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事例89 株式会社YE DIGITAL

事例89

株式会社YE DIGITAL
・勤務地域および転勤の有無を選択できる地域正社員制度を導入
・制度化により転勤の有無による処遇を明確化し公平性を図る

会社設立年 1978年
本社所在地 福岡県北九州市八幡西区東王子町5番15号
業種 情報サービス業
正社員数 連結619名(男性534名、女性85名)(2019年2月末現在)
単独495名(男性427名、女性68名)(2019年2月末現在)
非正規雇用労働者数 270名(男性231名、女性39名)(2019年2月末現在)
資本金 7億200万円
売上高 連結:124.51億円 、単独:118.27億円 (2018年度実績)

PDFデータ

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従業員数



1978年 安川電機の情報処理機能を分離し、「安川情報システム」を創立
2001年 「安川情報北九州」(1993年設立、1997年社名変更)、豊安情報システム(1992年設立)を統合し、「安川情報九州」設立(現・YE DIGITAL Kyushu)
2003年 東証2部上場
2018年 海外子会社「YE DIGITAL,Inc.」をアメリカ合衆国カリフォルニア州に設立
2019年 社名を「YE DIGITAL」に変更

 同社は情報化時代における新たな展開を目的として、安川電機の情報処理機能を分離し、安川情報システム株式会社として設立された。現在はIoTソリューション、業務システム等のビジネスソリューション、運用支援等を行うサービスビジネスの3本柱で事業を展開している。国内では東京・大阪・埼玉・福岡に拠点を持ち、北九州とアメリカに関連会社を有する。
 創業40年余技術や業務知識を磨きながら、IoTやビックデータ、AI、セキュリティといった新しい技術を積極的に取り込み発展してきた。独自の経営方針と、高い技術力、顧客本位の姿勢により、ITを活用したソリューションを提供し豊かな社会づくりに貢献するとともに、社員の幸福と永続的な企業の繁栄を目指している。

1.社員体系の全体像

 全国転勤可能な社員をG社員(G=Global)、希望する勤務地で転居を伴う転勤のない社員をR社員(R=Regional)と区分している。
 社員区分を問わず役割等級(バンド)が設定されており、管理職層はAバンド(本部長・副本部長)、Bバンド(部長層)、Cバンド(課長層)の3バンド、一般職層はD~Gの4バンドで構成されている。
 R社員は、B~Gバンドの社員が対象である。

 ※ 一定年齢以下の子どもを育てる社員や障害を持つ社員など、個々の事情で転勤が難しい社員については、個別に配慮している。

役割等級(バンド)と地域正社員制度の対象区分




2.地域正社員制度について

(1) 導入のきっかけ

 同社では、企業向けに人事システムや販売管理システムを提供しており、プロジェクトの要員配置に応じて人事異動が生じる。地域正社員制度の導入前は、正社員は全員、全国異動の可能性があった。
 近年、ワーク・ライフ・バランスの考え方が浸透し、働き方に対する考え方も多様化している中、半年に1回実施される上司との面談において、転勤できない、あるいは、できればしたくないと答えた社員がいることが分かった。また、九州と東京で採用を行っているが、特に九州で採用された社員から「地元で働きたい」という声が多く聞かれた。社員のニーズに応えたい一方、そういった社員に個別に対応する方法では、不公平感が生まれることが懸念された。
 そこで、転勤を希望しない社員には転勤がないことを前提に働ける安心感を、一方で転勤可能な社員に対しては処遇に差をつけることで公平感を担保することと、全社員が納得できる制度として地域正社員制度を導入した。

(2)特徴

 R社員は、業務の特性上、働く場所に関わらず、職務の内容や責任の範囲、キャリア形成に差はない。そのため、部長クラスの管理職層(Bバンド)まで地域正社員制度を利用することができる。また、制度利用の事由は問わず、制度利用回数に上限はない。
 同社の国内事業所は、北九州に2か所、関東圏に3か所、大阪に1か所設置している。R社員は、本社地区(北九州)、関東地区(東京、神奈川、埼玉)、関西地区(大阪)の3つの地域区分のいずれかを選択できる。地域区分をまたぐ異動は生じない。ただし地区内での異動は、転居を伴う異動には該当しないため、あり得る。

(3)導入における工夫点

① 制度導入に至るプロセス

 制度設計にあたり、まずG社員とR社員の賃金について、公平性を担保するためにどの程度の差を設けるかということを考える必要があった。G社員がR社員に転換すると賃金額が減少することになるため、導入に反対する声も少なくなかった。賃金が大幅に減額すれば社員の生活への影響も大きいため、「どのくらいの差であれば納得を得られ、妥当性があるか」と、労働組合と協議・交渉を重ねて制度の導入に至った。

