースからゼネラルコースに転換できる良い制度なので、勧めていきたいと感じている。