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事例85 森永乳業株式会社

事例85

森永乳業株式会社
育児・介護・本人の病気・障害などの事情を持ち、転居を伴う異動を希望しない社員、転居を伴う異動のない社員として採用・登用された社員を対象とし、地域限定正規社員制度を導入。

会社設立年 1917年
本社所在地 東京都港区芝5-33-1
業種 牛乳、乳製品、アイスクリーム、飲料その他の食品等の製造、販売
正規社員数 3,247名(男性2,629名、女性618名)(2019年3月末)
非正規雇用労働者数 パート社員、アルバイト:505名
(男性111名、女性394名)(2019年3月末現在)
資本金 21,731百万円(2019年3月末現在)
売上高 4,303億6,300万円(2019年3月末現在)

PDFデータ

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※理由:育児:110名(男1、女109)介護:2名(男1、女1)傷病:1名(男0、女1)

1917年 日本煉乳株式会社設立
1949年 森永乳業株式会社設立
1954年 東京証券取引所に株式上場

 同社は、牛乳やアイスクリームなどを製造販売する、大手乳製品メーカーである。
 1917年(大正6年)に森永製菓株式会社が、主要商品森永ミルクキャラメルの原料である練乳を自社製造するため、日本煉乳を創立したのが始まりで、2017年に創業100周年を迎えたところである。
 現在、工場は東京多摩工場、神戸工場のほか全国で13ヵ所あり、3千人以上の社員が働いている。また、アメリカ、中国等5か国に現地法人があり、グローバル展開も進む。

1.社員体系の全体像

 同社には、無期雇用労働者と有期雇用労働者の2つの社員区分がある。2017年1月に地域限定正規社員制度が導入され、無期雇用労働者がさらに、全国に転勤の可能性があるナショナル社員(N社員)と、勤務地が限定されるエリア社員(A社員)に分けられた。
 有期雇用労働者の中には、いわゆる契約社員にあたるモリナガパートナー社員(MP社員)と、パートタイマー社員(PT社員)、チーフモリナガパートナー社員(CMP社員)、チーフパートタイマー社員(CPT社員)、60歳以上の再雇用者(エキスパート社員、シニアパートナー社員)がいる。MP、PT、CMP、CPT社員からN社員やA社員への登用制度がある。

社員体系の全体像


参考資料:「労政時報 第3968号」(2019年3月8日 労務行政)

2.地域限定正規社員制度について

(1) 導入のきっかけ

 何らかの理由で、転居を伴う異動が難しい社員がおり、人材確保が今後さらに厳しくなると予想されたことが、制度の導入を検討するきっかけとなった。離職を防止し、多様な人材が活躍できる環境整備の必要があったことから、地域限定正規社員の導入を前提に、2015年から労働組合との協議を開始し、約2年かけて導入に至った。
 それまでも制度の導入が検討されたことはあったが、社員の異動の範囲を定めた上で、事業を円滑に運営できるかどうか懸念があり、なかなか実現しなかった。特に、どのような社員を制度利用の対象とするかという基準を明確にすることが困難であった。
 そこで同社では、勤務地限定の働き方に対しニーズの高い社員、すなわち育児や介護、本人の病気、障害等の事情を抱える社員に対象を絞って制度を導入することとした。

(2) 特徴

 育児や介護などの転居を伴う異動が困難な事情を抱える社員を対象とした制度である。
 同制度では、海外・全国転勤のある「N(ナショナル)社員」と、転居を伴う異動のない「A(エリア)社員」に区分されている。
 基本給に「N社員」にのみ支給する「N社員給」を設け、資格等級別に段階的にN社員給の比率を設定している(上位役職になるほど比率が大きくなる)。
 基本給と別枠でN社員給を設けることにより、「N社員⇔A社員」の労務処理などの複雑な切り換えが緩和されるものと想定している。

(3) 導入における工夫点

① 設計時の工夫

 制度設計を行うに当たっては、地域限定正規社員に対しどのような役割を期待するか整理するのに苦労した。検討の結果、A社員は「その地域のプロフェッショナルとして各事業所での基幹業務を担う社員」、N社員は「高度な知識・スキルに基づいた総合的な判断を必要とする職務を担う社員、または担うことを期待される社員」と整理した。それぞれの役割を明確に区別できるようA社員には昇格の上限を設けることとした。

