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事例84 トラスコ中山株式会社

事例84

トラスコ中山株式会社
・職務や勤務地限定正社員、短時間勤務制度、おしどり転勤制度の導入など、社員が安心して働くための社員支援制度の整備

会社設立年 1964年3月
本社所在地 東京都港区新橋四丁目28番1号(本店・東京本社)
業種 プロツール(工場用副資材)の卸売
正社員数 1,656名(男性1,071名、女性585名)
(2019年12月31日現在)
非正規雇用労働者数 1,128名(男性283名、女性845名)
(2019年12月31日現在)
資本金 50億2,237万円
売上高 2,206億74百万円 (2019年12月期)

PDFデータ

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1959年 中山機工商会として創業
1964年 中山機工株式会社設立
1994年 トラスコ中山株式会社に社名変更

 1959年に「中山機工商会」として創業した同社は、プロツール(工場用副資材)をメーカーから仕入れ、機械工具商やネット通販企業、ホームセンターなどの小売店に卸している。
 扱うプロツールは、工事現場で職人が扱う作業用品や消耗品、機械類など多岐にわたる。独自の供給体制を整え、2,300社以上のメーカー、5,300社以上の小売店と取引を行っている。
 社員が安定して暮らしていけるように支えていくということを会社の義務として捉え、社長自らがアイデアを出すことで働きやすい会社作りを進めており、福利厚生、人事制度、人材育成等の整備にも積極的に取り組んでいる。
 また、2008年にくるみんマークを取得し、ワークライフバランスの促進に積極的に取り組んでいる。さらに実力主義を貫き、女性幹部の育成に力を入れるなど、女性が活躍できる企業づくりを行っている。

1.社員体系

 同社には基本的に派遣社員等の外部人材はおらず、全員が直接雇用である。その中で正社員については、期待される役割や働き方の違いによってキャリアコース、エリアコース、スペシャリストコース、サポートコース、ロジスコースの5つに分かれている。さらにキャリアコースは、海外拠点への異動可否により2つに分かれている。
 また同社では、社員の能力やスキルを高め、どのような仕事にも対応できるよう、3~5年を目安に人事異動を行っている。営業、経理、物流など異なる部門への異動も行われ、社員の成長を促すとともに仕事が属人化することを防いでいる。

コース概要


出典)トラスコ中山株式会社提供資料およびヒアリング内容をもとに作成

2.職務・勤務地限定正社員制度

(1) 職掌選択制度

 同社ではオールラウンド職のキャリアコースの他、職務や勤務地を限定して働ける多様なコース(職掌)の中から、社員が自らの働き方を選択できる制度を用意している。スペシャリストコースは職務限定、エリアコースが勤務地限定、サポートコースとロジスコースは勤務地限定かつ職務限定となっている。
 キャリアコースとエリアコースは、いずれも職域は同じであるが、キャリアコースには住所変更を伴う異動があるのに対し、エリアコースにはそうした異動のない点が異なる。なお、後述するように基本的に賃金、賞与、退職金や昇格範囲がキャリアコースより低くなる。

① 導入のきっかけ

 同社では、「会社の発展は社員があって成り立っている」と考え、社員が長く働き続けるために何が必要なのか、その時々の社員の要望などを聞きながら多様な制度を独自に整えてきた。そうした取組の一つが職掌選択制度であり、社員が主体的に様々な働き方を選択できる仕組みとして導入した。
 現在の制度は2007年度から運用している。ただし、コース名は異なるものの、現在のキャリアコース、エリアコースと基本的に同じ内容のものがそれ以前からも存在していた。

② 特徴

 転勤の範囲や従事する職種がそれぞれ異なる5コースの中から自身のライフスタイルに合わせて働き方を選択できることがこの制度の特徴である。
 大学新卒者は原則キャリアコースでの採用、高卒新卒者はロジスコースでの採用が行われる。スペシャリストコースについては中途採用であることが多く、経理やデザイン、建築関係の特殊な資格を持ち、専門業務を担える人に限られる。
 なお、キャリアコース、スペシャリストコースとして働けるのは一定に年齢に達するまでであり、役職者を除き、基本的に58歳以上はエリアコースの社員となる。

③ コース間の転換

 選択するコースによって居住地や職務内容が変わるため、コースの転換は社員自身の希望・申請に基づき実施している。
 コース転換にあたって試験などはない。キャリアコースやスペシャリストからエリアコース、サポートコース、ロジスコースへの転換は、本人からの申請により無条件で可能である。
 一方、サポートコース、ロジスコースからエリアコース、エリアコースからキャリアコースへ転換する場合には、人事考課や上司の評価などを考慮して会社が転換の可否を判断する。
 スペシャリストコースは基本的に、社内にない専門的なスキルを持った人を外部から得るために設けており、他のコースとは完全に別枠の位置づけであるため、コース転換のハードルは高い。近年、スペシャリストコースへの転換を希望する社員が増えつつあるが、専門職に相当するスキルがあるか厳格に確認している。
 転換は何度でもできるが、一度コースを転換した場合、それから1年間はコースの転換ができなくなる。

