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事例77 株式会社はるやまホールディングス

事例77

株式会社はるやまホールディングス
従業員や退職者の声を聴き、従業員自身が「働きたいエリア」を選択できる地方限定(総合職)の制度を導入

出典)株式会社はるやまホールディングス提供資料より転載


会社設立年 1974年
本社所在地 岡山県岡山市北区表町1丁目2番3号
業種 小売業
正社員数 1,472名(男性998名、女性474名)(連結)
(2019年2月末現在)
非正規雇用労働者数 パートナー・アルバイト1,682名(男性256名、女性1,426名)
(2019年2月末現在)
資本金 39億9,136万円
売上高 570億7,100万円(連結) (2018年3月期)
取組概要 <背景>
・会社の設定する地域限定の範囲では地域限定(一般職)を選択する従業員が少なかった。また、退職理由の10%が転勤であった。
・正社員転換の制度はあったが、条件が厳しく、転換者が少なかった。
<内容>
・総合職の地方限定コースの設定。
・正社員転換の条件の緩和。
<効果・結果>
・離職率の低下。
・中途採用者の増加及び採用困難地域の減少。
・正社員転換者の増加。

PDFデータ

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<沿革・企業概要>
 1955年に岡山県玉野市で洋服専門店として創業し、1974年に「株式会社関西地区はるやまチェーン」として設立。1991年に「東京紳士服株式会社」および、「旧:はるやま商事株式会社 (仕入専門会社) 」を吸収合併し、商号を現在の社名に変更。2017年に同社は持株会社体制へ移行し、商号を「株式会社はるやまホールディングス」に変更。
 設立以来、紳士服と紳士服関連商品を中心に、一部婦人服や用品を開発・販売し、ライフスタイルの提案をしている。具体的には、「はるやま」「P.S.FA(ピー・エス・エフエー)」「フォーエル」の業態を3本柱に据えた、様々な事業を全国展開している。また、着実なドミナント形成に重きを置いている点も特徴として挙げられる。「はるやま」という店名で郊外型スーツ専門店を西日本中心に出店してきた同社は、新たな市場を開拓すべく新規出店を続け、同時に定期的な既存店メンテナンスを実施することで攻守にバランスの良い出店戦略を取っている。加えて、ショッピングセンターへの積極的な出店により、郊外型の独立店舗以外の商業集積地への出店も推進し、機動的な店舗展開を実施している。グループ店舗数は、各地で530店舗を運営している(連結・2018年3月末現在)。

1.取組の背景

◆地域限定の働き方の見直し

 同社では、正社員、契約社員、嘱託社員、パートナー(パートタイム労働者の名称)の4つの雇用区分に分かれており、正社員は総合職と一般職に分かれている。全国に530店舗運営しており、従業員のキャリア形成の中で転勤が生じる。転勤について、会社が指定するエリア区分(例:中国地方は鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県の5県)による地方限定のコースを一般職の中に設定していたが、利用が少なかった。
 また、同社では働きやすい会社にしていくためには、従業員の声を聴くことを非常に重視しており、ヒアリングの結果、従業員の希望する転勤の範囲は、例えば岡山県と兵庫県と香川県といった隣接する県の場合が多く、会社の指定するエリアと一致していなかったことがわかった。そこで、本人希望を重視し、従業員が希望する転勤に近づける制度についての検討を開始した。
 さらに、同社では退職者に対するヒアリングについても丁寧に実施しており、一身上の理由でない真意を聴くことで、「知らない地域への転勤は不安」「家族・友人・知人のいない地域の生活は不安」「転勤できないことでキャリアアップできない」等の不安や不満が退職理由の中で多かったことがわかった。

◆正社員転換制度の条件の見直し

 正社員転換制度は以前から導入しており、顧客づくりへの意識と店舗業績への貢献度が高く、店長候補と考えられる人材について、上長からの推薦を経て、記述テスト(企業理念、社員マニュアルの内容の理解等の簡易なもの)とマネージャーによる面談を実施することとなっていた。しかし、制度利用者が少なかったことをふまえ、パートナーへのヒアリングを実施した結果、転換要件の学歴制限や、勤務時間に制限がある中で店舗内での貢献度を評価する売上高がクリアできないこと、転勤可能性等が転換のハードルになっていたことがわかった。
 また、同社の従業員は、30~40代が最も多く、生活・家庭環境の変化を理由とした離職が一定数あったことから、生活・家庭環境の変化によるキャリアチェンジを可能とする制度について検討した。

2.取組の内容

◆総合職(地方限定コース)の新設

 従業員の希望する転勤可能なエリア設定に近づけたいと考え、2014年に改めて総合職に地方限定コースの新制度を設けた。地方限定コースでは、キャリアアップの制限がなく、総合職でも勤務地を指定することができ、本人が希望する4都道府県内の勤務が可能となった。
 アパレル業界において、地域限定の制度を導入している企業はあるものの、会社が地域を設定している場合が多く、従業員自身が地域を選択でき、かつ総合職である企業は少ない。エリア設定の都道府県の数についても、ヒアリングをふまえ、4都道府県とした。
 転換の理由は基本問わないが、申請時に確認することとしている。
 以前は、様々な店舗の店長の経験を経てキャリアアップしていく制度であったが、複数店舗での経験がなくてもキャリアアップできるように昇進・昇格についても変更している。地方限定の総合職は、本人の希望する4都道府県内の範囲でエリアマネジャーまで昇格可能となり、キャリアアップに制限はない(本部勤務(岡山・東京)となるチーフマネジャー、統括マネージャーは除く)。なお、全国勤務と地方限定では賃金に差を設けており、全国勤務を100とした場合、地方限定は95となっている。住居補助率や退職金にも一部差を設けている。