② 社員の理解促進

 制度導入に当たっては社員の理解が不可欠であるとして、全社員を対象に説明会を徹底して行った。工場ではシフト制の勤務体制のため、3日間で9回実施することもあった。また、制度に関するQ&Aも作成した。
 制度導入前は、すべての正規社員に転居を伴う異動の可能性あったが、工場勤務の社員の中には工場で面接・採用されたのだから、自分は転居を伴う異動はしないと誤解していた社員がいることが分かった。そこで、こうした誤解の解消も含め、制度の趣旨や内容を、実例を交えながら丁寧に説明することで、制度に対する社員の理解を促進した。

③ 社員区分間の転換

 A社員への転換については、以下3条件のいずれかを満たす社員にのみ転換を認めている。
 ・本人・家族に事情がある社員(育児、介護、本人の病気や障害)
 ・A社員として新規採用した社員
 ・A社員として登用した契約社員
 ※制度導入当初は、これに加えて「事業所にて採用され、かつ、転勤の伴う異動を希望しない者」を要件としていたが、現在は廃止している。
 A社員としての採用も行っているが、採用時に、将来的にN社員に転換できる制度があることを説明している。近年の新入社員は地元志向が強い傾向があるため、こうした制度を設けることで採用競争力を高める狙いもある。
 現在は、年1回N社員とA社員間の転換希望を受け付けている。なお、社員区分の転換は、人事計画にも影響するため3回までと限られている。A社員を選択して入社した人でN社員への転換を希望する場合は、入社後6年間勤務していることと、直近3年間の評価が標準以上であることが条件となる。
 なお、A社員は原則転居を伴う異動がないものの、本人が希望すれば、3年以内の期間で、元の職場に復帰することを前提として、他の地域へ異動することや関係会社へ出向することもできるようにしている。この異動の範囲は意欲のある社員からの希望を反映して設置したものである。

 異動の差異



(4) 処遇

 同社の基本給は資格給や職務給等で構成されているが、それに加えてN社員にはN社員給が支給される。このN社員給のみの違いで、その他の資格給や職務給等に違いはない。
 N社員給は役職が上がるほど基本給に占める比率が大きくなり、A社員と比較して基本給の差が広がるような設計となっている。

基本給のイメージ(大学卒・主事補の一例)



N社員とA社員の基本給イメージと
N社員の基本給に占めるN社員給の比率(資格別)

参考資料:「労政時報 第3968号」(2019年3月8日 労務行政)

 人事考課については、A社員もN社員も同様の基準で行われる。この点は制度導入時に実施した説明会でも特に注意して説明しており、Q&Aにおいても詳細に説明している。
 昇格については、A社員の昇格上限は事業所単位で配置されるマネージャーまでとし、それ以上の経営的な判断が求められる役職にはN社員のみ昇格する。階層・役職については差がない。

社員間の昇格上限




3.他の「多様な働き方」制度

 ・短時間勤務制度(最大2時間の勤務時間短縮を認める制度。育児・介護に加えて、病気療養でも利用可能。)

育児: 小学校4年生の4月末日までの子を養育する社員が請求可能。
1回の申出につき1ヶ月以上1年未満の範囲となるが、回数制限はない。
介護: 要介護状態にある家族を介護する社員が請求可能。
対象家族1人につき、暦日通算3年の間に2回まで。

 ・フレックスタイム制度(11:00~14:00をコアタイムとする。)※シフトによる交代勤務の組織を除く。
 ・時差勤務制度(事業所の所定労働時間の前後にスライドさせた時差勤務を認める制度)
 ・短日勤務制度(病気療養者を対象に、正規社員の週4日勤務を認める制度)

4.メリットと効果

 2017年度の制度導入以降、地域限定正規社員は増加傾向にある(既存社員の転換と、新入社員を含む)。求める役割や処遇要件が明確になることは、特に転勤が難しい事情を抱える社員からポジティブな反応が見られた。地域限定正規社員でも事業所の管理職になれることは、社員にとってモチベーションアップにもつながっている。

制度利用者の推移



5.今後の課題

 労働組合や社員からは、制度利用の要件緩和を求める声も上がっている。これを受けて検討を進めているが、地域限定正規社員が増えすぎることへの懸念等もあり、要件緩和については慎重に検討したいと考えている。
 また、N社員の異動のローテーションは職域を広げるために重要だと考えており、よりいっそうの計画的なローテーションの実施が課題となっている。
 同社では継続的に社員の意識調査を実施し、労働組合からの要望も含め、今後の人事施策の参考とする予定である。