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事例82 株式会社マルヤナギ小倉屋

事例82

株式会社マルヤナギ小倉屋
・職務と勤務地が限定される「エリア限定社員」を制度化

会社設立年 1951年12月
本社所在地 兵庫県神戸市東灘区御影塚町4丁目9番21号
業種 食品製造業卸販売
正社員数 293名(男性186名、女性107名) (2019年7月末現在)
非正規雇用労働者数 180名(男性80名、女性100名) (2019年7月末現在)
資本金 9,950万円
売上高 101億円 (2019年7月期)

PDFデータ

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1951年 昆布佃煮の製造販売店「小倉屋」として創業
1959年 株式会社小倉屋柳本に改組、全国的に拡大を図る
2016年 社名を「マルヤナギ小倉屋」へ変更

 150年以上の歴史を持つ昆布の「小倉屋」からののれん分けにより、昆布や大豆などの日本人のソウルフードともいえる食材と、できるだけ素材の味を活かす食品作りにこだわり、創業以来68年間一度も赤字を出すことなく堅実な経営を行ってきている。
 「働きがいのある会社を作り、広く社会に貢献します」、「お客様第一の実践」等を営業理念として掲げ、食品メーカーとして、原材料に遡ったモノづくりでお客様に安心・安全を提供し続けていることに加え、2018年から社員向けの健康経営への取組も進めている。2019年時点で、国内営業拠点8箇所、生産拠点4箇所、関連会社2社を展開している。

1.従業員の種類

 同社の社員体系は、図のような体系となっている。

社員区分



出典)株式会社マルヤナギ小倉屋へのヒアリング調査をもとに作成

2.J社員について

(1)J社員の概要

 正社員でありながら、勤務地や職種が限定された社員区分である。
 G社員は、いわゆる総合職の位置付けであり、勤務地や職務の範囲に限定はなく、幹部社員候補であるのに対し、J社員は、自宅から通勤できる範囲での異動の可能性があるが、転居を伴う異動はないエリア限定正社員である。
 また、J社員は、多くは職務が原料、生産、包装の職種に限定されているが、事務職や販売を担うJ社員も在籍する。

① 導入のきっかけ

 きっかけはパート社員の処遇改善である。
 同社には、長期間勤務しているパート社員が多くおり、その社員の処遇を少しでも改善し、より長く勤務し続けて欲しいという思いから、パート社員の待遇改善となる制度の導入を以前から検討し、実際に時給単価のアップや賞与の増額等の処遇改善を行っていた。
 J社員制度は、よりパート社員が定着する仕組みを作るため、2015年頃から本格的に検討を始め、2016年に導入された。
 また、パートを募集しても応募が少ないなど、なかなか採用に至らないという状況もあったため、J社員の導入によって応募者数を増加させたいという狙いもあった。

② 特徴

 採用は、G社員、J社員、パート社員の社員区分別に行っている。
 J社員を希望して入社した社員に対しては試用期間を設けており、試用期間中はパート社員の扱いとなる。その期間の仕事ぶりを見て、J社員に登用することとしている。実際には、J社員を希望し採用され、登用されなかった社員はいない。
 パート社員として入社してきた社員にも、年に2回、J社員に転換する機会が設けられている。
 J社員からG社員への転換も可能となっており、その場合には、工場長やマネージャーの推薦と登用面接を受けて登用されることとなる。基本的には、J社員の中でも、「この人はリーダーの役割を担えるのではないか」と期待できる社員が推薦の対象になることが多い。
 J社員からG社員に転換した場合でも、例えば、工場勤務をしていたJ社員が、G社員に転換してからはいきなり営業職を担うということはなく、基本的には工場勤務を継続する形で運用が行われている。

コース変更



出典)株式会社マルヤナギ小倉屋へのヒアリング調査をもとに作成

③ 導入における工夫点

 正社員で働きたいと思っているが、G社員(総合職)はハードルが高いと思っている人に対し、「パート社員と総合職の中間」のような形態としてJ社員を設け、採用の間口を広げた。また、職務の習熟度を踏まえ、パート社員のJ社員への転換を積極的に行っている。