コース転換


出典)トラスコ中山株式会社提供資料およびヒアリング内容をもとに作成


④ 処遇

 同社の賃金は、基本給、評価給、固定手当(役職手当、扶養手当、住宅補助手当等)変動手当(残業手当)・報奨金(売上予算達成時に支給)で構成される。基本給、固定手当、変動手当・報奨金については(残業手当を除き)コースによる違いはない。一方で評価給については、コースや人事評価によって調整される変動給となっており、社員個人の評価給は、評価基準金額と人事評価結果に基づく評価変動率を掛け合わせて算出している。
 評価基準金額はコースごとに定められており、キャリアコースとスペシャリストコースが同額で最も高く、次にエリアコース、さらにその次にサポートコースとロジスコースの順で設定されている。
 等級については、コースごとに昇格の上限が定められている。キャリアコースはM1まで昇格するが、スペシャリストコース、エリアコースはM3まで、サポートコース、ロジスコースはS1まで昇格する仕組みとなっている。
 等級が上がるほど評価給の支給額に差が大きくなるよう設定されている。
 賞与はどのコースでも支給されるが、算出方法はコースごとにより異なる。キャリアコース、スペシャリストコース、エリアコースは基礎額(基本給+評価給)の2.5か月分、サポートコース、ロジスコースは基礎額の1.5か月分が、それぞれ年2回支給される。
 また、同社には退職金制度の代わりに「ファイナンシャルボンド」と呼ばれる年一回の手当が支給される。コースに関わらず支給対象となっており、基本給をベースに、勤続年数や等級に応じた掛率などを用いて算出している。
 なお、いずれのコースであっても同じ福利厚生制度が整備され、教育訓練の機会も基本的に同じように付与される。

コース別昇格範囲


出典)トラスコ中山株式会社提供資料およびヒアリング内容をもとに作成


賃金の構成要素


出典)トラスコ中山株式会社提供資料およびヒアリング内容をもとに作成


3.他の「多様な働き方」制度

(1) 短時間勤務制度

 育児を理由とする短時間勤務は、最長で子どもが小学6年生になるまで利用可能である。その他介護や傷病、妊娠等の事由で利用できる。1日最大3時間まで短縮を認めている。2019年は88人が利用している。

(2)育休卒業勤務制度

 育児休業を終えた後、子どもが3歳になるまでの一週間あたりの勤務日数を自由に決められる制度。短時間勤務と組み合わせて使うことも可能である。

(3)おしどり転勤制度

 配偶者が社内に限らず社外の人であっても、社員がエリアコースに転換し、希望する勤務地への異動を申請できる制度。結婚後に配偶者が異動となっても帯同し、継続的に働き続けることができる。

4.取組の効果

 多様な制度を整備した結果、結婚・出産等を理由とする退職が減り、例えば離職率は、年により変動があるものの、近年で最も高かった2005年には6.2%あったものが、2018年2.8%にまで低下している。
 この制度があるからということではなく、社員一人ひとりのライフスタイルに応じて勤務エリアや職種が選べることや、短時間勤務を選択することもできるなど、働き方の選択肢が多いことが離職率低下の理由であると考えている。

5.今後の課題

 女性や高齢者の為の制度は拡充し、働きやすい環境への効果も出てきているが、全ての社員にとってワークライフバランスの取れた環境、生産性の高い職場とするには、今後は、さらにすべての社員が色々な選択肢の中から、自身に合ったものを選び、柔軟に働ける環境の構築を目指していきたいと考えている。

6.活躍する従業員の声

総務部人事課 牧野 由佳 さん

年代 30代 性別 女性
勤続年数 11年
2008年にキャリアコースで入社し、九州や東北の支店での内勤・営業の経験を経て、2013年、社内結婚を機にエリアコースに転換。以降は人事課に所属。

◆結婚を機にキャリアコースからエリアコースに変更

 大学新卒で2008年に入社した。入社のきっかけは、入社説明会や面接で、一緒に入社試験を受けた現在の同期が積極的に話しかけてくれるなど、周りの雰囲気や人の良さであったと言う。
 キャリアコースの社員として、福岡県の物流センターでの研修、小倉支店(福岡県)や北上支店(岩手県)で内勤・営業を経験した。2013年に社内結婚し、夫婦で一緒に住めるよう、キャリアコースからエリアコースに転換し、本社の人事課に異動した。

◆制度が整っているので、悩まずにエリアにコース変更

 現在は夫婦ともに本社に勤務しているが、夫はキャリアコースであるため、今後異動する可能性がある。もしそうなった場合には、自身も同じエリアに異動したいと思っている。
 自身は、キャリアコースからエリアコースに転換したことで、仕事の内容や基本給などは変わらないものの、評価給部分は下がった。ただ自身のライフスタイルを考え、多少給料が下がってもエリアコースに転換し、夫婦2人で働き続けることを重視したため、転換して良かったと思う。
 周囲の人にコース転換することについて相談した際、「会社が考慮してくれるから、(希望転勤・コース変更の)申請を出せばいいよ」と当たり前のように言われたことを今でも覚えている。会社の制度が整っていたおかげで、悩むことなく働き方を変えることができた。もし、そうした制度がなかったら、会社を辞めることを考えていたかもしれないと言う。

◆ライフスタイルが変わっても働き続けたいなら、是非利用して欲しい制度

 賃金面では、同じ仕事をしていてもキャリアコースの後輩の方が高い収入を得ているかもしれない。だが、ずっと夫と一緒に暮らしていけるという安心感を(賃金の)差額で得ているように思っている。また、エリアコースであっても職種は限定されていないため、コース変更により自身のキャリア形成が制限されたと感じることもあまりない。
 結婚しても会社を辞めなくて済む道を会社がいろいろと用意してくれていたことで、現在も同じ会社の社員として働き続けることができている。結婚以外にも様々な理由で全国転勤ができなくなった人でも、働き続けたいと思うのであれば、非常に利用しやすい制度だと思う。