② 区分の転換

 年に1回7月に、転換の希望の有無を調査する。社員は、理由の如何を問わずR社員からG社員へ、またG社員からR社員へ転換することができ、転換の回数に制限はない。業務やプロジェクトの関係で転換時期がずれることもあるが、原則として、社員の希望に応じた異動先を探し、異動できるように配慮している。
 なお、G社員からR社員に転換する際、現在の勤務地域を継続希望する場合と、現在の所属とは別の地区への転勤を希望する場合が考えられる。後者の場合は社命による転勤とは異なるので異動に係る費用等は自己負担としている。

③ 処遇

 同社の基本給は、「グレード別設定金額」と「実績積み上げ金額」で構成されるが、そのうち「グレード別設定金額」について、G社員とR社員で差を設けている。具体的には、G社員を基準にするとR社員は管理職層で10%、一般職層で6%程度の減額となっている。賞与額はバンド・グレードごとのポイントが定められ、それに成績評価を掛け合わせて決定されるが、ポイント設定は基本給同様、管理職層で10%、一般職層で6%程度の差が設けられている。また、定期昇給幅はG社員に対してR社員は一律約20%減の差を設けている。ただし、職務内容、福利厚生、等級制度、昇進や昇格の要件に、社員区分の差はない。

G社員基準と比較したR社員の賃金差


参考資料:「労政時報 第3968号」(2019年3月8日 労務行政)


3.他の「多様な働き方」制度

・社内公募制度(会社から、「こういう技術を持った人が欲しい」など、要件を示して募集をかけ、社員が制限なく応募できる制度。)
・FA制度(自分で希望部署を指定し、受け入れ側が承諾すれば異動できる) 等

4.メリットと効果

 2017年に制度を導入して以降、地域正社員制度の利用者は94名(2019年下期現在)にのぼり、制度利用の対象となる社員の2割弱がR社員を選択している。R社員に転換を希望した時点で、勤務地で働くことを希望する社員だけでなく、「R社員として九州に戻りたい」といった、R社員に転換することで現在とは異なる勤務地に異動を希望する社員が一定数いたが、社員一人ひとりが希望する働き方を提供できつつある。またR社員とG社員の相互転換が可能であるということは、ライフスタイルの変化があっても仕事を続けていけるという安心感につながっている。なお、地域正社員制度のみの効果ではないが、離職者数はこの1、2年、減少傾向にある。
 転居を伴わずに働けることは、採用時の求人効果にもつながる。2019年の新入社員は、九州地区での採用が多かった点も影響しているが、14名中6名と4割強がR社員を希望した。

5.今後の課題

 現在は、個別の調整で対応できているが、今後ニーズが増えた場合には個別対応が困難となる。例えば、R社員として転勤を希望した地域に適切な仕事・ポジションがない場合や、あるいは、社員が希望により異動した後、異動前の部署で人員不足が起こる場合などである。特に、事業特性上、必要人数が限られている地区は、希望者が増加した場合、調整が難しいと考えられる。


6.活躍する従業員の声

組込・制御システム本部 Hさん

年代 50代 性別 女性
勤続年数 27年
1991年に入社。2017年9月より地域正社員制度が導入されたのを機に、G社員からR社員へ転換。現在は開発マネージャーを務める。

◆家族のことを考え制度を利用

 地域正社員制度導入以前は、個々の事情による配慮はあったものの基本的には全社員が全国への転勤を前提としていた。2017年9月、R社員が制度化された際に、子供の教育環境を変えたくないという思いから、R社員に転換した。
 入社して開発や業務スタッフを経て産前産後および育児休業を約2年取得し、復帰して12年になる。現在、開発マネージャーに従事してから1年になる。
 制度を利用してR社員に転換しても、業務内容は変わらない。また、これまでは転勤しないように配慮されていたことに負い目を感じていたが、R社員が制度化されたことにより負い目を感じる必要がなくなり、気持ちの面で大きな変化であった。開発マネージャーになった現在は、お客様にかかわる機会も増え、より充実して仕事ができている。

◆今後のキャリアプラン

 今は家庭の状況から仕事をある程度セーブしているが、子供が成長し家庭内での責任が軽くなれば、G社員への転換も視野に入れて仕事量の比重を上げる等キャリアアップを目指したいという思いはある。柔軟に働き方を選択できる環境を活かして、自身のキャリアを考えていきたい。