④ 処遇

 J社員は月給制であり、賞与や退職金がG社員に準じる形態となる。

社員区分ごとの待遇



出典)株式会社マルヤナギ小倉屋へのヒアリング調査をもとに作成

 賞与、退職金はパート社員、J社員のいずれも支給対象であるが、パート社員からJ社員になることで、賞与は1.5倍程度、人によっては3~4倍アップするケースもある。
 下図のとおり、G社員が一般社員から部長に昇進していくのに対し、J社員は一般社員に位置づけられ、昇格や昇進はない。賞与や退職金は、G社員、J社員のいずれともに支給されるが、J社員の場合、いずれもG社員のものをベースにJ社員係数を掛けて算出するため、G社員よりは低い金額になるように設定されている。

正社員の役職



出典)株式会社マルヤナギ小倉屋へのヒアリング調査をもとに作成

3.制度導入のメリットや効果

 J社員制度の導入以降、同社への応募者が増加した。現在、J社員への応募が最も多い。同社の工場の周りに大手企業の工場が多くあり、人材の獲得が困難な中でも安定した人材確保ができていると感じている。
 また、J社員という第3の選択肢を設けたことにより人材の定着面でも一定の効果があった。具体的には、今までは正社員で入社したものの長続きせずに辞めていくケースが減少した。
 さらにパート社員として入社しても、J社員への転換が可能となったことで、J社員導入当時には、約180人いたパート社員から、約50人がJ社員に転換した。
 求職者にとって、「仕事をしやすい会社」と思ってもらえるのではないかと感じている。

4.今後の課題

 G社員として採用しても、実際には転勤や職種の変更がなく、仕事面でもJ社員と違いがないという実態が見られることがある。その場合、結果としてG社員とJ社員で同じような仕事をしているにも関わらず、待遇に差が生まれてしまっていることになる。こういった状況を解消するため、今後は社員区分に関わらず個々人の力量に合わせた形で昇給できるような制度を導入していくことも検討している。
 また、J社員でもリーダー以上の役職に昇格できるような制度案も検討している。

5.活躍する従業員の声

経営管理部 井戸 明美 さん

年代 50代 性別 女性
勤続年数 20年
パート社員として入社し、2017年に正社員(J社員)に転換。現在は購買の経理事務を担当。

◆子どもを育てながらパート社員として短時間勤務で仕事復帰

井戸さんは、同社でおよそ20年のキャリアを持つベテラン社員である。
 以前、銀行勤務をしていたものの、結婚を機に退職した。すぐに子どもができたため、退職してよかったと思ったものの、仕事も好きだったので、正直辞めたくない思いもあったという。
 出産し、二人の子どもを育てていたが、上の子が小学校2年生、下の子が保育園の5歳児クラスになったタイミングで、「そろそろ働きたい」と感じたという。ただ子どもがまだ小さかったので、子どもの足でも来られるよう、家から近い同社で経理のパート社員として働くことになった。上の子が午後3時頃には帰宅するため、当初は週3回、午前の3時間の勤務で働き始め、下の子が大学生になったタイミングでフルタイムのパート社員になった。同時期に、部署内の役割分担の変更に伴い、現在の購買関係の経理事務に変わった。

◆制度を利用してパート社員からJ社員に

 同社にJ社員が導入されてから、部長よりJ社員への転換を提案してもらった。その際部長からは、「朝の出社時間が早くなり、勤務時間が少し長くなる」という説明も受けた。
 当時、「社員になりたい」という気持ちもある一方、パート社員でいることに居心地の良さも感じていたが、転換の話を受け、社歴も長く、子どもも手を離れ、「前向きにやりたい」気持ちになっていたということもあって、J社員に転換した。

◆正社員転換のメリット

 正社員に転換し、賞与が増えた。
 また、毎朝朝礼に参加し、会社の予定、社長から業績の話などを聞くことで、会社がどういう方向に向かっているのかといったことがわかるようになった。そうした経営状況の理解が進むことは、日常の仕事を進める上でもプラスになっており、転換のメリットは大きいと感じる。

◆正社員への転換は子育する女性にとって有難い制度

 同社で働き始めた当初は、正社員になることは考えておらず、「パートで働くものかな」と思っていた。実際に、朝早くから出社するのは大変であり、子どもたちの手が離れるまでパート社員で働くのが適当であったという。もし、入社の際、「正社員にならないか」と言われていたら、自分の場合は難しかったという。各々の家庭の事情やワーク・ライフ・バランスに応じて、正社員に転換できる現在の制度は、子育てする女性にとっては非常にありがたい制度だと思っている。
 近年は、正社員でも短時間で働くことができ会社もある。自分もそんな制度があれば働き続けたかったと働く環境の変化を感じる。今後も地域限定正社員をはじめ多様な働き方が社会的にも広まることを期待している。