総合職(地方限定)の新設

出典)株式会社はるやまホールディングス提供資料より転載



一般職・総合職(地方限定)・総合職の昇進昇格の範囲

出典)株式会社はるやまホールディングス提供資料より転載


◆キャリアチェンジ制度

 生活環境などの変化により、総合職(全国勤務コース、地方限定コース)、一般職のほか、パートナー社員への両方向の変更が可能である。また、パートナー社員は正社員登用も可能となっている。


キャリアチェンジ制度

◆正社員転換の条件を緩和したことで、正社員転換が促進

 優秀なパートナーが多くいるにも関わらず、正社員転換の実績が少なかったことに対して、2014年に転換要件の学歴制限や売上高等の条件を緩和し、面談等による人と人の判断を重視し、推薦及び上長・事業部の面談を実施し、併せてパートナーの評価ツールによる評価結果を中心に判断することとした。

◆継続雇用制度・グランドキャリア制度

 継続雇用制度を導入し、60歳定年後、一定の条件を満たし、継続勤務を希望する従業員は1年毎の継続雇用契約を締結し、年齢制限を設けることなく勤務することができる。最年長はパートナーで77歳、嘱託社員で74歳である。個々の希望に応じて勤務日数や勤務時間を長設定している。
 また、定年退職前に従事していた販売職・専門職以外にも、今までのキャリア(経験・知識)を生かせる「品質管理」「内部監査」といった業務に従事できる「グランドキャリア制度」を2018年に導入している。


グランドキャリア制度

出典)株式会社はるやまホールディングス提供資料より転載


3.効果と課題、今後の運用方針

◆働く地域を選択できる総合職の新設による採用力向上

 総合職(全国勤務)から地方限定の総合職への転換について、初年度の申請は約100名であった。すべての希望を叶えることは難しいが、現在勤務している店舗が希望する4都道府県に位置していない場合は、離職リスクがあると考え優先している。実際の希望する地域は、居住地に隣接する都道府県だけでなく、知人や親戚のいる都道府県、住んでみたい都道府県を設定しているようである。
 制度を導入前の2013年の離職率は15%であったが、現在は8.8%にまで減少しており、離職防止につながっている(2018年現在)。
 また、近隣県であれば転居できる一般職の従業員が総合職に転換しやすくなったことで、同社では人員配置がしやすくなった。
 さらに、中途採用について、採用困難地域が25都道府県から5都県に減少し、2015年に12か月かけた採用者数が38名だったのに対して2017年に3か月で40名に増えた。このように1年かかっていた採用について数か月で確保できるようになった(応募数も増加)。近年は、転勤そのものが好まれないため、ハローワーク等の応募において、働きたい地域を選択できることを記載したことで、地元志向の人をうまく採用できている。


総合職(地方限定)の導入による中途採用者の変化

出典)株式会社はるやまホールディングス提供資料より転載


◆正社員転換の条件を緩和したことで、正社員転換が促進

 正社員転換の条件緩和により、これまでにパートナーから正社員へ54名が転換している。パートナーへの制度の周知には、パートナーへの働きかけを行うマネジャークラスへの制度の周知が重要である。
 転換するコースとしては、パートナーから一般職への転換が最も多い。
 また、キャリアチェンジ制度も活用されており、一般職から地方限定の総合職へ約100名が転換している(2018年3月現在)。

◆従業員の声を聴くことでさらに働きやすい会社に

 定期的な社員へのヒアリングや退職者に対するヒアリングを実施の他に、従業員個々がアカウントを持ち、匿名で書き込める目安箱のツールを用意しており、提案や会社への希望などを書き込むことができる。目安箱やヒアリングをふまえ、パートナーを含む従業員の声を聴くことでさらに働きやすい会社づくりに積極的に取り組んでいる。また、現在既存社員のモチベーションの向上、評価の見直しについても検討を進めている。

4.活躍する従業員の声

人事部 労務課 課長
武政 真由美 さん

年代 30代 性別 女性
勤続年数 13年
キャリアアップの過程 2006年新卒で一般職として入社。本部に配属され、主に人事部業務や労務管理に携わる。
2014年に、総合職(全国勤務コース)に転換。
2018年の結婚を機に、一般職に戻る。その際に課長へと昇進し、現在に至る。

◆入社9年目に全国勤務コースに変更

 2006年に新卒で一般職として入社した武政さん。本部に配属され、主に人事部業務や労務管理に携わる日々だった。また、店舗での応援業務や、人事業務の中でもパート社員担当等、入社してから現在まで様々な業務内容を経験してきた。
 もともとキャリアを積んでいきたいと考えていた武政さんは、2014年に係長に昇格した。また、この際に、勤務コースについて考えてみないかと打診されたことをきっかけに、異動がある可能性も考慮した上で、総合職の全国勤務コースに転換した。

◆結婚を機に一般職に戻る

 総合職として勤務した約4年間に異動することはなかったが、結婚により家庭をもったことを機に、全国勤務のままでは難しいと考え、2018年に改めて一般職に転換した。結婚を機に辞めることを考えていなかったが、一般職に戻ることを容認してもらえた上に、同年課長にならないかという打診があり、課長に昇進した。一般職でもキャリアアップができるように制度が変わったことで、課長に昇格できたことは良かったと武政さんは感じている。
 武政さんは、家庭を持った以上、現在の勤務地での勤務を希望しており、全国勤務は考えていない。しかし、今後会社の制度等も変わっていくことが考えられるため、可能性があれば、管理職に向けてチャレンジしていきたいと感じている。